企業の資源環境問題対応は社会的な責任としてますます強く意識して取り組まなければならなくなったが、同じ取り組むのならばそれがコストになるだけではなく、他社との差別化や新らたな収益の源泉になるようにしたいものである。
資源環境問題への対応には3つの視点がある。第1の視点は、企業としての最低限の環境法規遵守である。第2には、最終的には「ゼロエミッション」を目指す工場からの埋め立て廃棄物の削減および再資源化である。そのためには、ヤレを減らす、無駄な材料、消耗品を使わないといったように、廃棄物自体の発生を抑制しながら再資源化も推進して廃棄物処理費用削減といった経済的効果も期待するものである。第3の視点は、環境対応新商品の開発、提供によって、売上拡大を目指すことである。
上記の第2点に関わる産業廃棄物処理については、2000年10月改訂の「廃棄物処理および清掃に関する法律」(廃掃法)が2001年4月から全面施行となった。排出事業者には、排出した廃棄物の処理が適性に行われるよう最終処分完了までの確認が義務付けられた。処理業者が例えば不法投棄などの不正な処理を行った場合には、排出事業者が現状回復措置などの是正処置をしなければならなかったり、罰則規定の対象になる可能性が出てきた。したがって、きちっとした対応をしておかないと、社会的責任、経済的負担の両面から事業継続が出来なくなることすらあり得る。このような廃棄物問題の重大性認識と具体的施策の実行において、業界全体として、現状、充分であるといえるだろうか。
昨年、環境対応の最優良印刷工場として表彰された共同印刷の五霞工場では、あらゆる工夫をしてゴミとしての排出物を出さない努力をした.毎月1000万冊を優に超えるような生産をしている工場ならば,排出物も膨大でその廃棄コストも非常に大きい。必要は発明の母で、刷本の結束に使うPPバンドは,粉砕処理をすることで有償回収,再生利用されるようになった。従来逆有償で引き取ってもらっていた巻取紙のワンプも,再利用の用途とルートを見つけることで処分経費を2/3削減するなどの効果を上げたという。製本現場から出る紙粉は、圧縮されて下水道局に送られ下水のろ過材として利用するようにした。これは有償でも逆有償でもなく無償である。少なくとも2年以上も前の時点で、オフ輪、活輪、グラビア輪転が10台以上稼動している工場でも、ゴミとして排出されるものはブランケットの屑、樹脂版の廃版などで、1週間合わせてもゴミ収集車で半分程度に過ぎずないと言うところまでの廃棄物削減を実現している。
できれば各企業で上記のような方向で廃棄物処理を進めたいものだが、中小印刷業ではさまざまな意味で実現しにくいことである。したがって、やはり最終的には埋め立て廃棄物として処理業者に委託することになることが多いだろう。しかし、この場合には、自社で排出した廃棄物が最終処理されるまでに経る中間業者の全てが適性業者であることとそれらの業者全てと所定の手続きをきちっと行わなっておかなければ、先に紹介した廃掃法によって非常に大きな打撃を受けることも有り得る。
オリックス環境株式会社は、約50社の産業廃棄物処理の優良業者をネットワーク化し、各排出物に適した優良業者の選定から契約、支払いといった事務処理、および業者の管理・監督、クレーム処理の一括窓口機能を提供するサービス事業を開始した。同社ネットワークには、ラベル、ステッカーやラミネート紙のような非印刷体を固形燃料化して製紙メーカーに販売する処理業者も含まれている。この場合、ルートが単純かつ明解であるう上に、ゼロエミッションというにふさわしい処理がなされる。(連絡先:オリックス環境梶@営業部 電話:03-5228-5330)
大手印刷企業では、既にゼロエミッションを達成した工場所もあるようだが、一般の中小印刷企業が単独で達成することは難しい。上記のようなサービスの利用等できちっとした法規遵守をしつつ、同業者や関連メーカー、場合によっては工業試験所のような公的機関とも連携して、環境対応がコストになるだけでなくさまざまな意味でプラスになるような活動をしてもらいたいものである。
(出典:JAGAT info 2003年8月号)
2003/08/11 00:00:00