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コミュニケーション機能を重視したMISの効果

ここのところ、中堅印刷会社が経営管理のコンピュータシステム(MIS:Management Information System)を大幅に作り替えようという動きが出てきた。コンピュータの2000年問題以来の動きである。
日本の産業一般におけるIT投資の規模を対GDP(付加価値)比率で見ると、ソフトウエアで1.5%、コンピュータ本体・付属機器および通信機器といったハードで3.2%となっており、全体では4.7%になる。印刷業は小規模企業が多いので業界の平均値は当然産業一般平均よりも低くなるだろうが、100名の印刷会社であれば、ソフトウエア、ハード合わせて5000万円ほどの投資になる。しかし、そのような投資はとても回収できないと見る印刷業の経営者は多いだろう。
その見方はある意味では尤もである。それは、印刷業界で一般的な事務処理(各種データの集計と伝票発行)機能をコンピュータ化したMISを前提として考えるからである。しかし、「IT」と言い換えられたコンピュータと通信ネットワーク技術を「コミュニケーションツール」として利用したシステムを作って投資に見合う成果を出すのがこれからのMIS構築のポイントだが、残念ながら、かなりのレベルの印刷会社でも、「コミュニケーション」の機能を重要視したMISを構築している企業は少ない。

図は、Page2004 のコンファレンスにおいて、渕上印刷株式会社(商用印刷主体、従業員数240名)から示された同社のシステム再構築時に算定した合理化効果予定である。計算していただければわかるが、年間約21,000千円の合理化効果を見込んでいる。
結果については、以下の報告がなされた。
1. 管理人員5名を直接作業部門に異動できた。
(同社は、いわゆるリストラという名の人員削減は行わない主義である)
2. 連絡ミスでの刷り直し事故が激減した。
3. 外注費が5〜6%削減できた。
4. 日報記入・日報入力工数が不要になった。
5. 作業量(生産額)の計上漏れがなくなり、管理精度が向上した。
6. 遠隔地営業所との時間差が縮まり指示遅れが減少した。

上記の効果を充分と判断するか否かは読者に任せるとして、上記のシステム作りのポイントは、データを一元管理する統合システムにしたことと、人と人とのコミュニケーションツールとしての機能を存分に発揮させるシステムにしたことである。端的に言えば、Macユーザーを含む全社において伝票をなくすことと、電話に縛られている社員を電話から開放し、複数の相手に同時に連絡が必要な処理を一度に済ませることができるMISを作ったからである。このようなMISは、運用に入った時点で大きな効果を発揮するし、今後、中堅以上の印刷会社では必須になるCIM(Computer Integrated Manufacturing)に不可欠な基本的要素を具備したシステムでもある。
ただし、システム構築には、印刷業で一般的な従来のMISとは異なる考え方に基づき、新しいIT技術を使いこなすことが必要である。

来る9月15日(水)に、中堅印刷会社のシステム構築事例を元にしたセミナー「次世代を目指すMIS再構築の重要ポイント」を開催する。経営層の方々とMISの担当者が揃ってご参加いただきたい内容ですので、奮ってご参加ください。

2004/09/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会