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プリントフィニッシングが重要になる

印刷産業の将来にはいろいろな可能性がありますが,結論から先に申し上げますと,プリントフィニッシングがさらに重要な役割を果たすことは間違いありません。なぜなら,プリントフィニッシングが最も顕著な違いを創出でき,製品の付加価値を高めることのできるプロセスだからです。言葉を変えて申しますと,将来はプリントフィニッシングにかかっているともいえるのです。
今日の多様化したメディアはこれからもその複雑さを増し,印刷製品の総発行部数は増えるものの,それぞれの生産ロットは小さくなります。分割生産,限定版,試し発行など,出版社や依頼主に魅力的な可能性を提供しなければなりません。市場ターゲットにマッチした印刷製品を,より正確に,早く,経済的にと期待されます。
同時に,個人別に,地区別に,複雑に組み合わされた印刷情報が増えるでしょう。キーワードは「ゾーニング」と「セレクティブ」です。あらゆる方法で無駄な印刷物の配布を少なくしようとする動きも明確になります。
国際的な市場においては通信メディアとの厳しい競争となります。そして競争は新しい製品を創り出します。経済性に優れた方法でどのようにこたえるかが問われるのでしょう。つまり,経済性に優れた生産システムによる「生存能力」が大切なテーマです。価格圧力は継続し,価格競争力は依然として重要な挑戦課題であり,国際的な競争がさらに進みます。
印刷製品に対する要求はさまざまな形で強まります。品質,時間,ゾーニング,セレクティブ,そして創造力に満ちたデザイン。フィニッシング過程で印刷製品を特徴あるものにしなければなりません。
これからのプリントフィニッシングにおいてますます強調されると考えられる工程間のネットワーク,自動化,そして創造的な製品にどうこたえるのかについて,私の提案を述べましょう。

ネットワーク化,自動化

技術革新が明確に示しているとおり,コスト効率の良い生産はコンピュータシステムに支援された,ワークフロー・マネジメントです。1995年,私どもは早くも自動化の進んだフィニッシング機械を世界の市場に出しました。この機械によりワークフロー・マネジメントへの関心が急速に増大しました。
ネットワーク化の動きは明らかで,プリプレス,印刷,ポストプレスのより緊密な連携が進んでいます。工程の完全なネットワークは重要な利益をもたらすことになります。管理データは単に状況を示すだけではなく,データを判断しながら,生産の全工程にフィードバックを行うのです。
オープン化と標準化は,情報を異なる生産プロセスで利用することを可能にします。これがCIP4の取り組みです。JDFやJMFの標準化されたフォーマットはオープンインタフェイスへの道です。
CIP4のプリントフィニッシング分野をリードするのは,ミューラー・マルティニです。長年にわたり,ワークフローについての膨大な専門知識を構築してまいりました。実際にCIP4を試していただくこと。それが,私からの重要なヒントであり,この標準化がより早いネットワークの構築と,多くの利益をもたらすことにつながると確信しております。CIP4ではないデータフォーマットのシステムが,結果として多くの経費負担をもたらすことになりかねません。
複雑化する製品。増加する種類。高い信頼性と品質。時間との戦い。このような環境にあって人的資源を高度に活用するためには,今後ますます自動化が重要になるでしょう。

生産工程の課題

ところで,お客様はどれほどのコストを製品完成までの物流に掛けていらっしゃるでしょうか。物流は製品に価値を加えることができないにもかかわらず,多くの会社では従業員の50%を掛けています。ここに大変な経費節約の可能性が潜在しています。それに伴い,半製品の保管はより重要な課題となってきました。
この視点から例を挙げますと,人的資源の浪費は,プレスデリバリ(輪転機の折丁処理)の選択に関わります。つまり,バッファと保管システムの正確な一致,印刷とフィニッシングの連携,必要人員最小化といった,生産工程の重要な課題がここにあるのです。
自動化。既にフィニッシングのすべての段階で対応可能になっています。ミューラー・マルティニのAMRYSは,中とじ機,無線とじ機,上製本機械,その他さまざまな機械・装置において採用されています。作業時間の短縮,損紙や準備時間の節約,繰り返し仕事の自動セット,装置,機材の効果的使用,コスト削減。AMRYS技術はGATFの2002年度最高技術賞の受賞に輝きました。

創造性と生産性

自動化に対し,生産システム構築上の疑問をおもちの方もいらっしゃることでしょう。例えば,生産の信頼性,効率,そして生産性に逆行するような,特別ユニークな製品への要求,個別製品,差別化された製品にも対応できるかという疑問です。創造性と生産性は対立すべきテーマではありません。それらは共存できるものです。
既に,印刷後のインラインフィニッシングやポストプレスにおいて,多くの可能性が準備され,開発が進んでいます。中とじ機,無線とじ機,糸かがり,上製本機において,印刷製品を作るオプションが準備されています。貼り込み装置,サンプルのインサート,宛名インプリント,フィルムラッピング,ラベル貼りなど多様な装置とその組み合わせがあります。ここでユニークなのは,加工において,パンチング,ダイカッティング,スコアリング,プレスティッチングなどにより創造性に富んだ製品への挑戦があることでしょう。
宛名付けやセレクティブ丁合いは,中とじ機でも無線とじ機でも既に現実のものになっており,今後はこのような製品の市場も拡大します。無差別の広域・大量広告については,既に疑問が出されています。コストと広告効果の問題です。環境への配慮も社会の要請です。自動化された「Versioning」は,複数の版によりコストを下げています。自動化された「Zoning」により,異なる種類の印刷製品と組み合わせてターゲットへ配布します。そして,「Selective」です。データベースをもとに編集され,個人向けメッセージを入れ,情報価値,広告価値を高める印刷製品です。
プリントフィニッシングのさまざまな可能性を知っていただくとともに,お客様からいろいろなアイデアをいただき,それらを広範にわたるミューラー・マルティニのプリントフィニッシング技術と組み合わせることが私どもの仕事です。これからも,新しい生産システムに挑戦します。

『JAGAT info6月号』より

2003/06/29 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会