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ドキュメント制作・印刷業務における自動化と標準化 研究会速報

デジタルワークフローの構築と制作プロセスの自動化

富士ゼロックス(株)プロダクションサービス事業本部ソフトウェア&サービス開発部
マネージャ,チーフアーキテクト 小原 裕美 氏

印刷業界ではコンセプトからデリバリーの間で,クライアントと打ち合わせてプランニングし,印刷前工程の処理を行い,インクや紙を調達し,印刷してフィニッシングを行い,倉庫に入れて配送するというプロセスを行っている。このような印刷物制作の流れだけが印刷ビジネスのワークフローかといえば,より重要な次の2つを含めたものが,印刷ビジネスにおけるワークフローになる。
その1つがビジネスマネジメントである。クライアントとの間で,商品である印刷物の見積処理,受注管理,納品後の請求処理等を行うビジネスの管理が重要である。
他の1つがプロセスマネジメントである。受注した仕事が,用紙がなくて印刷できない,印刷はできたがオペレータ不在でポストプレスができない,などということでは困る。各プロセスの状況を的確に把握し,印刷機械を遊ばせないように,全体に対して効率よく各プロセスが進行するように管理しなければ,ビジネスのワークフロー全体がうまく流れていかない。
ビジネスマネジメントとプロセスマネジメントは,各プロセスからどのような情報を入手するか,どのプロセスで何が起こっているのかを適切に把握することが非常に重要であり,そのためには情報のやり取りが重要である。
データが入稿され,原稿の確認,修正,プルーフィング,用紙・インキ・プレートなどの手配,刷版制作など,CTPで印刷するためのワークフローの定義がJDFである。前述した印刷ビジネスワークフローの全部を記述できるとJDFはうたっている。また,JDFは記録情報を記述することもできる。更に,JDFの情報と同じものを用い,その情報をコントロールしているセンターに返すことができる。
ワークフローは,何かの性能を変えるとか,受注する部分だけを考えるのではなく,全体の流れを通して印刷ビジネスすべてのプロセスを効率化するもので,印刷ビジネス全体に対してインパクトを与えるものである。そして,ワークフロー全体の自動化,生産性の向上,全体の信頼性を考えた制御など,良いワークフローを作ることができるようになれば,印刷ビジネス全体に対してよい影響をもたらすと考えている。

富士ゼロックスでは,ワークフローモデル(FreeFlow Workflow Model)を提案している。このモデルは,クリエイト→プリプレス→RIP→印刷→フィニッシュ→配送という出力に関わるプロセスの業務ワークフロー,その出力に関わる業務ワークフローのプロセスを管理するプロセスマネジメントに関する業務ワークフロー,クライアントからオーダーを受けて見積りから受注,請求,課金等のビジネスマネジメント関連の業務ワークフローで構成されている。
このFreeFlowの新製品としてFreeFlow Makeready 3.0,FreeFlow Process Manager 3.0,FreeFlow Print Manager 3.0,FreeFlow Web Services 3.0,FreeFlow Variable Information Suiteを提供している。
FreeFlow Makereadyは,プリプレス処理を簡単にするために提供している製品であり,編集,プリント,ドキュメント管理を行うものである。
FreeFlow Process Managerは,印刷プロセスのPDFオートメーションを実現するドラッグ&ドロップ方式グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を持った工程自動化ソフトウェアであり,JDFのインポート・エクスポートが可能である。
FreeFlow Print Managerは,ファイル送信とジョブチケット作成機能を統合したコンポーネントでプリントジョブをマネジメントするものであり,JDFにも対応している。
FreeFlow Web Servicesは,オーダー業務に当たる部分の製品であり,Web経由で文書の印刷,PDF化の発注・受注を行うことができる。
FreeFlow Variable Information Suiteは,フォームやイメージなどの固定データとデータベースから出力された可変データとを,レイアウト情報を参照しながらマージし,バリアブルデータを実現するための製品である。

顧客とのコミュニケーション円滑化と受注業務の効率化

富士ゼロックス(株)プロダクションサービス事業本部
マーケティング部マネージャ 山室 孝文 氏

印刷会社が抱えている課題は,(1)ジョブの発注および実行業務の合理化,(2)プリプレス&プレス工程の自動化,(3)工程ぎりぎりまでのレイアウト変更などの編集,(4)出力の柔軟性:オフセット印刷orデジタル印刷,(5)バリアブル印刷など新規アプリケーションの獲得,などであろうが,結局は(1)オペレーションの合理化,(2)コスト削減,(3)新しいサービスや新しいビジネスを獲得して利益をあげていくという3つのアイテムに集約される。したがって,富士ゼロックスでは,印刷会社がトータルで仕事を受注できるような商品やサービスの提供をFreeFlowのコンセプトとしている。
FreeFlowでは,ワークフローをフルデジタル化してシームレスに自動連携することを目指している。FreeFlowの最終的な目的は,高品質で高付加価値な成果物を,短納期で発注者に提供することである。しかし,自社の商品だけでは満足してもらえない。なぜなら,印刷会社は既にシステムを構築しており,そのシステムとつなぐことを要求される。そこで,今後,FreeFlowのパートナーとしてSDKやAPIを公開し,関連メーカーやベンダーと連携していこうとしている。次のバージョンのリリースでは,そのような連携のツールも提供できると考えている。
FreeFlowの製品モジュールを利用することによって,オペレーションの合理化やコスト削減等の改善を図ることができる。例えば,最新B&W用版下管理基盤やWeb経由で登録済みドキュメントの印刷指示などの構築である。また,クライアント側でAdobe PDF JobReadyツールを使用した印刷用PDF作成とアップロード,FreeFlow Process Managerのホットホルダーを使用した自動化など,トラブルやミスをなくして業務の生産性向上やコスト低減を図り,更に仕事の間口を広げることもできる。
印刷会社が抱えている課題の3つ目である新しいサービスや新しいビジネスの獲得について,富士ゼロックスでは,従来のDMや取引明細だけではないプロモーショナルトランザクションを進めている。これは,取引明細+DMが,新しい広告媒体になるということである。そこで,富士ゼロックスでは,高パフォーマンスなパーソナライズ/プロモーショナルトランザクショナル印刷を実現するために,バリアブル印刷用言語(VIPP:Variable data Intelligent Postscript Printware)をベースに提案している。VIPPは,従来のバリアブル印刷用ソフトウェアではこのような業務に耐えられないため,Postscriptをベースに富士ゼロックスが開発したバリアブル印刷用Postscript拡張表現である。

2005/08/17 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会