印刷会社の新サービス開発の課題~受講者アンケートからひも解く~

掲載日:2021年7月13日

コロナに備え、印刷会社も新たな収益の柱を得るべく事業・製品・サービスの構築が急務となる。取り組むうえでの今の実態や課題について考察してみる。

去る、2021年7月9日、「印刷会社の実践から学ぶ、新ビジネス開発のセオリー ~事業再構築補助金にも活用できるビジネス分析手法~」と題して、印刷会社の経営層、ミドルマネージャーを対象にセミナーを開催しました。
今話題の「事業再構築補助金」「具体的なビジネス開発手法」への関心度も高く、満員御礼81名の方に参加いただきました。
参加者には、新規事業に関する意識調査を兼ねて事前アンケートを実施いたしましたので、その内容の一部をご紹介いたします。

 

【Q.1】新規事業を取り組む上での課題は?

■人材不足は育成で補うのが現実的

中小企業はリソースが限られているため、新規事業の取り組むに向けて課題は多数あります。そのなかでも、今回のアンケートで上位にあげられるのが、「人材」「ノウハウ」でした。これは、中小企業庁が監修している中小企業白書でも同様の結果が出ていて、業種を問わず中小企業の大きなテーマになっております。
人材面の施策として大きくは「採用」または「教育」の2つの方法しかありません。資金に余裕があれば、取り組み予定の新規事業に経験がある外部人材の採用することが事業成功への近道となります。ただし、そうした人材は市場価値も高く、待遇面で採用することが難しい印刷会社も多く、社内人材の育成・活用が現実的です。

 

 

【Q.2】新規事業実行メンバー編成について?



次に育成対象や新規事業のメンバー構成についてですが、ほぼ同割合の結果になりました。新規事業を進めていく上で、理想な立ち上げ方法は37%の回答率があった「新規事業の専門部門の立ち上げ」です。ただし、仕事や人材に余力がある場合に限り、普段の仕事と兼務で行うケースは多いです。人選に関しては、マネジメント、ファシリテーションに優れたリーダーと各分野に詳しい人材をメンバーにすることが一般的です。特にリーダーの人選はプロジェクトを進めていくうえで重要で、経営陣(トップ)の考えを伝え、メンバー(ボトム)の実行力を促すことがカギとなります。また、特定の部門でメンバー構成をすると、後々関与していない他部門との軋轢や温度差によるミスマッチが発生し円滑にコトが進まないケースが多いです。

 

 

【Q.3】新規事業を後押しする会社としての取り組みを教えてください?



■「教育機会」×「社外との交流」がキーワード

新規事業を行う上で、プロジェクトメンバーの士気向上はポイントであり、会社からのバックアップは必須です。今回のアンケートでは、「企画提案できる場」を提供する印刷会社が最も多いです。過去、支援させていただいた例では、管理職は年1回経営陣に新規事業案のプレゼンをする場が義務付けられていたり、社内の共有ツールやグループウエアを通じて月に1回、日々気づいたことなど何気ないことを社長に直接メッセージすることができる等、取り組みは多様です。そうした場を会社からつくることで、ビジネスのアイデアが生まれやすい組織風土を生みます。

次に、「教育機会」「社外の人との交流の場」を提供する印刷会社が多いようです。【Q.1】新規事業を取り組む上での課題は?で、1位にあげられていました、人材とノウハウ不足を解消するためには、開発予定の新規事業に関わることをテーマにした教育機会を提供することが必要です。新規事業は社内の蛸壺に入っているだけでは、新たな発想が生まれにいくいです。教育カリキュラムによる、ノウハウを体系的に学ぶことは勿論ですが、同業、異業種問わず新規事業に関わる同じ立場の方と、実際に手掛けている新規事業案件に対して意見交換ができる場があると教育効果は高まります。そうした、「教育機会」×「社外との交流」がセットになったプログラムは、新規事業を成功するうえで重要なポイントです。

今回は、セミナー参加者の事前アンケートをもとに、印刷会社の新規事業への意識や取り組みについて紹介しました。with/afterコロナに備え、多くの企業は新たな挑戦が必要に迫られています。JAGATはその挑戦を人材育成の視点でサポートし業界発展に寄与していきます。

 

JAGAT CS部 塚本 直樹

 

【関連講座】
印刷ビジネス開発実践講座2022〔9月開講〕