オンライン教育を考える

掲載日:2020年8月7日

撮影・配信体制のサービスも拡充していることで、オンラインセミナーは一般化しつつあり、会社や自宅で取り組めるオンライン教育のニーズが今後は高まるだろう。

 

■オンライン教育をどうするか

 

人材育成で最も重要なのは、学校、社会人教育とも、知識やスキルの定着化を図り、活用できることを促すことである。そこで、効果的な学習方法としてアクティブ・ラーニングが注目されている。アクティブ・ラーニングとは、学習プロセスの質を改善、積極的・能動的・対話的な授業や学びの機会を提供する方法である。知識・技能の習得、それを応用し主体的に考え活用できる人材を育成することを目的とする。

 

文部科学省が平成29年に公示した「新しい学習指導要領の考え方」も、このアクティブ・ラーニングの視点を取り入れた授業の推進を掲げている。JAGATの教育セミナーも、受講者同士のグループワークやフィールドワークを通して、本人が考える力を養うことに力点を置き、長いものでは20日間集中して学ぶ大型講座もある。セミナーカリキュラムや講義内容はもちろんだが、講師、受講者が顔を合わせ、同じ場所と時を過ごしながら作り上げる空気感は教育効果を高めるのに重要であり、リアルセミナーの特徴でもあった。それをオンライン教育でどこまで実現できるのかが課題になっている。

 

オンラインは、「長時間デバイスで見るのは飽きる」「コミュニケーションが取りづらい」「接続方法が難しい」「教育効果に疑問」など、マイナスイメージもある。印刷会社向けのセミナーをオンラインで行っているが、DTPアプリケーションのデモや、実際の印刷物を展示して見て触って体感するようなものには向いていない。また、講義一辺倒のカリキュラムでは、長時間オンラインで見るのは厳しく、長くても3時間程度が限度だろうと感じている。

 

一方、講師と受講者、受講者同士のコミュニケーションはオンラインセミナーでも可能で、Zoomで言えば、ブレイクアウトルーム機能を活用して、グループ分けすることができる。そのなかで、画面共有をしながらディスカッションもできるし、講師も各グループへ入ってアドバイスをすることもできる。JAGATでもマーケティングセミナーで、グループに課題を出して、オンライン上でディスカッションをしてもらい、画面共有で発表してもらうカリキュラムを設定したが、当初の想定よりも円滑にコミュニケーションがとれると好評であった。そのためには、従来の研修企画より細かくスケジュールを設計し、講義、個人演習、グループワークをどのタイミングで行うのか、ホワイトボードはどう使うのか、オンラインの画面共有でも見やすいように配慮した投影資料づくり等、チエックすべきポイントは多い。
オンライン研修の内製化を検討している企業は、配信インフラが整っているから実施するとうことではなく、これらの点を考慮して受講者に飽きさせず満足できる研修設計をする必要があるだろう。

 

■オンライン教育をビジネス進化の機会に

 


実際にオンラインのセミナーを実施してみて、教育効果の視点からは、現時点ではリアルの研修に軍配が上がると感じている。一方でオンライン研修は全国どこにいても受講できる絶対的な利便性がある。複数の拠点がある企業や遠方の企業にとっては、お金や時間のコスト抑制しながら研修機会を実現できる。従ってオンライン研修の課題とメリットを理解して、オンラインに適したコンテンツを作ることが教育効果を上げるためには必要である。
社会の価値観が変わり、それに伴い求められるスキル、コミュニケーション方法、人材育成の手段も大きく変化していく必要がある。この変化をチャンスと捉え、ビジネスを進化させるための手段として人材育成のあり方も考えていきたい。

 

JAGAT 塚本直樹

<関連講座>

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