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拡がりつつあるEdTechサービス

「GIGAスクール構想」により小中学校に学習端末が整備され、ITを活用した教育基盤・環境であるEdTech サービスの利用が広がっている。

「GIGAスクール構想」とEdTechサービス

近年、教育分野ではデジタルトラスフォーメーション(DX)が進展している。
文部科学省の「GIGAスクール構想」は、全国の小・中学生に1人1台のタブレットやノートPCを配布し、ICTを活用した教育を実践する事業である。2019年から始められ、2022年度末時点では全自治体の99.9%においてこれらの学習端末が配備された。

EdTechとは、EducationとTechnologyを組み合わせた造語であり、ITを用いて教育を支援する仕組みやサービスの総称である。児童・生徒向けの学習支援システム、教師のための授業支援システム、英会話やプログラミングなどをインターネット上で学習するサービスや学校の内外で利用するSNSなども含まれる。経済産業省や総務省も、これらのサービス導入を促進する助成金制度を設立し、支援している。
野村総合研究所は、タブレットなどのハードウェアを含まない国内のEdTech市場を2021年度は2674億円と推計しており、2027年度には 36%増の3625億円に伸長すると予測している。

EdTechとして提供されている技術・サービスは、学校向け、塾向け、個人向けに大別される。さらに社会人向けのリカレント教育やリスキリング教育も、EdTechによってより活発化することが考えられる。

このようなインターネットを通じた技術やサービスによって、さまざまな分野の良質な教育コンテンツが有効活用され、機会均等や教育格差の解消が進む可能性もある。

EdTechサービスの広がり

学習ポータル・プラットフォームとしては、「まなびポケット」(NTTコミュニケーションズ)、「Classi」(クラッシー)、「L-Gate」(内田洋行)などがあり、学習コンテンツにアクセスするためのポータル機能のほか、教材管理、利用者管理や校内SNS などの機能がある。

また、大量の答案紙をスキャンして一括採点する採点支援ツールとして、「EdLog(エドログ)」や「リアテンダント」(大日本印刷)、「YouMark」(佑人社)などがある。教師が自作したテストでもPDF化して採点し、その結果を集計・分析することができる。

授業支援ツールには、デジタル教材と連携してプリント作成や授業プレゼンテーションをサポートする「Studyaid D.B.」(数研出版)がある。

「T-GAUSS」(東京書籍)は、教科書・問題集・参考書の問題、高校・大学入試問題が収録されたデータベースを利用し、プリントやテストを作成するデジタル教材ツールである。

「スタディサプリ」(リクルート)は、講義動画を中心とするサイトで、サブスクリプション方式のオンライン学習サービスである。小中高校生向け、大学受験講座、社会人向けの英語・英会話コースなどもある。また、「スタディサプリfor TEACHERS」は教師向けの学習管理サービスで、宿題配信機能や生徒の学習進捗を管理する機能などを備えている。

スタディプラスが運営する「Studyplus」は学習記録に特化したプラットフォームである。無料で登録・利用でき、どの教材を何時間・何ページ、また何を学習したかを記録することで、学習履歴を可視化し、他のユーザーと比較することができる。また、月額税込980 円で200点以上の電子版学習参考書が使える「Studyplusブック」も運営している。

ポプラ社の本と学びのプラットフォーム「MottoSokka!(もっとそっか)」は、児童書や一般文芸書など、34社約3700件(2023年9月現在)の電子書籍が読み放題のサービス「Yomokka!(よもっか)」と、同社の百科事典をベースとした調べ学習サービス「Sagasokka!(さがそっか)」で構成されている。

学校教育に加え、塾や予備校、通信教育、学習参考書など、あらゆる方面の教育・学習環境が、EdTechサービスによってボーダーレスになりつつあるといえるだろう。

(JAGAT 研究・教育部 千葉 弘幸)

印刷MESの提案

デジタル印刷機の存在感が増すにつれ効率的なワークフローの構築が求められつつある。オフセット印刷と同様の生産管理では大量のジョブを効率的にコントロールするのは難しい。

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色管理の課題

印刷の色管理(カラーマネジメント)は、日本ではJapanColor認証の認知とともに、確立した技術のように思われているかもしれない。
しかしながら、実際に運用しようとすると、いろんな課題が見え隠れしてくる。

測色器の設定条件

・印刷分野はD50光源設定とされているが、他の分野ではD65 光源設定を指定しているところもある
・印刷分野は0-45度の光学系としているが、積分球光学系を指定している分野もある
 →同じ色度の数値でも、違う色になる場合がある

・ディスプレイも用途によっていろいろ
 液晶ディスプレイはバックライトに使う光源がいろいろ
 有機ELのような自発光タイプで輝度が高いものがある
 Adobe RGB、sRGB、Display P3、さらにはHDRなど複数ある
 →印刷データをどのディスプレイで見たかによって、違う色になる場合がある

・印刷業界の標準設定どおりのデータが納入されるわけでない
 Microsoft Officeで作られたデータはカラーレタッチ要
 →RGBとCMYKの色空間の大きさが違うため、違う色になる場合がある

・用紙の種類によって色再現性が変わる
 →用紙によって再現色域が変わり、違う色になる場合がある

などなど、いろんなケースが発生してくる。

さらに、印刷物そのもののバリュー向上を目指して、メーカーは新しい材料を使って付加価値を提供しようとしている。
例えば、広色域のCMYK材料の取り組みはもちろんのこと、CMYK以外の金・銀・蛍光色対応で、色のみならず質感表現までも多様化はますます進みつつある。

色・質感をハンドリングするために

カラーマネジメントのさまざまな課題に適切に対応するには、次のことができているかにかかっている。

1.測色の原理、計算アルゴリズムを理解している
2.色が見えるという視覚の原理 を理解している
3.色度座標と実際の色の関係が頭の中で結びつく

この3点がわかると、ずれている色をどう変換してあげればよいかがイメージできるようになる。

ただし、金・銀に関しては、色度以外に反射角度特性も管理項目に入れないといけない。蛍光色については、当てる光のUV(紫外光)成分まで管理項目に入れないと数値化は難しいため、測定のために特殊計測器が必要となる。
そして、欧米では質感も加えたカラーマネジメントを進化させるべく、標準化作業が進んでいる。

(JAGAT 特別研究員 笹沼信篤)

【関連セミナー 】
12/6 「測色計の最新動向とカラーマネジメント」:印刷総合研究会

基礎的な測色技術と、IGAS2022で出展されるカラーマネジメント関連の機材・ソリューションが紹介される。現時点の国内最新状況をウォッチングするのに最適な研究会であり、興味のある人はぜひ聴講して欲しい。

スマートテレビと動画配信サービス

コロナ禍が始まった2020年は、リモートワークが増え、巣ごもり需要が生まれるなど、われわれの社会生活に大きな影響を与えるものだった。

「愛の不時着」は、2020年に配信され、大ヒットしたNetflixオリジナルの韓国ドラマである。北朝鮮と韓国を舞台として、荒唐無稽というか壮大というか、涙あり笑いあり、ロマンスや復讐劇ありのエンターテインメントとして国内外で大人気となった。

筆者も、初めて緊急事態宣言が発出された頃にこのドラマの評判を耳にして、Netflixに加入し、視聴している。

主流となったスマートテレビ

近年、販売されているテレビ機器は、インターネットに接続できるスマートテレビが主流である。テレビ機器を設置する際にインターネット環境に接続することで、地上波や衛星放送の受信以外に、インターネットの動画配信サービスを視聴できる。また、さまざまなアプリを利用することができる。

例えば、Android TVというスマートテレビOSに対応している機種であれば、Google Playストアを通じてアプリをインストールし、使用することができる。それ以外のスマートテレビであっても、「YouTube」や「Netflix」「Hulu」「TVer」などの動画配信サービスのアプリが用意されている。

インターネット接続機能のないテレビ機器でも、ストリーミングデバイスをHDMI端子に接続することで、動画配信サービスを視聴することができる。

ストリーミングデバイスとは、インターネットを経由して動画配信サービスなどをテレビ機器で利用するための機器である。国内で普及しているものとして、AmazonのFire TV、GoogleのChromecast(クロームキャスト)、AppleTVなどがある。

動画配信サービスの動向

スマートテレビやストリーミングデバイスを接続したテレビによって利用できる代表的なものは、動画配信サービスである。

YouTubeは、代表的な動画共有プラットフォームであり、誰でも動画を投稿し、視聴することができる。スマートフォンなどのモバイルデバイスやパソコンと同様に、スマートテレビでも容易に視聴することができる。
また、近年、人気となっているのが、サブスクリプション型の動画配信サービスである。

Amazonプライムの会員には、プライム・ビデオの視聴サービスが含まれている。
世界同時配信でオリジナルのドラマや映画が話題となることが多いのは、前述のNetflixである。
近年急成長し、Netflixを猛追しているのが、ディズニー作品やマーベル、スターウォーズに特化したチャネルのDisney+(ディズニープラス)である。米国ディズニーの系列であるHuluも、国内外の人気ドラマや映画を配信している。

DAZN(ダゾーン)は、スポーツ専門のビデオ・サービスで、プロ野球やサッカー、ゴルフ、テニス、バスケット、ボクシングなどを視聴することができる。

TVer(ティーバー)は、国内の有力民放各社と大手広告代理店によって設立されたサービスで、近年ではテレビ番組の見逃し配信などが人気となっている。

テレビ放送とネットワーク配信

近年の若者はテレビを見ない傾向が大きくなっており、「若者のテレビ離れ」と指摘されることもある。実際、一人暮らしではテレビ受像機を持っていないことも多いという。

一方で、スマートテレビで動画配信サービスを利用することが増えている。つまり、「テレビ離れ」ではなく「テレビ放送(電波)離れ」が進んでいるともいえる。
米国では、スマートテレビや動画配信サービスが普及したことにより、「CATV離れ」が進展したと言われている。

インターネット環境とスマートフォンが一般化して久しい。これらによって、新聞や雑誌の視聴環境や音楽配信が大きな影響を受けたように、テレビ放送の視聴環境も変化していくことが想定される。

(研究調査部 千葉 弘幸)