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【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[DTP]1-5 グラフィックデザイン

  • グラフィックデザインとは、印刷物制作における視覚表現の計画および技術をいう。企画および編集方針に従い、一貫した外装および内装の視覚演出構成を行う。
  • グラフィックデザインは、1つのページの紙面だけでなく、前後のページとのつながりを含めた表現を扱うものであり、Webページなど紙メディア以外のメディアのコンテンツ構成やデザインにもつながる基本技能である。

1-5-1 エディトリアルデザイン

情報やメッセージを他者に伝えるためには、人間の感覚による認識の多くを占める視覚に訴えることが有効である。情報をより正確かつ効果的に伝えるために、情報の視覚化をさまざまな素材や手法を駆使して具現化することがエディトリアルデザインである。

➢ レイアウトデザイン

  • レイアウトデザインの役目は、文字や図版など要素の配置、組み合わせによってある印象を演出することである。
  • レイアウトデザインは、誰に向けてどのような情報を伝えるためにどのように視線を誘導するかという意図をベースに行い、偶然に頼るのではなく、グラフィックデザインの系統的な展開法を学んで活用する必要がある。

【代表的レイアウト手法】

  • シンメトリー:左右対称な構図はバランスのとれた安定感のある印象を与える。
  • アシンメトリー:非対称の構図をあえて採用することにより、斬新な印象になる。
  • ムーブマン:静止している平面の中に動きを感じさせる表現のことであり、方向性が備わっている要素を用いたり、遠近や時間経過をイメージさせる配置をしたりすることで効果を演出する。
  • 整列:複数の要素をある基準線を設けて揃えて配置することにより、視線を誘導し情報を認識しやすくするとともに、統一感・安心感を与える。
  • バランス:要素の大きさ、配置、色などにより、紙面上の均衡を保つ。
  • リズム:要素の連続・繰り返しにより軽やかで心地よいテンポを感じさせる。
  • 破調:一定のリズムやバランスがとれている状態の一部をあえて破壊する、またはアクセントをつけることにより、メリハリや深みを演出し、視線を惹きつける。
  • 量感:色や写真、字形や書体などの複合的要素により、体積や容積、重さから実在感、立体感などを感じさせる。
  • 黄金比:約1対1.618の比率で描かれた長方形は、そこから正方形を除いても常に同じ縦横比となる。この比率は最も安定した形状を作るとされる。
  • ルート比率・白銀比:辺の長さが1対√2の比率の長方形は、長辺を半分に分割しても常に同じ縦横比になる。A判、B判の用紙はルート比率になっている。
  • ホワイトスペース:デザイン的必然性を持って設けられる紙面上の何もコンテンツの置かれていない部分をいう。
  • ジャンプ率:紙面を構成する要素の大小差のことをいい、メリハリや訴求効果、平易で落ち着いた印象などをコントロールする。
  • 配色:目的に合わせて色を配置することであり、紙面デザインにおいては、ターゲットと内容を理解し、色のもつ心理的効果なども踏まえて効果的に用いる。色合いを示す「色相」、鮮やかさを表す「彩度」、明るさを表す「明度」の三属性を人間の感覚で等間隔に分割し表現したマンセル表色系などを用いて調整を検討する。
  • 視線誘導:情報を効果的に伝えるためには、読み手の「目の流れ」を意識する。目の流れの原則は、横組みの場合は左上から右下へ、縦組みの場合は右上から左下へという流れが大原則となる。
  • アイキャッチ:誘目性の高い素材により読み手に興味を持たせる。またどの素材から視線を誘導したいか、情報の優先順位をつける役割として用いる場合もある。

➢ グリッドレイアウト

  • 活版印刷時代の画一的な紙面レイアウトに対して、非対称なグリッドをベースにした印刷紙面制作の考え方がバウハウスとともに出現し、デザイナーが最初にレイアウトを作成するという流れが生まれた。
  • グリッドはデザインを簡単に反復できる機能をもち、作業者が異なったり、作業する時間が異なったりしていても複数の紙面を同じように見せることができる。
  • 同じ考えのグリッドをベースにすれば、サイズや印刷様式、色などが異なる多様な印刷物において、例えば1つの会社の「コーポレートアイデンティティー」といった様式や意匠を維持させることができる。
  • グリッドをベースに、本文テキストとイラストや写真、見出し文字を整列させてかっちりしたイメージにすると同時に一部を強調することで読者の理解の一助となる。

➢ ユニバーサルデザイン

  • ユニバーサルデザインとは、すべての人のためのデザインを意味し、国籍や年齢、障害・能力の如何にかかわらず利用できるようなデザインを目指すものである。
  • ユニバーサルデザインは、(1)公平性(2)自由度(3)単純性(4)わかりやすさ(5)安全性(6)省体力(7)スペースの確保、などの考え方が基本となっている。
  • ユニバーサルデザインで特に重要なのは、視認性や判読性、デザイン性、可読性である。
  • 年齢による視覚感度の低下や色弱者に配慮したカラーユニバーサルデザイン、言語に依存せずに情報や注意を示すピクトグラム(「絵文字」「絵単語」)などの視覚記号、読みやすさやシンプルさを考慮したUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)の使用なども有用である。

1-5-2 造本設計

  • 印刷物の仕様全般を計画し設計することを造本設計という。印刷物の意図や目的に基づき、印刷物の判型、色数、製本形式、つきものなどの仕様を設計する。
  • 印刷物の形状仕様とともに、版面やノンブル、柱、頭注、脚注など余白部分に組み込まれる要素とそのスタイルも決める。
  • 判型、組方向、本文文字サイズ、行間、1行の字詰め、1ページの行数は相互に関係しているので、目的に合わせてそれらのバランスを見つけるのが紙面の基本デザインで、エディトリアルデザインの一部である。

1-5-3 紙面設計

  • 紙面設計とは、造本設計を基に各紙面(頁)を構成する要素をどのように配置(レイアウト)するかを定めることである。
  • 造本コンセプトに沿ったレイアウトデザインを決め、各ページが統一されたイメージを与えるように各要素のレイアウトフォーマットを定める。

➢ 版面

  • 読み手は視覚表現物を見るときに、同時にその周囲も目にしている。よってより読みやすく美しく見せるには、対象物とその周囲の比率についても考慮すべきである。紙面に占める版面の比率を版面率といい、版面率は読みやすさや読み手に与える印象に影響を及ぼす。
  • 小口の余白は製本のズレがめだちやすいのであまり小さくできないことに注意する。
  • 書籍の版面とは、1つのページの中で文字や図版などの印刷面が占有する部分のことで、本文部分の各ページの版面は同一である。また、左右両方のページを1つの図版として捉えるため、仕上がり判型に対して版面が中央に位置していることは稀である。
  • マージンと版面の取り方には諸説あるが、判型に対する伝統的な書籍の体裁はノドあきが一番狭く、次に天、小口、地の順となるのが一般的である。

➢ 段組み

  • 複数段を設定して本文を分割することで、書体や文字サイズ、行間や行長、段間などの相関関係により紙面のイメージや読みやすさに効果をもたらす。

➢ 文字組み

  • 版面の内側で基本組体裁に必要な各種要素の値を決める。まず組方向や段数、書体を決め、多段組の場合には段間を設定する。次に行長や字詰めを決める。
  • 行長や字詰めと相互に関連しているのは文字サイズである。可読性という点で横組よりも縦組の方が行長を長くとることができる。
  • 行と行の間は一般に文字サイズの25%~100%程度あける。文字サイズと行間を足したものが行送りである。視線の移動を容易にするために、行長に従い相対的に行間を大きくとる。
  • 情報を伝えるための要素として可読性などに配慮するだけでなく、ビジュアルの要素として書体が持つ表現力による紙面イメージづくりにも配慮する。レイアウトフォーマットを作成するにあたっては、文字組の視覚効果や体裁を踏まえて、情報内容および表現力を考慮した一貫性のある文字スタイル設定が重要となる。

➢ 写真

  • 配置のしかたにより紙面の印象や表現力に影響するので、目的に応じた効果的な配置を考慮する。
  • 紙面構成によっては、写真の構図や印象がデザインを左右する場合もある。写真素材の扱い方に加えて基本 的な撮影の知識まで把握し、配置したい写真の撮影絵柄について指示が出せるとより効果的なデザインが可能となる。

➢ 裁ち落とし

  • 写真を紙面の端いっぱいに配置することにより、裁ち落とされた外側の見えない部分までイメージを広げさせる効果がある。裁ち落とし写真を使用する際には、紙面の外側の塗り足し部分まで写真をのばしておく必要がある。

➢ 全面写真

  • 天地左右すべてを裁ち落とし、紙面全体に1枚の写真を配置することにより、大きなインパクトを与える効果がある。

➢ 図表

  • 情報を図表化することにより、時間の経過や数値をビジュアル化して直感的に伝えることができる。さらに、分類・整理して検索性を高めたり概念やつながりをよりわかりやすく表現することもできる。このような効果的な表現に加えて、紙面にアクセントをつける役割も果たす。

【DTPキーワード】デジタルカメラの撮影

デジタルカメラは、銀塩カメラと基本的には構造が同じで、アナログのフィルムの代わりにCCD またはC-MOS といった撮像素子を使う。
デジタルカメラは使用用途に区分すると、コンシューマ用のレンズ交換が不可能なコンパクトデジタルカメラ、レンズ交換が可能なデジタル一眼レフカメラ、それより大型な撮像素子をデジタルバックとして使う中判デジタルカメラなどがある。最近、ファインダーを除いてその構造上必要であったミラーを排したミラーレス一眼カメラも台頭してきた。ファインダーの代わりに本体背面に付いている液晶ディスプレイで画像の確認をする。
デジタルカメラの撮影は、光源の色温度に注意を払わなくてはならない。光源の色温度の変化に対して、ホワイトバランスを調整して白い被写体が白くなるようにする。
撮影の手法として、メインの被写体にピントをしっかり合わせて、不要な部分はぼかすということも必要である。これにはレンズの被写界深度特性を利用する。
デジタルカメラの被写界深度は、一般に、レンズの焦点距離、絞り、許容錯乱円の大きさに依存する。
コンパクトデジタルカメラの場合、小型で気軽に失敗しない撮影を前提に設計されているのでレンズ焦点距離が短いレンズを使用している。そのため全体にピントが合うため、被写界深度が深く、奥行き感やボケを生かしにくい。撮像素子のサイズによって被写界深度が変わるのではなく、同一画角を得るために使用するレンズの焦点距離が撮像素子のサイズにより変わるため被写界深度に違いが出る。
デジタルカメラでは、一般的に撮像素子の画素数が多いほど、解像度が高いきめ細やかな画像を得ることができる。同じ画素数であれば、大きな撮像素子の方が1 画素当たりの面積(ピクセルサイズ)が大きいのでその表現力は優位である。
撮像素子が小さければ、1 画素当たりの光を取り込める量は少なくなり、感度は低くなる。また、画素数が多くなれば多くなるほど1 画素当たりの光を取り込める量は少なくなり感度は低くなるので、「画素数が多い=高画質」というわけではない。そのため画素数の多さと同様に撮像素子の大きさも画質を決める上で重要になる。
大きな撮像素子のメリットは、ダイナミックレンジが広いので、取り込む情報量の多さから白飛びや黒潰れが抑えられ、表現の豊かな撮影が可能である。
受光面積が広いので感度を上げてもノイズが少なく画質劣化が少ない。また、ぼけを利用した撮影が可能
である。

CCD(シーシーディー)[Charge Coupled Device]

光の情報を電気信号に変換する半導体素子。この変換を光電変換と呼ぶ。デジタルカメラ、スキャナー、ファクシミリなどに使用されており、光を電気に変換する受光素子(画素)を複数個並べ、光の変化を画素ごとに独立して電気信号に変換する。そのため、CCDの画素数が多いほど画像は精密になる。

C-MOS(シーモス)

[Complementary Metal-Oxide Semiconductor]
相補型金属酸化膜半導体。2 種類のMOS FET と呼ばれるトランジスタをペアで使用する。MOS とは、金属と酸化物、半導体という3 種類の物質を重ね合わせた構造を持つ素子。CCD とCMOS では画像データを読み出す方式が異なり、CCD は電気信号を順次送りだし最後に増幅するのに対して、CMOS は1 画素ごとにアンプ(電荷を電気信号に変える変換器)が付いており、画素ごとに信号を増幅して読み取るため、素早い読み出しと省電力化、小型化が可能である。

ミラーレス一眼カメラ[Mirrorless interchangeable-lens camera]

2008 年10 月にパナソニックが世界初のミラーレス一眼「LUMIX DCM-G1」を発売。反射鏡を用いた光学式ファインダーを使わずに、電子ビューファインダーや液晶ディスプレイを通して像を確認する仕組み。反射鏡のタイプは実像を直接見ているためシャッターチャンスの反応性が良い。被写界深度のプレビューはファインダー像が暗くなり実際の撮影画像とボケ具合には差が生じる。ミラーレスタイプは実像を画像処理をしているため多少時間がかかる。一方被写界深度の確認は正確にできる。また、物理的な鏡がないためボディは薄型化が可能である。

被写界深度[depth of field]

ある距離の被写体にピントを合わせた場合、その前後の被写体についても鮮鋭な像を結ぶ範囲。レンズの焦点距離が短いほど、また絞りを絞り込むほど被写界深度は深くなる。

焦点距離[focal length ; distance]

レンズの中心からその焦点までの距離。焦点距離はf(小文字)値で表す。小学校の理科の実験で虫めがねに太陽光を入射させると、光軸の先で光の束が一点に集光する点がある。この光の集まる点に黒い紙を持っていくと紙が焦げてしまい、この” 焦げる点” が文字通り” 焦点” ということになる。焦点はカメラでいうところのCCD 面に当たりレンズからCCD までの距離を焦点距離(focal length)と呼ぶ。つまりレンズのf 値とは焦点距離“focal length” の頭文字「f」をとってf 値○○mm と呼ぶ。

絞り[aperture ; diaphragm]

絞りとはレンズに入ってくる光の穴の大きさを開いたり閉じたり調整すること。絞りには値があり、F(大文字)値やFナンバーと呼ばれる。

絞り値[F-number]

計算しやすいようにF 値を√ 2 の2 乗ずつ増やしていくと(段)F1.4(√ 2)、F2(√ 4)、F2.8(√ 8)、…となり、光量は1/2 倍、1/4 倍、1/8倍、と暗くなっていく。絞りとシャッター速度は相反する絞り込むと暗くなりシャッター速度を遅くすることで光を取り込む時間を長くする。逆に開くと明るくなり、シャッター速度を速めて光を取り込む時間を少なくする。この組み合わせで被写界深度などが異なる。

許容錯乱円[Permissible circle of confusion]

ピントが合っている位置にある「点」は、撮像素子上で「点」に写る。しかしピントの合う前後では撮像素子上ではボケて円になる。この円を錯乱円という。
しかし極小円は人の目には点に見える可能性があるため、ぎりぎり点に見えるときの錯乱円の大きさ(直径)を、許容錯乱円径といい、単位をmmで表す。

有限会社 セネカ
代表取締役
野尻 研一
(Jagat info 2015年月7号より転載)

2016年8月21日実施試験合格発表掲載予定日

第46期DTPエキスパート/第22期クロスメディアエキスパートの合格者の受験番号は、

2016年10月28日(金) 9:00

に掲載予定です。

発表まで今しばらくお待ちください。

JAGAT資格制度事務局

リンク

第46期DTPエキスパート認証試験/第22期クロスメディアエキスパート認証試験は、10月末の合格発表予定です。発表に先立ち、今期試験の傾向をまとめました。
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【DTPキーワード】出版印刷物

出版印刷物とは雑誌、書籍などの多ページの印刷物(ページもの印刷物)を指す。
多量の文字を主体とした印刷物では、文章に図版(説明図/イラスト/写真など)などが付随する場合がある。それらは所定ページの決められた場所にリンクされていなければならない。
伝統的な書籍の構成要素は、前付け、本文、後付けの3つの部分に分けることができる。目次より前に入る「前付け」には、扉、序文、献辞、凡例、口絵がある。本文は、見出し、文章、注などで構成され、奥付以外の「後付け」には、索引、あとがき、付録がある。
出版物は、編集者が企画/設計して、それに基づいて、執筆者/カメラマン/イラストレーターなどの専門家が文章/写真/図版の原稿を作成する。
各種原稿は、文字入力、レイアウト、図版作成などの専門家が加工し、編集者がそれぞれの品質と内容をチェックして、所定位置に貼り込まれる。

前付け[front matter]

書物で本文より前に置かれている付き物の部分を総称していう。

本文[text]

一般的な意味で用いられる本文(ほんぶん)は書籍などの付き物を除く主要部分の文章を指す。一方伝統的書籍では本文ページは見出し、文章、柱などから構成されるが、本文(ほんもん)はページの中で、見出し、リード文、図表、柱、ネームなどを除く主要部分の文章をいう。

後付け[back matter ; end matter]

本文の後ろに付ける付録や文献、索引、奥付、広告等の総称。

改丁

章見出しなどでページを改め、次の奇数ページからまた組み始めること。奇数ページで終わった場合、次の偶数ページは白となる。

改ページ[new page]

章見出しなどでページを改めて組版すること。奇数偶数に関係なくページが変わればよい。

追い込み[run in ; run on]

改行、改段、改ページなどをやめて、前に続けて組むこと。

付き物[annexed matter]

書籍の本文に対して、前付け、後付け、別丁など、本文を除いたものの総称。また、出版物に付属する印刷物(売り上げカード、腰帯び、カバー、ケース、ブックジャケット、愛読者カード、投げ込み広告など)の総称。

束見本[bulking dummy]

印刷前に実際の印刷用紙を使用して製本し、本文ページなど全体の厚みを見る。これにより装丁上の表紙やブックカバーのデザインが可能となる。特に背表紙の幅が重要になる。

装丁(装幀・装釘)[book binding design]

装丁は本文ページ以外の函やカバーなどのデザインが重視される場合があるが、本来はデザインのほかに紙の質、印刷方法、後加工など、保存や強度などの工業設計的要素も含む。
書籍構成

有限会社 セネカ
代表取締役
野尻 研一
(Jagat info 2015年月2号より転載)

【DTPキーワード】知的財産権

知的財産権は大きく「知的創造物についての権利」と「営業標識についての権利」の2 つに分けられる。「知的創造物の権利」は主に著作権、営業秘密、特許権、実用新案権、意匠権があり、「営業標識の権利」は商標権、商号、商品表示/形態などがある。これらの権利には、対応するそれぞれの法律があり、印刷物と密接なのは「著作権」や「商標権」である。

知的財産権の世界的な取り決めは1886 年のベルヌ条約に始まり、1996 年のWIPO 著作権条約と推移してきた。WIPOは知的財産権を扱う国連の専門機関である。

著作権は、作者や制作者に認められた独占的権利である。独占的権利には複製権、翻案権、公衆送信権などがある。

著作権は著作者に認められる。また、著作権は譲渡が可能であり、譲渡したとき元の著作者を「原著作者」といい、譲渡された方を「著作権者」という。

日本においては、1899 年に制定された旧著作権法を全面改正した現行の著作権法が1970 年に制定された。著作権法は社会実態に沿うように、ほぼ毎年何らかの改正が行われている。

日本における著作権は無方式主義をとっており、届け出る必要はなく創作時点で権利が発生する。

著作権の保護期間は著作者の死後50 年であるが、法人著作は公表後50 年となる。ただし映画については公表後70 年である。

著作者人格権は著作者に与えられた権利で、公表権、氏名表示権、同一性保持権よりなる。また著作権と異なり人に譲渡することはできない。

著作隣接権は著作物などを伝達する者に与えられた権利である。

著作物の種類は、文章など言語の著作物、音楽の著作物、舞踊/無言劇の著作物、美術の著作物、建築の著作物、地図/図形の著作物、映画の著作物、写真の著作物、プログラムの著作物などのほかに、二次的著作物として翻訳、編曲したもの、編集著作物として百科事典、辞書、新聞、雑誌、詩集などの編集物、データベースの著作物などがある。

コンテンツホルダーとは、そのコンテンツに関しての著作権など何らかの権利を保有している個人や企業・団体の総称である。

著作権の一部である複製権や出版権を取得したコンテンツを数多く所有して配信事業を行っている企業は、コンテンツホルダーとなり得る場合がある。

ビジネスにおけるコンテンツホルダーには、権利料収入の有無につながるコンテンツの著作権を持つことが重要である。

商標は商法で定める商号とは異なり、商品やサービスに付けられる。商標は特許庁に届け出て認可されることで、商標権者はその商標を独占的に使用することができる。

商標には商品に付けられた「商品商標」とサービスに付けられた「役務商標」がある。企業名のイメージロゴも登録可能であり、商品グループに対しても商標登録が可能である。

商標の種類は、文字、図形、記号およびそれらの組み合わせがあるが、それ以外に立体も登録可能である。ただし、匂いや味、音は登録できない。

保護期間は登録の日から10 年であるが、更新することができる。また登録後3 年以内に商品および役務として使用しないでおくと、不使用商標として取消しの請求を受ける恐れがある。

知的財産権

有限会社 セネカ
代表取締役
野尻 研一
(Jagat info 2015年月1号より転載)