本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

拡がりつつあるPDF入稿の実際と課題(研究会 速報)

製薬業界におけるPDF電子申請の進展とPDF入稿

グラクソ・スミスクライン株式会社 開発本部ディベロップメントIT部
課長 岩本 浩司 氏

医薬品の承認申請

医薬品の承認申請は,基本情報に当たる申請書に膨大な資料が添付される。ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)でCTD(コモン・テクニカル・ドキュメント)という日米EU共通様式が制定されている。さらに,これを電子化するための仕様がeCTDである。
2005年4月からは国内でもeCTDが受け付けられるようになった。電子化する際のフォーマットとして,製薬企業ではPDFがメインに使われている。

eCTD申請資料のPDF仕様

この仕様では,確実にテキスト表示するためにフォント埋め込みを必須と規定している。また,PDF生成アプリケーションは問われず,PDF1.3以上と広いバージョンを許容している。そのほか,フォントサイズ,ページサイズ,画像解像度,画像圧縮,ハイパーリンクなどさまざまな面の規定がある。
しかし,これだけの標準では不十分である。フォント埋め込みでは,カスタマイズフォントやフォント数を制限しないと,たいへんなデータ量になってしまうなど,注意点が数多くある。PDF生成アプリケーションの種類や,PDFバージョンを細かく規定しないと,製薬企業内では混乱が起こってしまう。
ハイパーリンクを推奨されているが,製薬企業にとっては非常に辛い仕事である。電子化するとリンクを張らなければいけない。しかし,申請の進行中には,頻繁に文書の差し替えをおこなっている。紙なら,当該箇所の差し替えで済むが,リンクがきれていないかをその都度確認するのは非常に大変な作業であり,紙から電子に進まない1つの足かせになっている。

互換性の高いPDF作成のために

製薬企業側で紙とPDFを一緒に出すこともあるが,そうすると中身を保証しろと言われる。プリントしたものとPDFファイルの中身が同じでなければいけないということになり,標準化にはナーバスにならざるを得ない。一企業としての申請資料のPDF化は進んでいる。製薬業界の団体で統一できれば一番いいが,そこまでできていないのが現状である。

2005/11/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会