2019年版人材開発支援助成金の変更ポイント

掲載日:2019年5月14日

企業が人材育成をする上で定番として活用されている「人材開発支援助成金」の2019年版改訂のポイントについて紹介する

本助成金は企業が社員へ教育訓練を行った場合、セミナー受講料などの訓練経費と訓練期間中の受講者に支払う賃金の一部の助成金を受けられる制度だ。

<訓練コースに応じた助成額(率)>

本制度には大きく「特定訓練」「一般訓練」の2コースに分けられるが、若年人材に向けた訓練コースなどは「特別訓練コース」に該当する。総訓練時間が20時間で受講料200,000円のセミナーを社員に受講させた場合、特定訓練コースに該当する場合は、最大で105,200円の助成金を受給できる可能性がある。

(内 訳)
 ●賃金助成  :760円×20時間=15,200円
 ●訓練経費助成:200,000円×45%=90,000円

限られた資金のなかで経営している中小企業にとっては価値のある助成金だ。

■制度改定のポイント

2019年4月より本助成金制度の一部が改訂した。以下に、主な変更点を抜粋して紹介する。

1)給付訓練休暇付与コース内に長期教育訓練休暇制度の新設
2)一般訓練コース及び長期教育訓練休暇制度の生産性要件の適用条件が実績主義から成果主義に変更

1)給付訓練休暇付与コース内に長期教育訓練休暇制度の新設

本制度は社員が自発的に職業能力開発を行う際に、長期期間の休暇を要する場合に活用できる。所定労働日において1年間で120日以上の教育訓練休暇が必要になり、その期間の賃金(有給休暇を取得した場合のみ)や教育訓練の経費について助成を受けることができる。中小企業が社員に120日以上の休暇を付与するのは容易なことではないが、長期セミナーや難易度の高い検定の講座を社員が受けるケースがあれば活用できる。ただし、業務命令による訓練ではなく社員の自発的な職業能力開発の場合が本制度の条件になる。

2)一般訓練コース及び長期教育訓練休暇制度の生産性要件の適用条件が実績主義から成果主義に変更

企業における生産性向上の取り組みを支援するため、生産性を向上させた事業主に対して助成額の引き上げがある。その生産性向上の尺度を以下に変更しているのがポイントだ。

(旧)実績主義:直近の会計年度における生産性と3年度前を比較

(新)成果主義:申請前年度の会計年度における生産性と3年度後を比較

つまり、生産性向上を過去の実績として捉えるのではなく、未来志向的に考えている。人材育成支援助成金を活用した教育訓練を社員に行うことで、実務に活用してもらい生産性向上を一つの目標にしてもらうことが狙いだ。これは本来の企業が教育訓練を行う目的とも合致しているため比較尺度の変更は良いのではないかと思う。ただし、未来の生産性と比較するため割増分の助成金は3年後の支給になることは留意が必要だ。

印刷業も人材不足、若手の採用難が続き、働き方改革等、新たな対応に迫られ人材への投資は益々必要性が増す。こうした助成金制度の情報をうまくキャッチし活用していくことが重要になる。

JAGAT 塚本直樹