令和3年度「人材開発支援助成金」改訂のポイント

掲載日:2021年8月10日

生産性向上や利益の拡大など更なる成長を見込み、社員教育を重視している企業も多い。しかし、人材育成には時間の確保や研修費などのコスト面での負担が大きい。そこで、助成金を有効に活用し、少しでも負担を軽減させるために、令和3年度「人材開発支援助成金」の改訂のポイントを紹介する。


「人材開発支援助成金」とは、計画的に人材育成を行う事業主を支援するもので、事業内の職業能力開発計画に沿った従業員に対する訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度である。人材教育への積極的な取り組みを促し、従業員の能力形成やキャリアアップが職場定着につながり、結果的に安定的な企業運営につなげるための施策といえる。

 

■「人材開発支援助成金」の受給には、従業員が訓練を受けている期間に発生する賃金に対する助成金と経費に対する助成金の2つがある。

【特定訓練コース】
 特定訓練コースには、6つの訓練が設定されている。そのうち印刷会社が活用しているコースと
 して「若年人材育成訓練」がある。
 ・対象者 :雇用契約締結後5年を経過していない、かつ35歳未満の雇用保険の被保険者
 ・基本要件:・OFF-JTにより実施される訓練(事業内訓練または事業外訓練)
       ・実施訓練時間10時間以上
【一般訓練コース】
 特定訓練コース以外で、職務に関連した専門的な知識及び技能の習得するための訓練に助成さ
 れる。
 ・対象者 :申請事業主または申請事業主団体等の構成事業主における被保険者
 ・基本要件:・OFF-JTにより実施される訓練であること(事業内訓練または事業外訓練)
       ・実施訓練時間20時間以上
       ・雇用する被保険者に対して定期的なキャリアコンサルティングを実施することに 
        ついて労働協約、就業規則または事業内職業能力開発計画で定めていること

 


改訂のポイント


令和3年4月にいくつかの項目が改訂された。その中でも注目すべきは、従来は助成の対象外であった通信制で実施するOFF-JT訓練も、一定の条件のもと認められるようになったことだ。

 

<通信制で実施する訓練が対象となる場合>
以下のOFF-JTに限り、助成の対象となる。

 

ポイントは、「一般訓練コース3.一方的な講義ではなく、講師から現受講生の様子が見て取ることができるとともに質疑応答などができる形態(同時双方向)により実施される遠隔講習」である。録画視聴などではなく、双方向のやり取りのできる研修で基本要件に満たしていれば、助成の対象となる点である。

例)オンラインセミナー/総訓練時間:20時間/受講料:200,000円
(内訳)
 ・賃金助成:380円×20時間=7,600円
 ・経費助成:200,000円×30%=60,000円
  賃金助成と経費助成を合わせ、67,600円の助成金を受給できる可能性がある。

 

コロナ禍で集合型研修に参加することが厳しい中、オンライン研修が対象となれば、安心して受講することができる。移動時間や場所を問わず参加することができ、また、今までは、開催場所が遠方により、従業員を研修に参加させることが難しかった企業も社員教育の幅が広がる。専門的な知識や技術を備えた人材を育成するためにも、上手く助成金を活用していただきたい。
なお、JAGATでも助成金の基本要件を満たすオンライン研修も実施しているので、あわせて活用いただきたい。

 

JAGAT CS部 加治 寛子

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