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電子メールはコミュニケーション変革の入り口

電子メールはどこでも日常的に使われるようになった。電子メールは最初は郵便の手紙のアナロジーと考えられたこともあったかもしれないが、電子メールを使った人は電子メールの特性に気づいて、手紙とは使い方が異なるものとなった。それは、手紙を出すタイミングや頻度、あるいは書く文章の様式、出す相手、などが電子メールでどうなったかを振り返れば理解しやすい。

結果として電子メールは人のコミュニケーションに郵便の手紙よりも広がりをもたらしてくれた。また人と人の結びつきを、より強いものにする面もあった。要するに手紙が果たすべき要件を、紙以上に満たすことが出来るのが電子メールであった。とはいっても電子メールが万能であるというわけではなく、電子メールで送れない押し花など「物」もあるので、今度は手紙の使われ方が変わる番かもしれない。電報が変わったように。

この電子メールの使われ方は発展して、電子会議のようなものができたり、ニューズグループやメールマガジンのように、メディア化するという展開も起こった。ECのトランザクションも主体が電子メールである。この場合は人が送るのではなく、無人処理なので勤務時間の制約がなくなる。電子メールの展開がどのようであったかをみると、手紙や電話やFAXを必要としていたコミュニケーションの目的にさかのぼって、コミュニケーションのミッションに合わせた発展的な新たな使い方が生まれたといえる。

こういう変化をもたらしたのは、電子メールの持つ機能ゆえである。インターネットなどで最も素早い伝達手段というだけではなく、返信ボタンで簡単に返事が出せること。以前の交渉内容を引きずってだせるので、要点だけを単刀直入に表現できること。アドレス帳で宛名管理ができること。デジタル情報なので劣化しないから、CC(カーボンコピー)機能で複数の人に正確に伝達できること。直接相手のデスクなり携帯電話に届き、途中で滞留する可能性が少ないこと。なにしろ基本的にはタダだから対象の人数が多くても平気であること、などなど数え上げればキリがないほど機能的な特徴がある。今日ではブロードバンドでデジカメの写真もボンボン送られ、今後写真アルバム化するかもしれない。

文章の書き方も、紙の手紙のような、拝啓+時候の挨拶+敬具、前略−草々、などの形式をとらないばかりか、文体までもしだいにチャット化するような変化がある。このようにみてくると、紙の手紙と電子メールの共通点は、文字情報であることだけで、およそ異なった点の方が多いように思われる。
紙の手紙とは異質であるという点からも、紙の手紙がなくなることはないだろうが、電子メールを振り返ることは、新しいデジタルコミュニケーションがこれからどうなるかを考える良いきっかけを与えてくれる。

マニュアルが電子化して、パソコンのソフトなどはHELP機能にマニュアルが吸収されていったが、サポートセンターやコールセンターなどの電話問い合わせは人間のオペレータが行わざるを得ない。これも電子メールのやりとりを知識ベース化して、FAQとしてオペレータが参照しながら答えるとか、あるいは顧客自身が知識ベースをアクセスするようにして、センターの負担を減らすなどの方向にある。最近では、LiveHelp というようなチャット形式でサポートセンターに問い合わせをするものもある。

電子メールは画期的なシステムであったが、これはコミュニケーションのデジタル化のほんの入り口に過ぎない。ビジネスも学習もあらゆるものがコミュニケーションの改善を必要としているのであり、また日本の抱えている問題解決のためには、メディアやコミュニケーションによる改善が大きく求められている。だからメディアに関わる人々は新たな活動のチャンスがこれから多くあると同時に、大きな社会的使命を担っているともいえる。

JAGATでは技術フォーラムという場で、技術革新による社会・ビジネスへの影響を踏まえ、メディアやコミュニケーションの今後の変化を見通し、ビジョンを考える作業をしてきた。2003年は、デジタルコミュニケーションで新たなメディアビジネスに取り組んでいる方々をお招きして、そのビジネスモデルと志向・ビジョンについてお話をしていただき、参加者とともにディスカッションを繰り広げている。これを通して私たちの将来像を中長期の動向に合わせて描いていただきたい。

●テーマ
◇8月:携帯コンテンツ 8月27日(水)16:00-18:00
 「紙媒体との連動―パラくるi道案内」
 (株)ソフトウェア・ファクトリー 代表取締役 西村 英士 氏
・目的地までの行きかたを、従来の地図に代わって、パノラマ写真と簡単な音声で道案内するサービス「パラくるi道案内」(iモードアプリ)を展開。
◇9月:e-ラーニング 9月30日(火)16:00-18:00
 「業界別人材育成―BISCUE eラーニング」
 (株)シュビキ 代表取締役社長 首尾木 義人 氏
・国際標準SCORM1.2(日本初の認定)準拠のコンテンツ(IT業界、金融、流通、メーカー、建設業など業界別210タイトル)と、低コスト・スピーディな独自のカスタマイズシステムで、人材育成の効率化をサポート。

※「技術フォーラム」にご関心のある方は、メールでお問い合わせください。

■関連事業:通信&メディア研究会 拡大ミーティング 「WebサイトのCS(顧客満足)向上システム」2003年8月26日(火)開催

2003/08/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会