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印刷白書[2003→2004]=具現化= 5月20日発刊

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体裁:A4版,157ページ,バインダ綴じ
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「印刷白書」とは
「印刷白書」は,印刷産業の現状と動向を「統計資料に基づいて」「客観的に分析する」とともに,印刷産業の「時代模様をキーワードによって明らかにする」もので,3章からなっています。

第1章では,印刷関連統計データから印刷産業の状況と技術動向を明らかにするとともに,2003年のトピックスをまとめています。
第2章は,今後の印刷産業に影響を与えると思われる環境変化についての視点と,印刷産業の課題,そしてキーワードをまとめています。
第3章は,印刷産業と印刷市場についての統計データ集で,100点以上の図表データを収録してあります。

本書の統計資料は,他にない以下のような特徴を持っています。
(1)印刷産業の動向把握に必要な公表データを,出来るだけ時系列的に遡って網羅,掲載しています。
(2)産業連関表データなど,他に見られないデータが豊富に掲載されています。
(3)各データから何を読み取るべきかの明確な視点からデータを加工,図表・グラフ化し てあり,そのまま計画資料・会議資料等として利用できます。

以上のような内容,特長を持つ印刷白書は,印刷産業動向把握の決定版であり,印刷産業,同関連企業の皆様の経営戦略を考える上での必携の書としてご利用いただけるものと確信しております。

印刷白書[2003→2004]=具現化= 目次 (PDF形式, 11KB)

■ 印刷白書[2003→2004]=具現化= 要旨 (過去の印刷白書の要旨は,こちらからご覧ください。)
6年連続のマイナス成長となった印刷産業

2003年は,日本経済の実質GDPが3%近い伸びを示し印刷市場もそれに伴う回復が期待されたが,JAGATの推計による2003年の印刷産業の出荷額は前年比0.8%減に終わった。平成14年の工業統計産業編によれば,2002年の印刷産業の出荷額は前年比4.5%減の7兆6068億円であった。この数字と2003年の上記の売上前年比とから2003年の印刷産業出荷額を計算すると7.55兆円と計算されるが,最近のJAGATの推計値は実態よりも良い数字になってきているから7兆5000億円を割り込んでいる可能性も十分にある。
GDPが2年連続でプラス成長したにも関わらず印刷業界ではその実感がない。それは,GDPの成長の内容が印刷需要への寄与度の小さい項目での伸びによるものであることと,印刷業界の技術革新がもたらす付加価値低下という構造的な要因がなくならないからである。したがって,これからしばらくは,印刷産業の出荷額プラスは期待できそうにない。

日常生活に根付いたIT技術とサービス
世の中全体を見渡してみると,インターネット,モバイル,ECなど,IT技術と関連サービスは予測された通りあるいは予想以上のスピードで普及し日常生活にすっかり定着した。
B to C のEC(電子商取引)の市場規模は倍々で伸びて2002年には1.6兆円となり,B to BのECは予測より1年早く60兆円に達した。2003年のインターネットの利用者数は6,942万人,世帯普及率は予想を少し越える81.4%となった。ブロードバンドの契約も,あっという間に1300万契約を越えた。携帯電話は,既に自由時間内でのメディア接触時間,メディア関連家計支出のいずれにおいても最大のメディアになった。その利用も電話ではなくメール,ゲームといったものが増え,さらに高機能,高付加価値製品があっという間に身の回りに溢れるようになった。デジタル家電の販売も好調で,2003年のGDP成長に貢献した。メディアの状況は,媒体を多様化しつつ刻々と変化している。
このような状況は,当然のことながら印刷物市場,主要関連産業に影響を与え,これからそうなるだろうと言われてきた変化が,いろいろな部分で誰にでも見える明らかなものになってきた。

明らかなデジタルメディアの紙媒体への影響
広告市場ではDM市場に異変が見られる。2001年まで景気の変動に左右されずに伸びてきたDM広告費が,2002年は4.5%減,2003年は3.0%減と2年連続で減少した。DM広告費減少のひとつの理由は「封書からハガキへの転換が進んだこと」である。従来 1:2 程度であったハガキと封筒の比率は2003年にはほぼ半々になり,同年の広告費減少の半分がこの移行によるものであった。DM減少のもうひとつの原因はメールの影響である。メールはDMと同様のプッシュ媒体であり,紙媒体の長所をも併せ持つ電子媒体である。
通販分野でもネット売上はチラシを上回る売上を上げるようになった。ブロードバンドの普及によって,費用対効果における電子メディアの優位性が発揮され始めたからである。
フォーム印刷市場は,IT技術の普及による市場構造変化によって従来の帳票市場が年々縮小する一方,DPS/情報処理やバリアブル印刷を伴うDM等が急速に伸びて市場全体の3割を占めるまでになっている。

7割を超えた売上前年割れ企業
JAGAT会員企業を対象とした経営動向調査によれば,2003年の売上伸び率平均は3.7%減,経常利益率は3.1%,1人当たり経常利益額は617千円であった。売上伸び率,収益性に関してそれぞれのバラツキを見ると,売上高が前年割れの企業が最も多く70.5%を占め,前回調査(65.8%),前々回調査(44.1%)よりも増えている。売上を伸ばした企業でも0〜5.5%未満の企業が多く,5.5%以上伸びた企業は12.4%に過ぎない。
1人当り経常利益額の階層分布は,250千円以下(赤字企業を含む)の割合が最も多く39.0%であった。赤字企業は全体の1割強で,最近数年間の調査でその比率はあまり変わらない。1人当り経常利益額の平均値は617千円である。利益額階層が高いほど該当企業の割合は少なくなる傾向が見られるが1250千円以上の企業も16.7%ある。

所得ランク上位企業の盛衰
現在,印刷業界における上場企業は20社強あるが,その中では大日本印刷と凸版印刷が飛び抜けた存在である。しかし,近年は上記2社以外の中堅企業の健闘が目立つ。申告所得データの時系列分析によれば,中堅印刷会社群の売上伸び率は大手2社の3倍になっている。収益面では,大手2社の売上所得率が低下してきているのに対して中堅企業の所得率は一定水準を維持している。
過去5年における所得額トップ50位の企業一覧を見ると,時代の変化,企業の盛衰を見ることができる。プリペードカードを得意とした企業やAV,OA機器あるいは自動車産業を対象とする特殊印刷で上位に顔を出していた企業がここ3,4年で圏外に去る一方で,日本写真印刷は産業資材・電子部品分野に資源を投入,海外売上も含めて増収増益を続けている。ウイルコーポレーションは,それまでの多角化戦略から印刷への比重を高め,オフ輪と特殊加工をインラインで行う生産設備を導入し,独自商品の販売で大幅に業績を伸ばしている。トッパンフォームズは,従来型のBFの売上が1997年度以降年率平均1.6%で減少する一方,DPSを13.6%平均で伸ばし,業界トップ3の位置とともに高い利益率を維持し続けている。

ほとんど実を結んでいない印刷派生事業による拡大
2001年に発表された「Printing Frontier 21」は,これからの印刷産業ビジョンとともに2010年までの需要予測を出した。それから3年経った2003年における印刷産業の出荷額は,同ビジョンが想定した最悪のシナリオを下回る結果になっている。
予測値と2001年の実績を市場分野別に比較して見ると,既存の印刷市場である出版印刷物,商業印刷物,包装印刷は,規模自体は縮小しているものの予測ほど落ち込んでいない。しかし,建装材・その他,精密電子部品,そして印刷派生事業(印刷付帯サービス,情報処理等)など,今後の印刷産業を牽引していくと期待された分野の売上の伸びが予測を大きく下回っており,これが予測を下回る結果の原因になっている。
特に,中小印刷企業一般が関わる印刷派生事業はほとんど拡大していない。しかし,それは想定した新しい市場が生まれなかった,あるいは拡大しなかったからではなく,印刷産業がその市場を取り込めなかったからである。

止むことのない自動化の追及
今日のDTPはいろんな意味で落ち着き,DTPのことに気をとられないでも印刷の仕事はできるようになったが,それはDTPが技術的な推進力という意味合いをなくしつつあるということでもある。一方DTP外の技術的な発展はとどまるところを知らず,ある意味ではDTPを飛び越して「パブリッシング」が日常的に行われるようになった。WEBである。表面的にはわかりにくいが,WEBのバックの仕組みはITで自動化され,人がレイアウトなどの作業をするのではない無人化された出版の仕組みが主になりつつある。こういった自動化の波が今後はDTPの世界にもやってくる。
印刷物作りにおいてはITを駆使した「全体最適化」がこれからの長期的な目標になる。過去6,7年の間に,マクロ的に見ると印刷物の価格は2割程度下落したと見られる。世の中の情報化が進み,印刷物制作の納期も半分近くになったのではないだろうか? この間,プリプレスにおける工程短縮,印刷・後加工工程における準備時間の短縮や省人化は印刷物生産のスピードアップ,生産性向上に大きく貢献し,低価格,短納期化への対応もそれなりにできた。
これからの5年,10年ではどうだろうか? 供給力過剰が収まる気配はないから価格競争は続くと考えておくべきである。ある調査によると2010年には4割程度の仕事が1日以内の納期になるとしている。これから5年間で価格がさらに2割下がり,納期が半分になると想定したとき,どのような対応策があるのだろうか。紙面のデジタル化が完了し,印刷機の自動化が機械単体としてはほぼ到達点にきた今日では,従来のような新鋭設備への入れ替えや個別工程内での生産性向上で得られる成果は少なくなっていく。コスト削減,制作時間短縮の観点から見て,今後大きな改善の余地があるのは,各工程間の物流や情報流通のボトルネックを解消する自動化である。

ビジョンの具現化を目指すとき
印刷産業はどこから見ても縮小均衡に入ってきている。1997年から2002年の5年間で,出荷額(15.5%減)だけでなく,事業所数(8.2%減),従業員数(11.0%減),そして減価償却費(16.9%減)のいずれも減少している。しかし,これは決して意外なことではない。世紀の変わり目において世界中で印刷のビジョンが出されたが,既存印刷市場は縮小していくという予測のままに現実が動いているだけである。しかし,印刷ビジョンは縮小だけを予測したわけではなく,印刷産業再活性化のための戦略も提言していたのだが,この部分についての取り組みと成果が全くといえるほどなかったことが今に至る最大の問題である。
印刷産業が新たなフロンティアのひとつとして関わりを持つデジタルネットワーク化は予想されたように進んでおり,その中で印刷産業がチャレンジできる分野の事業規模は3年間で3兆円以上拡大している。長期的に印刷産業が再び浮上するにはどのような戦略をとるべきかはだいたい見通しがついているにもかかわらず,大半の印刷会社はそれを自社の具体的な戦略戦術に落とし込むところまで至っていない。21世紀の印刷ビジョンは総論として知識は得ているものの,自分のビジョンとして煮詰めるところまで,心の準備というか決断ができていないのだと考えられる。だから,まだ今後の印刷産業の可能性に向かう前から,印刷産業の衰退を認めてしまうのは時期尚早だといわざるを得ない。
デジタルネットワーク化,情報化と印刷との関わりも明らかに見えるようになってきたいま,ビジョンの「具現化」に動き出さなければならない。

印刷白書[2003→2004]=具現化= 要旨 添付図表 (PDF形式, 42KB)

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2004/05/25 00:00:00


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