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地域密着型のコミュニケーション企業

印刷会社の多くは地域密着型の営業展開で,地元のコミュニケーション産業の一翼を担っている。彩の国工場のアサヒ印刷は,地元埼玉県の発展とともに業容を拡大してきた。代表取締役の新井正敏氏に,マルチメディア工場を目指す同社の現状と今後の展望を伺った。

彩の国工場として顧客満足に注力
アサヒ印刷(本社・埼玉県鴻巣市)は,官公庁,自治体を始め,地場企業,商店,個人など地域密着型の事業展開を行う総合印刷会社である。商圏はほとんど埼玉県内に集中している。営業所もさいたま市,近隣の上尾市,北本市と地元志向が強い。埼玉は東京のベッドタウンとしての発展著しく,人口も700万人を超えており,印刷需要は大きい。印刷というメディアをとおして,地元の社会文化の発展に貢献していくことに自社の発展があるという。
1910年創業の同社は,まもなく100周年を迎える長い歴史をもっている。活版,木版印刷からスタートし,印刷技術の革新に応じて大きな変化を遂げてきた。現在では,自社内で一貫製作できるように,企画編集デザインからDTPとCTPとフィルム出力,印刷から製本関連の後加工まで設備はすべてそろえている。また顧客の要望により,区分から発送,配送まで物流支援も行っている。
取扱商品は,事務系商品,文字系商品,PR系商品,特殊系商品と,大きく4つのブロックに分けられる。特殊系商品では,点字印刷,バーコード印刷やIDカードなどの特殊なものから紙媒体だけにとどまらず,マルチメディア関連のデジタル媒体も得意としている。
また,埼玉県の「彩の国指定工場」に認定されている。彩の国工場とは,技術や環境面で優れている工場を,埼玉県知事が豊かな彩の国作りの協力者(パートナー)として指定するものある。「彩の国指定工場」として,より一層の地域や社会との交流,より良い工場環境作りを目指している。
さらに,2002年8月にはISO9001認証を取得した。「それまでQC的なことはしていたが,体系化できたことなども含めて取得して良かった」という。個人情報保護の観点から,プライバシーマーク取得についても検討中である。
今後とも,顧客満足,品質管理マネジメント,5S運動を徹底して,社内の環境整備を進めていきたい。人材・設備・資金のバランスを絶えず考慮することで,無借金経営を維持している。

地域密着型の独自サービスを提供
地元の埼玉が大好きでたまらないといった感じの新井社長だが,地域密着型の面目躍如とも言えるサービスをいくつか行っている。
JR高崎線の鴻巣駅前のメインストリートに位置する本社の壁面に,特大コミュニティPRボードを設置し,ポスターやイベント案内などを掲示している。地元主催のイベントやコミュニティ活動のPRに役立てたいという意図から無償提供されているもので,夜8時までライトアップされている。
また,A3サイズの埼玉県地図「彩の国さいたま観光道路ミニマップ」も製作して無料で配布している。表面は埼玉全域の観光地図で,裏面はカレンダーになっているが,PRスペースも確保されていて,企画次第ではいろいろなアイデアを盛り込むことも可能である。
印刷物発注の指定の際に役立つオリジナルのグッズも無料提供している。(1)A4サイズのカラーチャート付きのファッションバッグ,(2)印刷発注に役立つ資料や用具(網点・線数チャート,校正用のボールペン,ルーペなど),(3)オリジナルの紙種別カラーチャート,(4)記念誌,自分史,広報誌の作り方ハンドブックの中から,希望の品を選んで同社のWebサイトから応募することもできる(http://www.asahi-insatsu.co.jp/)。
さらに,常時工場見学会を実施しており,少しでも多くの人に印刷の製作工程を理解してもらいたいと考えている。会社単位や学校単位などの見学も多く,さまざまな受け入れ体制を整えている。

「5つのコラボレーション」で差別化
デジタルからアナログまで幅広く対応している同社では,差別化を図るために「5つのコラボレーション」として,(1)大判プリンタ,(2)選挙ポスター,(3)ポスター名刺,(4)点字印刷,(5)シルバーCTP,ATPを掲げている。
(1)大判プリンタでは,顔料系ヘキサクローム大判プリンタを導入し,最大印字幅1371mm,6色印刷刷による大判プリントサービスを始めた。対応サイズはA0/B0判で,ポスターやディスプレイ・POPなどに威力を発揮する。
(2)選挙ポスターでは,Webサイトに50のサンプルを掲載している。耐候インキ+オフセット印刷またはColor DocuTech 60を使用し、多数のサンプルをベースとすることで短納期が可能になった。クロームカラーとユポ紙にも対応し,大判ポスターの作成も提案している。
(3)ポスター名刺では,顧客のデータまたはサンプルの中から,Color DocuTech 60とCTPカラーで対応している。
(4)点字印刷は,名刺・はがき・封筒などにスクリーン印刷で点字するもので,点訳も可能である。
(5)シルバーCTP,ATP(アナログtoプレート)でデータもの,一発もの,ページものに即対応し,製本加工まで行っている。
オンデマンド印刷ではDTPソフト以外のデータ入稿も増えているが,AVANASでPostScriptデータに変換し,印刷システムのワークフローに流し込むことで,時間短縮やコスト削減を実現している。
出版関連では,「読む意味」や「伝える意味」を考えて新聞書体を導入した。記念誌や自分史,広報誌・会報誌など読みやすさが求められるものに最適である。また,デジタルアーカイブ構築のサポートもしている。

「こころに印刷」をテーマに営業活動
「社会,文化のために」「こころに印刷」をテーマに営業活動を行ってきたが,PRボードとミニマップは埼玉のイメージアップに貢献しているとして,埼玉県知事から感謝状を贈られた。そのほかにも優良法人,日本商工会議所会頭賞などを受賞している。長年の実績と日々の努力が「表彰・認定」という形で実を結んだもので,表彰されることが励みになっているという。
今後は工程管理やカラーマネジメントに注目し,社内教育にも力を入れて,100周年を迎えたいという。当面の課題はDTPエキスパート取得者の増加で,8月の試験に向けて社内勉強会も盛んに行っているところである。
また,社員にも10年単位の長いスパンで自社を見つめる,そのための計画作りを立案させ,それを生かしていくことも考えている。

JAGAT info 2004年7月号より

2004/07/13 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会