新事業展開と人材開発

掲載日:2023年3月7日

機会設備等の「モノ」への投資に加え、事業再構築、新事業等のビジネスづくりをテーマにした「コト」とそれを実現するための「ヒト」へ投資を促す制度が拡充している。

従来は、設備を導入して生産性を上げれば、企業の業績が伸びるのロジックが通用した部分もあったが、経済の成長性が鈍化している環境下では、仕事を作らなければ生産力アップをしても元も子もない。設備あり気ではなく、創注できるビジネスモデル案があり、そこに設備や人が紐づいてくるのが理想である。つまり、国がビジネスづくりをテーマにした企業の支援策を拡充している今が、変わるチャンスであるし、裏を返せば、今まで通りのビジネスモデル、商品、サービスだけで乗り切るのは難しい局面に差し掛かっているともいえる。

 

ビジネスサイドに強い人材を内部育成
新たな事業を創造する上で課題となるのが「ヒト」の量と質である。特に事業創造をする上では質が重要であり、そこに長けている人材の確保が重要になる。外部人材の採用や外部パートナーの協力を得ることは必要だが、事業の核となる人材は社内から選定し育成することが望ましい。JAGATは印刷会社向けの「新事業開発」「ブランディング」等、いわゆる変革をテーマにした、コンサルティングを行っている。その中で、成果を出している人物像には、「ビジネス現場を良く知っている」ことが共通項にあげられる。自部門のことだけではなく、営業、制作、製造の現場サイドやクライアントを良く知っていることに加え、俯瞰的な視点で現状を捉えるマインドを持っている傾向にある。そのような人材は自社内を見渡してみると、必ず一人二人思い浮かんだりしないだろうか。そうした人材が、新たな取り組みに適している可能性が高く、事業開発、マーケティング、課題解決力のようなビジネスサイドを強化できる育成プランでリスキリングすることが効果的だ。

 

事業展開をテーマにした研修は最大75%の経費をサポートする助成金も

これらのテーマは、数時間の座学でも一定の効果はあるのだが、企業の実践につなげるまでフォローしていくのであれば、カリキュラムを複数回で構成される実践的な研修を利用するほうが費用対効果は高い。また、中小企業が実践的な人材育成に取り組みやすいように、厚労省が主管の人材開発支援助成金は2022年12月より、「事業展開等リスキリング支援コース」を新設している。主旨は企業の持続的発展のため、新製品の製造や新サービスの提供等により新たな分野を展開する。または、デジタル・グリーンといった成長分野の技術を取り入れ業務の効率化を図ることができる人材育成の費用を助成する。要するに新たな事業展開を推進できる人材、あるいは事業展開は問わないが、DX、GXで業務効率を図れる人材の育成を強化することが目的である。事業展開は、訓練開始日から3年以内に実施する予定の事業、あるいは直近6カ月以内で実施しているものが該当するため、スモールスタートしている事業や、これから検討している企業には活用しやすいコースだ。また、中小企業であれば、通常コースは経費助成(いわゆる研修費用)が30~45%に対し本コースは75%、賃金助成(社員が研修を受けた時間の賃金補助)は、通常コースが1時間あたり360~720円に対して960円と助成率、金額ともに高く設定されている。受講料が30万円で講座時間が20時間の研修であれば、24万円強の助成金が支給されるため企業の実質負担は6万円弱に抑えられる。

政府は今後5年で1兆円のリスキリング予算を計上するとされ、人材育成に関する助成金、補助金は様々な形で増えてくる。また、それに連動した多様な研修メニューが市場に増えてくるため自社に合う研修を選びやすい環境になる。この5年間を一つの目安に、新たな事業展開を見据えた人材育成に着手してみるのも一考である。

JAGAT 塚本直樹

【関連情報】

■JAGAT人材育成セミナーWebサイト(https://www.jagat.or.jp/cat3