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印刷白書2025

印刷白書2025
印刷産業の現在とこれからを知るために必携の白書『印刷白書2025』
第1章 Keynote Re : Connect
第2章 印刷産業の動向
第3章 印刷トレンド
第4章 関連産業の動向
第5章 印刷産業の経営課題
ご注文はこちら発行日:2025年10月31日
ページ数:112ページ
判型:A4判オールカラー
発行:公益社団法人日本印刷技術協会
定価:15,400円(14,000円+税)
JAGAT会員特別定価:9,900円(9,000円+税)

解説

印刷産業のこれからを知るために必携の白書『印刷白書2025』

あらゆる産業を顧客とする印刷産業は、さまざまな産業と密接に関わりを持っています。「印刷白書」では、印刷産業の現状分析から印刷ビジネスの今後まで幅広く取り上げています。

印刷・同関連業界だけでなく広く産業界全体に役立つ年鑑とするために、社会、技術、産業全体、周辺産業というさまざまな観点から、ビジョンを描き込み、今後の印刷メディア産業の方向性を探りました。

印刷業界で唯一の白書として1993年以来毎年発行してきましたが、2025年版では組織変革などの項目を追加しました。

印刷関連ならびに情報・メディア産業の経営者、経営企画・戦略、新規事業、営業・マーケティングの方、調査、研究に携わる方、産業・企業支援に携わる方、大学図書館・研究室・公共図書館などの蔵書として、幅広い用途にご利用いただけます。

「第1章 Keynote」では印刷会社の「Re : Connect」をテーマに、商業印刷の価値を再定義しています。「第2章 印刷産業の動向」では印刷産業の現状と課題を俯瞰的に捉え、「第3章 印刷トレンド」では技術課題を整理しました。「第4章 関連産業の動向」ではクライアント産業の動向を探りました。「第5章 印刷産業の経営課題」ではサステナビリティから人材まで印刷産業が取り組むべき課題を整理しました。
印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、UD書体を使った見やすくわかりやすい図版を多数掲載し、他誌には見られないオリジナルの図版も充実させました。

CONTENTS

第1章 Keynote Re : Connect
商業印刷の価値は再定義できるか 未来に向けて「Re : Connect」するために

第2章 印刷産業の動向
[産業構造]印刷がつなぐ社会~広がり続ける印刷の可能性
[産業連関表]多様な産業の需要に応える印刷製品と関連サービス
[市場動向]自律成長に向けた拡印刷による多角化 課題解決型とサービス型へのシフト
[上場企業]サステナビリティとDXで未来を切り拓く上場印刷企業
*関連資料 産業構造/産業分類・商品分類/規模(1)/規模(2)/規模(3)/産出事業所数(上位品目)/産出事業所数・出荷額/調達先と販売先/産業全体への影響力と感応度/最終需要と生産誘発/印刷物の輸出入額と差引額/印刷製品別輸出入額/印刷物の地域別輸出入額/印刷物の輸出入相手国/経営動向/上場企業/生産金額(製品別)/生産金額(印刷方式別)/売上高前期比・景況DI/設備投資・研究開発/生産能力/紙・プラスチック/印刷インキ/M&A

第3章 印刷トレンド
[デザイン]デザインの力で印刷の価値を高める
[ワークフロー]印刷業界の新たなエコシステム構築に向けて
[デジタル印刷]加速するデジタル印刷シフトと未来展望
[後加工]製本業界の課題と技術革新 構造改革で目指す持続的成長
*関連資料 設備投資の動向/フォーム印刷業界

第4章 関連産業の動向
[出版業界]大手出版も取次もデジタル印刷に本腰 返品率改善の切り札として期待のDSR
[新聞業界]デジタル時代に進化する新聞~信頼を強みに新たな役割へ
[広告業界]広告費は過去最高の7.7兆円、インターネット広告は3.7兆円に
[地域メディア]地域メディアを起点にした課題解決と価値創出
[通信販売業界]通販・EC市場売上高初の14兆円台に突入 伸び率もやや前年上回る
*関連資料 出版市場/新聞市場/広告市場/通販市場 

第5章 印刷産業の経営課題
[サステナビリティ]サプライチェーンで求められる環境対応
[地域活性化]高まる民間企業の地域活性化参画への期待 共助領域の課題解決をビジネスの手法で
[経営管理]活学で部下と「コミュニケーション上手」になるには?
[デジタルマーケティング]SNSは「対話」と「体験」を重視するマーケティングツールへ
[AI活用]2030年に向けた印刷業界のAI活用戦略
[組織変革]拡印刷を成功させる組織変革の進め方 変革理論を指針としたプロセスづくりの要諦
[労務管理]変化する中小企業施策と経営力による成長戦略の道
[人材]印刷産業の持続可能性を人材から考える 中核人材育成の論点
*関連資料 AI活用/人材

●巻末資料
DTP・デジタル年表/年表

上場印刷企業の女性管理職比率は平均10.3%

2024年度の上場印刷企業36社のうち、女性管理職比率を開示している27社の平均は10.3%。厚生労働省「雇用均等基本調査」によれば、女性管理職比率は13.1%と微増で、製造業は7.6%と低い水準となっている。(数字で読み解く印刷産業2025その8)

上場印刷企業の2024年度業績は堅調

JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色などに「印刷」とある企業を、上場印刷企業としています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で2024年6月期決算から2025年5月期決算までを2024年度としています。

上場印刷企業の社数は、親会社による完全子会社化による上場廃止がある一方、新規上場もあって、33~34社で推移してきました。『印刷白書2025』では、2024年12月25日上場のMICを加えた36社の企業力などを見ています。

上場印刷企業の2024年度業績を見ると、36社の売上高合計は4.2兆円(前期比3.4%増)で、増収24社、増益17社と堅調です。

上場印刷企業27社の管理職に占める女性の割合は10.3%

2023年3月期決算以降の有価証券報告書から、人的資本の情報開示が義務化され、管理職に占める女性労働者の割合(女性管理職比率)が開示項目の選択肢の一つとなりました。上場印刷企業36社のうち、女性管理職比率を開示している27社の平均は10.3%(前期は9.8%)です。

女性管理職比率24.7%のラスクルは、一定グレード(等級)以上の女性従業員の割合を2025年7月末までに20%以上にすることを目指しています(2024年7月末時点18.2%)。

次いで24.0%のクレステックは、中途採用者や女性が活躍できる社内環境の整備に取り組んでいて、2025年6月末時点の女性管理職比率は26.0%となっています。

23.7%のMICは、人的資本に関する目標として、女性正社員比率50%(2024年度実績43%)、男性正社員の育児休業取得率50%(同40%)を掲げています。

日本の女性管理職比率は13.1%、諸外国は30%以上

厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によれば、女性管理職比率は13.1%で、前年(12.7%)より0.4ポイント上昇しました。産業別にみると、「医療、福祉」50.4%が突出して高く、「生活関連サービス業、娯楽業」26.0%、「宿泊業、飲食サービス業」21.0%、「教育、学習支援業」21.0%と続いています。「製造業」は7.6%で、前年(8.5%)より0.9ポイント下降しました。

また、労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2025」によると、女性管理職比率はアメリカ42.6%、シンガポール39.6%、フランス38.9%、ドイツ28.7%など、諸外国がおおむね30%以上となっているのに対して、日本は大幅に低くなっています。

『印刷白書2025』(2025年10月末発刊予定)の上場印刷企業36社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較しています。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

2023年の印刷産業出荷額(全事業所)は5兆934億円(「2024年製造業事業所調査」)

「2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査」によれば、印刷産業出荷額は5兆934億円、事業所数は1万3371、従業者数は24万4616人。(数字で読み解く印刷産業2025その7)

「工業統計調査」に代わる3回目の「製造業事業所調査」

『印刷白書』では「工業統計調査」が全数調査を開始した1955年から、印刷・同関連業の全事業所の推移を見てきましたが、全産業を調査する「経済センサス‐活動調査」の創設に伴い、活動調査の実施年には「工業統計調査」は中止となりました。
さらに、5年ごとに行われる「経済センサス‐活動調査」の中間年において、「経済構造実態調査」が創設されたことから、「工業統計調査」は2020年調査(2019年実績)で廃止となり、2020年実績は「経済センサス‐活動調査(製造業)」、2021~2023年実績は工業統計に代わる「経済構造実態調査 製造業事業所調査」で見ることになりました。

ただし、2020年以降は個人経営を含まない集計結果です。また、調査対象となる母集団も「工業統計調査」は独自のものですが、「経済センサス‐活動調査」と「経済構造実態調査」は「事業所母集団データベース」を利用しています。そのため、過去の工業統計と単純に比較ができないことに留意する必要があります。

工業統計調査に代わる「製造業事業所調査」は今回が3回目の実施で、7月29日の公表予定が、数値の精査が必要なことから延期となりました。品目別・産業別・地域別の集計結果は8月29日に公表され、2022年と2023年の「製造業事業所調査」も併せて訂正公表されました。

2023年の印刷産業出荷額は5兆934億円、コロナ禍を脱して3年連続の増加となり、2年連続の5兆円台となりました。2024年6月1日現在の事業所数は1万3371、従業者数は24万4616人です。

下表は、「経済センサス‐活動調査」が創設された2011年以降の印刷産業の事業所数・従業者数・製造品出荷額等の推移です。個人経営を含まない数字となった2020年に、事業所数が大幅に減少したことで、1事業所当たり従業者数は13.3人から18.3人に増え、1事業所当たり出荷額は1億円以上増加しました。2023年はそれぞれ18.3人、380.9百万円となりました。1人当たり出荷額は5年連続の増加で2082万円となっています。

現在『印刷白書2025』(10月発刊予定)の編集作業が進んでいますが、限られた誌面で伝え切れないことや、読者からの問い合わせなどに対しては、「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

印刷産業の取引の変化を「接続産業連関表」で見る

印刷物の生産にどれだけのモノ、サービスが投入されているか。印刷物はどの産業にどのくらい購入されているか。「接続産業連関表」で2011年から2020年の推移を見てみよう。(数字で読み解く印刷産業2025その6)

5年に1回公表の「産業連関表」

「産業連関表」は国内で1年間に行われたすべての産業の取引を一つの表にまとめたもので、各産業間のモノやサービスの取引状況を金額で把握できます。多種多様な統計資料を用いて、10府省庁が共同で5年ごとに作成する加工統計なので、精度に優れ各種資料のベンチマークとなっています。ただし、公表時期は対象年次から4年後となり、「令和2年(2020年)産業連関表」(2024年6月公表)が最新のものです。

また、産業連関表の完成後には過去2 回の産業連関表を同一の部門概念で推計し直した接続表が作成されます。こちらは「平成23-27-令和2年接続産業連関表」が最新のもので、2025年7月11日に公表されました。

接続産業連関表で2011年から2020年の推移を見る

『印刷白書2024』では、「令和2年(2020年)産業連関表」を中心に、印刷産業とその取引先産業やクライアント産業の動きを見ています。

例えば、「印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているか、行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります。

『印刷白書2024』の関連資料ページには、統合中分類の「印刷・製版・製本」の行列を金額の大きい順に並び替えて、取引額の上位10産業を掲載しています。この時点では名目値での時系列比較でしたが、最新の接続産業連関表を使って、実質値で比較してみました。

「原材料等の調達先上位10産業」を実質値で見ると、材料費、商業(卸売マージン額など)、同業者間取引が上位を占めています。印刷市場の縮小を反映して2011年から2020年にかけて取引額はトータルで40.4%減少しました。金融・保険だけは増加し、電気と物品賃貸サービスは横ばいです。

「販売先上位10産業」から印刷産業の得意先を見ると、映像・音声・文字情報制作(出版、新聞など)、金融・保険、研究、商業の4産業の構成比は10%を超えています。2011年から2020年までの間に取引額はトータルで24.7%減、研究以外の9産業で減少し、特に印刷・製版・製本の減少幅が大きくなっています。

『印刷白書』では、産業連関表を使って、印刷産業の取引の流れを細かく見ています。限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

上場印刷企業35社の2024年度業績は堅調

2025年3月期決算では、上場印刷企業18社のうち15社が増収、10社が増益を達成した。印刷テクノロジーをベースに、新たな価値の創出に取り組んでいる。(数字で読み解く印刷産業2025その5)

上場企業2025年3月期は4期連続最高益、印刷企業は18社中10社が増益達成

上場企業の2025年3月期決算は、4期連続で最高益を更新しました。
日本経済新聞が東証プライム市場に上場する1072社を集計したもので、純利益は前期比10%増の52兆1352億円となり、全体の67%の企業の損益が改善しました。特に非製造業が20%増と好調で、製造業の落ち込み(2%減)を吸収しました。

2025年3月期決算の上場印刷企業18社(東証プライム市場上場は5社)では、15社が増収、10社が増益を達成しています。2026年3月期通期では、16社が増収、10社が増益を予想しています。

上場印刷企業35社の2024年度業績も堅調

JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色に「印刷」などとある企業を、上場印刷企業としています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で2024年6月期決算から2025年5月期決算までを2024年度としています。

上場印刷企業の社数は、親会社による完全子会社化による上場廃止がある一方、新規上場もあって、33~34社で推移してきました。そして、現在準備を進めている『印刷白書2025』では35社で分析する予定です。

上場印刷企業の2024年度業績を見ると、35社の売上高合計は4兆1784億円、イメージ・マジック(前期は8カ月の変則決算)を除く34社で前期比を見ると3.2%増で、増収23社、増益17社、黒字転換2社と堅調です。

社名に「印刷」とあるのは35社中7社

上場印刷企業35社のうち、社名に「印刷」とあるのは7社だけです。事業領域の拡大や持株会社体制への移行によって、社名から「印刷」が外されてきました。

上場印刷企業35社のうち連結決算は27社ですが、そのグループ企業には印刷産業とは全く関連のない事業もあって、連結業績から印刷事業の実態を見ることは難しい。そこで、『印刷白書』では、個別業績に印刷事業が含まれない持株会社7社とアサガミを除外し、非連結の8社を含む27社の個別業績の企業力比較なども行います。

『印刷白書2025』は10月下旬発行を予定しています。上場印刷企業35社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較します。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

印刷物の輸出額は大幅増も14年連続の輸入超過

貿易統計で印刷物を見ると、2024年は輸出大幅増・輸入大幅減だが、14年連続の輸入超過となった。輸出入ともに中国が1位で3割を占めている。(数字で読み解く印刷産業2025その4)

輸出入の1位は中国、インドからの輸出が拡大

財務省「貿易統計」によれば、2024年の印刷物の輸出額は413億円(前年比32.2%増)、輸入額は517億円(同28.2%減)と大幅な増減を記録しました。輸出量は1.4%増、輸入量は14.5%減ですが、歴史的な円安が輸出額を押し上げました。

輸出額から輸入額を差し引いた差引額は104億円で、前年の408億円から大幅に縮小したものの、14年連続の輸入超過となりました。

アジアが最大の取引先で、2024年の輸出額は286億40百万円(同37.4%増)、輸入額は338億72百万円(同29.3%減)で、輸出入ともに総額の約7割を占めています。西欧は輸出40億57百万円(同40.4%増)、輸入96億12百万円(同34.0%減)、北米は輸出59億21百万円(同17.7%増)、輸入75億71百万円(同14.3%減)となりました。

輸出先のトップ10は、中国、アメリカ、インド、香港、ベトナム、韓国、台湾、ドイツ、メキシコ、タイです。中国は不動の1位でシェアは32.5%を占め、インドは前年の15位から3位となりました。

輸入先のトップ10は、中国、シンガポール、アメリカ、韓国、ドイツ、フランス、マレーシア、イタリア、ベトナム、台湾です。10年連続1位のシンガポールを抜いて、中国が2年連続の1位となり、輸入総額の33.3%を占めています。

下図は2004~2024年の印刷物の輸出入額とその差引額の推移です。2004年の時点ではほとんど同額でしたが、2005~2010年の6年間は輸出超過となり、2011年以降の14年間は逆に輸入超過となっています。

『印刷白書』では、印刷物の輸出入相手国上位10カ国の推移表や、アジア・西欧・北米などの地域別の構成比の推移なども、わかりやすいグラフで紹介しています。
限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

出版・広告・小売業界と印刷産業

紙の出版物と印刷メディア広告はマイナスが続き、小売業では節約志向による買い控えの影響も見られる。印刷業の生産金額は5カ月連続のプラスとなった。(数字で読み解く印刷産業2025その3)

マイナスが続く紙の出版物と印刷メディア広告費

印刷産業の得意先産業の市場動向を見てみると、2024年の出版市場は、紙の出版(書籍・雑誌)が1兆56億円(前年比5.2%減)、電子出版が5660億円(同5.8%増)となりました(全国出版協会・出版科学研究所推定)。

2024年の印刷メディア広告費は、雑誌広告(前年比1.4%増)とPOP(同1.5%増)以外は減少し、1兆2690億円(同3.6%減)で3年連続のマイナスとなりました(電通「2024年日本の広告費」から新聞・雑誌・折込広告・DM・フリーペーパー・POPの広告費を合算)。

2024年の印刷業の生産金額合計は3582億円(前年比0.4%増)となりました(経済産業省生産動態統計、従事者100人以上の事業所、印刷工程のみの金額)。製品別に見ると、商業印刷1251億円(同0.4%増)と証券印刷62億円(同7.2%増)は2年連続のプラス、包装印刷947億円(同2.7%増)は4年連続のプラスで、建装材印刷164億円(同6.9%増)は3年ぶりにプラスに転じました。一方、出版印刷505億円(同2.6%減)は2008年から17年連続のマイナス、事務用印刷466億円(同2.7%減)とその他の印刷186億円(同2.0%減)はマイナスに転じました。

2024年のコンビニと百貨店免税売上高は過去最高を更新

2024年の小売業界については、大手小売業の販売概況を見てみましょう。

最も売上規模の大きいスーパーの全店売上高は13兆308億円(前年比3.9%減)、5年ぶりに前年を下回りました(日本チェーンストア協会)。全体の7割を占める食料品は、節約志向による購買点数の減少を店頭価格の上昇が補いました。衣料品の動きは鈍く、住関連品はまずまずの動きでした。

コンビニの全店売上高は11兆7953億円(前年比1.2%増)で、4年連続で前年を上回り、過去最高を更新しました(日本フランチャイズチェーン協会)。訪日外国人増、記録的な高気温、生活防衛意識に対応した品揃えや販促施策により来店客数は3年連続のプラスで、平均客単価はほぼ前年並みとなりました。

全国百貨店売上高は5兆7722億円(前年比6.5%増)で4年連続で増加し、コロナ前の水準まで回復しました(日本百貨店協会)。高付加価値品が伸び、5年ぶりに衣料品が食料品を上回りました。インバウンド(免税売上)は売上高、購買客数ともに過去最高を更新しました。

印刷業の生産金額は5カ月連続プラス

2025年の業況を見ると、紙の出版物の推定販売金額は、2025年1月が715億円(前年同月比2.3%減)、2月が891億円(同7.5%減)、3月が1199億円(同4.4%減)でした。

大手小売業の2025年3月の全店売上高は、スーパーが1兆1116億円(前年同月比9.0%減)で12カ月連続のマイナス、コンビニは気温上昇でアイスクリームなどの好調により9994億円(同3.0%増)で2カ月ぶりのプラスとなりました。百貨店はインバウンドが36カ月ぶりのマイナスで、4953億円(同3.1%減)で2カ月連続のマイナスとなりました。

また、日本通信販売協会では業界全体の売上高調査を年1回、調査査対象社を限定した売上高調査を毎月実施しています。業界全体の2023年度通信販売売上高は13兆5600億円(前年度比6.7%増)、直近10年の平均成長率は8.8%で、25年連続のプラスを達成しています。同協会会員企業127社の回答を集計した2025年3月の通信販売売上高は1364億円(前年同月比0.4%減)となりました。

印刷業の生産金額は、2025年1月が267億円(前年同月比0.8%増)、2月が293億円(同0.8%増)で5カ月連続増となりました。製品別に見ると、包装印刷が7.1%増で10カ月連続のプラス、証券印刷が2.4%増で6カ月、建装材印刷が8.8%増で3カ月、その他の印刷が1.5%増で2カ月、それぞれ連続でプラスとなっています。商業印刷は0.1%増、事務用印刷は3.8%増でプラスに転じました。出版印刷は6.3%減で2カ月連続のマイナスとなりました。

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

2023年の印刷産業売上高は6兆9823億円(「2024年経済構造実態調査」一次集計)

「2024年経済構造実態調査(産業横断調査)」によれば、印刷産業は1万6681企業、売上高は6兆9823億円となった。(数字で読み解く印刷産業2025その2)

「経済構造実態調査」の速報値公表

総務省・経済産業省は、「2024年経済構造実態調査(産業横断調査)」の一次集計結果(企業等に関する集計)を3月26日に公表しました。

2023年の売上高(全産業計)は1930兆6951億円で、産業大分類別に見ると、「卸売業、小売業」が520兆2855億円(全産業の26.9%)と最も多く、次いで「製造業」が463兆3844億円(同24.0%)、「医療、福祉」が184兆9115億円(同9.6%)となっています。

「印刷・同関連業」を見ると、売上高は6兆9823億円(同7.6%減)、2024年6月1日現在の企業数は1万6681企業(同0.3%減)となっています。

一次集計(産業横断調査)は法人企業を集計対象とした速報値で、確報値は2025年7月29日公表予定の二次集計(産業横断調査)になります。また、2022年調査から「経済構造実態調査」の一部として実施されている「製造業事業所調査」も同日に公表予定です。

10年ぶりに改定された「日本標準産業分類(第14回改定)」

「経済構造実態調査」では、2024年調査から「日本標準産業分類(第14回改定)」を統計基準としています。「日本標準産業分類」は1949年10月に設定されて以来、今回が14回目の改定で2024年4月1日から適用されています。それ以前の「2023年経済構造実態調査」では、2013年10月改定の「日本標準産業分類(第13回改定)」を適用していました。

「日本標準産業分類」は大・中・小・細分類の4段階に分類されていて、例えば、大分類「製造業」の中に中分類「印刷・同関連業」があり、小分類に「印刷業」などがあり、さらに細分類には「オフセット印刷業(紙に対するもの)」「オフセット印刷以外の印刷業(紙に対するもの)」「紙以外の印刷業」などがあります。

今回の改定では脱炭素、電気事業法改正、コロナ禍といった社会経済情勢の変化が反映され、燃焼炉から電気炉への転換を見据えた「電気炉・電熱装置製造業」、電力小売の全面自由化に伴う「電気小売業」、細菌やウイルスの消毒などの「ペストコントロール業」などが新設されました。また、「均一価格店」「食料品スーパーマーケット」などが新設されました。

『印刷白書2024』では 印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。
また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

2024年日本の広告費は、3年連続で過去最高を更新

2024年の総広告費は7兆6730億円(前年比4.9%増)、デジタル躍進とリアル回復で3年連続で過去最高を更新しました。(数字で読み解く印刷産業2025その1)

全体の約5割を占めるネット広告費、プラスに転じたマスコミ四媒体広告費

電通「2024年日本の広告費」が2月27日に発表されました。「日本の広告費」は、日本国内で1年間に使われた広告費(広告媒体料と広告制作費)を推計したもので、「マスコミ四媒体広告費」「インターネット広告費」「プロモーションメディア広告費」の3つのカテゴリーに分類されています。

2024年(1~12月)の総広告費は7兆6730億円と、2021年から4年連続で増加し、3年連続で過去最高を更新しました。好調な企業業績や消費意欲の高まりを受けて広告出稿が増え、3つすべてのカテゴリーが成長しました。好調が続く「インターネット広告費」も過去最高を更新し、総広告費に占める割合は47.6%(前年は45.5%)と5割に迫っています。また、減少傾向にあった「マスコミ四媒体広告費」が3年ぶりにプラスに転じたのがトピックです。

「インターネット広告費」(インターネット広告媒体費、インターネット広告制作費、物販系ECプラットフォーム広告費の合算)は3兆6517億円(前年比9.6%増)で、前年より3187億円増加しました。

2019年に2兆円を突破したインターネット広告費は、2020年にはコロナ禍でも唯一プラス成長(同5.9%増)を達成し、2021年にはマスコミ四媒体広告費を初めて超え、2022年以降は3兆円超えの市場となっています。

また、マスコミ四媒体の事業者が主体となって提供するインターネット広告媒体費を意味する「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」は、1520億円(前年比17.5%増)となりました。特にテレビ番組の見逃し配信などが急拡大したことで、「テレビメディア関連動画広告費」が653億円(同47.4%増)と前年に続き大きく増加しました。また、radikoやPodcastなどの好調により、「ラジオデジタル」が34億円(同21.4%増)と着々と伸びています。

「マスコミ四媒体広告費」は 2兆3363億円(前年比0.9%増)で、新聞以外の雑誌、ラジオ、テレビメディア広告費が増加し、3年ぶりに前年を上回りました。

「プロモーションメディア広告費」は1兆6850億円(前年比1.0%増)で、人流回復に伴い「交通広告」「屋外広告」「POP」などのリアルな場面で活気が戻り、加えて催事企画が増加したことにより、「イベント・展示・映像ほか」も前年を上回っています。

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT研究・教育部 吉村マチ子)

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デジタル化で変化するニュースの読まれ方~2024年

ソーシャルメディアからのトラフィックの減少や、動画主体のプラットフォームへのシフト、AIによるコンテンツ作成などの環境変化の中で、ニュースと消費者の関係も変化していくのか。(数字で読み解く印刷産業2024その9)

プラットフォームの変化がニュースに与える影響

ロイタージャーナリズム研究所「ロイター・デジタルニュースリポート2024」によると、多くの国や地域で、ニュースメディアはコスト増、広告収入減、さらにソーシャルメディアからのトラフィックの急減により困難な状況にあります。

その要因の一つとして「プラットフォーム・リセット」が挙げられています。FacebookやX(旧Twitter)は、ニュースや政治的コンテンツの扱いを縮小し、動画や自社フォーマットによる投稿などを優先的に表示するように変化しています。ニュースサイトなどに流入するトラフィックは、過去1年でFacebookから48%、Xから27%減少したというデータもあります。

また、YouTubeやTikTokのような動画主体のプラットフォームへのシフトが若年層を中心に進み、全体の66%がニュースのショート動画にアクセスし、長尺動画も51%が視聴しています。

ニュースへの入り口は検索+アグリゲーター

ニュースの入手経路は、ソーシャルメディア29%、検索25%、Webサイトやアプリへのダイレクトアクセス22%、アグリゲーター(各社の記事をまとめて表示するWebサイトやアプリ)8%です。ソーシャルメディアは若年層で利用され、検索はすべての年齢層で一貫して利用されています。

この傾向は国による違いも大きく、調査対象の47カ国・地域のうち、フィンランド・ノルウェー・デンマーク・スウェーデンではダイレクトが50%を超えているのに対して、タイ・ケニア・フィリピン・チリではソーシャルメディアが主流です。一方、日本では検索+アグリゲーターの利用が70% 、ダイレクトは9% 、ソーシャルメディアは8%で、韓国も似たような傾向にあります。

オンラインニュースの何が事実で何がフェイクなのかという不安は、過去1年で3ポイント上昇し、59%となりました。誤情報や陰謀論のほか、ディープフェイク画像や動画の拡散の舞台となったTikTokとXでの見極めが、特に難しいとされています。

また、ジャーナリズムにおけるAIの使用法では、十分な監督なしにAIで作成されたコンテンツについて不安という回答が大部分を占めました。これに対して、文字起こしや翻訳などのジャーナリストの仕事を補助する目的での使用は容認されています。

ニュースへの信頼度は安定しているか

2024年の報告書は、世界中で重要な選挙が行われ、ウクライナとガザで戦闘が続く中で発表されたことから、「この騒然とした世の中で、正確で独立したジャーナリズムの重要性はかつてないほど高まっているが、その一方で調査対象の国や地域の多くでは、ニュースメディアが誤情報・偽情報の増加や信頼の低下、政治家からの攻撃、不確実なビジネス環境といった問題にますます悩まされている」と分析しています。

ニュースへの信頼度は、調査全体で40%と横ばいで安定しています。フィンランドが69%と最も高く、ギリシャとハンガリーが23%で最も低く、日本は43%で平均をわずかに上回っています。

日本での信頼度は横ばいで推移していますが、個々のニュースブランドのスコアは2~6ポイント低下しています。ジャニー喜多川の性加害問題をなぜ大手メディアが長年放置してきたのか、日本以外のメディアであるBBCの調査によって公になったことも指摘されています。

ニュースは自然に目に入るもの

「ニュースを得るために利用する媒体」(複数回答)は、日本では2014年からの10年間で、「新聞・雑誌」は60%→21%、「テレビ」は80%→53%へと大幅に減少しました。この減少分をオンラインやソーシャルメディアが補っているかというと、「オンライン(ソーシャルメディア含む)」は増減を繰り返しながら10年間で5ポイント減で、「ソーシャルメディア」は16%→23%の増加にとどまっています。

一方、「いずれでもない」は4%→16%と4倍になっています。調査全体の平均は6%で、2桁に達しているのは、アメリカ11%、イギリス10%、アルゼンチン10%と、政治や社会の対立が表面化している国ばかりです。媒体を利用しなかった理由をアメリカ、イギリス、ドイツなど6カ国に尋ねたところ、「ニュースは自然に目に入る」という回答が、日本は41%と突出していました(6カ国平均26%)。

日本では多くの消費者が無料のニュースを利用しています。そのため、オンラインニュースの定期購読は、対象となった20カ国の平均は17%ですが、日本は9%で、イギリスの8%に次いで低くなっています。

10月末発刊の『印刷白書2024』では、 「新聞ならではの信頼性を確保しつつ進むデジタルシフト」において、新聞の存在意義やジャーナリズムについて考察しています。
限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部  吉村マチ子)