印刷業務情報の共有化は業務の効率化には欠かせないのだが、どこまで共有化すれば効率的かという点と、どうすれば共有化できるのかの2つが重要なポイントである。そしてこの二つは、常に一緒に検討する必要がある。
全てを最初から開発する場合でも、全てWeb化する必要があるかを考える。この理由は、現在のWeb技術では処理しやすいところと処理が難しいところがある。例えば複雑なオペレーションがいる部分などは、操作性が悪くなったり開発が大変になったりする。
またWeb化すればパソコンがある場所ならば、どこからでもアクセスが可能となるため、機能を限定するには、セキュリティやアクセス権限などの管理が必要になる。これも従来のクライアントサーバ型ならば、ソフトがインストールされていないパソコンからは利用できないというメリットがある。
このような技術的な要素とどの部分を情報共有でWeb化するのかを常に同時に検討することで、開発コストや使い勝手などを考慮しながら仕様を決める必要がある。
印刷物制作に関わる管理情報の中では、制作物の仕様に関わる情報があり、もうひとつは予定を含めて進捗に関わる情報がある。このふたつは、制作を管理する人でも制作する人でもともに必要な情報で、さらに進捗情報は制作現場以外の営業やその顧客までが欲しい情報である。
これを別な言い方をすれば、いろいろな場所でも情報共有したいということで、従来の業務管理システムの構築技術ではなく、ネットワーク上のどこでも情報共有できる技術を利用する必要があることになる。それが現在ではWeb技術活用ということになる。
Web技術が情報共有に向いている理由は、インターネットでも専用ネットワークでもどちらでも利用できる技術であり、また工夫することで携帯端末でも利用できる技術である。
さらに、参照する側のパソコンは、WindowsでもMACでも何でもソフトウェアのインストールなしで情報を参照できる。
この二つは、情報共有するためには欠かせない条件であり、そのために印刷情報システムもWeb化が必要になってきている。だだし、全ての部分でWeb化をすることが求められているわけではない。
Web化の前提が情報共有であるが、特に多くの部門や社員で共有する情報が向いていることになる。受注情報、日程情報、出荷・売上情報、外注情報、在庫情報/原価情報などがこれに相当する。
変更が頻繁に発生し、事務所以外からでも登録・変更が可能であり、変更情報が迅速に伝わるような仕組みが必要な情報に向いている。特に受注情報や日程情報がこれにあたる。
逆にWeb化が向いていないものがある。煩雑な操作を行う場合やプリンタに依存する印刷がある場合などである。これは現在のWeb化の技術からきている問題である。煩雑な操作を行う場合うには、画面の切り替えの速度やメニューの設計の技術の関係から、現在の主流のシステム化(クライアントサーバ技術)と比べて操作性や応答速度などの課題がまだクリアーされていないためである。
生産計画情報などは複雑な操作に当たる。財務振替伝票などの大量伝票入力や特殊帳票印刷などの複写伝票印刷などもある。
またや公開したく情報などがある。人事情報/給与情報/会計情報/販売情報などは公開したくないためセキュリティ上からWeb化をしないことも考える。
Web化を行うには、Webアプリケーションの仕組みを知る必要がある。基本的に3層構造と呼ばれる仕組みとなるため、それぞれに関係する技術を知る必要がある。3層構造とは図のようなプレゼンテーション層、ビジネスロジック層、データベース層で構成され、それぞれの層ごとに違った技術がある。そしてこのような3層の技術を組み合わせてシステム化を実現する。
技術的には大きく2つの系統になる。ひとつはマイクロソフトが提供する環境ともうひとつがオープンソースで提供されている環境になる。IBMや日立、富士通と言った大手SIベンダーでは、基本的にこのふたつの環境をサポートしており、どのようなシステム化をするのかといった目的によって構築技術が異なってくる。
最近では、J2EE(Java2 Enterprise Edition)と呼ばれる仕組みが注目されているが、開発に利用されるケースが多いのは基本的に大型プロジェクトがその対象となっている。しかしJ2EEの技術者も徐々に増えてきているので、小さなシステムでも利用されはじめている。
一方、マイクロソフト系の.NET環境により開発されるシステムは、取り組みやすさや技術者も多いことから、多くのシステム開発に利用されている。ただし自社開発する場合の環境構築の費用がかかる点とシステムの安定性といったところに課題はある。
淵上印刷のリゾームでも、安定性が必要な部分への利用は避けて、オープンソース環境にしている。
具体的には、見積・受注システムはWindows環境を利用し、生産管理、日程管理についてはLinuxを中心にしたオープンソース環境を利用している。(下図)
Web化のメリットを印刷情報システムだけで見ると、情報共有化が少ない場合はメリットが無いことになる。
しかしWeb化は他の面からも注目すべきである。例えば最近では制作に利用されるデジタルデータの管理を行うファイルサーバがWeb化される例が出てきている。
両方のシステムがWeb化へ対応できていることで、作業指示情報とファイルの有り場所を連携できたり、データ利用履歴と作業内容の参照を連携するなど、複数のシステムを関連付けて利用できるようになる。このようなシステムとの連携という視点では、従来の開発手法では大変である。これもWeb化の大きなメリットである。
このように、Web化のメリットはネットワークを利用してどこからでも情報共有できる点だけでなく、複数のシステムが持つ情報を連携して利用することでさらに作業効率を上げることもある。さらに今後CIP4/JDFと言った印刷情報の交換による制作の自動化に向けた動きが出てくると、装置のネットワーク対応ということで、なんらかのWeb技術を活用した仕組みになってくると思われる。そのためにもシステムの情報連携する部分だけでもWeb化への対応を考えておく必要がある。
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2004/06/23 00:00:00