今回で17回となるIGAS2003(主催:印刷機材団体協議会)は本年より世界4大国際展示会として4年に1回の開催になった。9月22日〜28日の7日間,東京ビッグサイトを会場に,入場者数12万539人(見込み15万人),そのうち海外から1万2544人(同2万人)を数えた。出展社数は内外合わせて450社,出展小間数4500小間の規模となった。
また,同時に世界印刷技術者会議(主催:社団法人 日本印刷産業連合会)との共同開催となった。
注目の技術,商品をリポートする。
マルチカラー,FMスクリーン
プロセス4色に特色やRGBカラーを加えたマルチカラー(ハイファイカラー,ヘキサクローム,スーパーファインカラーなど)の新たな注目点は,上手にプロファイルを作ると,デジタルカメラのもつ広色域を再現できるようになることだ。印刷機の胴数によってはワンパスで印刷できないこともあるが,入力ソースがもつ色をできるだけ損なわないような印刷が可能になってきている。
ハイデルではスーパーファインカラーHF(CMYKRGBの7色),同HX(パントンのプロセス6色),同GCR(CMYK+グレーの5色)のマルチカラーサンプルを配布していた。ICCプロファイルは8色まで対応しているので,昔の製版スキャナでCMYKから無理やり特色版を作っていたものとは違い高精度な色分解ができる。
FMスクリーンも,かつてのハイライトや肌部分のザラツキ感が少ない第二世代と言えるものが各社から出そろい,印刷のデモの多くで使用されていた。
カラーマネジメントとカラープルーフ
大日本スクリーンではInDesignのプラグインソフトと,RGB-CMYK変換ソフトのカラージーニアスによって,写真の中で表現したい対象に合わせた10種類くらいレシピを選択することで自動的に色演出してくれる機能を見せていた。
コダックポリクロームグラフィックスのマッチプリントバーチャルプルーフィングシステムは,モニタによるソフトプルーフで,インターネットサーバによるバーチャルプルーフィングを行う。CMYK→RGB変換を行った低解像データをWebで見るのだが,いくらでも拡大ができる(参考出展)。また,DDCPのアプルーバルは特色の出力時間が55%ほど改善された。
サカタインクスのbest screenproofの新機能はベストカラーマネージャーで,用紙プロファイル作成,印刷機やプリンタごとのリニアリゼーション,白色度の違いの補正,リファレンスプロファイルなどを,わずか44色のパッチを測定するだけで実現している。リモートプルーフ機能としては,カラーガモット機能により送受信の双方がプリンタ出力されたわずか16色のパッチを分光光度計で測定することで,色の保障を行うカラーコミュニケーションができる。
クレオのインクジェットプリンタVerisは1500×1500dpiコンティニアスタイプ3ピコリットルのマルチドットを制御している。A4換算で14枚/時,FMスクリーン(スタカート)も再現する。
富士ゼロックスのカラーレーザで世界最高のプリント解像度を誇るリアル2400dpiを実現したデジタルカラー複合機で,カラー毎分12.5枚(A4横),モノクロ毎分50枚(A4横)である。
いろいろな出展者のブースで使われていたのが,CRTモニタに匹敵する表示の能力をもってきたナナオの液晶モニタのColorEdgeで,0〜255階調をデコボコがない理想的なガンマ2.2のカーブになるような最適値を10ビットのテーブルの中から選択できる機能を備えている。
ワークフロー/JDF
JDFとは,MISや工程管理などのマネジメントシステムと生産機器の情報伝達を双方向で行うための業界標準フォーマットであり,大手メーカーがこぞってデモを見せていたのが,オリーブのプリントサピエンス(見積・受注・在庫管理システム)とのJDFによる情報のやり取りであった。生産指示を送り込むと,生産機器からは稼動状況データが戻ってくるというものである。実用効果という点では,印刷機だけでなく折り機など後加工までもJDFで接続しないとメリットが出ないだろう。後加工関連では永井機械製作所がJDF対応断裁機を,ホリゾンはJDFを見据えたというi2iネットワークを出展した。JDF対応製品の登場は来年のdrupa展への前哨戦でもあるが,ユーザの関心もこれからというところだろう。各ブースでは説明に汗をかいていた。
また,次世代印刷ネットワークコンソーシアムによるAMPAC(印刷工程のためのデータベース構造モデル)への取り組みも見られた。室蘭工業大学が中心に国内メーカー18社が参加して実証が行われている。規格のJIS化も終わっていて,イトウテックが対応断裁機を展示していた。
CTP
CTPプレート開発の最終目標は無処理型CTPであるが,いくつかの製品や参考品が発表されていた。しかし,現状は耐刷性や再現域の狭さの課題がまだ残っているようだ。三井化学と日本フォトケミカルのグリーンプレートは相変換型で,全く後処理が必要ないものであるが,非画線部は親水性ポリマなので網点が出ない。PS版市場の再参入しようというコニカミノルタのSimplateProは,PETベースの機上現像タイプであり,コダックポリクロームグラフィックスの同じタイプのCTPであるタイヤモンドプレートLT-Zはアルミベースである。
三菱製紙のネガ型サーマルCTPプレートは,紫外域にも感度があるので通常のネガ型PS版としても使用できる。
CTPセッタでは,大日本スクリーンの512chの露光ヘッドをもつサーマルCTPのPlateRite8800,バイオレットCTPのPlateRite3051Viなど,たくさんの機種が出展された。クレオのTrendsetter 800 QuantumCL は版を手差しであるが,サイズ違いでも連続的に差してくれる。
POD
PODはビジネスモデルが前提であるが,意欲的なメーカーからの出展も多く,いくつも参考出品が出てきた。
昭和情報機器のSR3000高速フルカラープリンタ・システム(レインボー・システム)はLED乾式1成分電子写真方式で印刷速度は30m/分(両面フルカラー,A4換算400ppm),解像度:1200dpi,ロールtoロールのカラーPOD機である(参考出品)。
ミヤコシのPODは輪転型で,東芝が開発した液体トナー,1200dpiの電子写真エンジンを搭載している。BB両面同時印刷で速度は15m/分。
もう1機種は印刷幅500mmでライン方式で,600dpiのインクジェットプリンタ。デリバリ部はインラインでのフィニッシングラインを設定でき,ページバリアブルなオンデマンド機になる。
富士ゼロックスからはフラッシュ定着方式で高速化とスポットカラーの対応したDocuPrintと,リアル2400dpiでカラー毎分12.5枚(A4横),モノクロ毎分50枚(A4横)を実現したデジタルカラー複合機DocuColor 1256 GAが展示された。
ハイデルからは国内リリース始まったカラー機NexPress 2100とモノクロ機Digimaster9110がデモを行っていた。
インクジェットプリンタではUVインクが使われ始めており,アルテックブースのザ・ドットファクトリー,ミマキエンジニアリングのUJVシリーズなどが出ていた。
インディゴはHPの傘下になって初めて出展した。
バリアブル印刷のためのデータ作成ツールも重要で,その一つがシンプルプロダクツのForm Magicで,XML,CSV,RDBダイレクト組版インタフェイスやExcelやWordからXMLを書き出すソフトを標準搭載するとともにOffice2003のXMLにも対応しており,これらの入力データから自動組版,表組み,面付け,分散出力などを行うことができる。
印刷機
中型オフセット機メーカーが元気がよい。篠原鉄工所は6台を展示したが,参考出品の菊四裁サテライト型の52UNOはおむすび型の独特な形状をもち,来年のdrupaで完成機を出展予定という。
リョービはB2判8色機反転機758PがハイブリッドUVインキでデモを行っていた。また,DI機である3404DIにはUV乾燥機が付加されたことで完全乾燥した印刷がでるようになり,ますますオンデマンド性が高まったと言える。
大型機では枚葉機は多色化,両面化の方向であり,ハイデルからは菊全,菊半2台のSpeedmaster10色反転機が出展されたが,SM102-10-P-Sは気生堂印刷所への納入が決まっていた。
コモリコーポレーションではDI機に展示はなかった。オフ輪はセクショナルドライブのシステム35SにフルAPC,KHS(色や折調整)などを装備して,チラシの店名差し替えの実演を行い,3ジョブの切り替え時間が約2分半,800回転,損紙は1000枚程度で15分で刷了するデモを行っていた。
三菱重工は印刷機械製造40周年ということもあって,最初のモデルである三菱マリノニ菊半裁単色機スーパービジネスで実際に印刷を行っていた。両面専用機のタンデムパーフェクタは,前4胴が上部に印刷シリンダー下部にローラ群を配した印刷ユニットをもつ8色機というユニークな構成をしている。
オフ輪はシャフトレス機のB縦半歳のリソピア3SBT2 800 3S が実演されていた。
両面専用機で定評のあるアキヤマインターナショナルのJ-PRINT40 菊全両面8色機,250台の実績があるという。片面機のベステック40 菊全6色機水性ニスコーター機ではG段ボールにFMスクリーンでプロセス印刷を行っていた。
CTP化によって最も品質が向上したのが実はフレキソCTPであり,欧米では大ロットの特殊グラビア分野がフレキソに置き換わってきている。
アルテックのブースではコパックのフレキソ8色印刷機,ステルスによる水性フレキソインキの印刷が実演されて目を引いていた。ハイデルベルグではスイスのガルス製の8色UV機で包装フィルムに印刷した後でシール加工まで行う一環ラインを見せていた。
環境対応
環境対応の資材の中でも,ハイブリッドUVインキがいくつもの印刷機でデモされていた。現在のハイブリッドインキはUV成分が主体の第二世代といえるもので,初期のものが油性成分が主体であったものと違う配合になっている。ハイブリッドインキは従来のUVインキと違い脱墨性があるので,エコマークの取得ができるという点からも印刷発注者への訴求力があり,注目されている。
T&K TokaではIGAS会場ではUVハイブリッドインキをコモリとハイデルベルグのデモに提供していた。
DICのハイブリッド型UVインキ「ダイキュアハイブライト」は会場ではリョービのB半裁 4+4+UVコーターのデモされていた。
日研化学研究所からは,各種洗浄剤をPRTR対応と有機溶剤中毒予防規則に抵触しないエマルジョン型に,洗浄剤は乳化型として結果,ブラン,インキローラ上の紙粉,スプレー粉など水溶性の汚れもよく落ちるようにもなったという。
その他
大日本スクリーンでは人間を360度の方向から45秒で撮ることができるビッグスキャナのデモが行われた。XML関連ではサカタインクスのMediaBeaconは分散している各種印刷用デジタルデータ(デザイン・イラスト・画像など)を,XMLベースで一元管理できるデジタルアセットマネジメントシステムである。クレオではリモートサポートメンテナンスをブロードバンド利用によって強化しており,バンクーバー本社も含めてオペレータの手を煩わさせずに24時間サービスすることで,ダウンタイムの削減で稼働率を上げてもらえる体制を整えた。
(『プリンターズサークル11月号』より)
2003/12/01 00:00:00