第14期クロスメディアエキスパート認証第2部試験「与件:ワイナリー」 |
状況設定について
あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。
X社は、商業印刷物やDVD-ROMの制作、Webサイトの構築・運用などのサービスを顧客企業に提供している。X社にはデザイン専門の系列子会社があり、グループ総従業員数は100 名である。
A社提案プロジェクトについて
X社が過去に企画制作した顧客に、ワイナリーを運営するA社がある。X社は、同社Webサイトの一部を手がけた実績もある。営業担当者より、「A社は、顧客との新しいコミュニケーション戦略の検討をしている。」との報告があった。X社は、営業部門や企画部門、制作部門に所属する数名で、A社提案プロジェクトを立ち上げた。クロスメディアエキスパートであるあなたは、本プロジェクトのリーダーに任命された。
X社は、本プロジェクトにて提案書を作成し、○年○月○日にA社へ提出する予定である。
面談ヒアリングについて
A社について調査をすすめていった結果、X社の競合企業がインターネットやモバイル端末を活用した提案をする準備をしているとの情報が入った。X社は、営業担当者が中心となり、社長と販促担当者に面談ヒアリング(※面談ヒアリング報告書参照)を実施した。A社は、コミュニケーション戦略を立案するにあたり、プロモーションや業務改善、タイアップなど、社外からの優れた提案を取り入れ、実施を検討する方針である。
営業部 第一課
黒須目 太郎
概要:A社からの提案依頼に伴う、ヒアリング調査
日時:20××年○月○日 10時~12時
対応者:沢登社長、経営企画室 三浦室長
1.提案に向けて
新潟県に本社を構えるA社は、「苗木オーナー制度」を実施運営し、中高年齢者層を中心に高い支持を得ている。A社は、ワイナリー経営を行っていく過程で、顧客からの要望により、ワインをテーマとしたレジャー施設を運営している。レジャー施設には、「ワイン直売所」をはじめ、「イングリッシュガーデン」、「レストラン」、「カフェ」、「温泉」、「ホテル」などを併設しており活況を呈している。A社ワイン販売量の95%がワイナリーショップやレストランでの直売によるものである。現在、レジャー施設を中心に、A 社を含めて5社のワイナリー運営企業がある。
来年4月、A社が中心となり、ワイナリー運営企業5 社が共同で「新苗木オーナー制度」を設ける予定がある。新苗木オーナー対象者は、30~40歳台の女性である。同対象者への加入促進プロモーションにより、新規オーナーの獲得を目指している。また、現苗木オーナーとのコミュニケーション強化も行うことで、収益の安定も視野に入れている。
A社は、顧客とのコミュニケーション手法を確立し、それに伴うコンテンツやコミュニケーション施策のメディア展開案を求めている。見込み顧客とのコミュニケーション手段を確立し、顧客との関係性を重視したサービス展開の実現を模索している。
2.施策の運営と実施効果測定
- 週単位でメディア展開の実績を確認したい
- 可能な範囲でメディア利用者のレスポンスを管理したい
- A社の担当者は、他業務と兼任で2名を予定
3.想定予算
- 印刷物作成費、ハードウェア、ソフトウェア、開発費などで、総額1,000万円以内を想定
4.施策の実施期間
- 10月1日に施策開始、来年3月31日までを第1フェーズとして予定している
- 11月から1月末までが販売および運営業務のピークを迎えるため、コミュニケーション企画は、業務のピークを考慮したものとしたい
5.創業時について
- 沢登社長は、叔父(北海道在住)の影響を受け、ワイナリー経営に興味を持った
- 創業前は、欧州から輸入したワインを充填し国産として販売している業者が多かった
- 当時、欧州のワイン専用葡萄の国内栽培は困難であった
- 日本で栽培した葡萄による国産ワインの生産を目指した
- 新潟で栽培に適した土地を見つけ創業に至った
- 経営の安定化を優先させた
- 売上げを伸ばすため、新商品開発にも力を入れた(地ビール、ソーセージ等)
- ビール製造会社の卸業務を地元酒販売店に対して行った
※創業時は成功(売上の半分以上が卸)したが、現在は行っていない
6.現行の苗木オーナー制度について
- 1口 2万円
- 年2本のワインが10年間送付される
- 創業時、3,000万円の資金調達に成功した
- 本制度は、中高年齢層を中心に普及してきた
- 本制度の成功により、畑やレストランなど、各種施設の拡張を行ってきた
7.自社生産ワインについて
- 欧州系と呼ばれるワイン作りに適した品種の葡萄を使用している
- 自社葡萄園産または国内有料生産者の葡萄のみを使用している
- 生食用葡萄や外国産葡萄果汁は使用しない
- 葡萄の持ち味を最大限生かし、瓶の中に閉じ込めている
- 葡萄は、年や品種、畑ごとに品質や個性が異なるため、細心の注意が必要である
- ワイン作りには明確な正解がない
- 高級ワインである
- 生産過程ごとに、最も良いと思われる手法でワイン生産を行っている
- 国際的なワイン品評会で入賞をしている
- 自社葡萄園では、白ワインおよび赤ワインの専用葡萄を栽培している
※白ワイン:「シャルドネ」「セミヨン」「ソービニヨン・ブラン」
※赤ワイン:「カベルネ・ソービニヨン」「ピノ・ノワール」「ツバイゲルトレーベ」「メルロー」
8.過去の販促活動について
- 品評会受賞ワインの売上貢献度は低かった
- アンケート結果によると、ワイン購入の判断は「味を見てから」といった意見が多かった
- 酒販売店へワインセラーの貸し出しを行い、来店者が試飲をできるようにした
- 来店者の試飲は、飲酒運転を誘引する可能性があるため廃止した
- 地元の酒販売店は、都市部への販売に力を入れている
- 地元の酒販売店が物産展や試飲会に出店する際には、ワインセラーやグラスの貸し出し協力を行った
- 酒販売店として、取次店やデパート、大型ショッピングセンターに対する販促支援を行っていた
- 母の日に「お母さんありがとう」と記載されているプライベートラベルサービスを実施し、成功している
- 酒販売店にノボリやビデオ、POPを提供していた
- 酒販売業者向けの「総合試飲会」を実施し人気を得ていた
- 「総合試飲会」は、新規顧客の獲得に結びつかなかった
- 「季節の料理とワインをテーマとしたイベント」を実施した
- イベントは、中高年齢層からの支持を得たが、若年層の参加が少なかった
- 定期的に地方テレビ局でCMを配信した
9.インターネットの活用について
- 自社Webサイトでアンケートを実施している
- オンラインショッピングモールへの出店を行っている
- ECサイトでは、酒販売店との関係から、値引きが行えない
- ECサイトは、送料による消費者の負担が増え、販売量が少ない
- ECサイトは、自社ワインの入手困難な地域に住むリピーターのために運営している
10.業態変革について
- 顧客の意見により、ワインをテーマとしたレジャー施設に可能性を見出した
- アンケート結果によると、殆どの苗木オーナーは宿泊施設を望んでいた
- ワイナリー+レジャー施設の運営に力を入れることとなった
- ビール製造会社の卸業務を縮小した
11.レジャー施設について
- 四季折々の花々が咲き乱れるイングリッシュガーデンをつくった
- レストランやカフェの運営をしている
- 温泉、ホテルの運営をしている
- 東京から多くのワイン好きの顧客が訪れている
- 現在、ワイン年間販売量の95%が本施設での直売によるものである
12.今後の展開について
- ワインを流通にのせ、東京で販売することは考えていない
- 「東京からワインを買いにきてもらう」ことが方針である
- 品質維持のため、自社でのワイン生産量拡大は考えていない
- 自社のワインは、高品質で稀少である高級ワインと位置づけている
- 既存顧客とのコミュニケーションを活性化したい
- 当社経営方針に共感した若者が経営する近隣のワイナリー(B社など)を助けたい
- 「純国産ワイン」の普及と市場拡大を目指している
- 将来的に「ワイナリー大学」を設立したい
13.新苗木オーナー制度について
- 近隣のワイナリーと共通のオーナー制度を検討している
- 30~40歳代の女性がメインターゲットである
- 高齢者の取り込みも考えている
- 集客につながるコンテンツ配信を考えている
- 見込み顧客とのコミュニケーション手段についても検討している
社名 A社
設立 平成5(1993)年
資本金 900,000千円
従業員 160名(正社員)
売上 10億円(2012年03月期)
所在地 本社 新潟県新潟市北浦区
役員 代表取締役 沢登浩一郎 専務取締役 沢登康子 常務取締役 小杉タカ
事業内容 ワイン製造販売・飲食業
沿革
1993年 A社を設立
1994年 新潟市西蒲区角田浜にワイン製造場を建設、ワイン事業を創業する。薪小屋を建設、ソーセージ・ビール製造を創業する。
1998年 ワインショップ・地下熟成庫を建設。
1999年 プラン・ドゥ・ボヌールホールを建設、レストラン事業を創業する。
2000年 レストランを建設
2004年 プラン・ドゥ・ボヌールエリア内に石窯パン工房「ブーランジェリー」をオープン。
2006年 新潟市内にプラン・ドゥ・ボヌールとやの店・ぽるとカーブドッチ店をオープン。
2007年 エリア内にB社とC社が、ワイナリーをオープン。
2008年 新潟市内にBBカフェ・新潟そがう店をオープン。
2011年 プラン・ドゥ・ボヌール・マルシェをオープン。
2012年 エリア内にD社とE社が、ワイナリーをオープン。
A社経営理念
私たちは、常にお客様、お得意様に感謝と貢献をし、ともに成長持続をさせて頂くことを第一と考えています。
長期的視野を持って地域、社会、世界への一翼を担う事業の創出を行うとともに、中核事業であるワインを始めとするブランド力向上を図り、企業価値の向上と健全かつ明確で持続的な発展を目指します。
A社社長プロフィール
沢登 浩一郎(さわのぼり こういちろう)
19●●年外国語大学ドイツ語学科卒業後、●●入社、主に●●に従事。19●●年、国立ワイン学校(ドイツ)留学、●●年帰国後、A社に設立、代表取締役就任、ワイナリー経営着手。欧州のワイン専用葡萄の国内栽培、ワイン専用葡萄・苗木オーナー制度を確立。趣味は、テニス、サッカー観戦、読書、ブログ(葡萄の軌跡)。
A社損益計算書
2010年度 | 2011年度 | |
売上高売上原価 | 1,000,000420,000 | 1,050,000441,000 |
売上総利益 | 580,000 | 609,000 |
販売費・一般管理費 (人件費) (減価償却費) (広告宣伝費) |
530,000 260,000 40,000 50,000 |
550,000 260,000 40,000 56,000 |
営業利益 | 50,000 | 59,000 |
営業外収入営業外費用 | 1,00014,000 | 1,00014,000 |
経常利益 | 37,000 | 46,000 |
特別利益特別損失 | 1,0002,000 | 5001,000 |
税引前当期利益 | 36,000 | 45,500 |
法人税等 | 18,000 | 22,750 |
当期純利益 | 18,000 | 22,750 |