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セミナーから見えてきた今求められる人材像

苅田 和房
(有限会社湾岸道路 代表)
マーケティングコンサルタントとして様々な業種の指導を、またJAGATでは少数精鋭型で毎回受講者の高い満足度を得、リピーターも多いセミナー講師として活躍中の有限会社 湾岸道路 代表 苅田和房氏が印刷会社への御指導の中で、またJAGATセミナー講師を行う中で見えてきた、印刷会社が今向かうべき方向、必要とされる人材像とは?


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●セミナーから沸き上がる息吹
 以前にいくつかの仕事を一緒に行ったある印刷会社の何人かと話をしていて、その企業が最近、業績が好調であるという状況を聞いた。その要因を尋ねたが、特に仕事が増えたわけではないらしい。私もその会社のことをある程度は知っているので、推測に基づいて指摘したが、どうやらそれは図星だったようだ。リストラを断行して人件費を大幅に削減したことによって利益体質が強化され、また、組織の刷新が効を奏したのである。

 そう言えば、定期セミナーで企画立案の演習を行ってもらうと、その中に必ずと言っていいほど自社の業務改善提案を案件にする受講者がいる。それは、前向きな建設的提案であり、ある意味で愛社精神にも溢れている。しかし、そうした改革案を経営にぶつけるのは、勇気のいることでありかつサラリーマンとしてはリスクもある。それでも、今やらなければならないという危機意識を強く持っている人が少なくない、ということに私は期待感と可能性を感じる。そういう人材が社内にいる企業の経営者は幸せだと思う。

 いろいろと露見するありがちな会社の事情や、私よりも印刷業界に明るい人達の意見は、異口同音である。今後の印刷業が向かうべき方向を考える時、コンサルタントとして一定のテーゼを示すべき時期が来たようである。そこで今回、印刷業を取り巻く市場の背景を確認しながら、経営と組織及び求められる人材像について、考察を行う。


●増加するビジネスチャンス
 印刷業の市場規模は減少傾向にあるが、印刷会社のビジネスチャンスは逆に増加していると言える。それには、複数の根拠がある。まず第一に、業務委託体系の構造変化を挙げることができる。日本のありとある企業が既に丼勘定では立ち行かなくなってきており、広告媒体における実質的なクオリティとその費用対効果の追及に迫られていることから、広告代理店にすべて任せるといった従来の発注形態では、専門的技術に不十分さが目立つことを悟り、例えば印刷会社に直接メディア提案を要求する現象が多くみられる点である。

 第二に、インターネットの普及に伴う時代の要請である。デジタル・カタログの制作業務の発生はもとより、企業のホームページをユーザーに対していかに告知するか、というプロモーション戦略なしにはインターネットを使った事業も成立しない。星の数ほどもあるWebサイトの中から、どうやって自らのURLへ顧客を誘引すれば良いのかが命題なのである。その際、印刷物などのアナログ媒体を併用したメディア・ミックスが不可欠となるからである。

 第三に、印刷会社自身による制作業務内省化の傾向である。制作部門が営業上の付加価値的存在であった頃から、現在ではそれ自体が受注のための主たる武器に進化している企業は多い。制作スタッフのパワーを声高にアピールすることで、依頼主に対して信頼性と利便性を植え付ける営業手法は、今や常套手段にさえなっている。

 しかし、これらいづれのビジネスチャンスも、それに立ち向かって成果を上げるだけの対応力が組織として身に付いていなければ、機会損失に終わってしまう。積極的にクライアント・シェアを高めるべく、営業開発と企画提案、さらにはその運用体制が市場に対して通用するポテンシャルを発揮できることこそ、勝ち組になる前提条件なのである。


●特化するべき経営戦略
 とは言え、現実の経営スタンスから判断するなら、どの企業も一様にそうした能動的営業スタイルへ脱皮できるか否かは、別問題である。結論から言うと、どちらにせよ特化した経営戦略を徹底して推進するしかないと考えられる。つまり、クリエイティブなメディア・コーディネイターとしての印刷会社に変貌を遂げるか、さもなくば、製造業としての「刷り屋」に徹するか、のどちらかである。中途半端な戦略は、同じ穴のムジナかも知れないデジタル・コンビニ等との競争を余技なくされることへの覚悟が必要となる。何にせよ、営業的なパイプすなわち、ネットワークの再構築が必須なのは、言うまでもない。

 事情通から漏れ聞いた最近の事例では、某準大手の印刷会社が他地域の中堅印刷会社を傘下に収めたという話がある。それによると彼等の基本戦略は、これまで来るものは拒まずで受けていた雑多な小規模のチラシ業務を一貫して子会社でシステマティックにデジタル対応する一方、親会社はよりスケールメリットを追及した大口業務に専念できる提携を結ぶものであるという。まさにボーダーレスと言えるが、お互いの生き残りを賭けた理に適った戦略でもあると評価できる。

 言い換えると、ドラスティックな経営判断が効力を発揮するのも、企業体力がまだ残っているうちの選択肢である。時代の変化のスピードは、過去とは比較にならないくらいに加速している。デジタル社会では、意思決定の早さが鍵を握るとも言われている。私が昔、当時の上司に教わった教訓に次のような名言がある。「人は自らの成功要因によって失敗を招く。」この言葉には、自分が何者なのか、周囲に認められ求められる自社の強みとは一体何であるのか、を明確にした時はじめてビジョンが見えてくる、という啓示が含まれている。


●最終的にはやはり人材
 先に述べた、受注産業からの決別を図る方針を採用する場合、自社にメディアプランの企画提案ノウハウや、ビジュアル・コントロールの方法論などのスキル導入が急務となる。これらの資産は一朝一夕でできるものでは決してない。そうした業務の遂行を可能にする人材の育成が組織として必要である。「なかなか人材が育ってくれない」という話をよく耳にするが、私に言わせれば「それはあなたが、これまでにマネジメントを怠ったからでしょう?」と言うほかはない。そもそも、実務の経験や実績を評価されて管理職になるケースが一般的だが、本来は組織を束ねて人材を成長させることによって、生産性を向上させるのがマネージャーの務めなのであり、人ごとみたいなことを言ってもらっては困る。

 セミナーの質疑応答では、叫びとも思える嘆きを聞くこともある。「若いスタッフに業務のプロセスを理解させようと、一生懸命に説得するが言うことを聞いてくれない。」と。「それはルールを作るか、あるいはあなた自身が身をもって示すのが効果的です。」などとアドバイスはするが、これらの組織上の課題の本質は、往々にして人の話を聞かないのは、人の上に立とうとしている本人の方であり、そのことに気付かねば十中八九、解決しない。

 スペシャリストとしての人材はセミナー等の制度を活用すればスキルアップを果たせるが、肝心なのは、業務をコントロールできるディレクターの養成である。それは、実務ができる人ではなくて、実務を管理できる人なのである。頭数の不足もマネジメント次第でかなり解消できる。今後の組織づくりに最も必要な人材は、そうしたマネジメントの術を持つ人である。

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      2001年3月22日(木) 11:00〜18:00
      2001年3月23日(金) 10:00〜17:00
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    会場/社団法人日本印刷技術協会 研修室
   講師/苅田 和房 氏
     (有限会社湾岸道路 代表取締役)
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       一   般 /105,000円 *2人目から 84,000円
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   講師/苅田 和房 氏
     (有限会社湾岸道路 代表取締役)
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   講師/苅田 和房 氏
     (有限会社湾岸道路 代表取締役)
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    会場/社団法人日本印刷技術協会 研修室
   講師/苅田 和房 氏
     (有限会社湾岸道路 代表取締役)
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2001/02/26 00:00:00


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