変化のダイナミズムを実感できるPAGE2004へ
2004年2月4日(水)〜6日(金)に開催されるPAGE2004コンファレンスは,印刷のバリューチェーンを関連業者とともに築いていこうというコンセプトのもとに,DMビジネスショー・ポスタルフォーラム2004と同時開催で行われる。グラフィクアーツ業界はデジタル化対応の基本はできたといえるが、それだけではメディア関連業界の中で優位にビジネスをすることはできず、もし戦略的に技術を使ってビジネスドメインを拡大する方向に転換しなければ、縮小の一途を辿ることになりそうだと考えられるようになった。だから関連業界と手を組んで今までより一歩踏み込んだ顧客満足を目指すイベントに変身しつつある。
グラフィクアーツ業界の今日の戦略的なトピックスをPAGE2004ではグラフィックス,クロスメディア,MISの大きく3つのトラックに濃縮した。グラフィックス関係の経営者・管理者が今後3〜5年後の自社戦略を考えるための話し合いをしようというのがPAGEコンファレンスの目的である。先進的な取り組みをしているところに広く参画してもらって,オープンな形での運営をするために、Call for speakerの呼びかけを、印刷のバリューチェーンを築こうという記事で行ったところ、たくさんのご応募を頂き、概要を以下のように決めることができた。
残念なことに応募の多かったテーマはすべてはコンファレンスに盛り込むことはできず、同時開催の他のテーマや、JAGAT研究会での今後のテーマにさせていただいた。あふれたテーマで最も多かったのはXML Publishing関連が5件、カラーマネジメント関連が3件、フォント関連が2件で、他にSVG、POD、自動組版などがあった。特に応募の多かったXML Publishingは、別枠で特別セッションを行っていただこうと準備中である。
コラボレーション・トラック
例年の基調講演に相当するセッションで、「変容する市場とビジネスモデルの再定義」では、インプレス顧問 田村明史氏、アマゾンジャパン ベンダーマネージメントディレクタ 大西基文
氏、ミスミ 執行役員 大野龍隆氏、ヤッパ 代表取締役 伊藤正裕氏など、新しいビジネスモデルに取り組む当事者たちが、ビジネスモデルを構築するとはどのようなことなのかを語り合うことで、既存ビジネスのプロセス改善の域を超えて進むIT革命のダイナミズムを知ってもらう。
その後コラボレーションの実例として、印刷制作のプロセス改善を、SIの開発側の視点で見直し、現場と業務分析・改善設計/ITツール開発の間のコラボレーションによって、「製品情報の統合活用とクロスメディア化」をした例と、出版社の戦略に合わせて、印刷会社とXML自動組版サーバ開発側も加わったコラボレーションによって、XMLパブリッシングを実現した例を採り上げる。
また、「CIP4/JDFがもたらす印刷の近未来」では、drupa2004で主要テーマになるCIP4/JDFは、MISなど経営管理と生産機器の双方向接続によって、生産管理面では工場全体の最適化から、印刷取引全体の最適化までを目指す。CIP4のマーケティングを担当しているEFI社の担当が、これによってもたらされる印刷の近未来を示す。
以下、各トラックのセッションがどのようなコンセプトにまとめられようとしているかをご報告申し上げる。最終決定は、12月中旬にこのサイトで発表の予定である。
グラフィックス・トラック
印刷色再現の新たなチャレンジ
高品質のデジタルカメラ,AdobeRGBなどの広色域データの流通、またインキジェットプリンタの色域拡大など,プロセスカラー印刷を超えるデジタルカラーが広がる。これからの印刷は,より広い色域を求めてどんな技術・手法にチャレンジするのか。
DTPソフトを組み込んだソリューション
DTPの利用は、自動レイアウトのさらに先に、商品カタログなど大量データを扱う際のデータ管理や、XMLによるクロスメディアなどのソリューションへの取り組みがある。逆にソリューションのためにDTPの意味合い・位置付けを再考する。
Office2003によるコンテンツのXML化
XMLデータベース構築の開発コストや導入期間の長さがXML活用の障壁になっていた。Microsoft Office2003では,WordやExcelでXMLデータが扱えるので、その機能を検証し,どのような活用法があるか,今後の可能性について議論する。
デジタルカメラと画像生成の進化
デジタルカメラが高機能化し、印刷の原稿データ作成を視野に入れた一眼レフカメラが設計されている。そこではどのような画像形成が行われ,メーカーが目指す画像とはどのようなものなのか。開発技術動向からその方向性を探っていく。
拡張する文字コード標準化と実装
Windows,UNIX系,Macなど多くのOSでUnicodeがサポートされ、XMLやJavaもそれを前提に設計され、Webブラウザやメールソフトなどアプリレベルでも扱われる。その中でJIS漢字の拡張やその実装などはどう進んでいるかを探っていく。
通信教育用教材のバリアブルプリント
PODが小ロット印刷の代名詞であった時代は終わり、データベース構築から製本、発送までのトータルソリューションによって、通信教育9万人受講者向け百ページを超えるカラーパーソナル教材をも実現させた。世界でも前例のないこの事例をベースにPODの今後の発展を考える。
クロスメディア・トラック
見えてきた電子書籍ビジネス
電子書籍ビジネスはこれからどうなる? 電子ペーパーなど新たなデバイスを目前に、コンテンツの広がり,販売・流通の仕組み,デバイスの多様化など、電子書籍ビジネスの新たな環境が出来つつあるので、挑戦すべき目標を語る。
変わる流通と電子カタログビジネス
製造から、卸、小売りまでの商品流通においては、商品情報データベースの共有が課題であり、チラシやカタログ作成を行う印刷業もこの共有の中に入ることが必須である。そこでの情報交換技術、プレゼン方法について取り上げる。
eラーニングに展開する教材制作
IT化は教育の形をも大きく変え、eラーニングで教材制作にも転換が求められている。既存のコンテンツを生かしてeラーニングビジネスに乗り出している印刷会社、出版社、資格取得学校の方々を迎えて、現状の取り組みから、今後の可能性を探る。
ドキュメントからナレッジシステムへ
IT化によりビジネス環境は激変し、中でも顧客とのコミュニケーション方法は印刷物中心からインターネットを使ったリアルタイム・レスポンスの仕組みに変わり、知識・ノウハウをITで共有し、活用しやすくする「ナレッジ環境」の構築に向かっている。
コンテンツ管理の重要性
どのようなメディアによる情報発信においてもWebは外せないクロスメディアの時代になった。Webを含むコンテンツを効率よく活用するためのコンテンツ管理システムでどのようなソリューションができているのか、次の課題は何かを考える。
Webユーザビリティの方向性
Webサイトで利用者が苦労しても目的を達成できないことがないように「ユーザビリティ」や「情報アーキテクチャ」といった考え方が注目されている。ウェブ設計・制作・管理者がこれからの運用に際して考えるべきポイントを検討する。
MISトラック
これからの印刷業MISへの新提案
ほとんどの印刷会社の経営管理システムに欠けているところの、よりシビアに求められる現実的なコストダウン、短納期要望を満たしながら、将来の全体最適化を実現するMISについて、JAGATが提案する印刷業MISを軸にディスカッションする。
ネットワークによる顧客との連携強化
印刷物を含む媒体制作は頻繁なコミュニケーションを通じて制作が進行するので、自社と協力工場、得意先間の密なネットワーク化が必須用件になる。これらに先進的な取り組みをしているパネラーが、顧客満足向上、競争力強化の工夫を語る。
さし迫ったCIP4/JDFへの対応
drupa2004で発表されるCIP4/JDF対応技術や単体製品を導入しても効果は限られる。日本の印刷環境の現状をふまえて、MISから生産機器までの生産システムの最適化にどう対応していくのかを、CIP4を担当するFellemen氏を交えて検討する。
Webサービスによる業務連携
制作の仕組みもビジネスの仕組みも、ネットワーク上のアプリケーション連携行う方向にある。SOAP、XMLベースの連携テクノロジのWebサービスのメディア業界の実例をベースとして、技術上のポイント、直面する課題から、将来性までを語る。
業務からみた社内ネットインフラの向上
JDFの出現のように、制作も業務管理もネットワーク上で情報を交換しながら進行するため、高速でセキュアなネットワークインフラを構築する必要がある。印刷業のセキュリティ、VPN、TCO削減を考えたインフラ整備の要素を考える。
印刷ECの本番に備えて
近年、印刷でも自社サイトでの直販、マッチング、マーケットプレース などなどのECモデルが数多く出現したが、「新しい技術の導入=成功」ではない結果となった。技術やモデルよりも実際に必要とされるB2Bの実行力が何かを問う。
参考:前回のPAGE2003は ここ
2003/12/08 00:00:00