セミナーの教育効果について検証する ③ ~目標の設定と運用

掲載日:2015年9月18日

セミナーを受講させる前に、会社(教育担当者)は社員に対して、目標設定を促す必要がある。その際に留意すべき点について紹介していく。

前回の本稿で紹介した「アクションプラン策定シート(事前目標設定)」に沿って、今回は、具体的な目標の設定について検証していく。
目標を設定する場合、定性目標と定量目標に分けて設定していくことが望ましい。まず、定性目標について説明する。

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定性目標は5W1Hでより具体的に

この段階では、研修効果を高めるためのベースとしての会社と社員が共有すべきポイントの一つである「自己分析」(自分は何ができて何ができないのか)を終えているので、さらに向上させる必要がある能力、知識等についてある程度は顕在化しているはずだ。したがって、それを改善するために、受講を予定しているセミナーで何を学び、どうなりたいかについて、具体的に目標を設定させる。その際、以下の点に考慮すると、より具体的になりやすい。

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ビジネスの世界でも頻繁に使用される5W1Hのツールだが、セミナーの目標設定の際にも活用できる。最低限、何を切り口に目標を設定するかのモノサシがないと、具体的なものになりにくく、「提案力を向上する」「新規開拓力を向上する」「5Sを徹底できるようになる」といったような、抽象的な表現になりがちである。抽象度が高いほど、目標に対する稀薄感が高まり形骸化されるため、意味が無いものになるので注意が必要だ。

定量目標はシンプルに4つのレベルで

次に、定性目標を定量的に推し量ることが望ましい。定量目標があることで、具体的な成長度合いを把握できるため、効果測定をしやすい。また、学生時代から通信簿、偏差値等に慣れ親しんでいるため、数値化は一つの具体的なモノサシとしては有効である。数値指標はさまざまだが、このフェーズ(セミナーを受講する前)では難しく捉えずに、現状のレベルと研修後のあるべき姿(目標レベル)を、たとえば以下のように4つのレベルで評価するのも一つだ。

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一見すると単純な項目ではあるが、アメリカの経済学者のカークパトリック氏が提唱している、教育効果測定の4段階評価法(教育効果測定のデファクトスタンダード)に沿う目標設定方法になる。詳細は割愛するが、研修効果の測定指標を、以下の4段階に分けている。
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第1段階:研修自体の満足度
第2段階:学習理解度
第3段階:行動変容度
第4段階:組織変容度
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難しい言葉が並んでいるが、単純に説明すると、研修終了後の受講者が、「①知らない→②知っている→③できるようになる→④教えることができる」ということで、このステップを指標に、どのレベルを目指すかを受講者自身で決めさせていく。

達成しやすい目標を立てる人が多い!?

主体性を持たせるため、目標は必ず受講者自身に決めさせるべきだが、その際、注意しなければならないのが、比較的達成しやすい目標を設定してしまうケースが多いことだ。

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妥当な目標は、各会社、社員のレベルに応じて異なるが、適切かどうかを含めて会社(教育担当者)は密接にコミュニケーションを図りながら、設定していく必要がある。易しい目標を立てる社員対しては、「あなたなら、もう少し上のレベルを目指せる」など、プラスの言葉で輸していくことが必要だ。そうして目標を決めたら、一番重要なのは、達成するためのアドバイス、期待していること等を、会社(教育担当者)から伝えていくとだ。実際にこれらを実行した印刷会社からは、「社員が心の中で考えていたことを把握できた」「上司として普段伝えられない気持ちを伝えられた」等の声があがった。

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3回に渡り、教育効果を高めるために、セミナー受講前にするべきことについて紹介した。
次回は、研修終了後にすべき施策について紹介していく。

(JAGAT CS部 塚本直樹)

<関連情報>
「セミナー教育効果を検証する(1)会社と社員が共有すべき3つのポイント」
「セミナーの教育効果について検証する ② ~自己分析と注意点」

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