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DTPエキスパート認証試験、2020年3月より2段階制に改定

公益社団法人日本印刷技術協会(略称:JAGAT、東京都杉並区、会長:塚田司郎)は、2019年10月28日、DTPエキスパート認証制度を2段階制に改定することを発表しました。

DTPエキスパート認証制度の概要と改定の背景

DTPエキスパート認証制度とは、DTPによる印刷物製作および印刷ビジネスに必要な知識を体系化したカリキュラムにしたがって試験を行い、その知識を習得した方をDTPエキスパートとして認証する制度です。
1994年以来52回の試験を実施し、延べ合格者数は22,000人を超えています。DTP・印刷の知識をバランス良く身に着ける手段として、国内印刷業界ではスタンダードなものとなっています。

この試験は、DTPおよび印刷に関する知識を問う択一式の学科試験、与えられた期間内に課題を提出する実技試験から構成されています。

しかし、実技課題に取り組むには主要なDTPソフトウェアを入手し、操作を習得する必要があり、制作部門従事者以外には高いハードルとなっていました。

例えば、営業担当社員の育成を目的として受験促進を図ろうとする企業からは、学科試験のみの受験制度を要望する声が上がっていました。

「DTPエキスパート」「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制に改定

このたび、DTP エキスパート認証制度を「DTPエキスパート」「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制に改定します。

新たに学科試験だけの試験を実施し、その合格者を「DTPエキスパート」として認証します。
従来と同様の学科試験・実技試験の合格者は「DTPエキスパート・マイスター」となります。
「DTPエキスパート・マイスター」試験を受験し、学科試験のみ合格(実技試験に不合格)となった方は、「DTPエキスパート」として認証されます。

2020年以降にDTPエキスパートに合格した方は、将来、実技試験だけを受験することができます(アップグレード試験)。この試験に合格すると、DTPエキスパート・マイスターとして認証されます。

また、2019年までにDTPエキスパート資格を保有している方は、実質上 DTPエキスパート・マイスター と同等と見なされます。そのため、次回の更新試験に合格した時点でDTPエキスパート・マイスターとして認証されます。

2020年3月に実施する第53期試験より、この2段階制に改定します。

この改定により、印刷ビジネスに携わる多様な職種の方々に、DTPおよび印刷関連知識の習得機会を提供します。
例えば、若手社員や企画・営業担当でDTP・印刷の基礎を着実に習得したい方にとって、DTPエキスパートは取り組みやすい試験となることが予想されます。

次回DTPエキスパート認証試験の実施予定

第53期DTPエキスパート認証試験は、2020年3月15日(日)に実施します。
受験申請期間は1月7日(火)~2月13日(木)となっており、同サイトの申請フォームから申込むことができます。
次回試験の詳細や受験料は、受験要項と共に近日中に発表されます。


【2段階制の概要】

種別 試験科目 備考
DTPエキスパート・マイスター 学科・実技 DTP・印刷に関する広範な知識と制作・管理の実務能力を備えている
DTPエキスパート 学科 DTP・印刷に関する広範な知識を備えている

※DTPエキスパート・マイスターを受験し、学科試験のみ合格された方は、DTPエキスパートとして認証されます。次回以降、アップグレード試験を受験することもできます。

【DTPエキスパート・マイスターへのアップグレード】

2020年以降のDTPエキスパート取得者は、認証有効期限内であれば、任意の期にアップグレード試験を受験することができます(2020年9月より実施)。

種別 対象者 試験科目 合格後
アップグレード試験 DTPエキスパート(2020以降) 実技 エキスパート・マイスター認証

【2019までのDTPエキスパート保有者】

2019年までにDTPエキスパート資格を保有している方は、実質上DTPエキスパート・マイスターと同等と見なされます。そのため、次回の更新試験に合格した時点でDTPエキスパート・マイスターとして認証されます。

種別 対象者 試験科目 合格後
更新試験 DTPエキスパート(2019まで) 学科(CBT) エキスパート・マイスター認証

※CBT:時間・場所の制約を受けずに、Webブラウザ上で実施する試験方式

(資格制度事務局)

DTPエキスパート・マイスター実技試験

デザイン性とデータ制作力を重視 (DTPエキスパート・マイスター実技試験)

印刷ビジネス人材像の変化と学びーエキスパートDAY2019開催ー

印刷ビジネス人材像およびDTPエキスパートの役割の変遷とともに、これからの学びについて考えます。

組織の成果と個人のキャリアの方向性

図では組織の成果と個人のキャリア形成を一つの軸の二つの方向として示していますが、個人のキャリア・スキル形成、自己実現にも視点を置き、組織の理念に共感しつつ成長していく持続的な働き方像を描くことは、組織内の活性化につながります。組織の成果と個人のキャリア形成について、同じベクトルを持つことで互いの成果を加速するものと位置づけることが重要です。
エキスパート資格制度はその手段の一つとして、資格取得という近距離の目標値を定め、一定の知識・技量の水準を身に付けることをまずは第一歩としています。さらにさまざまな学びの場と手段を提供することで、継続的な人材育成として活用していただくように制度を設計・運営しています。

経営戦略と人材

DTPエキスパート役割の変遷と現在

かつてDTPシステムの黎明期~普及期においては、DTP環境による印刷物製作の標準化とこれを推進する人材が求められました。関連技術が刻々と進化するに伴い顕れる新たな技術的課題とその解決という激動期を経て、現在ではDTPシステムによる印刷物製作は一般化しました。今やDTPシステムによる印刷物製作は限られた一部の熟練者のみに依存するものではなくなりつつあります。ナレッジの共有方法は多様化し、さらにDTPアプリケーションを始めとした制作環境自体の進化もあり、普及期から安定運用の時期へと移行しています。

こうした製作環境の変遷がある一方、印刷物自体の活用場面は、他メディアの発展とさらには生活者の価値観の変容による影響を大きく受け、絶えず変化しています。特殊な技を持たなくとも情報の発信者となれる現在、様々なメディアの特徴を熟知し、情報発信の文脈を作ることにも視点を置いて印刷ビジネスを捉えなければなりません。

このような環境において印刷ビジネスに携わる人材に求められる能力は、スペシャリストの域から、印刷物による価値を生み出す新ビジネスの創造とプロジェクトマネジメントへと広がっています。DTPシステムによる印刷物製作全体を理解し、ビジネスの実践に結び付けるための印刷総合知識の重要性が増しており、こうした一定の知識を試験範囲とするDTPエキスパート認証の取得は、「印刷物による価値を提供するビジネスの土台作り」と位置づけられます。

印刷ビジネス人材の今後の展開

印刷業界全体が認識している通り、印刷ビジネスは現状に甘んじているだけでは未来を見通しがたい状況にあります。よって、印刷人であれば当然知っておくべき知識全般を身に付けたうえで、今後の他メディア、さらには他業界とのコラボレーション等に向けて、印刷物製作との橋渡し、協業の模索が可能な人材へと変化していく必要があります。一例を挙げれば、マーケティング施策の中で印刷物の強みを活かした情報発信の文脈作りをするにあたっても、マーケティング関連の知識が皆無では印刷ビジネスのプロとして信頼を得ることは難しいでしょう。

こうした印刷ビジネスの発展的展開を望むため、エキスパート認証制度では取得後の継続学習も重視し、オンラインラーニング形式の更新試験を導入、その他弊会主催の継続学習イベント等を開催しています。取得後に何を学びどのようにビジネスに活かしていくか、実践の方法は、各社の事業の方向性、各人のキャリア計画に応じて、模索し続ける必要があるでしょう。エキスパート資格取得は印刷人の基本OSであり、取得後の継続学習はビジネス変化に応じた各種アプリケーションのインストールやバージョンアップおよびそれらの連携と言えるかもしれません。

JAGATでは、資格取得という通過点を経験していただいたうえで、様々な事業展開、取得後の活躍に役立てていただけるような内容のイベントや学習コンテンツを提供していくよう計画しています。

JAGAT CS部 丹羽 朋子

11月15日(金)開催 JAGATエキスパートDAY

11月15日(金)JAGATエキスパートDAY開催

印刷ビジネス人材をテーマとしたセミナーイベント『JAGATエキスパートDAY』を開催します。
有資格者は無料でご参加いただけます。
内容およびお申込み方法詳細は、下記Webページにて10月初旬公開予定です。
是非ご来場ください。

【開催日】2019年11月15日(金)
【場所】JAGAT本社【東京都杉並区)
【参加費】受講料定額制 1名3,000円(エキスパート有資格者およびご招待者は無料)

JAGATエキスパートDAY2019

更新試験システム不具合解消のご案内

9月2日開始更新試験にお取り組みのみなさま

更新試験専用サイトでの試験実施に際し、試験システムに一部不具合が発生していることが判明しました。
ご不安をおかけしましたことをお詫びするとともに、経過をご報告いたします。
なお、現在すでに不具合は解消しております。

【不具合の内容】
中断ボタンにより試験を一時中断後、正常に再開できない。

【不具合の解消】
9月3日9時30分頃システム修正により不具合は解消しました。

上記解消以前に取り組みを開始された方で、中断後の再開でエラーが発生する場合は、下記CBTシステムサポート窓口までご一報ください。

株式会社 イー・コミュニケーションズ CBTサポート窓口
 E-MAIL: cbt-support@e-coms.co.jp
 電話番号: 03-3560-3905
 受付期間:試験期間内のみ対応
 受付時間: 10:00~18:00(土・日・祝日・年末年始を除く)

2019年9月実施更新試験開始

本日より更新試験が開始となります。
申請手続きを完了されたかたは、8/29にお送りした更新試験サイトログインパスワード案内メールにてご自身のパスワードをお確かめのうえ、試験へお取り組みください。

■試験期間:9月2日(月)10時~9月30日(月)当日中

■更新試験専用サイトURL
https://expert.mc-plus.jp/exam/

パスワード案内メールを受信していない場合は?
試験専用サイトログインページの「パスワードをお忘れですか?」よりご登録情報を入力いただくと、パスワードを自動再発行いたします。(ユーザーIDは、エキスパートID四桁‐四桁です。)

■お問い合わせ先

・試験専用サイトのシステムや取り組みかたに関するお問い合わせ
(株)イー・コミュニケーションズ サポート窓口
TEL 03-3560-3905
受付期間:試験期間中
受付時間:平日10:00~17:00

・制度内容および更新手続きに関するお問い合わせ
(公社)日本印刷技術協会 資格制度事務局
TEL 03-3384-3115
E-MAIL expert@jagat.or.jp

第52期DTPエキスパート認証試験 実技試験サイト

2019年8月25日(日)実施第52期試験を受験された皆様へ

実技試験には、当日配布した課題制作要項の通り、下記よりログインのうえお取り組みください。

DTPエキスパート認証試験 実技試験サイト

1.実技試験サイトにログインする。

受験番号と受験申請時に登録したメールアドレス(受験票に表示)を入力し、「ログイン」ボタンをクリックする。

受験票にメールアドレスの表示がない方、またはメールアドレスに誤りがある方

「メールアドレス登録がお済みでない方」の「メールアドレス登録へ」をクリックすると、メールアドレス登録画面が表示されます。画面の指示に従いメールアドレスをご登録のうえ、ログインしてください。

2 画面上部の「課題ダウンロード」をクリックし、必要なファイルをダウンロードする。

課題はAB の2 種類の中から1 つだけ選んで制作してください。
課題ファイル内に、各課題の「課題制作の手引き」が記されたPDF ファイルと素材データが収められています。選択した課題の「課題制作の手引き」をよく読んで制作してください。

  • 「課題制作の手引き」にしたがっていない提出物は減点や不合格の対象になります。
  • ダウンロードファイルはZIP 形式で圧縮されておりますので、解凍してご利用ください。
  • 解凍後、最初にフォルダの内容を調べて、データに不良がないこと、ファイルがそろっていることを確認してください。
  • OS など制作環境の違いにより、データの変換や調整が必要な場合は、各自で対応をお願いします。

3 画面上部の「課題アップロード」をクリックし、提出物をアップロードする。

「ファイル1」「ファイル2」の欄で各々「作品」「制作指示書」のファイルを選択し、「アップロード」をクリックしてください。
画面に「ファイルのアップロードが完了しました」と表示されるとともに、ご登録メールアドレスあてに課題ファイルアップロード完了のメールが届きます。
ご自身がアップロードしたファイル名が記載されていますので、提出ファイルに間違いがないかどうか、ご確認ください。
提出ファイルに間違いがあった場合など、正しいものに差し替えたい場合は、あらためて課題アップロード画面よりアップロード操作を行って下さい。
提出期限内に最後にアップロードしたファイルを採点対象といたします。

  • 「作品」はPDF/X-1a またはPDF/X-4形式にデータ化し、「制作指示書」はPDF ファイルにしてアップロードしてください。
  • 提出ファイルは、各ファイル20MB 以内としてください。20MB を超えるファイルはアップロードできません。
  • 万が一、通信障害等でアップロードが出来ない場合は、資格制度事務局(03-3384-3115)までお問合せください。

課題ファイルが正しくアップロードされたかどうか確かめるには

課題ファイル完了メールを受信しているかどうかお確かめください。
受信していない場合でも、課題アップロード画面で「課題のアップロードは 2019/xx/xx xx:xx に完了しております。」と表示されていれば、提出は完了しています。

8月25日開催試験受験票発送

2019年8月25日(日)開催下記試験の受験票を発送しました。
第52期DTPエキスパート認証試験
第28期クロスメディアエキスパート認証試験

※送付先は、受験申請時にご自身で指定された連絡先(会社または自宅)宛てです。

8月19日になっても届かない場合は、資格制度事務局までお知らせください。

エキスパートWeb基本台帳システムメンテナンスのお知らせ

有資格者のみなさまへ

平素よりエキスパートWeb基本台帳をご利用いただきありがとうございます。
基本台帳関連システムメンテナンスに伴い、下記の日時において基本台帳へのアクセスが不可となりますことをお知らせします。

アクセス停止期間:2019年8月10日(土) 21:30~22:10(予定)

プログラミング教育、情報教育の重要性

小学生のプログラミング教育

2017年に発表された新学習指導要領では、小学生からプログラミング教育を導入することが盛り込まれた。「プログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付ける学習」と記されており、情報機器の操作やプログラミング体験を通して、プログラミング思考を習得するという主旨らしい。2018~2019年の移行期間を経て、2020年度から全面実施となるそうだ。

これだけ聞くと、素晴らしい取り組みと思える。プログラミング教育を通じてIT社会の発信側の考え方を学ぶことは、情報リテラシーの基礎となり、たいへん有意義である。しかし、コンピュータ機器や環境の整備、指導者側のスキルなど、十分に用意できているのだろうか、自治体や都道府県で温度差があるのではないか、と多くの方々が懸念されているようでもある。

高校における「情報」教科

高校においても、2003年から「情報」科目は必修となっている。2013年の高校の学習指導要領の改訂で「情報の科学」 「社会と情報」 という教科が新設され、どちらかの科目を選択することになっている。試しに2科目の教科書、「情報の科学」(東京書籍版:2018年発行)と「社会と情報」(東京書籍版:2018年発行)を入手してみた。

「情報の科学」では、フィルムカメラとデジタルカメラの違いからアナログとデジタルを比較するなど、的確で分かりやすい解説がある。文字コードや3原色の原理から、コンピュータで文字や画像を表示する仕組みを説明している。通信ネットワークやWebサーバーからインターネット環境が構成されていること、電子メールの仕組みなど、基本的な内容が簡潔にまとめられている。

さらに、問題解決の章があり、情報の分析・モデル化・アルゴリズム・プログラムといった項目がある。また、情報社会の分野では学習・仕事・家庭の環境、セキュリティ、情報の信頼性、メディアリテラシー、コミュニティ、モラル・マナーといった項目もある。

今日のIT社会を理解する基本的な仕組みや知識、リスクなどが網羅されており、良く考えられた教科書だと感じた。限られたページ数であり、詳細な解説は望むべくもないが、IT教育として重要な項目が網羅されている、という印象である。

20代の若手職員に、高校生当時に「情報」科目についてどのような勉強をしたか、聞いてみた。すると、「『情報』の教科書を開いた記憶がない。試験もなかったので勉強したこともない。」「実際にやったのは、ワープロ、表計算、プレゼンテーションソフトの実習だけ。」という言葉が返ってきた。

最近の学生は幼少期からパソコンに触れ、習熟している者もいれば、スマートフォン以外にはほとんど触ったことがない者など、情報格差が拡大しているとも聞く。

印刷業における体系的基本知識の習得は?

新入社員研修でDTP実習や印刷実習を課す印刷企業は、少なくない。ビジネスマナーや印刷知識、営業研修などと共に、1~2日程度の実習が取り入れられている。つまりは体験目的の実習であり、体系的な知識や判断力を修得することはできないだろう。

例えば、印刷物制作で付加されるトンボは、何のために必要で、なぜあの形になっているのか、印刷工程の全体像が見えていなければ、簡単には理解できない。

プロ用途のアナログカメラがほぼ皆無となり、デジタルカメラのデータ入稿だけとなった。つまり、RGBデータを印刷するにはCMYK変換が伴うため、カラーマネジメントの知識は必須である。

オフセット印刷のビジネス全体は停滞しているが、デジタル印刷の市場は年々成長を続けている。これは、単に印刷方式の変更やコストダウンが目的ではなく、在庫レスの実現、最新情報を反映した印刷物をタイムリーに提供する、パーソナライズDMで絶大な効果を上げる、など顧客の課題を解決する手段が求められているからである。

印刷業務に関わる専門家、つまり印刷人であれば、営業担当であろうと制作担当であろうと、印刷工程の体系的な理解や専門的な知識が必要となる。

DTPエキスパート試験は、DTPだけでなく印刷技術、カラー、情報システム、情報コミュニケーションという現代の印刷業務に必須で基本的な分野をカバーしたもので、合格者は印刷工程を体系的に理解し、専門的な知識を有するとされている。基本に立ち返って学習することで、今後のビジネスに大いに役立つことは間違いない。

現代社会で体系的なIT教育の重要性が高いことは明らかであり、学校教育でプログラミング教育や「情報」教科などが充実されることは望ましいことである。しかし、実現可能なのは薄く広く程度であることは致し方ないと言えるだろう。

一方、社会人に求められる情報リテラシーやスキルは、より専門的で体系的な学習が必要である。組織としても、個人としても、体系的な知識を習得して専門性を高めることが重要である。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)