印刷白書と産業連関表

掲載日:2015年7月14日

産業連関表によって印刷産業と全産業の取引関係を見ることができ、新規需要の発生による経済への波及効果を計算することができる。

6年ぶりに公表された産業連関表(基本表)

「平成23年(2011年)産業連関表(確報)」が2015年6月16日に公表された。2009年3月24日の「平成17年(2005年)産業連関表(確報)」以来、実に6年ぶりの産業連関表確報の公表である。
産業連関表は、様々な産業が1年間に生産した財・サービスのすべての取引を一覧表にまとめたもので、10府省庁(総務省、内閣府、金融庁、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が共同で5年ごとに作成している。原則として西暦末尾0と5を対象年としているが、今回が原則と異なるのは、重要な基礎資料となる「経済センサス-活動調査」が2011年を対象に実施されたことによる。
経済産業省は、この政府全体で作成する産業連関表(基本表)の作成にも携わっているが、それとは別に5年間隔の隙間を埋めるために、毎年この基本表から各年の産業連関表を延長推計した(簡易)延長産業連関表を作成している。延長表には簡易版と精緻版があって、2005年基本表を延長した「平成24年簡易延長産業連関表」が最新のものだが、その精緻版は2011年基本表を用いて推計作業をやり直して、「平成24年延長産業連関表(平成23年基準)」として2016年3月下旬に公表予定である。

「日本標準産業分類」の改定

産業別の統計の分類基準となる「日本標準産業分類」は、統計の相互比較性と利用の向上を目的に1949年10月に設定され、2013年10月の第13回改定が最新版となっている。各改定ごとに、産業連関表だけでなく、工業統計調査、労働力調査などの産業分類も改定される。長期時系列データの接続が困難になる場合もあるが、産業構造の変化に適合するために改定は避けられない。
印刷産業にとって大きな変化は第11回改定(2002年3月)で、中分類「出版・印刷・同関連産業」部門が「印刷・同関連業」に変更されたことで、新聞業と出版業は製造業の分野から情報通信業に移行した。
最新の第13回改定では、分類項目の新設(市場調査・世論調査・社会調査業、リラクゼーション業、ネイルサービス業、幼保連携型認定こども園、コールセンター業)の他、分類項目の移動、分類項目名の変更が行われている。
産業連関表では、今回の2011年基本表は第12回改定に対応している。前回の2005年基本表は第11回改定に対応し、中分類・小分類で「印刷・製版・製本」単独の数字が把握できるようになった。

産業連関表から印刷需要をどう見るか

印刷白書では2010年版から産業連関表による印刷需要の分析を行ってきた。2010年時点では2000年基本表を延長した2008年簡易延長表が最新のもので、印刷産業は「出版・印刷」部門に統合分類されていた。そこで、基本分類表の国内生産額の比率を基に分割して「印刷・製版・製本」単独の数値を算出・作成した。
印刷白書2011年版からは、2005年基本表とその延長表による分析が可能になり、「印刷・製版・製本」単独の数字が把握できるようになった。毎年1年ずつ追加されたデータを基に推移を見て、2014年版では2005年基本表と、その延長版の2008~2012年を比較している。
『印刷白書2015』は現在執筆準備を進めているところだが、2011年基本表の延長版は2016年3月下旬まで公表されないことから、前年版より1年戻った2011年基本表と2005年基本表との比較となる。
毎年少しでもわかりやすく、役立つようにと努めているが、新しい基本表が公表されたことを機にどう取り組むか一から考えていきたい。2011年基本表との比較では、2005年基本表を新しい分類で組み替えて、より整合性のある分析を行うために基礎資料をまとめている。数字をきちんと把握することで印刷需要や産業全体との関わりをわかりやすく提示したい。

『印刷白書2015』は9月末~10月上旬に発行する予定である。現在の形になって6回目の刊行で、どこまで新機軸を出せるか、ご期待いただきたい。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)