クロスメディアエキスパート」タグアーカイブ

【クロスメディアキーワード】コンピューター言語とデータフォーマット

クロスメディアキーワード【第8回】

コンピューター言語

コンピューター言語とは、ソフトウェアを開発するために 人工的に設計された言語で、プログラムとデータを記述する構文と語彙で構成される。コンピューター言語は、コンピューターハードウェアの登場と共に始ま り、約半世紀にわたりコンピューターとその応用の進展につれ、夥しい種類が考案されてきた。

プログラム記述の言語

1960年代までは、FORTARN、COBOL、アセンブリ言語といったプログラミング言語が主流であったが、スパゲッティ状態の(制御が乱雑で保守し にくい)プログラムが作られやすい文法であったため、それらに対する保守コストの増大が「ソフトウェア危機」として問題視されるようになった。問題解決の ために「構造化プログラミング」が提唱され、以降に開発された新たなプログラミング言語は、その考えを反映するようになった。

また、「ソ フトウェア危機」では、大規模で複雑なプログラム開発コストの増大も問題になった。そこで、プログラムの部品化と再利用が提唱された。1970年代から は、部品化と再利用が実現できるSmalltalk、C++、Objective-Cといったプログラミング言語が次々に開発され、「オブジェクト指向プ ログラミング」が提唱された。これらの言語では、オブジェクトを部品として記述できる。具体的には、データの型やそれに対する処理を抽象化し、その検査を 行うことで安全な実現を可能にしている。

しかし、構造化プログラミングやオブジェクト指向プログラミングは、プログラミングの考え方をプ ログラマーに示唆する「パラダイム」に過ぎず、その言語を用いても「ソフトウェア危機」問題が解決するわけではない。現在では、「フレームワーク」という 形で、目的とするプログラムが容易にかつ確実にできるようにするために制約的なプログラミングが行われている。

現在、代表的なプログラム記述の言語は、次のような種類がある。

  • C++、Objective-C、Java:汎用アプリケーションの記述
  • Perl、PHP:WebにおけるCGIの記述
  • JavaScript:Webクライアントプログラムの記述
  • XSLT:XMLボキャブラリ変換の記述
  • SQL:データベースに対する問合せの記述
  • Microsoft .NET Framework、JavaServer Faces:アプリケーション記述のためのフレームワーク

データ記述のための言語

データに関わる記述は、もともとプログラミング言語の一部であったが、1960年代のデータベースシステムの登場により、データの変更を容易にし、プログ ラムへの影響を極力少なくするために、データ記述を「スキーマ」としてプログラムから切り離す「データ独立」の動きが起きた。そうした動きの当初は、デー タベース関連にとどまっていたが、その後、データとそれに対する処理をオブジェクトとして扱うオブジェクト指向プログラミングとあいまって急速に広まっ た。

1980年代に登場したSGML(Standard Generalized Markup Language)は文書のデータ型を定義する「メタ言語」である。データ型は、データ記述の構文と語彙であり、要素の順序や階層関係、要素名(タグ)と 属性名で構成され、それに基づいて具体的なデータをマークアップするHTML、MathML、SVGなどといった言語が定義される。現在では、データ記述 のための言語の定義は、SGMLの後継であるXML(Extensible Markup Language)に集中するようになっている。

現在、XMLで定義された代表的なデータ記述の言語としては次のような種類がある。

  • XML Schema、RELAX、RELAX NG:文書のデータ型の記述
  • XHTML、MathML、SVG:Webコンテンツの記述
  • XAML、XUL:ユーザー・インターフェイスと関連データの記述
  • IDL:ソフトウェアコンポーネント(部品)間のインタフェースの記述

データフォーマット

コンピューター間やアプリケーション間などの情報交換で用いられるデータの形を「データフォーマット」と呼ぶ。その表現はコンピューターの内部表現と異な り、直列化される。データがプログラム内で記述されていた頃は、プログラムごとの暗黙的な形式が採用されていたが、データ独立が指向されるようになると、 ファンクションコードやタグによる構文や語彙が明示的になった。

XMLに基づくデータはテキストデータで表され、そのフォーマットの構文 と語彙は明示的な自己記述である。一方、画像や音楽を表わすデータの多くはバイナリーデータで表され、そのフォーマットの構文と語彙は暗黙的であり、デー タ量をなるべく小さく抑えるために圧縮されることが多い。

EPUBでは、XHTMLデータと画像データなどから構成されているが、書籍そ のものの取り扱いを容易にし、かつデータ量をなるべく小さく抑えるために圧縮されている。また、PDFでは、テキストデータとバイナリーデータが混在し、 部分的に圧縮された表現形式が採用されている。

例題

コンピューター言語に関する記述として最も適切なものはどれか[解答群]から選べ。

ア COBOL、FORTRAN、PL/I、Pascal、C言語は、コンピューターに処理を実行させる問い合わせ言語である。

イ SQLやXQueryなどは、データ記述言語と呼ばれ、主にデータベースからのデータ取得に対する記述をするものである。

ウ XMLは、文書の表示や印刷を行うたのデータ項目を文書構造に合わせて取得することに、困難を伴う言語である。

エ UMLは、ソフトウェア開発においてシステムの構造を表現するためのモデリング言語である。

[解答群]
 ①ア ②イ ③ウ ④エ

[解答]
 ④エ

※本ページの内容は掲載当時(2013年12月9日)のものです。

【クロスメディアキーワード】コミュニケーション支援とメディア

【第2回】メディアデザイン
メディアによる生活者とのコミュニケーション支援を実施するには、様々なメディアに関するリテラシーが必要になる。

技術のコモディティー化

IT(Information Technology)の発展により、コンテンツの制作に関する技術がコモディティー化することで、アプリケーションの操作技術だけでは、コンテンツの制 作に関わる業務としての付加価値が保ちにくい。様々な生活者に技術が移行することで、本質的なデザインや編集を行わない業務の価値は、データのフォーマッ ト変換程度の価値だけになりかねない。

ITが発展する前のコンテンツの制作に関する技術は、完成品の状態から逆算し、業務を行い、知識や 技術などのノウハウを蓄積してきた。しかし、情報のデジタル化によりコンテンツは、出力するメディアに合わせ、多様性や柔軟性を求められると同時に、さら に自動化へと向かっている。コミュニケーション支援で重要なことは、コンテンツの内容に近づくことであり、様々なメディアの特性を理解しなければならな い。

コンテンツデータの管理

現在、市場に普及しているパソコンは、過去には想像できなかったような、様々なデータの管 理機能を備えている。しかし、コンテンツデータの活用を主眼にすると、データの管理方法に関する知識が求められることもある。コンテンツデータの管理で は、メタデータ管理が重要視される。写真で例えれば、何時、何処で、誰が撮影したかなど、属性情報が管理されることで、写真は様々なコンテンツで利用しや すくなる。組織のメディア戦略では、コンテンツデータを資産として管理することも重要であり、情報発信のためのコンテンツデータ管理は、組織にとって欠か せない課題であるといえる。

メディアリテラシー

コミュニケーション支援ビジネスでは、「メディアリテラシー」を意識する必要もある。情報の発信者と受信者に与える影響を配慮することで、様々なメディアの文化的背景を乗り越え、効果的なコミュニケーションを実現できる。

コミュニケーション支援

マーケティング、ユーザーインタフェース設計、コンテンツ管理、サーバー技術、ネットワーク技術などの要件を踏まえた「メディアデザイン」が重要になる。社会を支えるコミュニケーション支援を行うために、「メディアデザイン」を考慮したロードマップが必要である。

公益社団法人 日本印刷技術協会
教育コンサルティング部
チーフコンサルタント
小林 祐一

 

※本ページの内容は掲載当時(2013年12月2日)のものです。

【クロスメディアキーワード】オープンソース

クロスメディアキーワード【第11回】

オープンソースは、無料でソースコードやプログラムが入手できるということを意味しているだ けではない。オープンソースに関する定義は、Open Source Initiative(OSI)により策定されている。OSI認定を受けるためには、以下の頒布条件が定められている。

1. 再頒布の自由

「オー プンソース」であるライセンス(以下「ライセンス」と略)は、出自の様々なプログラムを集めたソフトウェア頒布物(ディストリビューション)の一部とし て、ソフトウェアを販売あるいは無料で頒布することを制限してはならなない。 ライセンスは、このような販売に関して印税その他の報酬を要求してはなららない。

2. ソースコード

「オープンソース」 であるプログラムはソースコードを含んでいなければならず 、コンパイル済形式と同様にソースコードでの頒布も許可されていなければならない。何らかの事情でソースコードと共に頒布しない場合には、 ソースコードを複製に要するコストとして妥当な額程度の費用で入手できる方法を用意し、それをはっきりと公表しなければならない。方法として好ましいのは インターネットを通じた無料ダウンロードである。ソースコードは、プログラマがプログラムを変更しやすい形態でなければならない。意図的にソースコードを 分かりにくくすることは許されず、プリプロセッサや変換プログラムの出力のような中間形式は認められない。

3. 派生ソフトウェア

ライセンスは、ソフトウェアの変更と派生ソフトウェアの作成、並びに派生ソフトウェアを元のソフトウェアと同じライセンスの下で頒布することを許可しなければならない。

4. 作者のソースコードの完全性(Integrity)

バ イナリ構築の際にプログラムを変更するため、ソースコードと一緒に「パッチファイル」を頒布することを認める場合に限り、ライセンスによって変更された ソースコードの頒布を制限することができる。ライセンスは、変更されたソースコードから構築されたソフトウェアの頒布を明確に許可していなければならない が、派生ソフトウェアに元のソフトウェアとは異なる名前やバージョン番号をつけるよう義務付けるのは構わない。

5. 個人やグループに対する差別の禁止

ライセンスは特定の個人やグループを差別してはならない。

6. 利用する分野(Fields of Endeavor)に対する差別の禁止

ライセンスはある特定の分野でプログラムを使うことを制限してはならない。 例えば、プログラムの企業での使用や、遺伝子研究の分野での使用を制限してはならない。

7. ライセンスの分配(Distribution)

プログラムに付随する権利はそのプログラムが再頒布された者全てに等しく認められなければならず、彼らが何らかの追加的ライセンスに同意することを必要としてはならない。

8. 特定製品でのみ有効なライセンスの禁止

プ ログラムに付与された権利は、それがある特定のソフトウェア頒布物の一部であるということに依存するものであってはならない。プログラムをその頒布物から 取り出したとしても、そのプログラム自身のライセンスの範囲内で使用あるいは頒布される限り、プログラムが再頒布される全ての人々が、元のソフトウェア頒 布物において与えられていた権利と同等の権利を有することを保証しなければならない。

9. 他のソフトウェアを制限するライセンスの禁止

ライセンスは、そのソフトウェアと共に頒布される他のソフトウェアに制限を設けてはならない。例えば、ライセンスは同じ媒体で頒布される他のプログラムが全てオープンソースソフトウェアであることを要求してはならない。

10. ライセンスは技術中立的でなければならない

ライセンス中に、特定の技術やインターフェースの様式に強く依存するような規定があってはならない。

例題

オープンソースにおけるOSI認定の頒布条件に関する記述として最も不適切なものはどれか[解答群]から選べ。

ア オープンソースソフトウェアとともに頒布される他のソフトウェアについては、すべてオープンソースソフトウェアでなければならない。

イ ライセンスは、ソフトウェアの変更と派生ソフトウェアの作成、並びに派生ソフトウェアを元のソフトウェアと同じライセンスの下で頒布することを許可しなければいけない。

ウ ライセンスはある特定の分野でプログラムを使うことを制限してはいけない。例えば、プログラムの企業での使用や、遺伝子研究分野での使用を制限してはいけない。

エ プログラムに付随する権利は、そのプログラムが再頒布された者すべてに等しく認めなければならず、追加的ライセンスに同意することを必要としてはいけない。

[解答群]
 ①ア ②イ ③ウ ④エ

[解答]
 ①ア

※本ページの内容は掲載当時(2014年1月6日)のものです。

【クロスメディアキーワード】クローラーと情報アーキテクチャー

クロスメディアキーワード【第15回】

Webサイトの構築を行う際には、情報アーキテクチャーを考慮することで、利用者を意識した情報サービスの提供が実現できる。

クローラー

クローラーとは、サーチエンジンがインターネット上の情報を収集するプログラムである。定期的にインターネット上のHTML(HyperText Markup Language)文書からリンク情報(href属性値に指定されたURL)を辿り、あらゆる情報を収集する。スパイダーやWeb巡回プログラム、検索ロ ボット、ボットなどとも呼ばれる。

インターネット上の検索サイトでは、検索結果の順位を決める方法として検索アルゴリズムによるものが多 く、利用者の探している情報を的確に探し出せるかが重要となる。検索アルゴリズムは日々進化しており、サービス提供企業ごとに方法が異なり、いずれも非公 開とされている。

クローラーは、サーチエンジンの検索結果に利用される情報の収集の他、目的を持たせ特定の情報収集に利用される。目的や特定の情報とは、一般企業や団体などによる商品情報の収集や統計調査などがあげられる。

クローラーには幾つもの種類があり、PC向けWebサイトの情報収集に用いられるものや、モバイル端末向けWebサイトの情報収集に用いられるものがある。また、ブログ検索サービスのように、情報の性質や状態を考慮した検索サービスも提供されている。

ブログの内容は、更新の容易さや個人の嗜好が反映されやすいことから、企業などが用意するWebサイトとは性質の異なる情報が多く含まれている。ブログ検 索サービスによっては、更新情報を配信するためのRSSフィードやAtomフィードのある全てのブログを検索できるようにすることを目標としているものが ある。

セマンティック・ウェブ

広く普及しているインターネット上の情報を収集する方法は、一般的に使用される文章検索に関する方法を利用している。言い換えれば、自然言語による検索方法である。これは、人間の持つ言葉の多面性や曖昧さから、正確に目的とする情報を得ることが難しいとされている。

また、自然言語による検索のほか、W3Cのティム・バーナーズ=リー氏によって提唱されたセマンティック・ウェブに対する検索技術の研究が行われている。

セマンティック・ウェブでは、HTMLで記述された文書を使用せず、XML(Extensible Markup Language)により記述した文書に対し、RDF(Resource Description Framework)やOWLを記述したものを使用する。RDFは、インターネット上のリソースを示すために用いられ、OWLは、意味を持った情報を形式 化して記述することに用いられる。自然言語の検索による曖昧な検索方法に対し、正確な意味を持った情報に対する収集や分析が可能になると考えられている。

ウェブマイニング

ウェブマイニング(Web Mining)とは、Webサイトの構造やインターネット上の情報を利用し、統計学、パターン認識、人工知能等のデータ解析の技法により、膨大なデータを 網羅的に適用し、傾向やパターンなどの情報を取り出す技術である。セマンティック・ウェブの実現により、インターネット上の膨大な情報に対し、解析技術を 用いた情報抽出が可能になることが期待されている。

情報アーキテクチャー

情報アーキテクチャーとは、わかりやすさのデザインともいわれ、「利用者に情報をわかりやすく伝え、受け手が情報を探しやすくする」ための表現技術である。

情報アーキテクチャーを意識したWebサイトの構築する際は、デザイン性だけではなく、検索性や各コンテンツへのナビゲーションも考慮することが必要であ る。そのため、設計段階からこれらを意識し、構造化や最適化を行うべきである。こうした配慮によって、利用者にとって使い勝手の良いWebサイトの提供が 行える。

SEO対策

SEO(Search Engine Optimization:サーチエンジン最適化)対策と呼ばれる検索サイトでの上位表示をさせるための手法についても、その仕組みを理解し、情報アーキテクチャーを意識したWebサイト構築を行うことが望ましい。

インターネットにおける大手検索ポータルサイトのサーチエンジンでは、キーワードを上位に表示させるためには、利用されているクローラーに対象とされるようなサイト構造にしておく必要がある。

サーチエンジンは、Webサイトの構造から情報を収集し、情報の内容を判断して順位付けを行っている。そのため、サイト設計段階から、サイトの目的に応じた要素を分類し、構造化していくことが重要となる。

例題

次の文中の空欄[A][B]に入る最も適切な語句の組み合わせを下記の解答群から選べ。

クローラーは、「Web巡回プログラム」や「ロボット」と呼ばれるインターネット上の情報を検索するプログラムである。クローラー技術は、検索サービスに対してだけではなく、商品情報の収集や統計調査など、特定の目的のもと[A]で利用されている。

ブログ情報、商品情報などといった、求められる情報の性質に特化した検索サービスやモバイル端末向けの検索サービスも登場している。

今後、より的確な情報を得るために、自然言語による検索条件の指定に加え、セマンティック・ウェブやウェブマイニングなどを組み合わせた検索技術が求めら れる可能性がある。セマンティック・ウェブは、XMLにより記述された文書に[B]やOWLを用い、意味を記述したタグを付け加える。そのタグが文章の含 む意味を形式化することになる。将来、タグを付けていないインターネット上のコンテンツは、次第に検索結果の表示順位が低くなる可能性があり、SEOの観 点からも対応が迫られることも予想される。

[解答群]
①A:一般的分野 B:CSS
②A:専門的分野のみ B:RDF
③A:一般的分野 B:RDF
④A:専門的分野のみ B:CSS

[解答]
③A:一般的分野 B:RDF

※本ページの内容は掲載当時(2014年5月22日)のものです。

 

【クロスメディアキーワード】コミュニケーション手段の変革

インターネット広告が台頭したことで、マスメディアによる広告がシフトするといった発想は成立しない。テレビコマーシャル用に制作された映像をイ ンターネットで配信するといった、マスメディアによる広告と同様の情報発信は、認知度の向上には寄与するが、コミュニケーション手段の変化に対応している とは限らない。

コミュニケーション手段の変革

事業を拡大させるために、広告だけに頼ることは考え難いが、インターネットだけを頼る行為も不完全である。IT(Information Technology)の発達が、事業活動に及ぼす影響を理解することが重要である。

クロスメディアエキスパート認証制度のカリキュラムでは、ITによる経営や商取引などの変化を取り上げているが、単なるWebサイト構築や販促物の制作にとって、直接的な関係性を感じにくい。

クロスメディアエキスパートの人物像は、「メディア戦略のコーディネーター」となるディレクターやプロデューサーを想定しているが、「メディア戦略のコー ディネーター」は、事業展開の核心と強い関係性を持つと考えている。下図の左側は事業主である顧客や自社であり、事業主の中には経営革新を推進する人物が おり、その人物はメディア戦略に着目している。

事業の変化に伴い、メディア活用に助言することが、クロスメディアエキスパート認証制度で示すディレクターやプロデューサーの役割である。

事業構造の変化は様々であり、SCM(Supply Chain Management)については、様々な製造業で業界横断的に進行し、「現場」では一般的なものとなっている。山間部に住む高齢者が、山で様々な「葉」 を採取し、料亭に卸すビジネスモデルがテレビ放送で取り上げられていた時期があったが、その後は、書籍まで出版された。インターネットを活用することで、 料亭は地産の材料調達が容易になった。

求められるメディア戦略のコーディネーター

様々な事業活動では、 CRM(Customer Relationship Management)による効率化だけでなく、マーチャンダイジングや需要予測などが変化した。クロスメディアを前提としたメディア戦略の立案では、 様々な生活者とのコミュニケーション手段として、デジタルメディアの存在が不可欠となる。 事業者はグループウェアを導入し、利害関係者との情報共有を行 い、オープンなコミュニケーション手段の確立を目指す。コミュニケーション手段を確立するツールは、インターネットに接続するパソコンに留まらず、ケータ イやスマートフォンなどのモバイル端末が利用され、クラウドやSNS(Social Networking Service)などのサービスが活用されている。

クロスメディアエキスパートの領域では、全体最適を考慮したコミュニケーションシステ ムの構築が求められる。メディア戦略とデジタルメディアの関係は、感覚的なものではなく、技術革新が事業構造に影響を与える。プロモーションだけではな く、コストを勘案した改善施策が求められる。改善施策の実行は、結果としてクロスメディアによる生活者との効率的コミュニケーションシステムを実現するこ とにつながる。事業戦略を支えるメディア戦略をコーディネートする人材の育成をクロスメディアエキスパート認証制度は目指している。

資格制度事務局

 

※本ページの内容は掲載当時(2013年10月)のものです。

クロスメディアエキスパートの必要性

クロスメディアは、既に一般的な用語となった。コンバージェンスの視点や、メディアミックスとクロスメディアの違いから、言葉の定義も含めたクロスメディアの進化について考察する。

メディアのコンバージェンス

コンバージェンス(Convergence)を「収束」や「集中」と直訳することで、様々なもが1つに集約されると考えられる傾向がある。メディアにとっ てコンバージェンスとは、様々なメディアが融合することで、ビジネスモデルに変化をもたらし、収益構造の進化が期待できることも意味に含まれる。

テレビ放送や新聞は、経営母体が同一である傾向がある。テレビ放送や新聞にとって、両者共に取材記者が必要となるが、取材記者は兼任できるのではないかといった考え方に、コンバージェンスが存在する。

従って、様々な情報の発信源が共通化される可能性が高まる。様々なデジタルメディアの普及により、流通する情報が細分化され、多様なものが登場している。 それらの発信源を共通化し、コントロールしていくといった意味合いが、メディアにとってのコンバージェンスに含まれる。

クロスメディアエ キスパート認証制度は、コンバージェンスが社会に浸透することを前提とし、必要な能力や技術を体系化することから始まった。メディアの多様化により、クロ スメディアを考慮したソリューション能力の育成が必要である。実際には、メディアを活用したプロモーションに相当する場合が多くなる。プロモーションで は、予算を含む適切な計画が重要視される。

クロスメディアエキスパート認証制度では、プロモーションだけではなく、メディアを活用する 様々な場面で活躍ができる人材の育成が目的となっている。メディアを利用する組織は多肢に渡り、必要不可欠なものとしてペーパーメディアやデジタルメディ アが使われている。それらのメディアにとってコンバージェンスは、避けて通れない方向性であると考えられる。

クロスメディアとメディアミックス

クロスメディアとメディアミックスの違いは、様々なメディアの役割や特徴、その変化に対応する差異から捉えることができる。特にデジタルメディアの場合、インターネットの活用がビジネスモデルの変化を促す要素として重要視される傾向がある。

ビジネスモデルの構築へ

IT(Infomation Technology)の活用は、コンピューターによる処理が前提となり、人間による処理を極力避け、自動的に処理を行う流れと考えられる。 DTP(DeskTop Publishing)で例えると、これまで人手により頁単価で行っていた作業をサーバーとデータベースを介した自動組版で置き換えることで、ワークフ ローやコストモデルが大きく変化する。WebコンテンツのCMS(Content Management System)化についても、あてはまる事例である。

ネットワークの発展より、インターネット中心に、モバイル端末がメディアとして普及 し、ホットスポットによる公衆無線LAN環境も一般化した。別の表現では、「ユビキタス化が進行している」と表すことができる。ユビキタスの「いつでもど こでも」といった方向性は、スマートフォンを中心としたモバイル端末により実現されているが、ICタグやクラウドサービスも含め、様々なコンピューターに よる処理が「いつでもどこでも」を支えている。

メディアとは、「コンテンツの入れ物」と考えることが、本質を掴むきっかけになる。デジタ ルメディアの例では、コーポレートサイトやブログ(Blog)、SNS(Social Networking Service)など、運営形態が異なっていても、閲覧者とって同質のものと捉えられる傾向があり、際限なく様々な様式のコンテンツが登場し、メディアの 種類も増加する。コンテンツ制作の視点では、メディアが流動的になる変化により、困惑を生じている。

ソリューションに必要な能力は、時代 を超越した普遍的なものが必要であるが、加えて、大きく変化しつつある要素を考察し、巧妙に要素を活用することが重要になる。新技術に伴うコストや、サー ビスの提供価格などは、ITによる自動化が進むことで、下落する変化がメディアを取り巻く環境で起こると予想ができる。

したがって、流動 的な社会環境に翻弄されないため、メディアやITに関するリテラシーを持ち合わせていない場合、継続的なビジネスモデルの発展を望むことは難しい。プロ モーション手法の大きな変化に目を奪われるが、一歩先のビジネスモデルの構築を想定し、クロスメディアエキスパート認証制度のカリキュラムや試験内容は、 検討されている。

資格制度事務局

 

※本ページの内容は掲載当時(2013年10月)のものです。

【クロスメディアキーワード】インターネット広告

クロスメディアキーワード【第12回】

インターネット広告(英訳:Online advertising)は、「オンライン広告」「Web広告」とも呼ばれ、インターネットを利用するWebサイトや電子メールに掲載する広告を表し、 「ネット広告」と略される場合もある。ケータイ(フィーチャーフォン)やスマートフォンなどのモバイル端末に表示される広告もインターネット広告として扱 われる。

インターネットの普及と様々な機器によるインターネットコンテンツの閲覧が可能になったことから、広告メディアとしての価値が高 まっている。様々な手法による広告配信手法が開発されており、マスメディア広告市場が縮小傾向にある中においても、インターネット広告市場は成長を続けて いる。

Webサイトを通じた情報発信についても、販促活動の一部としてとして利用されるため、広義ではインターネット広告とする考え方もある。しかしながら、インターネットを利用した広告ビジネスが確立している現在では、広義の意味で使用されることは少なくなった。

インターネット広告の特徴

インターネット広告は、ユーザーの年齢・性別などの属性、行動履歴、地域などによって、配信する広告の内容を対象別に細分化することができる。また、広告 を表示するだけでなくインタラクティブ性を持たせることで、消費者の能動的な動きが可能となり、マスメディアでは難しいとされていた、双方向でのコミュニ ケーションが可能となった。さらに、消費者の行動履歴から読み取れる趣味嗜好に沿った広告を用意し、表示させることが可能となり、効果的な訴求を行うこと ができる。

しかしながら、インターネット上には無数の情報が溢れ、信憑性の低いコンテンツも存在している。インターネット広告によって提 供される情報は、信頼性や公正性を判断しにくいものとして消費者に判断される可能性がある。その結果、正規の広告であっても消費者の目を引かず、効果を発 揮できないものも増えてきている。したがって、インターネット広告は、様々な側面を持っていることから、利用する際は、目的に応じ、広告手法の取捨選択を 行う必要がる。

インターネット広告の分類

インターネット広告は、形状や配信方法、課金方法などで分類される。

・形状

「バナー広告」や「テキスト広告」、「メール広告」、「タイアップ広告」、「リッチメディア広告」などに分類される。

・配信方法

消費者の属性により配信対象を絞り込む「デモグラフィックターゲティング広告」や、消費者の過去のWebサイト閲覧履歴から関連性の高い広告を表示する 「行動ターゲティング広告」、検索キーワードに連動する「検索連動型広告(キーワード広告)」、Webコンテンツの内容に連動する「コンテンツ連動型広 告」、消費者の現在地に連動する「位置連動型広告」などに分類される。

・課金方法

特定のWebコンテンツへ掲載期間を保証し掲載する「期間保証型広告」や、表示回数による「インプレッション保証型広告」、アフィリエイトによる「成功報酬型広告」、クリックすることで課金が発生する「クリック報酬型広告」などに分類される。

代表的な広告配信手法による特徴

・コンテンツ連動型広告

Webサイトのコンテンツと連動した広告手法である。サイトの中の特定コンテンツかコーナーを広告主が提供する「スポンサード型」と、広告企画ものとして編集記事調に広告をアレンジする「編集タイアップ型」がある。

・オプトインメール広告

ユーザーが希望する情報カテゴリーの電子メール広告に対し、事前に受け取りを許諾し配信する広告手法である。希望情報カテゴリー別の広告配信を基本として おり、原則として希望情報以外が送信されることはない。広告メディアとしての情報は、会員数やセグメント項目などがある。希望情報カテゴリーやユーザー属 性で、条件を規定し、配信数が算出され、広告主が希望する配信日に、広告配信が基本的にできる。

・検索連動型広告(キーワード広告)

広告主が自社のWebサイトへユーザーを誘導のために、検索サイトに対し検索ワードを指定する広告手法である。指定したキーワードによる検索結果画面にお いて、表示位置が上位にあるほど、ユーザー誘導が促しやすいといわれている。1クリック当たりの料金を入札することで、広告表示権利を購入する PPC(Pay Per Click)型の広告である。広告代理店と契約することで、条件次第で複数の検索サイトへの検索結果表示が可能となり、多くのユーザーへのリーチが期待で きる。キーワードが競合し難い場合は、広告費が抑制できる効率の良い広告手段であり、ロングテール効果も期待できる。

・ストリーミング広告

映像や音声データを配信する、逐次再生型の広告手法である。ストリーミング技術を利用し、データファイルの完全ダウンロード前であっても再生が開始でき る。このため、容量の大きい映像や音声のファイルを配信することができる。ストリーミング広告は、映像や音声を使用し、表現豊かな広告を配信することがで きる。そのため、閲覧者となる消費者に対し、広告として強い印象を与えることができるといった利点がある。欠点としては、消費者のネットワーク回線速度に より、映像や音声の質が劣化する可能性があった。しかしながら最近では、消費者のネットワーク回線やシステム環境に対応した配信スピードに変える技術も発 達している。

・モバイル広告

Webサイトやメール、検索エンジンに掲載される、モバイル端末向けのインターネット広告である。モバイル端末の普及により、インターネット接続を行う消費者が急増したことで、広告媒体としての価値が高まっている。

インターネット広告の効果測定

インターネット広告の効果は、表示回数を測定対象とするインプレッション効果と、消費者が広告をクリックすることにより生じるレスポンス効果などに分けら れる。インプレッション効果は、広告字体の認知やイメージの他、ブランドや製品、サービスなど、訴求したい広告内容の認知率やイメージなどが指標となる。 レスポンス効果はトラフィック効果とも呼ばれ、クリック回数やクリック率などが指標となる。これらの効果測定手法は、インターネット広告の黎明期から利用 され、その中でレスポンス効果が主に注目される傾向にあった。広告に対するレスポンス測定が可能であることは、インターネットの特性であるインタラクティ ブ性の象徴であり、他のメディアにない大きな特長であったからと想定される。したがって広告取引においては、クリック率の高さが重視される傾向がある。

例題

次の文中の空欄[A]~[D]に入る最も適切な語句の組み合わせを下記の[解答群]から選べ。

Web検索サービスを利用し、その結果から特定のWebサイトを訪れる利用者は、その事柄に高い関心を持っていると考えられることから、検索結果を広告媒 体として活用する[A]といった広告手法が考案された。この手法では、検索結果に有料でのテキスト形式の広告を表示する。特定のキーワードに対し複数の広 告主が競合した場合は、オークションにより[B]が変わる。

インターネット広告の課金は[C]に依存することが多い。単に検索される回数の多いキーワードが、広告として有効なわけではない。対象となる利用者の要求と、親和性が高いキーワードの組合せを設定することで、Webサイトへの訪問数増加が期待できる。

検索結果で表示された広告を利用者がクリックし、最初に表示されるWebコンテンツを[D]と呼ぶ。利用者が期待通りの行動をとるか、結果が分かれる重要なWebコンテンツであり、機能させるために十分な対策を行うことが求められる。

[解答群]
 ①A:テキスト広告 B:表示頻度 C:文字数 D:ランディングページ
 ②A:リスティング広告 B:表示順位 C:クリック数 D:ランディングページ
 ③A:テキスト広告 B:表示頻度 C:クリック数 D:離脱ページ
 ④A:リスティング広告 B:表示順位 C:文字数 D:離脱ページ

[解答]
 ②A:リスティング広告 B:表示順位 C:クリック数 D:ランディングページ

※本ページの内容は掲載当時(2014年1月)のものです。

【クロスメディアキーワード】ターゲットマーケティング

クロスメディアキーワード【第17回】

ターゲットマーケティングは、急速に変化する市場に対応するためのマーケティング手法である。

  • Segmentation:市場細分化
  • Targeting:標的市場の選択
  • Positioning:製品およびサービスのポジショニング

といった要素により構成され、頭文字からSTPマーケティングとも呼ばれる。
生活者のニーズや購買行動は多様化しており、企業は「あらゆる地域の、あらゆる生活者を対象とする」マスマーケティングの実施が困難な状況になっている。そのため、ターゲットマーケティングには、マスマーケティングの代替として登場した背景がある。

Segmentation:市場細分化

「Segmentation」では、市場全体からターゲットとなる市場を抽出する。消費財であれば、年齢、性別、職種、地域、趣味、所得、家族構成などで市場を括ることが多い。しかしながら、実際には他に様々な細分化の基準が存在する。

  • デモグラフィック(人口統計的な基準で抽出する方法)
    年齢、性別、世帯規模、家族構成、所得、職業、学歴、世代など
  • ジオグラフィック(地理的な基準で抽出する方法)
    国、地方、都市、人口密度(都市部、郊外、地方)など
  • サイコグラフィックによる細分化(心理的な基準で抽出する方法)
    個人の価値観、社会的な階層、ライフスタイル、パーソナリティーなど
  • 行動による細分化(製品やサービスに対する知識、態度、使用歴、反応などを基準に抽出する方法)
    製品やサービスの購買状況、求めるベネフィット、使用経験、ロイヤルティー、購買準備段階(知らない>認知している>関心がある>欲しい)など

市場細分化の目的は、市場全体の中から製品やサービスを求めている市場を特定することにある。従って、これまでになかった新しいコンセプトにより投入される製品やサービス、市場の種類によって、さらに細分化の基準が必要になる場合もある。

Targeting:市場ターゲティング

市場セグメンテーションにより抽出した市場の中から、「標的市場」を選定する段階である。対象となる市場には、企業にとって最も魅力的なセグメントを選定 するべきであり、一般的には、「強みを活かせる市場」や「他の競合の少ない市場」を選択する。市場の成長性、市場の構造的な魅力、企業の目標と経営資源の 選択における判断要素として考慮し、その上で市場をどの程度網羅するか決定する「カバレッジ戦略」を採用する。

Positioning:市場ポジショニング

標的市場において、どのような位置で製品やサービスを提供するかを検討する。製品やサービスを競合と比較した際、例として5つの価格から1つを選択し、製品やサービスの位置づけを行う。

<5つの価格>
「ベネフィットが多く価格が高い」
「ベネフィットが多く価格が同じ」
「ベネフィットが同じで価格が安い」
「ベネフィットが少なく価格がより安い」
「ベネフィットが多く価格が安い」

ターゲットマーケティングによる効果

ターゲットマーケティングを実施することで、生活者からのニーズに対し細かい対応が可能となる。また、市場を分析することにより対象が絞られることで、そ の特性を短時間で正確に理解と把握することができる。さらに、標的市場を明確にすることで、ターゲットとなる生活者のセグメントを絞り込むことになり、そ のセグメントがどのようなニーズを持っているのかが明らかになる。ニーズを満たすために、どの様な商品やサービスを提供すべきか明確になる。特に競合と差 別化すべき機能や効用を明確にすることで、今後の市場における有利な戦略を立案することが可能となる。
支出においては、標的市場にのみ投資を集中させることができる。対象としない市場に対する投資を行う必要がなくなり、標的市場に対する有効な投資が可能となる。

ターゲットマーケティングの対象

ターゲットマーケティングは、大規模な事業だけではなく、中小規模の事業においても採用できる手法である。選定した市場において、「強み」を発揮することにより市場における生活者の中で、既存顧客の満足度を向上し、見込顧客の囲い込みをすることが期待できる。
経営資源の乏しい中小規模の事業にとって、大きな市場を細分化し、ターゲット市場を明確にすることにより、経営資源を有効活用することができる。「強み」を発揮できる市場で、安定した事業を展開することが可能となる。

差別型マーケティング

差別型マーケティングとは、ターゲットとする市場セグメントを定め、その市場に適した方法で行うマーケティングである。市場に適した製品や施策を展開し、 売上の拡大と市場でのポジショニングを確立する。しかしながら、製品や施策の多様化は、支出を増加させる。したがって、製品による売上と支出の比較を行 い、適格な意思決定が必要となる。

非差別型マーケティング

「非差別型マーケティング」とは、市場セグメントの違いを考 慮せずに実施するマーケティングである。大量に生産される製品を全国展開する際に用いられることが多い。生活者を考慮する際、「ニーズの差異」ではなく 「ニーズの共通点」に着目し、施策を立案する特徴がある。製品は様々な生活者に訴求できるデザインや機能が採用され、市場への投入を大量に行い、マスメ ディアによる広告を実施する。

集中型マーケティング

「集中型マーケティング」とは、限られた経営資源を特定の市場セグ メントに集中させ実施するマーケティングである。大規模な市場に対するシェア獲得の代替として、少数のセグメントで大きなシェア獲得を目指す戦略である。 得意とする市場に対し、集中的に製品の投入や、施策を実施する。経営資源が限られる中小規模の事業体で採用しやすい手法である。

例題

ターゲットマーケティングに関する記述として最も不適切なものはどれか[解答群]から選べ。

ア ターゲットマーケティングとは、市場の細分化を行い、製品やサービスの対象となる標的市場を定め、その市場に向けてマーケティング活動を実施することである。

イ 非差別型マーケティングとは、市場全体を対象に同一製品の投入や施策を実施することで対応するものであり、大量に生産される製品を全国的に展開する場合に用いられることが多い。

ウ 差別型マーケティングとは、複数の異なるセグメントごとに適合した製品を投入し、施策を実施するマーケティング活動である。市場にきめ細かく対応しようとするものであり、中小規模の事業体が採用しやすい。

エ 集中型マーケティングとは、経営資源と合致する得意とするセグメントに対し、集中的に施策を実施するマーケティング活動である。

[解答群]
①ア ②イ ③ウ ④エ

[解答]
②イ

※本ページの内容は掲載当時(2014年5月)のものです。

【クロスメディアキーワード】コミュニケーションとメディア

クロスメディアキーワード【第6回】

メディア(Media)

メディア(Media)とはメディウム (Medium)の複数系の英単語であり、媒体、媒質、伝達手段などの意味を持つ。記録や保管のための機能と、コミュニケーションのための機能に大別され る。したがって、「紙」や「CD」などは、記録や保管の技術であり、「チラシ」や「書籍」、「音楽CD」などは、メディア利用者とのコミュニケーション手 段である。撮影や印刷、コンピューターなどのメディア関連技術を活用し、円滑なコミュニケーションを図るためには、様々な知識や能力が必要となる。

コミュニケーション

コミュニケーションを用語として捉えると、様々な定義が用いられている。
本稿では、送り手(生活者)から受け手(生活者)への情報の移動、または、その移動の結果生じた心のふれ合いや共通理解、共同関係などと定義する。
送り手は、収集した情報を受け手が理解できるように構造化し編集を加えることで、価値あるコミュニケーションの実現が期待できる。生活者を支える情報を効率的かつ効果的に活用できるようにすることで、コミュニケーションの目的を達成することが可能である。
生活者の周辺には、常に膨大な量の情報が存在している。目的や意図のある情報とするには編集が必要となる。人々の経験や知識をもとに、生活者が理解できる状態に加工を施すことで、目的や意図を伝える情報として知識や知恵の源泉となる。

コミュニケーションモデル

生活者同士がコミュニケーションを行う場合、情報の送り手が伝えたいメッセージを受け手が正しく受け取ることが重要となる。送り手はメッセージを「表情」 や「振る舞い」などの「ノンバーバルコミュニケーション」と、「言葉」や「文字」などの「バーバルコミュニケーション」や「図」として表現する。受け手は この表現を解釈し、送り手のメッセージを理解しようとする。
メッセージによる情報共有プロセスは、送り手と受け手の間で、表現や文脈(コンテキスト)に関する共通の知識や理解の所有が前提となる。
受け手のメッセージ理解は、メッセージの内容や受け手の経験により異なる。生活者の様々な情報に対する処理方法は、情報提示の仕方により異なる。

メラビアンの法則

メラビアンの法則は、アルバート・メラビアンにより提唱された概念である。情報の受け手は、話をしていることと態度が異なっている場合、態度からの情報を 優先して判断する傾向がある。メラビアンの法則では、人物の第一印象は初めて会った時の3~5秒で決まり、その情報の殆どを「視覚情報」から得ているとさ れる。その割合は、「視覚情報」からの影響が55%であり、「聴覚情報」からの影響が38%、「言語情報」からの影響が7%である。また、メラビアンの法 則を拡大解釈することで、「見た目が一番重要である」、あるいは「話の内容よりも話し方が重要である」といった考え方に触れることもある。しかしながら、 メラビアンはコミュニケーション全般にこの法則が適用されるといった明言は避けている。

ザイアンス効果

ロバート・ザイ アンスは、何度も見聞きすることで、次第に良い感情が起こるようになる効果があると提唱している。会う機会の多い人や、何度も聞く音楽は、好きになってい く傾向があることを意味する。経験による潜在記憶は、印象評価において誤って帰属されるといった、知覚的流暢性誤帰属説で説明されている。また、潜在学習 や概念形成といった働きも関わるとされている。この傾向をザイアンス効果や単純接触効果と呼ぶ。セブンヒッツ理論では、ザイアンス効果を理論的に発展さ せ、マスメディアやミドルメディアにより、消費者が商品に関連した情報に7回触れることで、店舗やECサイトでその商品を購入する確率が高くなると提唱し ている。

コミュニケーションの種類

コミュニケーションは、その対象により3つに分類することができる。「対人コミュニ ケーション」は、日常会話の様に、特定の相手を限定した、電話や手紙を活用する、個対個のコミュニケーションである。「集団コミュニケーション」は、講演 会や会議、社内報など、限定された小集団のコミュニケーションである。「マスコミュニケーション」は、新聞や雑誌、テレビ、ラジオなど、マスメディアを通 じた大量伝達による、不特定多数に対し行われるコミュニケーションである。一般的に情報の流れは1対nで一方向となる。送り手と受け手の接触が間接的であ り、伝達の効果や反応の測定が難しい。

コミュニケーション手段

文明の発達に伴い、コミュニケーション手段は進化している。進化は4つの変革によると考えられ、「言語の使用」や「文字の登場」、「印刷技術の発明」、さらに、「高度情報化社会」とされている。
高度情報化社会では、コンピューターの発達や情報のデジタル化、インターネットの普及などが生活者に大きな影響を与えている。高度情報化社会を支えるメディアは、技術の進展により変化を続け、様々な電子メディアが登場している。

高度情報化社会とコミュニケーション

20世紀後半には、情報技術の発展により様々なメディアが登場した。情報通信網であるネットワークが整備され、コミュニケーションを取り巻く環境は高度化 した。コンピューターに関する技術により、数値から文字、画像、音響、映像など、様々な情報がデジタル化され、活用されるようになった。さらにネットワー ク技術により、メディアによる双方向コミュニケーションが実現した。
コミュニケーションはメディア活用により、1対1から1対n、n対nへの進化している。

例題

次の文中の空欄[A]~[C]に入る最も適切な語句の組み合わせを下記の[解答群]から選べ。

メラビアンの法則とは、アメリカUCLA大学の心理学者であるルバート・メラビアンが1971年に提唱した、人物の第一印象は、初めて会った時の3~5秒 で決まり、またその情報のほとんどを「[A]」から得ているといった概念である。この概念は、初対面の人物を認識する割合は、見た目などの「[A]」から の影響が55%であり、口調や話の早さなどの「聴覚情報」からの影響が38%、話の内容などの「[B]」からの影響が7%であると提唱した。

情報の受け手は、話をしていることと態度が異なっている場合、態度からの情報を[C]して判断する傾向がある。その傾向については、メラビアンの法則とし て有名になり、拡大解釈から「見た目が一番重要」、あるいは「話の内容よりも話し方のテクニックが重要」という趣旨で受け止められることも多くなった。し かしながら、メラビアンはコミュニケーション全般にこの法則が適用されるといった明言は避けている。

[解答群]
 ①A:視覚情報 B:言語情報 C:後回しに
 ②A:言語情報 B:視覚情報 C:優先
 ③A:言語情報 B:視覚情報 C:後回しに
 ④A:視覚情報 B:言語情報 C:優先

[解答]
 ④A:視覚情報 B:言語情報 C:優先

※本ページの内容は掲載当時のものです。

ビジネスを創造できる人材育成

多様な顧客ニーズに応え、新たな印刷会社のビジネスを作り出す人材育成を

印刷会社が顧客の真のニーズに応えて仕事を確保してい くには、印刷物に加えてさまざまなメディアを的確に活用できるクロスメディア知識が必要になる。そのためには顧客課題を把握して適切な解決策を提案できる人材が必要になる。
教育カリキュラムを整備して人材育成に取り組む共同印刷人事部の西園明美氏、JAGATクロスメディアエキスパート試験に優秀な成績で合格したIT統括本部の藤森良成氏、出版情報事業部の中島弘道氏とJAGATクロスメディアエキスパート諮問委員会委員長の木戸康行氏が、これからの印刷ビジ ネスで必要になる人材・教育について語り合った。

出席者

共同印刷株式会社(※所属部署名は取材当時のものです)

  • 人事部
    西園 明美氏
  • IT統括本部
    藤森 良成氏
  • 出版情報事業部
    中島 弘道氏

クロスメディアエキスパート諮問委員会委員長

  • 木戸 康行氏

印刷会社へのニーズは多様化している

― お客様のニーズはどのように変化しているのか。

中島  出版社と新聞社を担当している。近年、雑誌や書籍の刊行点数が減少し、また、1冊当たりの部数やページ数も落ちてきている。価格競争も激しくなっているの で、それに巻き込まれずに受注するには、編集企画の段階から関わったり、販促計画の提案などが必要になっている。実際、出版社側からも「売れる企画」や 「売れる販売方法」についての要望がある。

電子書籍が話題になっているが、中小の出版社側はデジタルコンテンツに関しては、まだ様子見といった感じである。

― 藤森氏は、制作、技術的には近年の変化をどう感じているか。

藤森 以前は、印刷物そのものをどう作るかだったが、今は、「自分たちの商品、サービスをどう売るかを一緒に考えてほしい」という、『売り方』が求められている。

例えば同じような商品があふれている中で、お客様は他社商品と比較しての自社商品の良さを、どのように消費者へ伝えたらいいかの部分で悩んでいるケースが多いようだ。

これまで印刷会社側の技術部門は一つひとつの技術をどうするかしか考えていなかったが、それらを組み合わせて、効果的な媒体を提案できるかが求められてい る。例えばコーポレートサイトにしてもSNSにしても、今はスマホなどの小さい端末で見るのだから、情報の一覧性に優れる紙とは違った工夫が必要になる。

そのような形を求められているものに対して、自社の持つ技術やサービスをマッピングしながら、無いものは作っていく、すでにあるものはレベルを上げていくことが急務になっている。

西園 出版社は企画のほか、本で何ができるか、どんな加工ができるか、今までの見せ方と違う部分で何ができるのか、などの提案を求めているようだ。一方、通販カタログなどを担当する部署になると、商品の購入率を高めるためのサービスを提案するような案件もあるようだ。

藤森  お客様の過去の購買データからCRM分析をして、次にどのようなチラシやカタログを作るかを提案する。そのデータを使いながら、極論を言えば、一人ひとり 内容を変えたものを作ることもできる。このような分析のノウハウは、お客様が求めているもので、単に「こういう傾向があります」ではなく、傾向からその先に何が見えるか、つまり、自分たちの商品であれば何が売れるのかも併せて提案してほしい、というニーズが増えている。共同印刷でも実際は出版、商印、ビジ ネスフォームなど、事業部によってかなり温度差が激しい。最も顧客ニーズの多様化に直面しているのが商印の事業部で、日々そういう提案を求められている。 商印では、直接消費者へ情報を出していくことになるので、クロスメディア展開の必要性が一番出てくる。

― 印刷物の製造だけを求めるというところから、自社ビジネスを支援してほしいという期待に変わってきているということか。木戸さんは実際のビジネスでは印刷会社とは違う立場で、発注側をご存じだと思うが、どのような変化を感じているか。

木戸 印刷会社と決定的に違う点は、最終的に印刷物に落とさなければいけないかどうかにあると思う。どこをビジネスにするかによって提案の仕方は変わってくるし、印刷会社の場合は、どう印刷物と絡めるかということがマストになっている。

印刷会社のお客様は印刷物を求めているケースが多いので、それでもいいだろうが、今は結局、印刷物だけを作っても効果が見出せなくて迷走してしまう。たいていのお客様にとって、紙はあってもなくてもいい。お客様のニーズがどう満たされて、お客様の売り上げが上がるかの1 点に尽きる。

実際、印刷会社も競合相手が変わってきているのではないかと思う。そことどうやって戦っていくのかということがある。

藤森 確かにかつての競合は、ほとんど印刷会社だった。しかし、顧客のニーズに応えるということでは、紙媒体でなくても、Web サイトでもよい。

そうなると、Web 制作会社や広告代理店と競合になってくるし、スマホやSNS が活用されると、よりいろいろな会社へと競合相手の幅が広くなっている。そこで、共同印刷はそれらの会社といかに差別化するかということになる。印刷会社の営業はお客様の懐の中に入り込んでいるという自負がある。単にお客様が指定されたものを作る、売れるものを何か提案するだけではなく、売り方や、どう作っていくのかまで踏み込むことが、差別化につながるのではないかと思っている。

例えばある商品のWeb サイトを作るときに商品のコメントの集め方、画像の撮り方、その画像の見やすさなどまで入り込んでいく。そして、紙だけではなくWeb サイトも含めて、ただ作るだけではなく、マーケティングからクリエイティブまでをセットにできれば、トータルソリューションサービスとして効率的に組み立てることは、印刷会社の強みになると思う。

木戸 それは、オペレーション効率をどう上げるかという点で、コスト削減につながる提案が強みになるということだろう。

藤森  お客様が求めているのは売り上げや利益を上げることで、それにどう貢献できるかと考えると、売り上げを上げるかコストを下げるかの2 つしかない。この2つが両輪になっているはずなので、どう売るかというプロモーションを支援すると同時に、その一連の制作をコストダウンしながら価格競争力を出していく。この両輪に対してうまくサービスを展開できれば、当社を選んでいただけるお客様はあると思っている。

印刷だけでは顧客ニーズに応えられない

木戸 極端なことを言うと、提案の内容によっては印刷会社でも印刷物としての仕事を受けないときもあるということか。

西園 そういう仕事もあるようだ。カタログ印刷は他社で、Web カタログのサイトだけを受注するというパターンも出てきている。

藤森 Web to Print のサービスを提供しているが、できたデータの印刷は当社ではないこともある。しかし、お客様がどのように使うか、さらにその上流にある企画などをどのように作っているかも分かるので、それは次のビジネス展開につながると割り切っている。逆に、お客様の立場になれば、地方で使うものは地方で出力したほうが、 東京で刷って送るよりは早くて安いのだから、無理してまで当社でとって印刷するよりも地方の協力会社などを紹介したほうがよいだろう。

― 本や雑誌を作るほかに、販売プロモーション支援のニーズはあるのだろうか。

中島 私はまだ経験していないが、「SNS を使ってうまく広める方法を考えてほしい」などの要望をされた担当者はいる。一番多いのは、新刊を出すときのキャンペーンサイトの制作である。キャンペーン用アプリも同時に配信するなど、配信する内容を含めて提案している。

木戸 それは全部、社内で完結できるものなのか。

西園 当社のいろいろな部門を活用することで、自社内だけでもできる体制を持っている。しかし、実際のビジネスではさまざまなパターンがあり、状況に応じた取組みが展開されている。

藤森 自社で足りない部分は、リスクヘッジも考えながら企画やアプリを作れる会社などとパートナーを組んでいく。逆にリスクも生じ得るが、それよりは、パートナーを組んでバリエーションを増やしていくことで得られるものは多い。

中島 今、お客様側も印刷会社側もいろいろと新しい試みが必要な時だろう。お客様が変わっていくのか、それとも先に印刷会社の営業が変わって何か仕掛けて仕事をするのか、少しずつ動いてきていると思う。

これからの印刷会社ビジネスに求められる能力とは

― ビジネス環境の変化が激しいなかで、従来の印刷ビジネスのための人材から、新しいビジネス展開に合わせた能力が必要になっていると思われるが、どのような人材像を描いているのだろうか。

西園 以前の印刷会社は、お客様から預かった原稿を間違いなく、その指定どおりに作ることが使命だった。しかし、お客様への提案となると、オーダーをそのまま忠実に守っているだけでは、お客様の本当のニーズには応えられない。印刷会社としては、お客様への向き合い方を変える必要に迫られている。そのため今の人材には、オーダーをされたものをしっかり表現すること、形にすることはもちろん、自分たちもお客様の視点と同じものを、さらにその先のものも見て提案できる視 点を養うことが必要になっている。

当社は教育カリキュラムを整備して、毎年、社員のレベル、ニーズに合わせて見直しを行っている。また社 員がどのようなパフォーマンスをしたら成果を出せるか、それに合わせて評価をするような人事の仕組みに変えている。したがって、おのずと社員も、自分の能力を高めるような意識で取り組めるような形になっている。

― 実際の仕事のなかで、自分の能力を伸ばすべきと感じる部分はどこか。

藤森 お客様のほうが物事を知っているときがある。自分も知識を持っていたつもりなのだが、それを超えた質問をされたときは、技術や知識が足りないと感じることがある。例えば最近は、デジタル端末を使いこなして、WebメディアやSNSを日々使われているお客様も多い。そうすると、こちらが提案しても、「それだったらこういう情報をここに載せたほうがインパクトはあるんじゃないの」と返ってくることもある。私たちの組み立て方や考え方に対して、私たちでは気がつかなかった見方や考え方を指摘されたようなときに、まだ不足している部分があると感じる。

中島 私は4、5年周期で異動していることもあり、まずお客様の誰がキーマンで、当社の設備などの良い部分を使うにはどのような仕事を受注すればよいかを見極めて攻めていかなければならない。それも半年、1年ぐらいで成果を出すように見極める能力が必須になる。

― 木戸さんは印刷会社の営業と、通常のビジネスやクロスメディアビジネスをやるとき、この辺がちょっと弱いとか、この辺の能力が必要になると思うところはあるのか。

木戸  企画提案力の違いはどの会社にもあるが、印刷会社は、どちらかというと仕事をもらいに行くというスタンスが多く、そういう人は受け身になっているケースが あるようだ。本当は自分が思っていたところよりも少し上のところの仕事が欲しいのだが、それをなかなか出しにくいのが、印刷会社の文化としては多いという イメージがある。

印刷会社は規模の大小やそれぞれの特徴があるが、大きい会社ほど細分化され、企画力のある人もいる。問題は、どこを自社 のセールスポイントにして仕事を落としていくのかで、そこがずれてしまうと、おそらくその会社の持ち味がなくなってしまう。私は一緒に仕事をするときに、 その点をよく聞くようにしている。「御社はどこでビジネスするのか」ということを重視している。

藤森  印刷会社にとってクロスメディアというキーワード1つにしても、大手と中堅ではできることが違う。大手はインフラそのものもひっくるめてマーケットを作り、そこでビジネスができる。一方、中小では制作する コンテンツそのものや、クオリティを上げたり、それを広めたりという範囲でしかできない。当社はその狭間に立っているような気もする。だから大手が入り込 まない細かいところで、しかし小さい会社では入ってこられないものに軸足を置くことが考えられる。

木戸 印刷会社の人と仕事をするときに、その人の役割は何かが気になる。アカウントを管理する人なのか、プロデュースする人なのか、企画なのか、手を動かす人なのかというフォーメーションを知っていることが大事である。だから、その役割があいまいだと、誰と話をしたらいいのか分からなくなる。

共同印刷さんのような大きい印刷会社なら、ゼネコンのような形で、仕事を受けて効率的に仕事ができるようにパートナー企業とのコラボレーションを仕切ってい く役割が求められるだろう。小さい会社だと、なかなかそこまでできない。実際に、企画はいいけれども仕事を始めたら、うまく作り上げてくれないということ も多々ある。

藤森  私は営業も経験しており、営業的な話も技術的な話もできるので、仕事がしやすいと見てくれている方々もいる。細分化してサービスを作っていくというやり方もあるだろうが、ある程度、1 人が何役もこなせたり、お客様と各部でお話ができたりするような人材がいるとポイントになるかもしれない。会社の大小にかかわらず、そういう人材がいれば、仕事を取っていけるようになるのではないか。

クロスメディア知識はこれからのビジネスでのカギになる

― 藤森さんのお話はクロスメディアエキスパートの理想像に近いように思う。御社にはクロスメディアエキスパート認証試験を活用していただいているが、試験を受けようと思われるときは、個人のモチベーションと組織の上からの働きかけがあると思う。この試験、勉強しようと思われた動機はどんなところなのか。

中島 新聞社を担当していたとき、出版物よりも、チラシやパンフレットなどの商印物件を多く手掛けた。あるとき、新聞社が新しいサービスを始めるということを聞いた。

担当者に話を聞くと、デジタル系の案件であった。お客様は当社がデジタル系もできると思っていなかったようだが、すぐ専門の者を同行して提案し、その案件 を受注できた。そのこともあって、今後は紙だけでなくデジタル系もいろいろ身に付けて、クロスメディアの方向で営業展開する必要性を感じていた。ちょうどそこに人事部からのクロスメディア試験の案内があり、この資格が役立つだろうと考えて試験を受けた。本資格の存在は数年前から知っていたが、そのときはクロスメディアと言われてもピンとこなかった。時代の流れが変わって、自分の中でも必要性を感じるようになった。

藤森  私は情報処理やXML 関連などの資格を取ってきていた。お客様と話をしていると、「藤森さんはいろいろよく知っているよね」と言っていただける。それなら最初から最後まで通し て、「私に相談していただければなんとかできます」というようにしたい。しかし所属が技術部門のため、なかなかコンサルをするイメージを持っていただけ ず、社内外に説得力のあるものを探していたときにクロスメディアエキスパートがあった。お客様の持っているコンテンツや情報を使ってビジネスを展開してい こうとするときに、この資格なら技術を含めてきちんと説明できるだろうと思った。今、営業と一緒に同行するときなど、「あ、この資格を持っているんだね」 と言っていただけるのがクロスメディアエキスパートではないか。

― 顧客のオーダーどおりに作るだけではなく、顧客の問題解決を手助けするような提案が求められるようになって、印刷会社も人材も変わらなければならないということだが、個人の意識はどうなのか。またお客様側の提案に対する期待感はどうだろうか。

中島 お客様によると思うが、私は、何度か異動していて、そのたび初めてのお客様になる。そうすると、まず、どのように相手の扉を開けるかを考える中で、紙媒体だけではだめだという意識が強くなった。

藤森  印刷会社に対する期待感は、接するお客様の担当者でも変わってくる。お客様が印刷物の担当者で、「この印刷物を作って」となると、印刷物のこと以外の提案 にはなかなか関心を示さないことも多い。しかし、実際は隣の部署でも同じようなものを使って何か違うものをやっていることもある。だから、お客様企業の取 り組み全体を通じて実績をつくっていけると、当社に対する期待感に変わるのではないか。

中島  営業担当者が意識を持つかどうかだと思う。得意先に行って、まだ参入していない部署での新しい仕事の話を聞いたら、そこに顔を出して「共同印刷ですけど、 こういうお話を聞いたので、詳しく聞かせてください」と行くようにしている。そういう積み重ねが期待感に変わって、うまくいけば仕事も増えていく。

クロスメディアエキスパートは仕事に役立つか

木戸 お客様はクロスメディアエキスパート資格を知っているのか。

藤森 私が訪問したところでは半分ぐらいの人が知っている。

中島 出版社は多分まだそれほどいない。しかし、最初に挨拶したときに名刺を見て、「これは何」と聞かれると、説明して、「実は紙の印刷だけじゃなく、こういうこともできますので」ということで、次につなげられるきっかけになればと思う。

木戸 うまく使えば、引き出しが広がっていくだろう。

藤森 クロスメディアは、今はキーワードになっているところがあるので、この資格を知らない人でも、「クロスメディアだからいろんな媒体のことだよね、それのエキスパートはどういうことをしてくれるの」と聞いていただける。

木戸  私自身がこの認証試験そのものを、立ち上げのときからずっと関わっているが、いろいろ議論しながら作ってきた。この資格が実際にお客様に響いていくことも あるし、自分の中で頭の整理ができたということなど、役に立つというレベルもいろいろあるだろう。実際の仕事をやる上では役に立っているのだろうか。

中島  この資格を取ろうと思って勉強を始めるまで、デジタル系には本当に疎かった。試験を受けようと決めた時点で、試験関連の本を読み始めたが、ほとんど分から なかった。こんなに世の中はいろいろなことが進んでいるのかという思いだった。私はゼロからというよりマイナスぐらいからのスタートだった。勉強していく と、「あ、これがこういうことなのか」と少しずつ分かってくる。

合格したとはいえ、まだ、階段を1 つ上ったくらいなので、これをきっかけにさらに勉強していく。また、お客様との会話では話題が広がり、これまでとは違うアプローチができるようになった。

木戸 試験では択一問題と記述問題では、知識と知恵の違いのようなものがあると思うが、それには抵抗なかったのか。

中島  記述に関して言えば、企画書自体をほとんど書くことがなかったので、どのように書くのがよいのか、フォーマットや提案の場合のポイントなどを合格した方た ちに教えていただいた。しかし、記述は択一に対応できる知識がないと良いものにはならないので、択一での知識をしっかりと覚えることから始めた。模擬試験も受けたが、記述は難しかった。

藤森  私は技術部門なので、自分が実務で使っている知識もあったが、普段は仕事で意識しないマーケティングなどは勉強になった。択一問題には広くいろいろなトピック的なものが入っているし、話題性のあるものがかなり入っている。そういう意味ではトレンドを見ていく上で、取り上げられているものは、おそらく仕事でも何かに使えるはずだというバロメーターにも使える。

記述は、模擬試験で教えてもらったSWOT分析の方法は、試験の2時間の中でやるには時間がないと思うが、実際の仕事では役立つと思う。また、記述で提案を作っていく流れを考えると、それをテンプレートのようなものにできれば、試験を受けるためだけではなく、実際のビジネスの提案で、使えるのではないだろうか。例えばAIDMAやAISASなどの理論を知っているか知らないかで、お客 様が理解できるような提案書になるのかどうかが、変わってくると思う。試験を受ける前は自分たちの思いで提案書を作ってきたので、技術者用の提案書になっ ている。しかし、今は提案書の書き方も変わってきて、上司にも驚かれている。

木戸 AIDMAとかAISASなどのマーケティング理論は、起こってきた事実を論理的にまとめただけに過ぎないと思っている。

一番は課題解決をどうしたらいいかであり、そのためにお客様を説得できる、あるいは納得させるものを、ある程度論理的に作らないと、お客様に届かない。そ ういった思考方法はロジカルシンキングという用語にも言い換えられるが、AIDMAも、AISASも、SWOT分析も、それは1つのやり方であり、あまり こだわってそこばかりに集中するのは本末転倒である。

最近の記述試験の解答を見ると、FaceBookをやたらに使ったり、必要ないのに デジタルサイネージを入れたりと流行りものを使ったテクニック論を入れるものが多くなっている。重要なのは、この提案は一体何なのか、お客様に届くのか、 心を打つのかということである。そこが実際の仕事につながるところである。

JAGATとして択一と記述を用意しているのは、「お客様に届く提案の書き方というのを、知識は択一でまずは押さえてください」。そして、「記述は整理をして、通り一辺倒の作文ではなく、説得する文章にしましょう」というところを狙いにしていた。

記述試験は、実際の仕事でイメージすれば、営業担当が行ってヒアリングしているというイメージだったものを、それを行ってなおかつメモランダム的に社内用にまとめたものというようなイメージに変えている。

藤森  そうすると、企画部門や技術部門でも、営業が作ったヒアリングシートをもとに、「じゃあ取りかかろう」というスタンスになれる。とすれば先端にいる営業だ けではなく、一緒に仕事をするわけだから企画部門も技術部門も資格を持つと社内的にはより仕事がやりやすくなるかもしれない。

人材育成のひとつのきっかけに

― クロスメディアエキスパートは更新試験もあるが、その位置づけは何か。

木戸  一言で言うと、やってきたことが錆びないようにすることである。日頃から皆さんが仕事の中で取り組んでいれば難しいものではなく、むしろ、更新試験でブ ラッシュアップしていることを確認するというような意味である。そういう意味で、あまりクロスメディア的な仕事に携わっていないと忘れて錆びついてしまう ので、きちんとそれを研いでほしいということである。

― 御社としては、クロスメディアエキスパートをこういう人たちに取ってほしいという思いはあるのか。

西園 内容自体が、デジタル化の最先端のものを取り扱っているので、IT 領域に接する機会のある担当者には必要である。また、この内容は択一試験の部分で知識を蓄えて、それだけで終わらずに提案書を書きなさいという段階が待ち受けている。

この試験に取り組まない限り、提案書を書く機会を得ないという者もいる。必ずしもそれをやらなければいけないというわけではないが、お客様に何を提案する かというのを自分で受けとめて考えたプランでないと、具現化は難しい。したがって、こういう提案書を作る、論理的に組み立ててみるというトレーニングは、 実際には自分で書いてお客様に提案することはないとしても、とても役に立つと思う。

試験勉強でロジカルシンキングを学び、さらにJAGAT の通信教育講座は一通りそのフレームワークが揃っているので、それを使って身に付ければ役に立つと思う。

当社の営業パーソン全員にこれらの知識が必要かというと、そうでもないだろうが、このようなトレーニングが必要だという認識は大事である。できればこれらの勉強をして知識を蓄えてお客様を訪問してもらえるのがいいと思う。

(JAGAT Info 2013年2月号より)

※本ページの内容は掲載当時のものです。