第46期DTPエキスパート認証試験 出題の意図と解答の傾向

掲載日:2016年10月28日
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2016年8月21日実施第46期試験の出題意図と採点結果分析を掲載する。

1.結果概要

筆記試験と課題制作試験を合わせた最終合格者は208名(合格率44.9%)

2.学科試験

カリキュラム第11版に基づき、「DTP概論」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーション」の各カテゴリーにおいて各々正答率80%以上を合格基準として出題設定した。
今期は、下記項目を新出題項目として設定し、関連知識を問う出題を行った。

はがきの制作

マーケティングと印刷物の連携を想定し、DMはがき制作時の一般常識として、郵便規定に関する出題を行った。印刷物の用いられる場面を踏まえて制作にあたることが、顧客からの信頼性につながる。印刷需要の変化に応じた守備範囲の拡大を踏まえ、新たな印刷物需要への対応には、関連情報を確認するという姿勢が求められる。この点を提示する出題となった。

製版指定用語の変遷/レイアウトソフトの機能と役割

印刷業界では独特な業界用語を用いることが少なくない。例えばかつての活字組版や写植用語、フィルム製版に由来する言葉が、実体がなくなった今でも用語として残っていることがある。その由来や現在の意味を正しく理解しているかを問う出題を行った。製版指定用語の変遷については、平均正答率が80.0%とおおむね理解されている結果となった。レイアウトソフトの機能と役割については、実際にレイアウトソフトを日常的に使用している受験者にはなじみのある用語が主となった問題であり、全般に正答率は高く出たが、一部JIS組版企画との兼ね合いでの出題の箇所で「文字クラス」について問う設問に対し、知識の混乱が見られた。「文字クラス」とは、「文字・記号のふるまいかたについて性格を同じくするものをグループ化したもの」であり、JIS X4051においてその配置についての規定がある。InDesignの文字組アキ量設定画面で用いられているので、今一度確かめたい。

校正・校閲、検版

信頼性の高い印刷物製作を行うための手段と方策について問う観点から、校正・校閲・検版に関する出題を行った。設問で用いられる「校正」「校閲」という用語の違いについての理解が不確かであるための誤答が多くみられ、結果として平均正答率42.9%と新問題中最も低い正答率となった。
「校閲」では、原稿内容が事実とあっているかどうか、歴史的事実との齟齬の有無、科学分野における数値の正当性や単位系の正確さ、などの観点から、原稿内容を見てその適否を確かめ正す。「校正」では、主に表記の不統一や誤りを正す作業をいう。
最終的に検版にて検出された相違点の確認と判断手順を正しく理解し、ミス防止に努めたい。

色校正技術と最新事情

色校正の現状と進化、印刷物のカラートラブル防止について問う出題を行った。出力紙での色校正技術の変化と現状については理解されている結果だったが、ソフトプルーフ(ディスプレイ上での校正)に用いることが可能なデバイスとして問われた4Kモニターの仕様について、正答率の低さが目立った。

制作指示書

印刷物製作と制作指示における留意事項として、実技試験で求められる制作指示書に関する理解を確かめる出題を行った。全般に正答率は高く出たが、紙面設計に求められるポイントの理解が不十分である結果が表れた。紙面構成について、要素の配置(レイアウト)、文字組(スタイル指定)に関する指示を紙面設計図とともに示し、シリーズとして再利用可能なテンプレートとして表すことが求められる。実技試験ではこれをもとに作品が再現可能かどうかも判定基準となる。今後も注視を促したい。

偽造防止技術とセキュリティー

印刷技術の応用範囲の一つとして紙幣の偽造防止技術について問う出題を行った。

3Dプリンターとモデリング

新たなビジネスモデル創出の基盤となる技術として、3Dプリンターに関する出題を行った。元となる3次元オブジェクトデータの扱い、適用出力物に応じた複数の出力方式など、今後の印刷業との連携や展開に備えた動向にも目を向ける姿勢が求められる。

3.実技試験

【概要】
受験者463人に対し、課題提出者は373人となった。課題合格率は、提出者ベースで80.6%であった。課題ごとの内訳は以下の通りである。

課題種別 提出数
冊子課題(携帯電話マニュアル) 52
ペラ課題(DMハガキ) 321

ペラ課題について、昨年新規出題したDMハガキを題材として設定した。今回のテーマは、「骨董展示即売会の案内DM」である。
印刷物がもたらす効果に視点を置くという観点から、制作の前提となる想定として、単なる展示会の告知に留まらず、特定顧客へのインセンティブ、新規客誘導用クーポン、リピート客獲得を狙ったシリーズ予定の掲載など、一連のマーケティング活動にDMを活用することを前提とした要素を盛り込んだ課題とした。
課題の出題趣旨自体は変更していないが、従来制作指示書への記載項目としている「制作上の留意点-制作意図」として記載する制作コンセプトに関わる部分は、必然的に上記想定に応じた独自性が表れるはずである。よって、この部分についての表記に独自性がないものについては、採点上過去の試験対策や受験者どうしの流用との判断となる場合がある。手引きに記載の顧客からの要件整理を踏まえ、自身の言葉で記述することが求められている点をご理解のうえ、取り組んでいただきたい。

2016.10 DTPエキスパート認証委員会
文責:JAGAT資格制度事務局 丹羽 朋子