【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[DTP]1-5 グラフィックデザイン

掲載日:2016年11月1日
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  • グラフィックデザインとは、印刷物制作における視覚表現の計画および技術をいう。企画および編集方針に従い、一貫した外装および内装の視覚演出構成を行う。
  • グラフィックデザインは、1つのページの紙面だけでなく、前後のページとのつながりを含めた表現を扱うものであり、Webページなど紙メディア以外のメディアのコンテンツ構成やデザインにもつながる基本技能である。

1-5-1 エディトリアルデザイン

情報やメッセージを他者に伝えるためには、人間の感覚による認識の多くを占める視覚に訴えることが有効である。情報をより正確かつ効果的に伝えるために、情報の視覚化をさまざまな素材や手法を駆使して具現化することがエディトリアルデザインである。

➢ レイアウトデザイン

  • レイアウトデザインの役目は、文字や図版など要素の配置、組み合わせによってある印象を演出することである。
  • レイアウトデザインは、誰に向けてどのような情報を伝えるためにどのように視線を誘導するかという意図をベースに行い、偶然に頼るのではなく、グラフィックデザインの系統的な展開法を学んで活用する必要がある。

【代表的レイアウト手法】

  • シンメトリー:左右対称な構図はバランスのとれた安定感のある印象を与える。
  • アシンメトリー:非対称の構図をあえて採用することにより、斬新な印象になる。
  • ムーブマン:静止している平面の中に動きを感じさせる表現のことであり、方向性が備わっている要素を用いたり、遠近や時間経過をイメージさせる配置をしたりすることで効果を演出する。
  • 整列:複数の要素をある基準線を設けて揃えて配置することにより、視線を誘導し情報を認識しやすくするとともに、統一感・安心感を与える。
  • バランス:要素の大きさ、配置、色などにより、紙面上の均衡を保つ。
  • リズム:要素の連続・繰り返しにより軽やかで心地よいテンポを感じさせる。
  • 破調:一定のリズムやバランスがとれている状態の一部をあえて破壊する、またはアクセントをつけることにより、メリハリや深みを演出し、視線を惹きつける。
  • 量感:色や写真、字形や書体などの複合的要素により、体積や容積、重さから実在感、立体感などを感じさせる。
  • 黄金比:約1対1.618の比率で描かれた長方形は、そこから正方形を除いても常に同じ縦横比となる。この比率は最も安定した形状を作るとされる。
  • ルート比率・白銀比:辺の長さが1対√2の比率の長方形は、長辺を半分に分割しても常に同じ縦横比になる。A判、B判の用紙はルート比率になっている。
  • ホワイトスペース:デザイン的必然性を持って設けられる紙面上の何もコンテンツの置かれていない部分をいう。
  • ジャンプ率:紙面を構成する要素の大小差のことをいい、メリハリや訴求効果、平易で落ち着いた印象などをコントロールする。
  • 配色:目的に合わせて色を配置することであり、紙面デザインにおいては、ターゲットと内容を理解し、色のもつ心理的効果なども踏まえて効果的に用いる。色合いを示す「色相」、鮮やかさを表す「彩度」、明るさを表す「明度」の三属性を人間の感覚で等間隔に分割し表現したマンセル表色系などを用いて調整を検討する。
  • 視線誘導:情報を効果的に伝えるためには、読み手の「目の流れ」を意識する。目の流れの原則は、横組みの場合は左上から右下へ、縦組みの場合は右上から左下へという流れが大原則となる。
  • アイキャッチ:誘目性の高い素材により読み手に興味を持たせる。またどの素材から視線を誘導したいか、情報の優先順位をつける役割として用いる場合もある。

➢ グリッドレイアウト

  • 活版印刷時代の画一的な紙面レイアウトに対して、非対称なグリッドをベースにした印刷紙面制作の考え方がバウハウスとともに出現し、デザイナーが最初にレイアウトを作成するという流れが生まれた。
  • グリッドはデザインを簡単に反復できる機能をもち、作業者が異なったり、作業する時間が異なったりしていても複数の紙面を同じように見せることができる。
  • 同じ考えのグリッドをベースにすれば、サイズや印刷様式、色などが異なる多様な印刷物において、例えば1つの会社の「コーポレートアイデンティティー」といった様式や意匠を維持させることができる。
  • グリッドをベースに、本文テキストとイラストや写真、見出し文字を整列させてかっちりしたイメージにすると同時に一部を強調することで読者の理解の一助となる。

➢ ユニバーサルデザイン

  • ユニバーサルデザインとは、すべての人のためのデザインを意味し、国籍や年齢、障害・能力の如何にかかわらず利用できるようなデザインを目指すものである。
  • ユニバーサルデザインは、(1)公平性(2)自由度(3)単純性(4)わかりやすさ(5)安全性(6)省体力(7)スペースの確保、などの考え方が基本となっている。
  • ユニバーサルデザインで特に重要なのは、視認性や判読性、デザイン性、可読性である。
  • 年齢による視覚感度の低下や色弱者に配慮したカラーユニバーサルデザイン、言語に依存せずに情報や注意を示すピクトグラム(「絵文字」「絵単語」)などの視覚記号、読みやすさやシンプルさを考慮したUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)の使用なども有用である。

1-5-2 造本設計

  • 印刷物の仕様全般を計画し設計することを造本設計という。印刷物の意図や目的に基づき、印刷物の判型、色数、製本形式、つきものなどの仕様を設計する。
  • 印刷物の形状仕様とともに、版面やノンブル、柱、頭注、脚注など余白部分に組み込まれる要素とそのスタイルも決める。
  • 判型、組方向、本文文字サイズ、行間、1行の字詰め、1ページの行数は相互に関係しているので、目的に合わせてそれらのバランスを見つけるのが紙面の基本デザインで、エディトリアルデザインの一部である。

1-5-3 紙面設計

  • 紙面設計とは、造本設計を基に各紙面(頁)を構成する要素をどのように配置(レイアウト)するかを定めることである。
  • 造本コンセプトに沿ったレイアウトデザインを決め、各ページが統一されたイメージを与えるように各要素のレイアウトフォーマットを定める。

➢ 版面

  • 読み手は視覚表現物を見るときに、同時にその周囲も目にしている。よってより読みやすく美しく見せるには、対象物とその周囲の比率についても考慮すべきである。紙面に占める版面の比率を版面率といい、版面率は読みやすさや読み手に与える印象に影響を及ぼす。
  • 小口の余白は製本のズレがめだちやすいのであまり小さくできないことに注意する。
  • 書籍の版面とは、1つのページの中で文字や図版などの印刷面が占有する部分のことで、本文部分の各ページの版面は同一である。また、左右両方のページを1つの図版として捉えるため、仕上がり判型に対して版面が中央に位置していることは稀である。
  • マージンと版面の取り方には諸説あるが、判型に対する伝統的な書籍の体裁はノドあきが一番狭く、次に天、小口、地の順となるのが一般的である。

➢ 段組み

  • 複数段を設定して本文を分割することで、書体や文字サイズ、行間や行長、段間などの相関関係により紙面のイメージや読みやすさに効果をもたらす。

➢ 文字組み

  • 版面の内側で基本組体裁に必要な各種要素の値を決める。まず組方向や段数、書体を決め、多段組の場合には段間を設定する。次に行長や字詰めを決める。
  • 行長や字詰めと相互に関連しているのは文字サイズである。可読性という点で横組よりも縦組の方が行長を長くとることができる。
  • 行と行の間は一般に文字サイズの25%~100%程度あける。文字サイズと行間を足したものが行送りである。視線の移動を容易にするために、行長に従い相対的に行間を大きくとる。
  • 情報を伝えるための要素として可読性などに配慮するだけでなく、ビジュアルの要素として書体が持つ表現力による紙面イメージづくりにも配慮する。レイアウトフォーマットを作成するにあたっては、文字組の視覚効果や体裁を踏まえて、情報内容および表現力を考慮した一貫性のある文字スタイル設定が重要となる。

➢ 写真

  • 配置のしかたにより紙面の印象や表現力に影響するので、目的に応じた効果的な配置を考慮する。
  • 紙面構成によっては、写真の構図や印象がデザインを左右する場合もある。写真素材の扱い方に加えて基本 的な撮影の知識まで把握し、配置したい写真の撮影絵柄について指示が出せるとより効果的なデザインが可能となる。

➢ 裁ち落とし

  • 写真を紙面の端いっぱいに配置することにより、裁ち落とされた外側の見えない部分までイメージを広げさせる効果がある。裁ち落とし写真を使用する際には、紙面の外側の塗り足し部分まで写真をのばしておく必要がある。

➢ 全面写真

  • 天地左右すべてを裁ち落とし、紙面全体に1枚の写真を配置することにより、大きなインパクトを与える効果がある。

➢ 図表

  • 情報を図表化することにより、時間の経過や数値をビジュアル化して直感的に伝えることができる。さらに、分類・整理して検索性を高めたり概念やつながりをよりわかりやすく表現することもできる。このような効果的な表現に加えて、紙面にアクセントをつける役割も果たす。