「JAGAT印刷産業経営動向調査」より新技術、サービスの導入状況、満足度、導入意向を紹介する。
JAGATが毎年、会員企業を対象に実施している「印刷産業経営動向調査」の2024年度の調査結果から新技術/サービス/システムの導入状況、満足度、今後の導入意向についての結果を紹介する。本調査回答企業の平均従業員規模は135名、1社当たりの平均売上高は27.3億円であり、中堅クラスの印刷会社が中心である。
新技術、サービスの対象は以下に示す18項目である。経年変化を追いかけることを重視しつつ、状況の変化にあわせて少しずつ項目の入れ替えを行っている。昨年度から生成AI(画像系)と生成AI(テキスト系)の2項目が追加されている。

設問内容としては、(1)現在導入しているかどうか、(2)導入している場合の満足度、(3)今後3年以内に導入予定があるかどうかの3つである。満足度については、A:大変満足、B:やや満足、C:普通、D:やや不満、E:非常に不満の5段階評価で回答してもらい、A:5点、B:2点、C:0点、D:-2点、E:-5点という重みづけで点数換算して満足度を数値化している。

図2は現在導入が多い順に並べたものである。第1位は8年連続でバリアブルデータ印刷であり、導入率は65.3%(前年 69.5%)であった。第2位は品質検査装置で53.1%(前年 66.3%)、第3位は動画制作の52.0%(前年52.6%)となっている。
生成AI(テキスト系)が33.7%で8位(前年22.1%)、生成AI(画像系)が32.7%で9位(前年24.2%)であった。いずれも前年から大きく導入が進んでいるものの後述の満足度でみると生成AI(テキスト系)が15位、生成AI(画像系)が14位と下位になっている。ビジネスへの活用については模索が続いているようだ。

図3は、2018年からの導入率の経年変化で上昇傾向にある項目をピックアップしたものである。最も伸び率が高いのが資材料発注の電子化で導入率2.0%から24.5%へ大幅増となっている。次に伸び率が高いのがRPAで導入率は5.1%から23.5%と約4.5倍増、続いて営業支援ツール(CRM/SFAなど)が12.1%から30.6%へ約2.5倍増、オンライン校正が23.2%から45.9%へ約2倍増、プロセスレスプレートが15.2%から29.6%で約2倍増となっている。

図4は今後3年以内に導入を予定しているとの回答が多い順に並べたものである。第1位は生成AI(画像系)で24.5%(前年も1位で25.3%)、第2位は資材料発注の電子化(脱FAX)で23.5%(前年も2位で24.2%)、第3位が生成AI(テキスト系)で22.5%(前年も3位で22.1%)であった。昨年同様、生成AIへの旺盛な導入意欲がみられる。
一方で、導入意欲が減退しているものでは、第10位オンライン校正(リモートプルーフ)(前年11.6%から6.1%へ5.5ポイント減)、第17位スマホ/タブレット対応アプリ制作(前年10.5%から4.1%へ6.5ポイント減)が目につく。

図5は前述の重みづけで満足度を数値化し、高い順に並べたものである。0ポイントが中心(可もなく不可もなく)となる。満足度の点数が最も高かったのはバリアブルデータ印刷で1.88ポイント。前年の4位 1.28ポイントから大きく上昇した。第2位はプロセスレスプレートが僅差で1.85ポイント。第3位は自動面付で1.68ポイントであった。
満足度が大きく上昇したのが、第7位のWeb to Print/印刷通販で前年の▲0.12ポイントから0.88ポイントとプラス転換している。商材を絞るなど特色が出せれば商圏拡大策として有効である。第9位のCG制作も前年の▲0.14ポイントから0.75ポイントとプラス転換している。2012年調査で項目が追加されて以来、最高ポイントとなった。当初10年ではマイナスポイントが8回と低評価が続いていたが、最近3年間ではプラスポイントが2回と上向きにある。成果を出すには腰を据えた取り組みが必要なようだ。
生成AIについては画像系が0.25ポイント(第14位)、テキスト系が0.21ポイント(第15位)であった。導入は進んでいても満足度は高まっていない。有効活用のための試行錯誤が続いているようだ。
「JAGAT印刷産業経営動向調査」 結果をまとめた報告書は、10月に最新版が刊行予定です。
(研究・教育部 花房 賢)