新商品・サービス開発を進めるのは、トップダウン?ボトムアップ?

掲載日:2022年7月29日

新商品・サービスの開発は、新たな収益の軸を作り、企業が成長し生き残るために必要不可欠である。では、組織全体でどのように取り組めば、より良い商品・サービスの開発を推進できるのだろうか。

 

ウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据え、中小企業等の新分野展開、業態転換、業種転換等の思い切った「事業再構築」の挑戦を支援する事業再構築補助金制度は、開始から2年目を迎え、既存事業に留まらず、新たな事業を積極的に検討する印刷会社が増えている。しかし、プロジェクトチームを立ち上げても、新たな展開を考える上でのノウハウが欠けている、取り組み方がわからない、思うように進展しないなど、課題が次々に浮かびプロジェクトがストップしてしまうこともある。そこで、うまく新事業開発を進めるために、組織としてどのように取り組めばよいのかを考えてみる。

 

トップダウンとボトムアップの上手な活用


企業経営には、意志決定の型として大きく「トップダウン」と「ボトムアップ」の2種類がある。社長や会長、役員などの企業の経営トップ陣が意思決定を行い、現場社員へと指示するトップダウンは、迅速な経営判断と伝達、実行が可能である。また、プロジェクトチームに各部署の優秀な人材を配置することでチームを十分に機能させることができ、かつ経営者と現場に信頼関係がある場合、組織全体に一体感を持って進めることができる。しかし、経営者の判断を優先させるため、指示がないと動けないチームになってしまったり、また、現場で判断することが許されない体質となり、改善すべき点などの共有が遅れたり、現場や顧客の声が届きにくいなどチームが上手く回らなくなる場合もある。

 

一方、プロジェクトチームから生まれるアイデアや意見などを経営陣が集約することで組織を動かし運営していくボトムアップは、自分達で考え、行動していくことでチームのモチベーションの維持や個々の能力アップへとつながる。また、顧客の声やニーズを直接反映させることで売上に直結する新商品・サービスのアイデアが生まれる。ただし、多様な意見があるがゆえに方向性にブレが生じ、一貫性を保てなくなったり、現場の声を基に経営の意思決定をするため、事業をすすめる各工程で時間がかかってしまうこともある。
新商品・サービスの開発をすすめるにあたり、「トップダウン」と「ボトムアップ」の強みや弱みを理解し、プロジェクトチームの状況や場面に応じて使い分け、組織全体ですすめていくことが必要である。

 

 


昨年、JAGATで開催した新商品・サービス開発関連のセミナー受講者のアンケート結果を見ると、新規事業の立ち上げ方法としてトップダウン型が半数以上となっている。次いで、中間管理職やプロジェクトリーダーが架け橋となり、経営者とプロジェクトチームの意見をまとめながら進めるミドル・アップダウン型となっている。ミドル・アップダウン型の場合、リーダーとなる人材能力によって、プロジェクトの進行具合が大きく変わってしまうので、リーダーに抜擢する人材が重要なカギとなる。
新規事業開発のプロジェクトメンバーの編成方法としては、さまざまな知識や技術、経験を有するメンバーを各部門から集結することで柔軟な発想や課題解決力の高いチームの編成ができる。

 

プロジェクトを進めるためには、新規事業開発のプロセスを理解し、マーケティング戦略を考え、サービス化、そして問題点を改善しサービス化と繰り返しチームで取り組むことが必須である。組織全体で顧客に役立つ新商品・サービスの開発に取り組む印刷会社の今後に、JAGATはセミナーなどを通じて人材育成の視点でサポートできればと思っている。

JAGAT CS部 加治 寛子

 

【関連講座】
・印刷ビジネス開発実践講座 9月開講
 https://www.jagat.or.jp/archives/85259