特長を生かし目的が明確な分野で利用されているPUR製本

掲載日:2018年7月10日

PUR接着剤を使って製本される書籍は、その特長によりこれからも緩やかではあるが成長が期待される。

●PUR製本の特長
PURはポリウレタンリアクティブ(PolyurethaneReactive)の略で、合成樹脂の接着剤として世の中の製造業の中では一般的に普及している。印刷業界で使われ始めたのは90年代後半に大手印刷会社が使用した頃といわれている。
この接着剤の特長は、第一に製本に広く使用されているEVA(Ethylene Vinyl Acetate)系接着剤より強度があるため塗布量が少なく済むので開きやすい。第二に耐熱性があることが挙げられる。EVAの軟化点は約45℃前後だが、PURは約120℃の耐性がある。
第三に耐インキ溶剤性があり、皮膜が強固で薬剤に対する強さがある。第四にPURは熱に強いため、用紙と一緒に窯の中に溶かしても用紙の繊維と完全な分離ができ、リサイクル性がある。

●使用される分野と今後
PUR製本が出てきた背景には、より開きのよい本を作りたいという要望があったことだ。EVAを使用した無線綴じ本はノドの根本まで開けず無理に開くと壊れる。これに対しPURは接着剤としての強度はもちろん、柔軟性も備えているのでノドの根本まで開くことができ、180度以上開いても壊れない。
当初は地図のように片手で持って歩いても閉まりにくく、料理のレシピ本のように開いて参照しながら調理しても閉まらない書籍というところにニーズがあった。また、小学生が丸めて遊んだりするなど乱雑に扱っても壊れないようにという目的で学習参考書関係にも使われている。その他学術書の分野や漫画本やコミックの愛蔵版でも使われている。こした書籍は長期間の保管を目的としており、経年劣化しにくいところにニーズがある。POD(Print On Demand)の分野でもフォトブックや小ロットの一部の書籍に使われている。
現在、EVAのほうが多く使われているのは、PURの長所とコストを比べた時にユーザーが安いEVAを選択することが多いからだ。PUR製本は、丈夫で開きやすく読みやすい、長持ちする上にリサイクル性が高く環境にやさしいといった特長を生かせる分野で伸びていくことが期待される。

通信教育 「知っておきたい製本加工の知識と管理」