海外JDF導入事例 カラードラック印刷所(ドイツ)

掲載日:2024年3月4日

CIP4から届いたニュースレターから海外のJDFユーザー事例を紹介する。

カラードラック印刷所はドイツ南部の人口5,000人余りの小さな町バイヤースブロンにあるパッケージ印刷の会社である。70年前に設立された同族経営の会社であり現社長が三代目にあたる。従業員数は約300名で年商は約6,000万ユーロ、年間約10億個のパッケージを生産している。得意先は、食品会社、製薬会社、製菓会社、そして一般消費者からなる。パッケージの企画開発から印刷、フルフィルメントまで一貫生産を行っている。

同社ではオフセット印刷を利用した大量生産に加えて、2016年に初めてデジタル印刷機を導入した。印刷ジョブのロットのばらつきの増加と製品の個別化に対応するためである。デジタル印刷の生産量はオフセット印刷よりも低いものの毎年、倍増している。

Web to Printを活用したスマートファクトリー

完全ペーパーレス(伝票レス)の製造体制の構築は、ドイツのシュトゥットガルトに本社があるctrl-sというデジタルワークフロー構築の専門会社と共に行った。プロジェクトの目的は、インクや用紙の選択や印刷枚数の指定間違いなどのエラーの発生要因を最小化し、納期遅れの発生を防ぐことである。

パッケージの仕様や部数、印刷基材の属性によってデジタル印刷した後に異なる型抜きの方式が選択される。型抜きの方式にはレーザーダイカット、ポリマープレートを使うもの、点字の作成も可能なロータリーダイカットがある。CADデータを利用した穴あけも行っている。また、オフセット印刷ではニス引きやその他の加工が伴うことが一般的である。パッケージの製造工程は箱を貼る工程で終了する。この部門は6~8名の従業員が所属し、仕事量に応じて2~3交代で勤務している。

2023年4月に同社はHP社のIndigo 35Kデジタル印刷機を導入した。B2サイズ対応の7色機で、紙厚500μmまで対応する。
HP Indigoの印刷ジョブのデータ準備は、ctrl-s社のクラウドベースでオブジェクト指向のワークフローシステム「Symphony」と、Hybrid Software社のCloudFlowプリプレスシステムによって処理される。また、プリフライトチェックは、Callas社のpdfToolboxを使用している。

Symphonyは、ジョブ処理を制御し、デジタル印刷およびポストプレス工程に必要なすべての設定条件を編集する。設定条件には、印刷基材の詳細、色設定、印刷部数、片面印刷か両面印刷かの設定などがある。さらに色分解設定も行う。ほとんどのPantoneカラー、そして顧客独自の特色について、Indigoの7色ないし、それより少ない標準インキの組み合わせで分版される。

その後のポストプレス関連の設定もSymphonyのディシジョンツリーの機能を使用して行われる。例えば、型抜きの種類の選択や貼り工程のパラメーターのセットなどである。

最も重要な判断は、印刷基材と関連した印刷機のカラー設定の自動化である。新しい基材が使用される場合、それに対応したロジックがシステム内で自動的に構成される。ディシジョンツリーは基本的に「はい」か「いいえ」の二者択一の組み合わせからなる。まれに値を指定することにより、複雑な意思決定を行うこともある。
Symphonyでは、こうしたロジックを使用してジョブのバッチ処理が可能である。同じ印刷基材、同じ型抜き方式、同じ貼り方式などでジョブをグループ化する。これにより、印刷機だけでなくポストプレス機器の準備時間を大幅に短縮できる。バッチ処理を行うために印刷ジョブの仕様情報は24時間前に収集される。

JDFに基づいた意思決定の自動化

以前はプリンタの設定情報はオペレーターが手作業でプリンタにセットしていた。また、コンテンツデータのPDFはホットフォルダー経由でIndigoのRIPに送信されていた。セット作業には一定の時間がかかりジョブ点数が多いので、毎日の作業量は相当な量があり、かつ人為ミスの可能性も生じていた。

手作業での設定なので、Symphonyが決定した設定情報をコピーするだけでなく、オペレーターの経験に基づいた意思決定を行うことがあり、その決定により間違いが発生し、納期遅れや無駄なヤレが発生していた。当然、やり直しのコストも発生する。

2023年4月以降、Indigoの出力設定にはJDFを使用することになり、手動で設定することはなくなった。デジタルパッケージ部門のマネージャーによると、「印刷の出力エラーは事実上なくなった」という。JDFの導入により、無駄が削減され、機械の稼働率が向上した。JDFインタフェースの実装に関わる負荷は大きなものではなかったが、生産コストの削減効果は大きかった。

SymphonyとHP Indigo35Kを連携させるプロジェクトは2023年4月にスタートし、5月初旬には完了した。期間が短くてすんだのは、Symphonyのフレームワークがモジュール構造であることと、JDF対応の仕様がすでに実装されているためである。また、デジタル印刷機側のJDFインタフェースについても新たにプログラミングすることなく接続可能であった。その結果、仕様定義、設定、実装のプロセスが2週間という短期間で実現できた。プロジェクトのメンバーはカラードラック印刷所から2名、Ctrl-Sから2名の4名から構成された。

デジタルパッケージ部門の次のプロジェクトはJMFインタフェースの拡張である。現在のJMFの利用は、ジョブの印刷終了時などのステータス情報の伝達に限定されている。このステータス情報は、Symphonyのジョブリストに表示され、その状況を受けて次の工程の開始を判断することができる。将来的には印刷ジョブごとに運用データがJDF形式でSymphonyに自動的に送信されるようになる。これにより、より正確な製造実績のデータ分析が可能となる。このプロジェクトは2023年8月または9月に予定されている。

JDFインタフェースを実装し、製造および生産関連の意思決定を自動化することにより、オペレーターは時間を節約し、印刷機のより高度で収益性の高い運用が可能となった。その結果、プロセスチェーン全体でエラーが減少し、生産リードタイムが短縮された。4日以内での短納期対応はJDFなしでは実現できなかったといえる。