括弧類の使い方

掲載日:2016年8月8日

日本語組版とつきあう その59

小林 敏(こばやし とし)

括弧類の使い方

括弧類の使い方には、おおよそのルールがある。このルールにそって使用しないと読者に誤解されるおそれがあるので、注意が必要である。主な使用法をあげると次のようになる。

パーレン(丸括弧)は、番号などをくくる際にも用いるが、主にある事項に対して補足・注記を加える場合に使用する。

かぎ括弧やクォーテーションマークは、語句の強調や引用などで使用する。なお、語句の強調はダブルミニュートまたは山括弧で示す方法もある。
会話を示す場合は、かぎ括弧を用いる(クォーテーションマークも使用されている)。
一般に論文名はかぎ括弧(またはシングルクォーテーションマーク)、書名は二重かぎ括弧(またはダブルコーテーションマーク)でくくる。

引用文中に引用者の補足説明をつける場合、縦組ではキッコウ(亀甲括弧、〔〕)、横組ではブラケット(角括弧、[])を使用している。

なお、横組ではかぎ括弧のかわりにクォーテーションマークを使用している例がある。これは縦組では、かぎ括弧、特に終わりかぎ括弧の位置が安定しないことによるが、今日では、あまりこうしたことも意識されず、横組でもかぎ括弧がよく使用されている。キッコウも、本来はブラケットを縦組用にしたもので、横組では使用を避ける、とする考え方もあったが、今日では横組でもキッコウは使用されている(ただし、数式では使用しない)。

括弧を入れ子にする

補足説明や引用で括弧類を用いる場合、入れ子にする例がでてくる。この括弧類を入れ子にする場合には、以下のような用いかたがある。

なお、補足説明のなかに強調する要素があった場合、子要素の強調を示すかぎ括弧(またはクォーテーションマーク)と親要素の丸括弧と、決められた括弧類を用いればよい。

入れ子の括弧類も同じ括弧類を用いる

入れ子にする子要素も親要素にも、同じ括弧類を使用する。
補足説明を丸括弧でくくる場合、図1に示したように、入れ子にした部分も同じ丸括弧を使用した例がある。文脈から理解できるという考え方である。

なお、この補足を丸括弧で示す場合、図1のように本文と同じ文字サイズとする方法と、文字サイズを1段階小さくする方法とがある。文字サイズを1段階小さくする方法は、活字組版ではけっこう面倒であるが、コンピュータ組版では、行長の調整も自動処理なので、今日では1段階小さくする方法がよく行われている。

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(図1)

入れ子の括弧類に別の括弧類を用いる

入れ子にする要素には、親要素とは別の種類の括弧を用いる。親要素と子要素は別なものを用いて、しっかり区別して示したほうがよいという考え方である。
たとえば、JIS Z 8301(規格票の様式及び作成方法)では、“角括弧は、既に丸括弧を用いている部分を、更に括弧でくくる必要がある場合に用いる”との説明があり、親要素は[]でくくり、子要素は()でくくることになっている。
また、縦組で引用文をかぎ括弧やクォーテーションマークでくくる場合、次のようにする方法が行われている。

 「○○○『△△△「◇◇◇」』」

 “○○○‘△△△“◇◇◇”’”

この方法の問題は、引用の原文の括弧類の用いかたがわからなくなることである。
ただし、引用文の全体をくくる括弧類としては山括弧を用いる方法もあるので、これを用いれば、原文のかぎ括弧をそのまま使用できる。

入れ子の括弧類に特別な括弧類を用いる

前回(“約物の種類”)の図1に示したようにかぎ括弧と二重かぎ括弧には、小かぎとよばれる特別なかぎ括弧がある。
小かぎが使用できる環境であれば、小かぎを子要素に用いることができる。この方法では、引用する原文のかぎ括弧をそのまま使用できる。

入れ子にする際に、どの方式にするかは一般的には決められない。その原稿での括弧類の使用方針と原稿のなかでの具体的な括弧類の使用状況とを見て判断するしかない。

なお、括弧類については、縦組にするか、あるいは横組にするかで問題がでる例がある。こうした事項を次でも解説している。

 「縦組と横組」
 (2)パーレン、ブラケット(括弧類1)
 (3)ダブルミニュート、ダブル引用符(括弧類2)
 (4)クォーテーションマーク(括弧類3)

日本語組版とつきあう (小林敏 特別連載)