顧客とともに印刷ビジネスを考える

掲載日:2014年8月21日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:顧客とともに印刷ビジネスを考える

 

株式会社光文堂
代表取締役社長 小澤久隼氏に聞く

 

光文堂は1946年の設立以来、印刷機器・資材の販売を中心とした総合商社の立場から全国の印刷業界をサポートしてきたが、創業60周年を機に、新たな事業体系の一貫として「クロスメディアソリューション開発本部」を立ち上げた。印刷業界とともに発展してきた同社の小澤久隼社長に、さらなる飛躍に向けたキーワードを伺った。

――全国の印刷業界を長年サポートしてきた立場から、現状と問題点をどうお考えですか。

小澤 印刷業界を取り巻く環境は、デジタル化の進展によってネットワーク環境が充実してきましたが、一方ではグローバル化を始め、短納期化・小ロット化・低価格化といった課題を抱えています。速いスピードで大きな変革が起こっている中で、この変化に対応し切れていない印刷会社は伸び悩んでいて、伸びている会社とはっきりと差が出てきています。
アナログの時代はある程度自社の仕事を想像してその範囲で設備を選択してやってこれましたが、デジタルになって、何をやっていいのかさえ分からなくなっている会社もあります。
99%エンドユーザーとの取引ですが、大半の地域で新しい事業の柱を見いだせないで悩んでいる顧客に直面しました。そこで、2006年11月に「クロスメディアソリューション開発本部」を立ち上げました。発注者のマーケティングの状況も含め、顧客のビジネスまでをサポートすることを目指したものです。顧客と一緒に考えていく中で、最適な設備やソリューションを提供したいと考えています。

北は北海道から南は沖縄まで、25店舗で地域に密着したサービスを行っていますが、そこで問題になるのはやはり人材の育成です。本店には技術も含めて幅広い人材がいますが、各拠点でマーケティングを含む幅広いサポートを行うのは困難です。また、拠点ごとのばらつきも問題になります。そこで、拠点の教育や地域のサポートを行うことができる人材を育てるための研修を行っているところです。新部門は9名でスタートし、スタッフを常時各拠点に派遣できる体制を整える予定です。
KBDブランドのソフトを自社開発してきましたが、社内ですべてを行えばノウハウは蓄積できますが、かなりのマンパワーが必要で、販売機会を逸する恐れもありました。アウトソーシングや専業者との提携によって開発期間を短縮し、顧客に最適なソリューションをいち早く提供できる体制に切り替えました。さらに、この人材を新部門のスタッフに振り分けることで、ソフト開発のノウハウを生かしたいと考えています。

――クロスメディアに着目したのはどうしてですか。

小澤 今までは、規模なりの仕事をもっている顧客に対して、品質向上や納期短縮、コストダウンを実現するソリューションを提供すれば、顧客の収益につながり、当社のビジネスにもなっていました。しかし、デジタル化や他産業の参入によって、今までの設備ややり方では規模に合った仕事を確保できない状況になっています。
当社は自社ブランド商品はもっていますが、あらゆるメーカーのハードからソフトまで取引していることから、本当に顧客の仕事に合ったソリューションを提供することができます。もちろん、品質向上や納期短縮、コストダウンに対応することが今後も基本になりますが、業界の変化にどれだけパワーを掛けられるかが大きな課題です。
PAGE展の移り変わりを見ても、アメリカの市場動向を見ても、短納期、少部数、デジタル化の方向にさらに進むことは間違いありません。印刷機械を動かせばもうかった時代から、ノウハウやソフトが企業の柱になってきました。印刷機と違って、オンデマンド機ではカウント料金が収益となるビジネスモデルになります。印刷会社も紙媒体だけではビジネスが成立しなくなっています。

このような状況から、当社が培ってきた最新の技術・情報を印刷業界の発展に活用できないかと考え、クロスメディアに着目しました。従来、生産部門に偏りがちだった当社の業務に営業部門の視野も入れることで、多様な環境変化にも対応する体制を整えました。 例えば、電子ブック作成アプリケーション「e-Book II」などの自社商品を活用してデータの資産性を高めるなど、顧客とともに印刷ビジネスを考え、顧客自身の問題解決を図っていきたいと考えています。また、カラージップジャパンの提供する次世代バーコード「カラーコード」の販売も開始しました。クロスメディアソリューションの重要なツールとして、既存の販売チャネルに加え、顧客を通じて顧客の顧客である企業や官公庁などへの拡販も図っていきたいと考えています。

――中小や地方は特に厳しい状況で、連携も必要になるのではないでしょうか。

小澤 現在の売上構成比は、材料関係が52%、自社開発製品やOEMを含む機械が48%です。事業所数の減少とデジタル化によって、材料関係の売り上げは減少傾向にあります。10年ほど前はMacintoshの導入やサポートがかなりの売り上げになりましたが、現在はEビジネスサイト「K-bazaar」に移行しています。このような変化に対応して新しい分野にシフトしていかないと、収益を確保できないだけでなく、顧客とのパートナーシップも築けません。
現在全国で100名近い営業担当者がいますが、制作からプレス、ポストプレスまで全部担当していて、これだけ変化の激しい状況で、あらゆる知識を覚えさせるのは無理があります。新しい分野に対応できるスタッフを本部で教育して、拠点のサポートをしていく必要があると考えています。

全印工連の業態変革推進プランに「原点回帰」がありますが、当社も61年目に入り、もう一度原点に戻って、見直すべきものは見直して、適正な利益を確保することで、体力を付けて次の手を打てる体制を整えたいと考えています。新しいことにリスクは付きものですが、リスクを最小限にするためにもやはり人、社内の人材が一番のカギになります。
東京、大阪、名古屋などと比べて、地方ほど厳しい状況にあります。そこで、顧客と一緒にマーケットをリサーチして、具体的なアドバイスや最適な提案ができれば、信頼・安心していただけるパートナーとして、取引にもつながるでしょう。
今までは、印刷物の品質管理を実現する「KBD Quality Reporter」や、紙粉による印刷トラブルを解消する「KBDペーパークリーナー」、インキカラーコントロールシステム「KBDマイクロカラー」、既存システムをCIP3化する「KBD EPLEX」などの自社ブランド製品によって、高品質・短納期・低価格を実現できました。しかし、今後は顧客にとって最適なシステムを提案するだけでなく、システムに合った仕事を確保していくための提案が必要になってくるでしょう。
1月25~26日に開催した「第43回新春機材展」では、「変革と飛躍」をテーマに、昨今の印刷業界が直面する「デジタル」「ネットワーク」「クロスメディア」という3つの課題に対して、新鋭の機器・最新情報を披露しました。また、前回に引き続き「コラボレーション展」を併催しました。全国から21社の印刷会社がそれぞれの強みを披露し、共創ネットワーク作りやビジネスチャンスの拡大にお役立ちできたのではないかと思います。

株式会社光文堂
〒460-0022 愛知県名古屋市中区金山2-15-18
TEL 052-331-4111 / FAX 052-331-4691

 

(2007年4月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)