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CIP4/JDF対応システムの相互互換の姿は?

Page2004コンファレンスにおけるMISトラックのセッション「差し迫ったCIP4/JDFへの対応」では、CIP4でマーケティングを担当しているEFIからジョン・フェルマン氏を迎え、CIP4/JDFが目指すCIMについて日本の各分野の専門家が質問をし、フェルマン氏が回答する形でセッションを進めた。
以下はそのディスカッションにおける、ベンダーによる囲い込みや相互互換性に関する質疑応答部分の抜粋紹介である。回答にはコーディネータと通訳を務めていただいた大日本スクリーン製造株式会社 中村安孝氏の補足説明も加えてある。 

質問:CIP4/JDFという標準を使ったシステム提供は、ベンダーにとっては囲い込みにならないから各ベンダーにとっての商売と矛盾しないか?

回答:オープンスタンダードという考え方は、顧客がいろいろなベンダーの製品から最適なものを選べる機会を提供するということが基本である。しかし、オープンスタンダードを目指すベンダーでは、顧客の選択肢が多くなって、自社製品が選ばれなくなることを危惧することも当然あるだろう。したがって、全てを自社製品で繋げるというクローズソリューションを目指すベンダーもあるかもしれない。しかし、印刷業界でもポストスクリプト、PDF、Tiff-itの例で見るように、成功する企業はクローズドなシステムを提供した企業ではなく、標準に準拠しながら優れた製品を出した企業である。ポストスクリプト等のデータの場合もそれを受け取れる各RIPシステムがあるが、それは標準フォーマットに対して各機器が対応する中で競争をするということである。たとえばEFIの製品の中に顧客が望む製品がなくても、顧客から見れば他の機器で実現するソリューションがあればそれをJDFのソリューションで補完することもできるわけである。このようなことは印刷業界だけではなく他の産業でも同じである。

重要なことは、ユーザーを基点にしてオープンソリューションを考えることである。顧客がさまざまな製品を選べる環境になることは、ベンダーにとっても大きなチャンスである。革新的なベンダーは、それぞれの分野で最も優れた製品を出すことによって競争に勝つ戦略をとる。当然のことながら、このようなオープン化の中では大変な成功を収める企業もあれば失敗する企業も当然ある。しかし、標準を受け入れるか否かという選択の問題ではなく、オープンなソリューションを否定する企業は最終的には不利な立場に置かれることになる。このことはベンダーでも顧客でも同じである。

質問:囲い込みは前提にならないということだったが、JDF対応システムを部分的にではあるが実際に稼動させてみると特定の工程だけでは自動化出来る。しかし、これからその範囲が広がっていくときに、各工程の橋渡しを含めた自動化のソリューションはどこが出すのだろうか。もしかしたら、当社の製品で全て揃えていただければできます、という話になるのではないのか? 言い換えると、実際にどのようにJDFのデータのやり取りするのか、その具体的な姿が見えないということである。1社の製品で揃えればいいが、いろいろなベンダーの製品を買うと、ファイルベースの仕組みのようなものになってしまうのではないかという疑問がある。

回答:質問は、どのように効率的なオープンシステム、マルチベンダーソリューションを実現するか、成功させるのかということだと理解した。
JDFを使ったオープンシステムはいろいろなベンダーの製品の選択を可能にする。オープンシステム化は複数のシステムを個々に結びつけるところにありそれを目指している。しかし、もしJDFのスペックが相互互換を可能にしても、各ベンダーは顧客によって異なる個別のソリューションが必要かもしれない。
いずれにしても、現在はインターオペラビリティテストを進めている段階だから各製品の相互互換性について具体的に述べることは出来ない。ひとつ言えることは、あるベンダーがその会社の製品で顧客の要望の全てを満足させることができればその会社にとってはメリットになるかもしれないが、全体を大きく見たときには今の活動をさらに進めて目指すところに向かっていくことになる。

各ベンダーの各種製品のN:Nの相互互換がいつ頃可能になるかは今の時点ではわからないが、CIP4としては出来るだけ早くインターオペラビリティを実現するためにICCのような仕組みも考えインターオペラビリティのテストも進めている。我々としては楽観的な見通しを持っている。インターオペラビリティに関して似たような経験をPSワークフローの時に経験しているからである。どのような場合でも、最初に取り組んだ企業は特別な努力が必要かもしれない。最初から、全ての最適なソリューションが提供されることにはならないからである。ワークフローのソリューションにおいては、個別企業の状況を十分に加味したものでなければならないという事情もある。一方、先駆者はさまざまな経験をする中で、他社では得られない経験によってノウハウを積み重ねる事もできる。

質問: JDF対応のMISを買ってきて、プリプレスのワークフローRIPとしてJDFのものを買ってきたとして、それを繋げるだけで本当に自動化できるのだろうか? 製品毎に1:1で開発されたもの同士であれば問題ないと思うが、N:Nの場合、たとえばマニュアルのなかでJDFファイルの受け渡し方のような運用方法の説明がされてそれに沿って行えば簡単に出来るというレベルになるのか、あるいは本当にただつなぐだけで良いようなものになるのかについての疑問がある。
現在、JDFの仕様として、データの受け渡しに関する仕様は入っているのか、また、今入っていなければ今後それが入れられる予定はあるのか?

回答:ベンダーが異なる2つの製品を繋げただけで済むといった「Plug and Play」ような相互互換性を実現することは我々ベンダーが挑戦すべき課題である。現在のような導入初期段階においては、顧客とベンダーが一緒に実際の相互互換性をチェックして導入していくことが必要になるが、時間が経つにしたがって相互互換性はより容易で確実なものになっていく。CIP4としては、ご指摘のような重要かつ緊急な顧客ニーズを汲み取ってメンバー企業がそれを理解することで顧客の要望を満たしていくことがベンダーの責任である。

現在、行っているインターオペラビリティテストは、商売上の競合をある程度抜きにして、各ベンダーがそれぞれのモジュールを持ち寄って、実際に繋がるのか繋がらないのかのテストをしている。その結果を踏まえてICSやJDFの仕様はどうあるべきかにフィードバックしている。
現在、そのような中でMISについてもテストが行われ議論がされているし、質問にあったことと同様の意見として出されている。また、前回のテストでは、本当にMISがやるべき範囲はどこまでかといった議論も行われている。たとえば、網点スクリーニングの情報、ドットゲイン、あるいはカラーマネージメントに関する情報をMISの中に入れるべきか否かといった議論もあった。当然、仕様としては入るがそのようなものをMISに入れてはややこしくなるという意見も当然ある。
いずれにしても、「Plug and Play」は理想だが、そこまでできないとしても若干の検証で済むようなレベルにしていかないと意味がない。そうでなければ従来と同じようにベンダー同士で仕様を開示してつなぐという形態が続いてしまうことになる。

2004/02/25 00:00:00


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