JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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マスター郡司のカラーマネジメントの極意

JAGAT研究調査部 部長 郡司秀明

■目次

月刊『プリンターズサークル』誌に掲載(2007年7月号~2009年3月号)
最終回 スミ版を知り、スミ版を使いこなそう (2009年3月号)
第20回 カラーマネジメントのために理解するべきこと (2009年2月号)
第19回 医学分野でも生かせるカラーマネジメント技術 (2009年1月号)
第18回 3つの画像ビジネス (2008年12月号)
第17回 印刷の標準規格がなぜ求められるのか (2008年11月号)
第16回 色評価士検定試験を終えて (2008年10月号)
第15回 モニタでの白色再現 (2008年9月号)
第14回 特別編 drupa2008報告 (2008年8月号)
第13回 発想(見方)を変えることの重要性 (2008年7月号)
第12回 知っておきたい色の常識 (2008年6月号)
第11回 広色域印刷に欠かせない高品質モニタ (2008年5月号)
第10回 RAW現像ソフトで差が付く色再現 (2008年4月号)
第9回 印刷業界のためのRAWデータ/現像 (2008年3月号)
第8回 世界初!! 広色域印刷lab入稿実験
(2008年2月号)
第7回 色を見る仕組みとは (2008年1月号)
第6回 良いプロファイルとは (2007年12月号)
第5回 ICCプロファイルはカラーマネジメントの核心世界
(2007年11月号)
第4回 色の最適品質とは何か?
(2007年10月号)
第3回 そもそもCMSとは――その考え方 (2007年9月号)
第2回 プロファイル乱用は事故の元 (2007年8月号)
第1回 スミインキのインキ量がポイント (2007年7月号)

連載に当たっての口上 (2007年7月号より抜粋)

今回から新連載をスタートいたしますのでよろしくお願いいたします。この連載でのターゲットはDTPを専門としていない方、例えば印刷機の機長などを想定しています。そのような方たちとデジタルについて一緒に考えていきたいのです。単なる用語や技術について表面的な解説するのではなく、一緒に考えていただけるための解説、つまり「何が問題なのか?」を分かりやすく解説するつもりです。私も一所懸命解説しますので、みなさんもぜひ「この連載を読む時」と「NテンドウDSをやる時」だけは、本気でお付き合いいただきたくお願い申し上げます。DTPを専門としている方にも少しは役立つものと確信しております。取り上げたいテーマは山ほどあります。

例えば最近、高濃度広色域印刷とFMスクリーニングの組み合わせが話題になりますが、今までどおりのトラッピング(インキ転移特性の意味)や、ドットゲイン的発想でうんぬん言われるのがとても気になっています(というより気に入りません)。

20ミクロン以下の径のドットで高濃度(=インキ皮膜を厚くする)印刷となると超高層ビル状態のインキを紙に転移するイメージですから、インクジェットプリンタのように100%トラッピングは無理でも、印刷を拡散ディザ(単位面積当たりの網点数で濃淡を表現する方式、つまりインクジェットでインク噴射を何発飛ばすか?という方式)がしっくりくるように思えてなりません(少なくとも私は)。

誤解を恐れずに暴言を吐きますが、これまでのFM網点は拡散ディザなどとカシコマッテはみたものの、現実的には230線ぐらいのコンベンショナルドットと大差ない網点ディザ(網点の大きさで濃淡を表現する方式)と本質は変わらなかったのです(少なくとも私はそう思っている)。しかし、今回はこの話がメインではないので、詳細に解説はしませんが、「高濃度FM網点の場合は、印刷機というよりインクジェットプリンタのカラーマネジメントをするように考えたほうが、今起こっているような問題はスッキリ解決してしまうのでは?」というのが私の考えなのです。「製版を熟知している人間がICCプロファイル(色合わせのための調整値)をこねくり回すより、素人がインクジェットプリンタのカラーマネジメントをするようにしたほうが結果的に色は合ってくる」というような逆説的な話です。

もちろん現実はもっと複雑で、インキメーカーさんだって顔料の含有量くらいはきっちりコントロールしているとは思いますが、方向性(傾向)はこんな感じではないかと推測します。

インキの挙動も複雑ですが、ICCプロファイルというのは、インキの挙動や、ドットゲインも、紙の特性も、みーんな一緒くたにパラメータ化してしまうので「印刷機=インクジェットプリンタ」と考えるほうがマクロ的には正確、つまりΔE(デルタイーと言って、この値が色のズレを表す。小さいほど色は合っているということ)は小さくなってくるのも事実なのです。

プロフェッショナルたる者、そのへんのところも熟知しておかないと来るべき「少子高齢化デジタル社会」には対処できないということです。アリテイに言えば、「逆説でも真理に迫る話は積極的に理解し、現実をより現実的に直視できるようになるべきだ」ということです。ちなみに「少子高齢化デジタル社会」は今私が作った造語なのですが、「若者より中年のほうが、デジタルを理解する時代(デジタルといえども、中年がワカゾウには負けていられない時代?)」ということです。

話題性がないのでマスコミなどには騒がれませんが、このようなことは既に当たり前で、秋葉原好きの40歳から50歳くらいの中年のおっさんが持っているデジタル力は無視できないレベルなのです。このようなオタク中年は特殊としても、皆さんが長年培ってきた技術をデジタルになったからと言って放ってしまう手はありませんよネ。技術的なノウハウはいつの時代にも不滅なハズです。

しかし、役立たせるためには最低限度のデジタル的訓練は必要で、これを私と一緒にやっていきましょうということなのです。TH大学のRK先生のようにはいきませんが、私も努力いたしますので何とぞお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

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