働き方改革と生産性向上における印刷工場の課題

掲載日:2020年3月17日

働き方改革という言葉が定着してきた昨今だが、印刷工場での働き方改革への対応には頭を痛めている経営者やマネージャーも多いようだ。2019年4月から『働き方改革関連法案』が実施され、企業は対応することが義務付けられている。その関連法案で注視しなければならない規定が、労働基準法とパート有限雇用法になる。

労働基準法とパート有限雇用法

労働基準法の改定では、

  • 5日間以上の年次有給休暇の取得義務化
  • 時間外労働の上限規制導入
  • 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の猶予措置、(50%→25%)の廃止

パート有期雇用法(パート労働法)では、

  • 均等待遇について、個々の待遇ごとに不合理性を判断することを 明確化
  • 有期契約労働者に係る均等待遇規定の創設
  • 待遇差の理由等に関する説明の義務化

時間外労働の上限規制と同一労働同一賃金

労働基準法改定では、5日以上の年次休暇取得義務については、昨年2019年4月より施行された。週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の上限を原則として「月45時間」かつ「年360 時間」とする規定については、繁忙期でも単月100時間未満、複数月(2~6か月)平均80時間(休日労働含む)に抑えという上限が加わった。法案の発表当時の2017年3月の日経ビズネスオンラインの記事よれば、経営者側と従業者側では受け方が違うようだ。従業者側では、「100時間迫る時間外労働を許すのか」や「過労死に繋がる」という時間外労働を促進するような見受け方もあったようだ。page2020セミナー「印刷工場の生産性向上実践 ~多能工化編~」講師で中小企業診断士の寶積氏(株式会社GIMS代表取締役)によれば、上限が無かったものに上限が付いたことが大きいという。経営者にとっては難しい対応が迫られ、業績への影響も心配される。一方、社会保険労務士側では、やらない会社は淘汰されるという見方もある。政策が掲げる指標は労働生産性だ。単に仕事を増やして従業員の賃上げを目指すものではない。生産効率、付加価値率を高めることで少ない従業員で大きな成果を上げる企業体質を目指すものだ。旨くいけば中小企業には追い風のようにも思える。しかし、取り組む課題は簡単ではない。

経営資源に限りがある中小の印刷業においては、特に、業績アップのための施策と働き方改革は同じ土俵で進めるべきだ。印刷工場では、生産効率を高めるための改善活動やマネジメントを促進し、生産性を高くする体質改善する仕組みづくりが重要になる。小手先の対処療法では、課題は解決されない。特に印刷業の多くは、受注型で多品種少量の傾向にある中、計画的な生産管理は難しい。全社を上げて改善活動を推進し、具体的に見える化や多能工化へ取り組むことが益々重要になってくる。活動を推進する上で欠かせないのがリーダーの存在だ。印刷工場でのマネージャー育成は益々急務なってくる。

(CS部 古谷芸文)

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