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新たな変革が求められるデジタル印刷[システム性能分野]

掲載日: 2008年11月14日

デジタル印刷を実ビジネスとして展開するにあたり多くの印刷企業が壁に突き当たっている。日本印刷産業連合会では課題と提言を報告書としてまとめた(第3回)。

日本印刷産業連合会では昨年、「平成19年度 デジタル印刷の技術と将来展望に関する調査研究報告書」を行ない報告書を発刊し、課題と提言を「ビジネス、オペレーション、システム性能、システム開発」の4分野に分けてまとめた。第三回はシステム性能分野を報告する。

1.現状

・出版印刷、商業印刷から品質を見ると、カット紙タイプのデジタル印刷機は決して顧客に渡してけげんな顔はされない、印刷物としての商品になるレベルには十分きている。ここ1、2 年でスピードや画質や品質は十分であると判断している。十分とはオフセットとの比較でなく、印刷物として製品たり得るレベルになっている。デジタル印刷機の機能も前工程のシステムや後工程の加工機など、良い仕組みができ上がっているなどハードは進んでいる。

・メーカーから見ると国内ユーザーからの要望の一番が画質である。原理的にオフセット印刷と同等にはならない部分もあるが、印刷品質は重視されており、近づけるような努力がされている。さらに耐久性やスピードも上げていく方向である。

2.課題

・新製品が発売されると1 割、2 割印刷スピードがアップしているが、その速度で印刷しても機械が止まらない、長時間稼働でも品質が安定するデジタル印刷機の性能が求められる。また、出力速度を落とせば品質が上がるものもがあるが、そうでないのもある。

・カラーのデジタル印刷機でカット紙を使うような場合、紙質や厚さの選択などにおいて扱いにくい面がある。

・電子写真方式では、最初の刷り出しと1 時間後の刷りで色が変わる現象がまだ見受けられる。

・連続帳票向けのデジタル印刷機のカラー品質は、商業印刷用のデジタル印刷機に比べて未だ十分でない。従って、事前にオフセット印刷(プレプリント) して、可変情報を追い刷り出力するものもある。

・連続帳票の後加工は複雑に重ね合わせたりするが、そのときにOCR やバーコードの読み取り精度の点で出力機を選ぶなど苦労がある。

・連続帳票向けのフルカラー

・トランザクション用途のデジタル出力機を先行して導入した印刷会社では、仕様上の出力機の最大スピードで運用しようと考えていたが、仕事の内容によってはRIP スピードがネックとなって期待する出力速度が確保できていない。可変情報の印刷ではコンテンツ内容によってはRIP 処理速度の制約から、デジタル印刷機が待ってしまうことが見受けられる。

・連続帳票向けのインクジェット方式デジタル印刷機では、全体的なコストとスピードと消耗品などのコストとの兼ね合いが求められる。

・大サイズ出力は今まで屋外での使用が多く、解像度よりもベタの素抜が無いことが要求されていた。しかし最近では駅構内や店舗内など屋内使用が増加しており、至近距離から印刷物を見られるようになったため、高精細化が求められている。

・シール・ラベル印刷では、小ロットをデジタル印刷で、大ロットは普通の印刷機で生産するハイブリット印刷を行なうときに、両者の色の違いが課題である。また、シール印刷は特色が多いが、デジタル印刷機は特色をCMYK のかけ合わせで表現するので、色の違いが気になる。通常の印刷においてもかけ合わせで特色の数を減らしたいときに、顧客から色品質の点で納得してもらえない。特にデザイナに納得してもらえなことがある。さらにシール印刷は多様な基材に対応できることが求められている。

・シール・ラベル印刷では熱定着を行なうゼログラフィ方式はフィルム系の基材への印刷に課題がある。

・プリントドライバーのソフトの使い勝手はさらなる改善が求められる。

3.提言

・オフィス機はインライン後加工処理機の装着率が高い。しかし印刷企業は不特定多数のJOB が多い印刷企業と、特定の品目の小ロットが多い印刷企業など受注内容に違いがある。従って後加工機をオフラインにするかインラインにするかは、仕事の多様性を重視するか、特定の仕事向きかということで、印刷企業自身が判断しなければならない。

・インクジェット方式と電子写真方式は適材適所で選定する。

・用紙の厚さによって非常にシビアな設定が必要な機種などもあり、広い許容幅が求められる。

・可変カラー画像出力などRIP処理負担が大きな印刷では、事前に画像をRIPする等の工夫が欲しい。

・発色について、オフセット印刷とデジタル印刷(特にインクジェット方式)を比べると、デジタル印刷のガマットは確かに広いのに、ハイライトの二次色、三次色がなかなか合わない。そして、人肌などが印刷後1 時間ほどで色が変わってくる機種があり、改善が求められる。

◆出典:『平成19年度 デジタル印刷の技術と将来展望に関する調査研究報告書』(平成20年3月) 社団法人 日本印刷産業連合会
※報告書の全文は、 日本印刷産業連合会Webサイトに掲載されています。

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・第一回 ビジネス分野
・第二回 オペレーション分野

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