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区例規集をデータベース化してCD-ROMで配布

練馬区役所
(Printers Circle99年6月号特集より)



■使いにくさをデータベース化で解消
 練馬区では,練馬区例規集をデータベース化して,従来の加除式に代わりCD-ROMで配布することになった。データベース化の現状と背景について,練馬区総務部総務課の阿形繁穂係長と関根徹也氏にお話を伺った。
 データベース化を行うのは条例,規則,訓令,一部の告示なども含まれる区の例規集である。現在はA5判サイズの加除式のもので,3分冊になっている。ほかの自治体でも同様に加除式をとっている場合が多い。しかし,もともと使用している紙が厚い上,さらに新しい例規が増えるため,例規集自体が分厚くなってしまい,非常に使いにくくなってきた。また,差し替え作業などの維持費もかさむ。そのため,この使いにくさを改善することが大きな課題となっていた。この数年は,いくつかの自治体では,加除式の例規集から単行本化することがひとつの流れとしてある。
 もうひとつの課題として,環境対策がある。例規集の加除をするたびに,除いた紙が大量に紙ゴミとして発生してしまう。練馬区では,再利用を図っているとはいえ,例規集1セット当たり年間約1500ページ分の加除があり,それが1000セット分にもなるため,紙ゴミの量は膨大なものになる。CD-ROMで配布すれば,紙ゴミの発生が抑えられる。
 また,加除整理には年間約1500万円の経費がかかっている。しかし,今後は東京23特別区の制度改革に加え,地方制度の改革も予定されている。それに伴い,清掃事業の移管などが行われることになるため,例規の改正や追加,新たな条例の制定が増えることが予想される。さらに,それらの関連施設や人員も増えるので,例規集の配布先が現在より増えてしまう。こうしたことのほか,いくつかのコストアップ要因が考えられ,いかに経費増を抑えるかが問題となっている。練馬区では,2分冊であった例規集が,1998年からは3分冊となり,年々増加しているのが現状である。このままでは,経費増に加え,追録される紙の量にも耐えきれなくなることが予想される。
 これらの問題点を勘案し,また社会の電子化という流れを考慮した結果,CD-ROMで配布,閲覧検索できるようにすることが計画されたのである。
 データベース化すると,制作費にかかる初期費用は高くなるが,将来的にはデータ更新において,コストや職員の作業量の軽減も期待されている。

■発行もスピード化
 これまで,加除式の例規集の差し替え作業は,年に2回行っており,そこに半年のタイムラグが生まれていた。つまり,従来の作業では,98年10月2日〜99年4月1日までの例規集や公布文が更新され,実際に差し替えが行われて配布されるのは,99年7月ごろになってしまう。すると,例えば98年10月のものなら,約9カ月のタイムラグがあることになる。データベース化を行い,CD-ROMで配布すれば,このタイムラグを短縮することも可能となる。
 練馬区では,年間で4回の定例会が開催され,そこで条例などの改正が行われる。それに合わせてデータ更新を行い,CD-ROMで年4回発行することを検討している。これにより,タイムラグは1〜2カ月ほどに短縮される。
 また,従来の作業は加除式のため,その差し替え作業は人の手で行うことになり,人的労力と時間がかかる。そして1回の作業につき,700〜800ページの差し替えがある。練馬区はこれまで,差し替え分の編集・校正から印刷,そして差し替え作業まで,外部の業者に発注していた。それでも約1000部の例規集を引き上げて,差し替え後に再配布するには,差し替え作業を含めて1週間から10日ほどの時間が必要であった。
 データベース化すれば,この部分の省力化が図れることになる。

■将来の各種利用に対応したデータベース化
 データベース化するに当たって問題となったのが,CD-ROM化しても,紙の印刷物をすぐになくすことができないことである。練馬区では,例規集のCD-ROMでの配布に加え,単行本を製作して紙媒体でも配布することになった。配布場所には学童施設や保育園など,まだパソコンが設置されていないところがあることや,外部での会議にも必要となるなどの理由からである。
 データベースとCD-ROMの電子データだけの納品なら,現在,委託している業者が所有する既存システムでも十分に可能であった。しかし,紙媒体へ出力する時の汎用性や,ほかへの利用を考慮すると,そのシステムでは不十分と考えられた。結局,データベース構築を行うために,市販のソフトから選定することになった。
 データベースをCD-ROMで配布するのであれば,当然,閲覧するためのパソコンが必要になる。ところが,練馬区の場合にはまだ,すべての部署にそうしたパソコンが設置されているわけではない。また,ネットワークも整備されていないため,データベースを共有化し,職員全員がアクセスして使用することは現状では想定していない。さらに,ネットワークでアクセスした時に,瞬時に例規集自体のデータが更新されていなくても,それほど事務に支障を来さない。そこで,とりあえず,スタンドアローンのパソコンでも使用できるということでCD-ROMを採用し,閲覧できるようにした。しかし,今後は,パソコン,ネットワーク環境の整備が進み,より有効にデータベースが活用されるようになると思われる。

■ソフトはFrame Makerを使用
 使用するソフトについては,市販のパッケージソフトから選定することを前提にした。データベース化についてコンサルティングを受けたほか,さまざまな例を参考にした結果,Adobe Frame MakerとPDFの組み合わせを採用した。一般に手に入るソフトを採用した理由としては,専用に開発したソフトでは,その後のデータ更新やメンテナンスなどで,ソフト開発業者に大きく依存することになるからである。
 実際の選定に当たっては,誰でも使えるということから,一般的に使用されているWordや一太郎も検討した。しかし,PDFに変換して配布することを考えると,それは難しい。その上,条例などは,第○条第□項というように文章が構造化されているため,テキストのみで保持するより,構造化したまま扱いたいということもあった。また,国および他自治体の各種データベースも考慮した結果,将来的にはSGML,XML,HTMLなどの一般的なデータ形式への変換が可能であることが重要であると判断した。こうしたことから,Frame Makerを採用することに決定した。
 閲覧のためのファイル形式にはPDFを採用している。PDFを採用したのは,データの容量が比較的少なくすむことと,ドキュメントのレイアウトを維持したまま,配布先で見ることができるからである。また,PDFを見るための閲覧ソフト,Acrobat Readerが無料で使用できるため,CD-ROMに添付して配布することが可能になることも,採用した理由のひとつである。

■検索機能でより使いやすく
 今回データベース化する内容は,98年10月1日の内容の練馬区例規集であり,それをもとに,98年10月2日〜99年4月1日までの公布文を更新する。内容は本則,制定付則,別表様式からなり,約4500ページ強の量となっている。スケジュールについては,以上の原稿を4月上旬に,99年4月2日〜7月1日までの原稿を7月上旬に業者に渡し,7月1日付けのデータが8月末に納品されることになっている。
 データは,条,項,号,付則,別表,様式などを区別し,例規文の文書構造を明確化したものになる。表,および様式もイメージで取り込まず,文字と罫線を使用して作成する。
 また,これまでの加除式の例規は,縦書きで表現されていたが,データベース化に際しては,左横書きに改めた。このことにより,漢数字をアラビア数字に改めたり,字句を書き換えるなどの編集作業も発生した。横書き化に伴い,条例,規則の改正も行っている。
 作成された更新用データは,PDFに変換した後に,閲覧検索用のCD-ROMとして納品される。作成されたデータベースの文字量は1ページ当たり,約1500〜2000字となる。
 検索機能としては,全例規の全文検索と,目次から例規へ,本文から別表へのリンク機能が付加されている。
 また,この更新用データから単行本例規集を作成し,印刷することにした。印刷用データは版下か,電子媒体で納品されることになる。
 単行本の制作については,区例規などが新設,改正,廃止された時に,それをいかに反映するかが課題となる。そのたびに作成するのでは,紙ゴミの減少,コスト軽減に逆行することになってしまう。そのため,現状では追補などで対応して,ある程度の期間がたったら作成し直すことが検討されている。

■データ活用で資料作りも効率化
 これまでは,例えば各部署が自部署の関連法規のみを例規集から抜粋して,パンフレットなどにまとめ直し,外部資料として使っているケースもあった。PDFによる閲覧検索が可能になれば,こうした資料作成にもデータの利用が可能になり,作業の効率化が図れるものと期待されている。
 また,会議資料などに例規集を使用する場合,従来の例規集からのコピーでは利用しにくいため,わざわざ関連部分をワープロなどで作成し直していた。このような場合でも,関連ページを簡単に抜粋し,プリントアウトできるようになる。
 以上のように,データベース化することにより,作業の効率化が図れるようになる。今後は作成されたデータを,ホームページや区民向け資料,各種内部文書などへ活用することを検討していく。
(Printers Circle99年6月号特集より)
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1998/12/27 00:00:00


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