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デジタルカメラによるRGBデータ入稿の現状と課題(研究会速報)

RGBワークフローアンケート報告(デジタルカメラによるデータ入稿の現状)

社団法人日本印刷技術協会 研究調査部 参事 相馬 謙一

デジタルカメラの普及により,印刷用原稿として多くのRGBデータが入稿されるようになった。しかし,入稿されるRGBデータの形式や画像品質など課題も多いといわれている。
これらの現状や問題点を把握するため,社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)では,印刷会社を中心にデジタルカメラによるRGBデータ入稿についてアンケートを実施した。「プリプレスにおけるRGBワークフローアンケート」と題し,2005年9月FAXにて送付し,79社から回答を得た。

アンケートの中で,RGBデータ入稿比率(RGBデータ / RGBデータ+写真原稿)は,
 現在37.7%,前年25.6%であった。
RGBデータ入稿は前年に比べて5割近く増加している。
その分,スキャナ入力が減少したことであり,分解料による売上も減少したと思われる。入稿してくるRGBデータが,問題なく後工程で使用できる品質を持っているのであれば問題ないが,現実はどうであろうか?

詳細は,デジタルカメラによるRGBワークフローアンケート報告

増加するRGBデータ入稿への対応と課題
三浦印刷株式会社 プリプレス部 テクニカルディレクター 森澤 威 氏

RGBデータ入稿の問題として,以下の項目がある。
1.カメラマンにデジタルカメラの知識やデジタル処理が要求される
2.ポジ原稿という色見本がない
3.納期が短く,料金が安い
4.カメラマンと印刷会社の責任や役割領域が曖昧
5.入稿RGBがどこまで処理済みかわからない
6.イメージの把握、共有化の困難さ=色見本の不整合性(カラー原稿のように目視確認できない)
7.カメラマン側も品質の良し悪しを把握できていないケースが多い
8.印刷会社としてRAW,変換,USM,標準化の課題

また,入稿するRGBデータの品質にバラツキがあり,修正が大変である。カメラマンの撮影意図なのか処理忘れか,どこまで修正すればいいのかわからない。
役割分担と責任の明確化として,カメラマンはRAWで画像補正し,カメラマンの意向を反映する。また,印刷会社で作り込むものは色見本をつける。一方,印刷会社は印刷用に適正なCMYK変換を実施し,色見本があるものは作り込む。

まとめ
1.RAWでの基準画像処理(グレーバランス,ハイライト,シャドウ設定)はカメラマン側で実施し,カメラマンの意向を反映させる
2.撮影及びRAW処理の目安
 数値で色調や調子が判断できるようにマクベスチャートを活用
3.印刷側は適正なCMYK変換を実施
 RGBの階調、グレー、ハイライト、シャドウを維持
4.印刷側で色を合わせ込む場合,印刷再現可能な色見本を添付
 専用変換ソフトやマスク処置

RGBワークフローの現状と課題
株式会社光陽社 企画本部 テクニカルディレクター 柳沢 健次 氏

RGBデータ入稿になり,データを開くまで内容が分からないという問題が発生した。
RGBデータをどのようにCMYKデータに変換するかは,以下の2つがある。
1.データの色を忠実に再現:プロファイル変換
2.印刷に適した色に作りこむ:色分解(プロファイル変換後に画像処理)
しかし,原稿の色と目標の色が分からなければ,オペレータが判断するしかなくなる。

実際に当社に入稿するRGBデータは多種多様であり,プロファイルがついているデータは少ない。また,色見本が添付されるケースは多いが,現物見本やカラープリント,インクジェットプリンタ,カラーレーザプリンタ等さまざまである。
現場では,解像度の低いデータ,シャープネスがまちまち,明らかに色調が悪い,色見本が無い(プロファイルも無い)データがあり,初校では修正をせず再校で修正をすることが多くなっている。

RGBワークフローとして,以下の項目がある。
1.RGBデータの最適化する
2.RGBで色を確定する(基準はRGB)
3.プロファイルで正しく色を規定・伝達する
4.最適化したRGBデータから用途に応じてプロファイル変換する
 (AdobeRGB,JapanColor2001,JMPA等)

最後に,RGBデータでの画像処理は,最適化するにはRGBでの画像処理が必要である。現物通りならよいという物ではない。期待色・記憶色・望ましい方向等を考慮する必要もあり,どう再現したらよいかのスキルは製版側にある。これらは,RGBでの画像処理の経験が必要である。

2005/10/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会