Japan マーケティング Weekに出展した印刷関連企業の提案を中心に、Webとリアルをつなぐ販促手法のトレンドを探る。 続きを読む
「展示会」タグアーカイブ
「page2022」を“予習”するためのテキストとして 〜『JAGAT info』2022年1月号のご案内
通算35回目となる国内最大規模の印刷・メディアビジネスの総合イベント「page2022」では、2年ぶりとなるリアル展示会を2月2日(水)から2月4日(金)まで、お馴染みの東京・池袋のサンシャインシティコンベンションセンターで開催する。 続きを読む
多様なニーズにデザインと印刷の強みで応える
第30回 日本文具大賞2021では印刷会社がグランプリと優秀賞を獲得した。競争の厳しい文具分野で健闘する印刷会社の取り組みを紹介する。
コンテンツ東京2021に見る印刷会社のビジネス展開
4月14日~16日に行われたコンテンツ東京 2021には、印刷関連企業も多く出展し、多彩なビジネスをアピールした。 続きを読む
page2021オンライン展でわかった動画の重要性
コロナ禍によりライフスタイルが大きく変わり、仕事や生活のなかで動画コンテンツに触れることは多いだろう。page2021オンラインを経て、動画の有効性と課題について紹介する。
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リアル、デジタルの特長を生かしたイベント・セミナーの考え方
Withコロナ時代に適したリアルとデジタルのイベントのあり方について考える。
2020年の展示会に見る印刷会社の提案
コロナ禍のなかでもいくつかのリアル展示会は開催されている。厳しい経済状況のなかで販路開拓に挑む出展者のなかには、印刷・加工関連企業の姿も見える。
ユーザーとともに育つアイデア商品「himekuri」
株式会社ケープランニングが開発した卓上型の日めくり付せんカレンダー、himekuri(ヒメクリ)が、第27回日本文具大賞で機能部門の優秀賞を受賞し、第29回 国際 文具・紙製品展 ISOT(2018年7月4日(水)〜6日(金)/東京ビッグサイト)の会期初日に表彰式が行われた。
himekuriの特徴は365日全ての絵柄を変えていることと、付箋加工されていることだ。
一週間・7日分の日付が一列に並び、左から順に剥がしていく仕組み。
週ごとに基調色を変えているので、今日の日付が一目で分かる。2018年に実用新案を取得している。
▲週ごとに基調色が変わる。今週と来週の色の切れ目が今日だと分かる。
剥がした付箋は、ノートやメモ帳に貼ってオリジナルダイアリーに、また手作り料理を入れた容器に貼って作った日の記録にと、アイデア次第でいろいろな使い方ができる。
ケープランニングのメイン業務は紙卸売業であるが、別会社のカンベビジュアルとともに企画・印刷も手がけている。商品開発も行い、自社運営のECショップ「be-on」を通じて販売している。
himekuriも「be-on」の取り組みから生まれた商品だ。当初はモノトーンの日付だけが印字されたシンプルなデザインで、2017年7月のISOTに出展して注目された。その後、新柄を開発するためにクラウドファンディングを実施すると、目標金額 500,000円に対し1,511,000円と、達成率300%を超える資金が寄せられた。
参考記事:インスタ映えする日付シートとしても使える日めくり付箋カレンダーの新柄を作りたい! | Makuake(マクアケ)
新柄が発売されると、ユーザーが、イラスト日記にhimekuriを貼った紙面を撮影し、インスタグラムにアップするムーブメントが起きた。
インスタグラムで #himekuri や #日めくり付箋カレンダー で検索すると、ユーザーがアップした画像を見ることができる。
2019年版は、サイズを一回り小さくし、ノートに貼りやすくした。ライアンアップは、白とグレーのモノトーンに加え、ツートンカラーを基調に数字を配した「colorkuri(カラクリ)」イラストレーター萩原まお氏のデザインによる「文房具柄」と「ねこ柄」の計4種類。
「文房具柄」と「ねこ柄」は、一週ごとにテーマをもたせている。文房具柄では、穴あけパンチの週や鉛筆の週、ねこ柄では箱入り猫の週、ひな祭りの週など、毎日めくることが楽しくなる仕掛けとなっている。
▲「文房具柄」と「ねこ柄」
himekuriはノートに貼って使うユーザーが多いことから、専用の「himekuri note」も開発した。A5スリムサイズで糸かがり製本によって180度開くことができる。用紙は、薄くて裏に透けない万年筆向きの「トモエリバー」を採用している。
▲himekuri note
バリアブル印刷のユニークな活用事例であり、またSNSを通じてユーザーとともに開発を進めている点が、現代にふさわしいビジネスのあり方を示している。
※掲載画像は、第29回 国際 文具・紙製品展 ISOTでの展示風景。
*初出:「紙とデジタルと私たち」2018年7月26日
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)
デジタル印刷×デザインの挑戦「INK de JET! JET! JET! 3」展
2018年8月1日(水)〜8月13日(月)まで、渋谷ヒカリエ 8Fの CUBE 1, 2, 3で、株式会社ショウエイが主催するUVインクジェットプリントによる展覧会「INK de JET! JET! JET! 3」が開催された。

デザイナー・フォトグラファー・イラストレーターなど、さまざまな分野のクリエイターの参加を得て、UVインクジェットプリントとカッティング加工などの技術を生かしたデザイン作品を展示した。
作品の一部を紹介しよう。
筒井 美希氏(アートディレクター)

「Crow」
反射シートにカラスの写真を印刷した作品。一面真っ黒な画面に見えるが、光を当てると絵柄が浮かび上がる。
清水 彩香氏(アートディレクター / グラフィックデザイナー)

「PRINTING OR PAPER 01」
紙の上にカットした紙を重ね、さらにホワイトやニスなどの特殊インキを重ねて、紙とインクの境界が曖昧になる効果を狙った。
プライマー(*)を土台となる用紙に印刷し、その上にカッティングした紙を手貼りしたという。
*プライマー:用紙に対してUVインクの付きを良くするために使う下塗り剤 参考
千倉 志野氏(フォトグラファー)
ロギール アウテンボーガルト氏(手漉き和紙作家・かみこや代表・土佐の匠・高知工科大学客員教授)

アウテンボーガルト氏は高知県梼原(ゆすはら)町で手漉き和紙作家として活動している。今回は、千倉氏が梼原の風景を撮影し、アウテンボーガルト氏が写真一点一点のイメージに合わせた和紙を制作し、そこにUVインクジェットプリントした。印刷される部分はフラットだが周囲はさまざまな質感をもち、一枚の和紙なのに、まるで額入りの作品を見ているかのような錯覚を覚える。
植村 忠透氏(フォトグラファー)
佐々木 香菜子氏(ペイントアーティスト)
山﨑 哲生氏(インテリアデザイナー)


「ONE(ワン)」
植村氏と佐々木氏によるユニット「CAT BUNNY CLUB(キャット バニー クラブ)」に2018年から山﨑氏が参入。今回は、PET素材でドライフラワー用の一輪挿しを制作した。簡単に組み立て、シールで壁に貼れる。デザインは40種類から選べる。
展示作品は一部を除いて購入可能だ。また会場の一角には展示作品に関連したオリジナル商品の販売コーナーも設けた。

ブランド構築への足掛かり
ショウエイは製版業からスタートし、現在はUVインクジェットプリンターを駆使した大判ポスター、ディスプレイ、POPなどクリエイティブな制作物で定評がある。
「INK de JET! JET! JET! 」展は、2015年と2016年にも開催し、印刷関係者やデザイナーの間で話題となった。2017年には多摩美術大学や東京造形大学で巡回展を実施し、学生や美術教育の関係者にも注目された。
3回めとなる今回は、更に広く消費者にアピールすることを狙った。前2回は印刷実験の要素が強かったが、3回めとなる今回はどちらかといえば、デザインの面白さにスポットを当てる企画となった。
会場は、渋谷ヒカリエの8Fのクリエイティブスペース「8/」の一角にあり、d47 MUSEUMなどのギャラリーやデザインショップが隣接する。アートやデザインに関心を持つ人々がふらっと立ち寄って、インクジェットプリントの世界を楽しんでいた。
今回の来場者は約4500人、商品の売れ行きも好調だったという。
蔦屋書店、伊東屋のほか大手メーカーや美術館などに、クオリティの高いプロモーションツールを提供してきたショウエイであるが、今後はB to C市場も視野に入れ、オリジナルブランドにもチャレンジしたい、そして本展をその足掛かりにしたいという。
今後の展開が楽しみだ。
*初出:「紙とデジタルと私たち」2018年8月29日
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)
国際見本市「インテリア ライフスタイル」で見つけた紙ものたち2018
インテリア・デザインの見本市で、多彩な紙製品が発表される
「Interior Lifestyle Tokyo/インテリア ライフスタイル」(主催:メッセフランクフルト ジャパン株式会社)が2018年5月30日(水)〜6月1日(金)に東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催された。
第28回を迎えた今回は、3日間で25,302名が来場、世界29カ国・地域から810社(国内:615 社 海外:195 社)が出展し、会場はライフスタイルのトレンドを探す来場者で賑い、商談が活発に行われた。
「インテリア ライフスタイル」は近年、家具や雑貨などのインテリア製品にとどまらず、服飾雑貨、食品、ギフトアイテムなど製品分野が多様化している。そのなかで、紙素材や印刷・製本加工技術を応用した製品も多数発表されている。
数多くの出展から一部を紹介する。
大成紙器製作所―紙の道具「紙器具(しきぐ)」を提案
パッケージ印刷の老舗、TAISEI(株)が母体。
書き込みのできる紙製マグネット、筒型のぽち袋「POCHI-PON」、サイズ違いの箱の組み合わせで、デクストレーのような使い方ができる「FUMIBAKO」 などを紹介した。
ikue―製本技術が生んだ、紙と金のジュエリー
(株)TANTと(有)篠原紙工による共同開発。
古来より書物を劣化から護る紙加工技術として培われてきた「三方金」の技術を応用し、スタイリッシュなアクセサリーに発展させた。7月発売を目指す。
石川紙業(株)の美濃和紙プロダクト
美濃和紙の産地、岐阜県美濃市で創業明治35年の和雑貨メーカー。
「豊かな日本の心をプレゼント」をテーマに、和紙のマグネット、コースター、がま口、ケース類、ブローチ、和紙貼り陶器人形など、多彩な製品を展示。
kamiterior(カミテリア)―紙をインテリアに
ザラザラ、デコボコなど、紙の表情をテーマにしたメモ「memoterior」、立ち上がるシール付箋「POPit」、好きなところに貼って楽しむ新感覚ペーパー・インテリア「airflow series」などのラインアップを展示。
KamiPLAY(カミプレ)―「心にひびく紙のもの」がテーマ
萩原修、鷲見恵史、馬渕 晃、矢野まさつぐの4人のクリエイターが全国を旅して出会った紙や印刷加工技術をもとに作ってきた。
紙風船をアレンジした動物や国旗のシリーズ、祝儀袋にもお面にもなる「かみめん」など、遊び心あふれる製品を展示。
PAPER MESSAGE(ペーパーメッセージ)―印刷会社による紙製品ショップ
(公財)高知県産業振興センターのブースに出展。
本山印刷(株)が運営し、高知市帯屋町と東京・吉祥寺に実店舗を持つほか、オンラインショップもある。
ウェディングアイテム、ボックスやカードなどの自社製品を展示。
frel.―紙の風合いを生かしたデザイン雑貨
岩橋印刷(株)[現:プログラフ(株)]によるプロダクト。
カドを立たせた箱にステーショナリーをセットした「お道具箱 KADO」のほか、動物をモチーフにした「アニマル インデックスシール」「ぽちマル」など可愛らしいステーショナリーを紹介。
PALEVEIL(ペールベール)―薄紙を生かしたペーパープロダクツ
薄紙印刷の高い技術を持つ岩岡印刷工業(株)が、デザイン会社のSAFARI incとのコラボで立ち上げた。
使用する用紙はオリジナル開発。ノート、新製品のカレンダーなどを展示。
GOKANKAKU―五感から広がる新たなライフスタイル
創業130周年を迎える祝儀袋など紙製品の老舗企業(株)マルアイが手掛ける。
和紙で花をかたどったフレグランスディフューザー、小さな水引のフレグランス、UVシルクスクリーン印刷による点字をデザインに生かしたカードやぽち袋などを展示。
tabie―旅をテーマにしたステーショナリー
特殊印刷やダイカット技術に定評のある(株)マルモ印刷の新ブランドで、8月に発売予定。
世界の名所が起き上がるポップアップメモ「ポップアップワールド」、旅先のチェックリスト作りに役立つTo-Doリスト「スルコト」、ふた付きポケットファイルなどを展示。
+lab(プラスラボ)―日常をちょっと楽しくするステーショナリー
名刺・封筒をはじめとする紙製品で知られる(株)山櫻が手掛ける。
じゃばら状に開き、時間や思考の流れに沿って記録できる「アコーディオンノート」、折り筋に沿って封筒が作れるノートパッド「フウトウパッド」などを展示。
紙と印刷で、暮らしにうるおいと喜びを
以上、紙と親和性の高いステーショナリーが目立つ傾向にはあるが、ファッション雑貨、インテリア用品、玩具などへの展開例も見られる。
紙と印刷は、情報を伝えるだけでなく、私たちの暮らしに潤いと喜びをもたらしてくれるものでもあるのだ。
そして印刷関連企業の出展がいくつも見られるのは嬉しいことだ。インテリア・デザインの市場に参入していくには、デザイン力に加えて印刷物製造とは異なる独自の技術や知識、マーケティング、プロモーション手法など、いくつものハードルを超えなくてはならない。しかし試行錯誤のなかから、新たなビジネスパートナーとの出会いがあり、スタッフの成長、企業の活性化といった変化も生まれるに違いない。
紹介した企業とブランドが消費者に長く愛され、継続発展していくことを願う。
*初出:「紙とデジタルと私たち」2018年6月15日
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)