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アウトラインフォントの雑学(1)─フォント千夜一夜物語(29)

デジタルフォントにおいては、フォントデータの容量と文字品質が重要なキーになる。1書体当りの平均的なフォントデータの容量は、フォーマットによって異なるし、フォントの種類によっても異なる。一般に明朝体は容量が大きく、ゴシック体の方が小さい。

フォントメーカーは文字品質に神経を使う。特に問題なのは解像度の低い出力装置に対して、小さい文字をいかに美しく表示できるかである。

低解像度の出力装置、つまりドット数が少ないと文字がつぶれたり、線幅や線間がバラついたりする。したがって、これを補正するためのテクノロジー(技術)が必要になる。

アウトラインフォントでは、ヒント情報と呼ばれる線幅補正のためのデータを付加することで、小さい文字の表示品質を維持する。

一般に普通紙プリンタでヒント情報が必要になるのは、300dpiのプリンタでは20ポイント以下の文字を出力する場合であり、600dpiのプリンタで出力する場合には、12ポイント以下といわれる。

しかしこれも品質レベルに対して、どのように評価するかによる。印刷用版下として印画紙やフィルム出力の場合、あるいはCTP出力の場合などには、出力装置の解像度は1200dpi以上を必要とする。

しかしモニター画面に小さい文字を表示するときは、ドットフォントが使われる。ディスプレイの解像度にもよるが、前述のようにMacintoshでもWindowsでもドットフォントをシステムに用意している。

●ヒンティングという魔術
フォントフォーマットによってヒントデータは異なる。またそのヒンティング(ヒント技術)も異なる。ヒンティング技術は非公開であり、フォントメーカー独自のノウハウをもっている。 ほとんどのヒンティング・アルゴリズムは欧米文字用に開発されたものであるが、漢字を表示する上では、欧文文字とは違ったテクニックが必要になる。

日本語固有の要素をもつ文字(漢字・かな)には、ヒント情報をもたせることは難しいし、ヒント情報の効果は少ないといえる。例えば「ハネ」や「ウロコ」などのエレメントには、ヒントがかかりにくいからだ。

毛筆書体の場合は、曲線部分や筆のかすれなどが多いので、アウトライン化するのが難しい。そのため意識的にヒント情報をつけずに、自然に毛筆の味を表現している。線の乱れがかえって自然な文字に見える、という効果をもたらす。

数学的に処理したスケーラブル・フォントのアウトラインフォントは、大きいポイントサイズのビットマップに展開した場合には、曲線などがスムーズで高品質の出力が得られるので問題はない。

しかし低解像度の出力機器に対し小サイズの文字を出力する場合には、グリッドの関係で文字を構成する縦線や横線の線同士が重なり、文字がつぶれることがある。そこでこれを補正するテクノロジーが必要になる。これを「ヒンティング」という(つづく)。

フォント千夜一夜物語

印刷100年の変革

DTP玉手箱

2003/07/19 00:00:00


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