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マーケティングの潮流、BtoCとBtoBの視点から

対面営業のような人的接触の存在感はまだ大きいが、ニューノーマルに向けた顧客創造のマーケティング戦略が大きく変わると思われる。

 

BtoBマーケティングの必要性

BtoBビジネスではマーケティングは不要と考えられてきた。それは、業種、顧客、製品ごとに市場が大きく異なり、その特性を理解することに明け暮れてしまいがちだからである。BtoBはBtoCと異なって選好的、感情的に選ばれることが少なく、AIDMAのようなファネル型モデルを適用しにくい。顧客は法人だから、購入の関与者が多く、意思決定は分岐が多く行ったり来たりの経過をたどる。だからマーケティングが不要なのではなく、だからこそ必要なのである。ちなみにBtoBマーケティングを考える際はBtoCモデルを基礎に考える形で良いと思うが、違いが相当にあるのでその点はまたの機会に触れたい。

BtoCとBtoB

長期継続的な取引が中心となるBtoBビジネスでは、信頼とブランド、サービスが大切になる。多少の安さよりは供給や品質の安定性、面倒見の良さが重視される。スイッチングコストを高めておくことが肝要だ。取引の長期化によって製品がコモディティ化すれば価格は必然的に落ちていく。製品周辺のサービスも合わせて包括的に提供するサービスマーケティングの流れになることは多くの業種の事例が物語る。卑近な例でいえば、コピー機を販売するのでなく、コピーの利便性のみを売って所有権は移転せず、メンテナンスは売り手が担うモデルである。

サービスマーケティング化

ところで経営でいう場合のサービスはもちろん無償奉仕を意味しない。そして顧客のバリューチェーンの一部を肩代わりするようなサービスを想定するようにしたい。「印刷産業経営動向調査2021」が初めて調べた需要調査(製品26種・生産方式8種・付帯サービス10種)を読むと、とりわけ印刷製品とサービスの相性は良いことが理解できる。BPO(Business Process Outsourcing)と言っても良いが、本業の印刷周辺に何か手伝えることはないかと、顧客を研究して自社の強みとの整合を検討することの有効性が高い。顧客業務へのカスタマイズが一つの価値になる。

イノベーションと組合せて

前述のコピー機の例でいえば、これは販売方法のイノベーションを伴った。ドラッカーはマーケティングとイノベーションこそが企業の2大機能と述べた。コロナ禍でも堅調な中小企業を見ると何気ない小さなイノベーションによる事業を複数持っていることに気づく。顧客の声をあまり聞き過ぎても、ありふれたサービスになって市場をさらに飽和させてしまうという、BtoBの難しさはこのバランスにある。まずは小さくても顧客の潜在需要を探り当ててサービス設計する視点が望ましい。11/14放映NHKスペシャルでのホンダのスタンスは、変化が速いのでもはや変化対応型では後手を踏むというものだ。自ら変化を起こす側からの提案が価値を持つ時代になった。
(研究調査部 藤井建人)

11 /25(木) 14:00~17:20
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デジタル印刷機を活用するアニメ産業への進出

デジタル印刷機も普及し始め、パーソナルDMや極小ロット重版など様々な活用事例が生まれている。そんな中、デジタル印刷に適したビジネスとしてアニメ産業が注目されている。今回は、デジタル印刷機のアニメ分野での活用事例を紹介する。

アニメが印刷に向く理由

デジタル印刷機の活用でアニメが注目されている理由は消費行動の変化にある。出版業界の不況は印刷業界にとっては身近な話題だが、その背景の一つにはコンテンツの多くが無料になり、視聴者が作品単体にはお金を払わなくなってきたという点がある。ユーザーにとって、作品はまず無料で楽しむものなのだ。

その代わり、好きになった作品やキャラクターに対しては気前よくお金を払う傾向がある。広く作品を投げかけ、コアなファンから作品の派生的グッズなども合わせて資金を回収するのである。タペストリーやイラストボード、Tシャツなどを買っていくうち、すぐに数万円という出費になる。コアなファン向けということで当然小ロットだが、ある程度高額でも成立する。こういった特徴はデジタル印刷向けだと言える。実際、アニメ業界ではクリアファイルや、16ページでも1000円することもある同人誌などでデジタル印刷機が活躍している。

こういったアニメのコア層向けビジネスに注目し、印刷会社が本格参入した例としてサイバーネットが経営するアニメコラボカフェを紹介する。

印刷機を持つ強み

サイバーネットは異業種から後発で参入したが、今や名刺の有力プレイヤーとなった企業である。そんなサイバーネットがデジタル印刷機を活かす新たな事業としてコラボカフェを始めた。

コラボカフェとは、アニメやゲームといったコンテンツとコラボし、その作品をイメージした内装の中で食事やイベントを楽しんでもらうカフェのことである。通常のカフェよりも割高だが、作品のコアなファンが訪れるため消費意欲が高く、料理だけではなく店舗で販売しているグッズもよく売れる。

印刷会社がカフェを経営するというと意外に思えるが、ここには印刷会社ならではの勝算があった。店内を見てみると、垂れ幕やテーブルクロス、壁紙など、その作品に合わせた印刷物に囲まれていることに気付く。通常は、コラボカフェであっても、印刷物は減らしていく方向で考えるそうだが、サイバーネットの場合は印刷機を持っているため、安価に制作できる分、内装に徹底的に拘れる。その分、没入感のある空間を演出できるのである。これは母体が印刷会社だからこその強みとなっている。

コアなファンの集まる場所を作れれば、グッズなども売上が伸びていく。勿論、新規参入でコラボ相手を見つける際には体当たり的な苦労もあったそうだが、コラボ相手にとっても魅力的な販路であることは、アピールポイントだっただろう。

現在はコラボカフェで作ったオリジナルの限定グッズの中でも、売上の大きかったものについてはより広く売り出すように提案を行っている。コラボカフェがデジタル印刷の新たな仕事を生み出す場にもなっているのである。

コンテンツホルダーとの付き合い方

6月11日の研究会では、実際にサイバーネット会長の高原一博氏とコラボカフェ店長の村上直樹氏にご登壇頂き、新規事業開拓の経緯や苦労を語って頂く。ビジネスモデルとしての計算だけではなく、キーマンの発掘やコラボ相手とのマインド的な部分での付き合い方など人的な部分も含めて語って頂く。他にも、地域の印刷会社がアニメ聖地巡礼に関わり地域活性に繋げた例など、アニメ事業に進出する上でのメリットや乗り越えるべきポイントなどを議論する研究会となっている。

(JAGAT 研究調査部 松永寛和)

■関連イベント

アニメを活かした地域活性化と事業展開 ~聖地巡礼によるツーリズムと印刷会社の役割を事例に~
聖地巡礼に注目が集まっている。アニメのファンが舞台となった場所を訪れる地域活性効果から、旅行会社やコンテンツホルダーも動いている。しかし、聖地巡礼の成功事例の多くは着地型観光であり、地域の積極性が不可欠である。地域社会でアニメ制作会社が先頭に立つのは現実的ではないため、地元を知り尽くし、地域でのメディア制作、発信を担当できる印刷会社にも商機がある。 本研究会では聖地巡礼の概論を理解すると共に、印刷会社がアニメコンテンツ事業に参入する際のポイントと強みについて実際のアニメコラボカフェの参入事例から考える。さらに、アニメ制作会社ピーエーワークスの作品『花咲くいろは』から北陸地域に実際にお祭りを創り出し、地域の持続的な発展に聖地巡礼を活かすアニメツーリズムの事例などから印刷会社の関わり方を考える。

印刷物の増減を巡る通販とメディア環境の変化

印刷物の増減や見通しについて見方の別れる時がある。印刷物の使われるシーンの変化と視点の違いは一因だが、背景には印刷を取り巻くメディア環境の変化がある。例えば広告メディアとして、あるいは通販メディアとして、印刷物の使われ方はどう変わっているのか。

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eスポーツは印刷とどのように関わるか

eスポーツという言葉を耳にすることが増えた。2018年には流行語大賞にもノミネートされ、日経MJ2018年ヒット商品番付でも西の小結として登場している。成長産業として言及されることも多いeスポーツとは何なのだろうか。

eスポーツが注目される理由

eスポーツについてよく話題になるのが超高額の賞金である。eスポーツの賞金はゲーム内課金の数%を賞金にプールしていくという形が多い。その結果、「Dota2」というゲームの大会「The International 2018」では優勝賞金が約12億円にまで膨らんだ。ちなみに、サッカーロシアW杯の優勝賞金が約43億円と言われている。4年に一度のW杯に対して、「The International」は毎年行われる大会であり、途方もない金額が動く業界であることが分かる。

eスポーツの市場規模は急拡大を続けている。eスポーツのプロシーンとして市場規模に計上されるのは、スポンサー料、放映権料、広告料、チケット代など。あるアメリカの調査会社はeスポーツの市場規模は2017年が約15億ドルだったと発表した。2018年が16億、2019年が18億、2022年には約23億ドルにまで拡大するとの予測である。

これに対し、日本のeスポーツの市場規模は2017年の時点で3.7億円とされる。世界市場の約450分の1であり、日本のeスポーツ市場は世界に比べ極端に小さい。これには一つの理由がある。ゲームの大会に高額賞金を設定することは、日本の場合刑法の賭博罪にあたるという議論があったのである。事実、つい数年前まで、日本のゲーム大会で10万円を超える賞金を設定することはかなり難しかった。

そんな中、日本eスポーツ連合Jesuという組織が結成される。eスポーツの振興を目的とするJesuは関係省庁と法的に問題のない賞金付き大会の形式を協議。これがプロライセンスという形にまとまった。これにより、プロライセンス発行以降、合計で1億5000万円を超える賞金が各大会で支払われるまでになっている。

日本市場の成長 eスポーツ元年

こういった高額大会の話題に加え、オリンピックでeスポーツを採用するかの議論などが重なった結果、2017年9月に14.4%だったeスポーツという言葉の認知度は2018年7月には41.4%と上昇した。eスポーツという言葉を去年初めて知ったという方も多いのではないだろうか。

急成長は市場規模にも表れており、2018年の市場規模は48.3億円となった。2017年比で実に13倍。2018年はeスポーツ元年と呼ぶべき年だったのである。日本はeスポーツ先進国である韓国や視聴者の多い中国、東南アジアと距離の近い恵まれた位置にあり、日本のIPホルダーと連携しやすいという好条件もあることから、今後さらなる成長が見込まれている。世界のeスポーツ市場の中でも、屈指の注目市場なのである。

印刷業界との関わり

さて、そんなeスポーツの業界であるが印刷業界とはどのように関わってくるのだろうか。eスポーツは基本的に放送コンテンツであり、ネット上で完結することがほとんどだった。しかし、人気が高まるにつれて、そういった状況は変わっていくと思われる。

先にeスポーツの先進国と紹介した韓国の事例を見てみよう。韓国ではeスポーツ専用のスタジオを放送局が複数所有している。そこで試合を放映すると同時にチケットも販売し、現地に観客を入れて興行を打っている。会場ではグッズが販売され、サインボードやポスターなども掲示される。日本で言えば、アイドルのような人気を得ているのである。

ゲームを現地観戦というのも、なかなか実感が湧かないかもしれないが、韓国で行われた「League of Legends」の大会では4万5000人がスタジアムに集まって観戦したという。観客は世界中から集まってきており、インバウンドに貢献しているとして政府から補助金が出ているほどである。興行としてのゲーム観戦は世界中で人気を博しており、日本でも広まり始めている。当然そこでは内装やポスターなどの印刷需要が発生する。

変化の背景としてあるのが、視聴者層の広がりである。これまでゲームは実際にプレイするゲーマーだけのものだった。しかし、配信の文化が成熟し、自分ではゲームをしない人もゲームの試合を観戦するようになってきている。そういった視聴者の広がりが、グッズやチケットを買ってプレイヤーを応援する文化を後押ししている。

eスポーツの市場は今後も拡大を続けていくと思われる。予想もつかないようなビジネスチャンスも生まれてくるに違いない。変化の中に生まれる新たな需要を見逃さないようにしていきたい。

(JAGAT 研究調査部 松永寛和)