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今後の広告市場は米国型? 欧州型?

図は、日本、米国および欧州の主要国を含む20カ国における一人当りGDPと一人当り広告費の関係をプロットしたものである。
日本の人口一人当り広告費は米国について第二位にあるが、一位とニ位との差は非常に大きい。というより、米国のみが飛び抜けて高くその他19カ国はほぼひとつの線の上に乗っている。細かく見ると、イギリスがGDPの水準の割には広告費の水準が高く、逆にフランス、イタリアは低い水準にある。この違いは、産業構造(第1次産業と第2次・第3次産業の比率等)の違いかもしれない。ドイツは、イギリスとイタリアのほぼ中間の広告費水準にある。

日米の広告市場の内容を比較してみると、テレビ王国の日本、DM王国の米国といった違いが見える。日本におけるテレビ広告費のシェアは34.0%であり、第2位の新聞を14ポイントも引き離している。これに対して、米国におけるテレビ広告費のシェアは総広告費の18.4%に過ぎない。逆に、米国におけるDMのシェアは18.3%でテレビ(18.4%)とほぼ同じシェアを確保している。日本のDM市場の総広告費に占める割合は5.7%に過ぎず、米国のDM通数の1/20に過ぎない。
いずれにしても、全世界の広告市場の状況を見ると、米国のみが飛び抜けた状況にある。例えば日本と比較すると総広告費は4.5倍、人口一人当り広告費は2.1倍、対GDP広告費比率は、日本の1.15%に対して2.38%になっている。

米国は、まずその国土の大きさと人口密度において、日本、欧州各国とは格段の差がある。これは、通販やDMの状況の違いに関係しているだろう。また、米国と日本あるいは欧州とではさまざまな面で大きな影響を持つ人口動態もかなり異なる。米国の人口は、年率1%、人口数にして250万人/年程度増加してきている。一方、日本の人口は、ここ数年では0.1%程度の伸びで推移し、2006年のピーク以降、減少に向かうことが明らかである。広告は当然のことながら経済活動に比例して動く。その経済活動の基盤は人口である。
したがって、今後の日本の広告市場を考えるときには、全体規模のようなマクロな面でも米国の広告市場をベンチマークにすることはできない。これからは、日本よりも一足先に落ち着いた人口動態、成熟化した経済を経験しているヨーロッパを見ておく方が良いのかもしれない。

来る3月17日には、「欧州の広告事情」−人口減少に向かう広告市場を考えるために-を開催する。講師として、フランスに本社を持ち、グループとして世界第二位の年間売上(360億ドル)の広告代理店 缶゚ブリスクライアント・サービスのディレクタ 岩本弘氏を迎え欧州における広告事情について聞く。

2003/03/05 00:00:00


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