第20期クロスメディアエキスパート認証試験出題意図

結果概要

受験申請者200名中、8月30日(日)の試験当日に194名の方が受験しました。第1部試験は157名が受験し、合格者数は144名、合格率は過去最高の91.7%となり、前期と比べ15.5ポイント上昇しました。また第2部試験は194名が受験し、合格者数は84名、合格率は43.3%となり、前期と比べ3.9ポイント上昇しました。

最終合格者数は84名で、合格率は43.3%となり、前期と比べ6.6ポイント上昇しました。

第1部試験の新問題出題意図

第20期クロスメディアエキスパート認証第1部試験は、クロスメディアエキスパートカリキュラムに従い、「コミュニケーション概論」「経営概論」「情報技術概論」で取り上げているテーマから150問を出題しました。

コミュニケーション概論では、クロスメディアを前提とした提案活動に必要な知識として、ヒアリングをはじめとする提案活動に関するさまざまな留意点について出題しました。提案活動では欠かせない「ヒアリング」では、その留意点や結果の分析、「提案書作成」では、提案の骨子や提案書の様式などについて出題しました。提案活動は「提案する側」と「提案される側」に異なる目的と共通の目的があります。「提案する側」は「提案される側」の状況や意図を汲み取り、適切な時期や表現などで提案する必要があります。確度の高い提案活動を実現するため、最低限の知識として出題しています。

さらに「メディア」に関することとして、「ネイティブ広告」「iBeacon」「コンビニプリント」などについて出題しました。生活者を取り巻く環境の1つとして「メディア」は、インターネットに関する技術の進化やさまざまな機能を持つ端末の登場などにより、日々変化しています。事業を支えるメディア戦略としてクロスメディアを採用する際、選択肢の1つとして考えられるインターネット広告や位置情報に関する技術、生活には欠かせない存在となったコンビニエンスストアで提供されるマルチコピー機のサービスや採用されている技術への見識や留意点に関する知識が必要との考えから出題しました。

経営概論では商品分類ごとに適したマーケティソグ戦略があることから、コープランド(Coepland,M.)により提示された「最寄品」「買回品」「専門品」といった分類に関する出題をしました。

また、デジタルマーケティングへの取り組みが一般的になり、迅速に最適な生活者とのコミュニケーションを支え効果的なクロスメディア戦略を実現するソリューションとしてマーケティングオートメーションを取り上げました。話題性の高い画像や動画などのコンテンツをソーシャルメディア上で展開することで短期的にトラフィックを増やすことができますが、モラルハザードといった問題があることから、注目すべき注意が必要なメディアとして、「バイラルメディア」について出題しました。さらにメディアに関連する事業者に求められる法務知識としては、インターネットの活用が不可欠となった現在を踏まえ、改めてインターネットと著作権に関する出題を行いました。

情報技術概論では、セキュリティの分野からSQLインジェクションと暗号化通信について出題しました。多くのWebサイトではデータベースが活用されており、その利用について必要な知識として取り上げています。また、XMLに関する知識では、その仕様に関する内容だけでなく、実務で活用できる具体例に関する出題を行い、有用性を確認しています。インターネットによるコンテンツ提供では必須知識となる「HTML5」では、Webブラウザーによる対応状況が重要であると捉え、要素と対応状況に関する出題をしました。さらに開発環境に関する出題として「Git」を取り上げ、共同開発の際に必要な知識やクラウドサービスの利便性について問いました。そのほかモバイル端末はクロスメディアにとって重要なメディアであるといった考えから、「開発環境」のほか「コンテンツ制作の注意点」や「モバイルファースト」といった考え方についても触れ、総合的な出題内容となっています。

新出題問題の平均正答率は40%~60%を推移しており、既存出題問題と比べ10%程度低くなる傾向があります。新出題問題はクロスメディアエキスパートカリキュラムに関する出題となりますので、合格基準を満たすためには新出または既出を問わずカリキュラムに掲載してる項目の知識習得のほか、日々の情報収集が必要となります。

第2部試験の出題意図

第20期クロスメディアエキスパート認証第2部試験では、「喫茶店事業をチェーン展開する外食」を顧客企業と設定し、コミュニケーション支援事業を展開する中堅印刷会社のクロスメディアエキスパートが、メディア戦略のコーディネーションを行う与件を前提とし、提案書を提出する形式の出題となりました。

現在の喫茶市場は、原油価格高騰によるエネルギーコストの上昇や消費増税の影響、少子高齢化による市場規模の縮小、コンビニエンスストアとの競争激化などによる売上減少のリスクがあります。

生活者の嗜好や消費動向が多様化し、一時は街の喫茶店を駆逐した低価格の「セルフサービス」を好まない人物も存在します。また、団塊世代が65歳のリタイア時期を迎え、郊外型の喫茶店を使用するよう傾向も見られ、年配層は「ファストフード」「セルフサービス」「フルサービス」の喫茶店を上手に使い分けることもあります。

与件では、主にビジネスユースをコアターゲットとした「フルサービス」の「喫茶店事業」をチェーン展開する顧客企業が、新規事業として30歳前後の女性をコアターゲットとした「フルサービス」による新業態の「喫茶店事業」を展開する上で、既存店舗との相乗効果による売り上げ拡大や既存顧客の満足度向上、対象となる顧客層に対するブランド訴求、東京オリンピックによるインバウンドの獲得などといった視点によるメディア戦略が求められました。

設問に従い、「フリーペーパー」「チラシ(ポスティング)」「DM」「ソーシャルメディア」「コーポレートサイト(リニューアル)」「OOH(デジタルサイネージ、ポスター)」などを活用する提案が、解答として多く提出されました。

しかしながら、起点となるメディアへの集客方法や運用方法など、具体的な記載が欠けており論理性の欠如による減点が多くありました。また、提案目的と課題設定が近視眼的なものが多く、メディア戦略の実施による効果が与件企業に与える影響が少ないため、費用対効果に疑問が残る提案となってしまう傾向があります。課題設定では、解決可能な「優先順位」の高い問題を示す必要があります。「優先順位」付けについては、与件企業の「理念」や「方針」を加味することで、論理性が高まります。

さらにコンタクトポイントに対する認識の低さからストーリー性が欠け、「クロスメディア」になっていない提案については、減点対象となっています。多くの解答は、1つの課題に対し1種類のメディアによる解決を目指す施策となっており、3つの課題を3つの「分断」されたメディアで解決してしまうといった施策が、論理点が伸びない原因となっています。

「クロスメディア」となっていても「フリーペーパー」⇒「コーポレートサイト」⇒「ソーシャルメディア」といったクロスメディアエキスパート認証試験では「定番」とも言えるメディア展開が多く、「提案書」としての差別化が困難になってしまっている傾向も見受けられました。

30歳前後の女性をコアターゲットとするのであれば、「スマートフォン」へのメディア接触時間が多いことを想定し「モバイル広告」⇒モバイル対応「ブランドサイト」⇒「会員化」と資料請求による「クーポン付会報誌」といった展開が考えられます。

また、「珈琲」に関するコンテンツやイベントを軸とし、さまざまなメディアによるさまざまな「経験」や「価値」をコミュニケーションとして提供することで、顧客を育成する展開なども考えられます。この考え方は、見込み客(Lead)を育成(Nurturing)して受注に結びつけるプロセスの管理手法である「リードナーチャリング」が参考になります。「リードナーチャリング」を実践する際、多くの場合「電子メール」や「Webサイト」などといったインターネットと関係するデジタルメディアが使用されますが、ペーパーメディアの活用も十分に考えられます。

与件文の冒頭にある「状況設定」では、「あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。X社は、商業印刷物やDVD-ROMの制作、Webサイトの構築・運用などのサービスを顧客企業に提供している。」と記載されています。「中堅総合印刷会社」に所属するのであれば、「デジタルメディア」だけでなく「ペーパーメディア」の提供も視野に入れるべきです。

既存の手法に捉われず常に情報を仕入れそれをクロスメディア戦略に活かす姿勢についても、クロスメディアエキスパート認証試験では求めています。

資格制度事務局