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印刷MESの提案

デジタル印刷機の存在感が増すにつれ効率的なワークフローの構築が求められつつある。オフセット印刷と同様の生産管理では大量のジョブを効率的にコントロールするのは難しい。

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色管理の課題

印刷の色管理(カラーマネジメント)は、日本ではJapanColor認証の認知とともに、確立した技術のように思われているかもしれない。
しかしながら、実際に運用しようとすると、いろんな課題が見え隠れしてくる。

測色器の設定条件

・印刷分野はD50光源設定とされているが、他の分野ではD65 光源設定を指定しているところもある
・印刷分野は0-45度の光学系としているが、積分球光学系を指定している分野もある
 →同じ色度の数値でも、違う色になる場合がある

・ディスプレイも用途によっていろいろ
 液晶ディスプレイはバックライトに使う光源がいろいろ
 有機ELのような自発光タイプで輝度が高いものがある
 Adobe RGB、sRGB、Display P3、さらにはHDRなど複数ある
 →印刷データをどのディスプレイで見たかによって、違う色になる場合がある

・印刷業界の標準設定どおりのデータが納入されるわけでない
 Microsoft Officeで作られたデータはカラーレタッチ要
 →RGBとCMYKの色空間の大きさが違うため、違う色になる場合がある

・用紙の種類によって色再現性が変わる
 →用紙によって再現色域が変わり、違う色になる場合がある

などなど、いろんなケースが発生してくる。

さらに、印刷物そのもののバリュー向上を目指して、メーカーは新しい材料を使って付加価値を提供しようとしている。
例えば、広色域のCMYK材料の取り組みはもちろんのこと、CMYK以外の金・銀・蛍光色対応で、色のみならず質感表現までも多様化はますます進みつつある。

色・質感をハンドリングするために

カラーマネジメントのさまざまな課題に適切に対応するには、次のことができているかにかかっている。

1.測色の原理、計算アルゴリズムを理解している
2.色が見えるという視覚の原理 を理解している
3.色度座標と実際の色の関係が頭の中で結びつく

この3点がわかると、ずれている色をどう変換してあげればよいかがイメージできるようになる。

ただし、金・銀に関しては、色度以外に反射角度特性も管理項目に入れないといけない。蛍光色については、当てる光のUV(紫外光)成分まで管理項目に入れないと数値化は難しいため、測定のために特殊計測器が必要となる。
そして、欧米では質感も加えたカラーマネジメントを進化させるべく、標準化作業が進んでいる。

(JAGAT 特別研究員 笹沼信篤)

【関連セミナー 】
12/6 「測色計の最新動向とカラーマネジメント」:印刷総合研究会

基礎的な測色技術と、IGAS2022で出展されるカラーマネジメント関連の機材・ソリューションが紹介される。現時点の国内最新状況をウォッチングするのに最適な研究会であり、興味のある人はぜひ聴講して欲しい。

スマートテレビと動画配信サービス

コロナ禍が始まった2020年は、リモートワークが増え、巣ごもり需要が生まれるなど、われわれの社会生活に大きな影響を与えるものだった。

「愛の不時着」は、2020年に配信され、大ヒットしたNetflixオリジナルの韓国ドラマである。北朝鮮と韓国を舞台として、荒唐無稽というか壮大というか、涙あり笑いあり、ロマンスや復讐劇ありのエンターテインメントとして国内外で大人気となった。

筆者も、初めて緊急事態宣言が発出された頃にこのドラマの評判を耳にして、Netflixに加入し、視聴している。

主流となったスマートテレビ

近年、販売されているテレビ機器は、インターネットに接続できるスマートテレビが主流である。テレビ機器を設置する際にインターネット環境に接続することで、地上波や衛星放送の受信以外に、インターネットの動画配信サービスを視聴できる。また、さまざまなアプリを利用することができる。

例えば、Android TVというスマートテレビOSに対応している機種であれば、Google Playストアを通じてアプリをインストールし、使用することができる。それ以外のスマートテレビであっても、「YouTube」や「Netflix」「Hulu」「TVer」などの動画配信サービスのアプリが用意されている。

インターネット接続機能のないテレビ機器でも、ストリーミングデバイスをHDMI端子に接続することで、動画配信サービスを視聴することができる。

ストリーミングデバイスとは、インターネットを経由して動画配信サービスなどをテレビ機器で利用するための機器である。国内で普及しているものとして、AmazonのFire TV、GoogleのChromecast(クロームキャスト)、AppleTVなどがある。

動画配信サービスの動向

スマートテレビやストリーミングデバイスを接続したテレビによって利用できる代表的なものは、動画配信サービスである。

YouTubeは、代表的な動画共有プラットフォームであり、誰でも動画を投稿し、視聴することができる。スマートフォンなどのモバイルデバイスやパソコンと同様に、スマートテレビでも容易に視聴することができる。
また、近年、人気となっているのが、サブスクリプション型の動画配信サービスである。

Amazonプライムの会員には、プライム・ビデオの視聴サービスが含まれている。
世界同時配信でオリジナルのドラマや映画が話題となることが多いのは、前述のNetflixである。
近年急成長し、Netflixを猛追しているのが、ディズニー作品やマーベル、スターウォーズに特化したチャネルのDisney+(ディズニープラス)である。米国ディズニーの系列であるHuluも、国内外の人気ドラマや映画を配信している。

DAZN(ダゾーン)は、スポーツ専門のビデオ・サービスで、プロ野球やサッカー、ゴルフ、テニス、バスケット、ボクシングなどを視聴することができる。

TVer(ティーバー)は、国内の有力民放各社と大手広告代理店によって設立されたサービスで、近年ではテレビ番組の見逃し配信などが人気となっている。

テレビ放送とネットワーク配信

近年の若者はテレビを見ない傾向が大きくなっており、「若者のテレビ離れ」と指摘されることもある。実際、一人暮らしではテレビ受像機を持っていないことも多いという。

一方で、スマートテレビで動画配信サービスを利用することが増えている。つまり、「テレビ離れ」ではなく「テレビ放送(電波)離れ」が進んでいるともいえる。
米国では、スマートテレビや動画配信サービスが普及したことにより、「CATV離れ」が進展したと言われている。

インターネット環境とスマートフォンが一般化して久しい。これらによって、新聞や雑誌の視聴環境や音楽配信が大きな影響を受けたように、テレビ放送の視聴環境も変化していくことが想定される。

(研究調査部 千葉 弘幸)

小ロットと高付加価値印刷で注目されるデジタル加飾

インクジェット技術によって微細なスポット・ニスコーティング加工や箔押し、透明厚盛などをおこなうデジタル加飾が注目されている。

デジタル加飾機は、版や型が不要で専門的なオペレーターやパートナー企業に頼ることなく、小ロットで自由度の高いデザイン表現、短納期でのサンプル製作や製造が可能である。インパクトやプレミアム感あるデザインや手触りを表現し、付加価値の高い印刷物を提供することができる。
世界では、DMやパンフレットなどの商業印刷分野やパッケージ分野などで導入が進んでいる。

株式会社研文社は、高速インクジェット機、トナー方式デジタル印刷機の導入に加え、極小ロットの高付加価値印刷を実現するために、デジタル加飾機「JetVarnish」を導入した。

デジタル加飾はやや特殊な分野で、顧客(または顧客サイドのデザイナー)の要望・依頼から実現するケースはほとんどない。印刷会社のデザイナーが提案したり、サンプルを製作したりして、採用に到ることがほとんどである。

「JetVarnish」を導入して、最初におこなったのは、デジタル加飾をブランディングするための「テクニカルブック」の制作だという。
スポット・ニスコーティング、透明厚盛、金箔・銀箔のサンプル、プレミアム感あるデザイン表現の可能性を目に見える形にして掲載した冊子である。営業マンを通じて既存顧客に配布し、デジタル加飾で何ができるか、通常の印刷物に高級感を与えることができることを発信した。
また、SNSや「研文社デジタルオンデマンドセンター」のWebサイトを通じて、デジタル加飾をアピールしている。

具体的な案件があると、テスト・サンプルを製作するなどして、その価値を理解してもらい、受注に繋げている。

ダイレクトメールの封筒にデジタル加飾を施した際には、開封率が上がったとして、顧客に喜ばれた事例もある。デジタル加飾を施した商品も好評だったという。

白山印刷株式会社は、元々、小ロットのカラーオフセット印刷と化成品・合成紙などの特殊印刷・コールドフォイルを得意としていた。
多品種小ロット・高付加価値印刷に対する顧客ニーズが、年々高まっているため、3年ほど前に、スポット・ニスコーティング、透明厚盛、金・銀箔が可能なデジタル加飾機「Scodix」を導入した。以来、順調に事業が拡大しているという。

先般、さらなる多品種小ロットに対応するため、HP Indigo 7Kデジタル印刷機を導入した。デジタル印刷とデジタル加飾の相乗効果により、今後の事業拡大を見込んでいる。

白山印刷では、以前からニスコーティング・コールドフォイルに精通した社内デザイナーによって、顧客へのデザイン提案を行い、受注に繋げていた。デジタル加飾機でプレミアム感のある表面加工を実現するには、繊細なデザイン表現とデータ製作が重要である。「Scodix」を導入して以来、社内デザイナー中心に経験を積んだことで着実にレベル向上を果たしているという。

また、Scodix社が2014年から毎年開催している全世界のScodixユーザー向けのコンテスト 「Scodix Design Awards 2021」 において、白山印刷はテクノロジー部門・商業印刷部門・出版部門の3部門、計4作品で賞を獲得している。

近年の印刷物製作は、多品種小ロットが日常化している。また、デザイン表現や高級・プレミアム感など、さらなる差別化も求められている。 デジタル印刷+デジタル加飾は、高級感ある印刷物を製作する手段として、今後の伸長が見込まれている。

(研究調査部 千葉 弘幸)

■ 5/17(火)印刷総合研究会 デジタル加飾の最新動向とユーザー事例