産業廃棄物処理に対する重大性認識の必要性と、いろいろな工夫によって再資源化等を進めることで経費削減効果も出てくる。
従業員数400名で商業印刷物、証券印刷物、パッケージ印刷物を生産している印刷工場で、1 年間約1400万円の経費削減をした例がある(図1)。
同工場である1ヶ月において廃棄物として処理されたものは42.0トン、その処分費用は2225千円である。その内容は、PPバンド・ストレッチフィルム・ブラン洗浄布等が2.3トンで117千円、ワンプが25.1トンで1510千円、その他が10.6トン、598千円であった。このような状況から、分別排出を徹底しリサイクル化することで、PPバンド等で36千円/月、ワンプでは1161千円/月の処分費用を削減して、処分費用全体を半分以下に押さえた。
有効な廃棄物処理の基本は分別回収である。巻取り紙のワンプの場合、その材質は古紙として用紙原料に再生できる紙とプラスチック製品のリサイクルルートに乗せなければならない防湿フィルムの2種類が使われているので、これをきちっと分けなければならない。
古紙再生ルートに流される物として、段ボール、各種紙管(巻取り紙紙管、ストレッチフィルム紙管,ブランケット紙管、ブランケット洗浄布紙管、結束用PPバンド紙管)がある。一方、プラスチッフィルム(ワンプ防湿フィルム、ストレッチフィルム,結束用PPバンド,ブランケット洗浄布、柔軟剤空容器)は破砕してセメント製造の燃料として利用される。
このようなごみの分別を実行することは、廃棄物に対する意識を向上させ、処理すべき廃棄物量削減にも効果がある。同工場の場合は、半年間で81トン、22%削減された。
結果として、先の処分費用削減と合わせて1年間で約14000千円の経費削減になった。
廃棄物処理の基本はとにかく分別回収だが、ゼロエミッション(埋め立てされる廃棄物がゼロであること)を達成した各企業とも、いろいろな工夫を積み重ねて成果を出している。 会社全体で意識付けが十分されていない初期段階では、重点品目あるいは直ぐにできるものに絞って分別回収を始め、その後半年単位程度で品目を増やしていくことが第一のポイントである。さらに、「混ぜたらごみ、分ければ資源」といったスローガンの元に、「ゴミ」という言葉を使わずに「資源」と言う言葉を使う運動を展開する、分別回収された「資源」が最終的にどのような製品になるかを展示する、あるいは各部門それぞれが廃棄物処理の専門業者への依頼を行うようにするなど、分別回収、コストに対する意識改革のための方策をとっている。また、処理費用削減の点では適切な処理事業者の選定もポイントである。
ゼロエミッションを目指す廃棄物処理への対応は簡単には進まないものである。また、先の印刷工場の例のように、400人の工場で年間約14000千円、1人当たり35千円/年程度のコスト削減効果だから規模が小さいほど労力と成果のバランスはプラス面が少なくなるだろう。しかし一方では、如何にして準備作業時の損紙を減らすかといった細かな部分でのコストダウンを真剣に考えないと利益が出せなくなってきている。廃棄物処理への対応には、多角的な視点を持って臨みたいものである。
(「JAGAT info 2003年10月号」より)
2003/09/15 00:00:00