印刷白書」カテゴリーアーカイブ

(訂正版)「令和2年(2020年)産業連関表」で見る印刷産業

6月25日公表の「令和2年(2020年)産業連関表」が9月3日に訂正されました。一部の部門の国内生産額に誤りがあったためで、産業連関表の構造上、その内訳等も訂正されました。これに伴い、7月11日掲載の記事を以下のように訂正します。(数字で読み解く印刷産業2024その5修正版)

5年ぶりに公表の産業連関表 (下線部が訂正箇所)

産業連関表(全国表)は、日本国内で1年間に行われた財・サービスの生産状況や取引状況を行列(マトリックス)にした統計表です。各産業が相互に支え合って社会が成り立っているという実態を、具体的な数値で見ることができます。

関係府省庁の共同事業として、西暦の末尾が0または5の年を対象に作成されています。今回の「令和2年(2020年)産業連関表」は、前回の「平成27年(2015年)産業連関表」(2019年6月27日公表)から5年ぶりに公表されたものです。

2020年の財・サービスの総供給は1120兆円、そのうち国内生産額は1026兆円 (総供給に占める割合は91.7%)、輸入は93兆円(同8.3%)です。

国内生産額の費用構成は、中間投入率が45.3%、粗付加価値率が54.7%です。

財・サービスの総需要は1120兆円、そのうち中間需要は465兆円(総需要に占める割合41.5%)、国内最終需要は572兆円(同51.1%)、輸出は82兆円(同7.4%)です。

印刷産業の財・サービスの総需要(総供給)は約4兆円(訂正なし)

同じ項目を印刷産業について見ると、2020年の総供給は4兆1727億円、そのうち国内生産額は4兆875億円(総供給に占める割合は98.0%)、輸入は851億円(同2.0%)です。

国内生産額の費用構成は、中間投入率が39.4%、粗付加価値率が60.6%です。

財・サービスの総需要は4兆1727億円、そのうち中間需要は4兆1156億円(総需要に占める割合98.6%)、国内最終需要は357億円(同0.9%)、輸出は214億円(同0.5%)です。

印刷産業の生産波及力を見るために38部門表を作成

JAGAT刊『印刷白書』では産業連関表を使って、印刷産業とその取引先産業の動きを見ています。統合中分類(108部門)表の「191印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているか、行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります。

印刷産業の国内生産額に誤りはないので、印刷産業の項目をタテ・ヨコに見るだけなら今回の訂正の影響はありません。ただし、『印刷白書』では印刷産業を別掲した統合大分類(38部門)表を独自にまとめ、逆行列係数表を作成しています。 印刷産業の国内生産額は全産業の0.4%にすぎませんが、38部門の逆行列係数表で生産波及を見る場合、訂正が影響します。

『印刷白書2024』(10月発刊予定)では、 「令和2年(2020年)産業連関表」 から独自に作成した統合大分類(38部門)表によって、 印刷産業の生産波及力などを見ています。
限られた誌面で伝え切れないことや、読者からの問い合わせなどに対しては、「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

2022年の印刷産業出荷額(全事業所)は5兆462億円(「2023年製造業事業所調査」)

「2023年経済構造実態調査 製造業事業所調査」によれば、印刷産業出荷額は5兆462億円、事業所数は1万3520、従業者数は24万7854人。(数字で読み解く印刷産業2024その6)

「工業統計調査」に代わる2回目の「製造業事業所調査」

『印刷白書』では「工業統計調査」が全数調査を開始した1955年から、印刷・同関連業の全事業所の推移を見てきましたが、全産業を調査する「経済センサス‐活動調査」の創設に伴い、活動調査の実施年には「工業統計調査」は中止となりました。
さらに、5年ごとに行われる「経済センサス‐活動調査」の中間年において、「経済構造実態調査」が創設されたことから、「工業統計調査」は2020年調査(2019年実績)で廃止となり、2020年実績は「経済センサス‐活動調査(製造業)」、2021年・2022年実績は工業統計に代わる「経済構造実態調査 製造業事業所調査」で見ることになりました。

ただし、2020年以降は個人経営を含まない集計結果です。また、調査対象となる母集団も「工業統計調査」は独自のものですが、「経済センサス‐活動調査」と「経済構造実態調査」は「事業所母集団データベース」を利用しています。そのため、過去の工業統計と単純に比較ができないことに留意する必要があります。

工業統計調査に代わる「製造業事業所調査」は今回が2回目の実施で、品目別・産業別・地域別の集計結果が7月26日に公表されました。2022年の印刷産業出荷額は5兆462億円、コロナ禍を脱して2年連続の増加となり、5年ぶりに5兆円台となりました。2023年6月1日現在の事業所数は1万3520、従業者数は24万7854人です。

下表は、「経済センサス‐活動調査」が創設された2011年以降の印刷産業の事業所数・従業者数・製造品出荷額等の推移です。個人経営を含まない数字となった2020年に、事業所数・従業者数は大幅に減少し、1事業所当たり従業者数は5人増え、1事業所当たり出荷額は1億円以上増加し、2022年はそれぞれ18.3人、373.2百万円となりました。1人当たり出荷額は4年連続の増加で2036万円となっています。

現在『印刷白書2024』(10月発刊予定)の準備を進めていますが、限られた誌面で伝え切れないことや、読者からの問い合わせなどに対しては、「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

「令和2年(2020年)産業連関表」で見る印刷産業

「令和2年(2020年)産業連関表」が6月25日に公表されました。産業連関表は1年間に行われた全産業の取引を一つの表にまとめたもので、数値をそのまま読み取ることで、その年の産業構造などを把握できます。(数字で読み解く印刷産業2024その5)

5年ぶりに公表の産業連関表

産業連関表(全国表)は、日本国内で1年間に行われた財・サービスの生産状況や取引状況を行列(マトリックス)にした統計表です。各産業が相互に支え合って社会が成り立っているという実態を、具体的な数値で見ることができます。

関係府省庁の共同事業として、西暦の末尾が0または5の年を対象に作成されています。今回の「令和2年(2020年)産業連関表」は、前回の「平成27年(2015年)産業連関表」(2019年6月27日公表)から5年ぶりに公表されたものです。

2020年の財・サービスの総供給は1120兆円、そのうち国内生産額は1027兆円(総供給に占める割合は91.7%)、輸入は93兆円(同8.3%)です。

国内生産額の費用構成は、中間投入率が45.3%、粗付加価値率が54.7%です。

財・サービスの総需要は1120兆円、そのうち中間需要は465兆円(総需要に占める割合41.5%)、国内最終需要は573兆円(同51.1%)、輸出は82兆円(同7.4%)です。

印刷産業の財・サービスの総需要(総供給)は約4兆円

同じ項目を印刷産業について見ると、2020年の総供給は4兆1727億円、そのうち国内生産額は4兆875億円(総供給に占める割合は98.0%)、輸入は851億円(同2.0%)です。

国内生産額の費用構成は、中間投入率が39.4%、粗付加価値率が60.6%です。

財・サービスの総需要は4兆1727億円、そのうち中間需要は4兆1156億円(総需要に占める割合98.6%)、国内最終需要は357億円(同0.9%)、輸出は214億円(同0.5%)です。

産業連関表は、最もサイズの小さい統合大分類(37部門)でも、最大10桁の数字のセルが37×37並ぶ大きな表です。そして、印刷産業はそのほんの一部、具体的な数字で言えば、国内生産額の0.4%にすぎません。そのため、統合中分類(108部門)以上のサイズにならないとその数字は把握できません。

JAGAT刊『印刷白書』では産業連関表を使って、印刷産業とその取引先産業の動きを見ています。ただし、統合中分類では印刷産業とほとんど関連のない部門が多いことから、印刷産業を別掲した統合大分類表を独自に作成しています。

現在『印刷白書2024』(10月発刊予定)の準備を進めていますが、限られた誌面で伝え切れないことや、読者からの問い合わせなどに対しては、「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

印刷物は13年連続の輸入超過、アジアがシェア7割

貿易統計で印刷物を見ると、2023年は輸出減・輸入増で13年連続の輸入超過となった。輸出入ともに中国が1位で3割を占めている。(数字で読み解く印刷産業2024その4)

輸出入の1位は中国、西欧からの輸入が拡大

財務省「貿易統計」によれば、2023年の印刷物の輸出額は313億円(前年比2.4%減)で3年ぶりの減少、輸入額は694億円(同1.0%増)で2年連続の増加となりました。

アジアが最大の取引先で、2023年の輸出額は208億45百万円(同5.4%減)、輸入額は478億93百万円(同3.3%減)で、輸出入ともに総額の約7割を占めています。西欧は輸出28億90百万円(同4.3%増)、輸入118億75百万円(同26.4%増)と輸出入ともに増加し、特にドイツ・フランスからの輸入額が増加しました。北米は輸出50億32百万円(同4.5%減)、輸入88億33百万円(同3.0%増)となりました。

輸出先のトップ10は、中国、アメリカ、香港、ベトナム、台湾、韓国、メキシコ、タイ、ドイツ、シンガポールです。中国は不動の1位でシェアは3割を占めます。

輸入先のトップ10は、中国、シンガポール、アメリカ、韓国、ドイツ、フランス、イタリア、アイルランド、ベトナム、マレーシアです。10年連続1位のシンガポールが2位に後退し、中国が1位となり、輸入総額の31.5%を占めています。

下図は1994~2023年の印刷物の輸出入額とその差引額の推移です。1994~2004年の11年間は輸入超過でしたが、2005~2010年の6年間は輸出超過となり、2011年以降の13年間は逆に輸入超過となっています。2023年の差引額は381億円となりました。

『印刷白書』では、印刷物の輸出入相手国上位10カ国の推移表や、アジア・西欧・北米などの地域別の構成比の推移なども、わかりやすいグラフで紹介しています。
限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

上場印刷企業の2023年度業績は堅調

2024年3月期決算では、上場印刷企業18社のうち11社が増収、13社が増益を達成した。持続可能な社会の実現と企業価値向上に向けて、さらなる事業領域の拡大に取り組んでいる。(数字で読み解く印刷産業2024その3)

上場企業2024年3月期は3年連続最高益、印刷企業は13社が増益達成

上場企業の2024年3月期決算は、3年連続で最高益を更新しました。
日本経済新聞が東証プライム市場に上場する1071社を集計した結果、純利益は前期比20%増の46兆8285億円となり、全体の65%の企業で損益が改善しました。製造業は22%増、非製造業は18%増となりました。

また、2024年3月期決算における上場印刷企業18社(東証プライム市場上場は5社)では、11社が増収、13社が増益を達成しています。

上場印刷企業の2023年度業績も堅調

JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色などに「印刷」とある企業を、上場印刷企業としています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で前年6月期決算から当年5月期決算までを当年度としています。

上場印刷企業の社数は、親会社による完全子会社化による上場廃止がある一方、新規上場もあって、33~34社で推移してきました。そして、現在準備を進めている『印刷白書2024』では、2022年3月3日上場のイメージ・マジックと、2023年9月22日上場の笹徳印刷の2社を加えた35社で分析する予定です。

上場印刷企業の2023年度業績を見ると、マツモト(4月期決算、6月中旬決算短信発表予定)とTAKARA&COMPANY(5月期決算、7月上旬決算短信発表予定)を除く33社の売上高合計は4兆円(前期比2.4%増)で、増収21社、増益20社、黒字転換1社と堅調です。

事業領域の拡大を反映して社名から「印刷」が消える

凸版印刷が2023年10月1日付けで持株会社に移行し、社名を「TOPPANホールディングス」に変更したニュースは、印刷業界のデジタルシフトの本格化を示すものとして受け止められました。しかし、社名から「印刷」が消えた印刷会社は、凸版印刷だけではありません。印刷事業からスタートして、事業領域の拡大を反映して、社名変更した印刷会社は少なくありません。

また、持株会社化で社名が変更になった上場企業は、2012年のウイルコホールディングス(旧:ウイルコ)、2015年の日本創発グループ(旧:東京リスマチック)、2019年のTAKARA & COMPANY(旧:宝印刷)、2021年の広済堂ホールディングス(旧:廣済堂)、2022年10月のKYORITSU(旧:共立印刷)、2023年 4月の竹田iPホールディングス(旧:竹田印刷)と、TOPPANホールディングスを含めて7社になりました。

それぞれの子会社として、ウイル・コーポレーション、東京リスマチック、宝印刷、広済堂ネクスト、共立印刷、竹田印刷、TOPPANが情報ソリューション事業を継続しています。

上場印刷企業35社のうち連結決算は27社ですが、そのグループ企業には印刷産業とは全く関連のない事業もあって、連結業績から印刷事業の実態を見ることは難しい。そこで、『印刷白書』では、個別業績に印刷事業が含まれない持株会社7社とアサガミを除外し、非連結の8社を含む27社の個別業績の企業力比較なども行います。

『印刷白書2024』は10月下旬発行を予定しています。上場印刷企業35社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較します。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

売り上げ拡大が続くスーパー、コンビニ、百貨店

紙の出版物と広告はマイナスが続くが、大手小売業は2024年も好調である。印刷業は18カ月ぶりの前年割れから、2月は微増となった。(数字で読み解く印刷産業2024その2)

マイナスが続く紙の出版物と印刷メディア広告費

印刷産業の得意先産業は、出版、小売、金融、広告などが大きな割合を占めています。それぞれの業況が印刷産業にも影響を与えます。

2023年の紙の出版物の推定販売金額は、1兆612億円(前年比6.0%減)、書籍・雑誌ともに減少し19年連続のマイナスとなりました(全国出版協会・出版科学研究所推定)。

2023年の印刷メディア広告費は、雑誌広告(前年比2.0%増)以外はすべて減少し、1兆3168億円(同4.5%減)で2年連続のマイナスとなりました(電通「2023年日本の広告費」から新聞・雑誌・折込広告・DM・フリーペーパー・POPの広告費を合算)。

2023年の印刷業の生産金額合計は3569億円(前年比1.5%増)となりました(経済産業省生産動態統計、従事者100人以上の事業所、印刷工程のみの金額)。
製品別見ると、商業印刷1247億円(同1.2%増)、事務用印刷479億円(同2.1%増)、その他の印刷189億円(同10.6%増)、証券印刷58億円(同16.6%増)までがプラスに転じ、包装印刷922億円(同3.3%増)は3年連続のプラスです。出版印刷519億円(同3.6%減)は2008年から16年連続のマイナス、建装材印刷154億円(同4.7%減)は2年連続のマイナスです。

スーパー売上高は4年連続増、コンビニと百貨店免税売上高は過去最高を更新

2023年の小売業界については、大手小売業の販売概況を見てみましょう。

最も売上規模の大きいスーパーの全店売上高は13兆5585億円(前年比2.2%増)、4年連続で前年を上回りました(日本チェーンストア協会)。
全体の約7割を占める食料品は、節約志向から買い控えが続きましたが、4月以降はメーカーの値上げで店頭価格が上昇し全体を押し上げました。住関連品では旅行用バッグやアウトドア用品などが売れましたが、衣料品は高気温の影響で冬物が低調でした。

コンビニの全店売上高は11兆6593億円(前年比4.3%増)で、3年連続で前年を上回り、過去最高を更新しました(日本フランチャイズチェーン協会)。
人流・観光客の増加、記録的な高温などに対応した品ぞろえ・キャンペーンにより、おにぎり、菓子、アイスクリーム、飲料などが好調で、客単価も720.5円(同1.3%増)と9年連続のプラス、来店客数は3.0%増で2年連続のプラスとなりました。

全国百貨店売上高は5兆4211億円(前年比8.8%増)で3年連続で増加し、ほぼコロナ前の水準まで回復しました(日本百貨店協会) 。
インバウンド(訪日外国人客)による消費も拡大し、円安を追い風に免税売上高は前年比3倍の3484億円で過去最高となりました。コロナ禍前は約7割を占めた中国人客は、2023年は約5割に減少しましたが、韓国や台湾、東南アジア、欧米からの来店が増えています。

紙の出版物・広告は低調、大手小売業・通販は好調が続く

2024年に入っても同じような業況が続いています。

紙の出版物の推定販売金額は、2024年1月が731億円(前年同月比5.8%減)、2月が963億円(同3.5%減)で、書籍・雑誌ともに減少し4カ月連続のマイナスです。

広告業売上高は1月が4045億円(前年同月比0.9%減)、2月が4192億円(同0.5%減)で、3カ月連続のマイナスです(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」)。
そのうち雑誌は1月20.8%増、2月17.6%増と好調ですが、新聞は1月4.2%減、2月8.2%減で12カ月連続のマイナス、折込み・ダイレクトメールが1月9.8%減、2月11.7%減で17カ月連続のマイナスとなりました。

大手小売業の3月の全店売上高は、スーパーが1兆2216億円(前年同月比9.3%増)で13カ月連続のプラス、コンビニが9701億円(同0.3%増)で28カ月連続のプラス、百貨店が5019億円(同9.7%増)で25カ月連続のプラスといずれも好調でした。

また、3月の通信販売売上高は1147億円(前年同月比1.5%増)で、2カ月連続のプラスとなりました(日本通信販売協会会員企業121社計)。

印刷業の生産金額は、1月が264億円(前年同月比1.3%減)で、18カ月ぶりに前年割れとなりましたが、2月は288億円(同0.2%増)と微増になりました。
製品別に見ると、商業印刷が4.5%増と5カ月連続の増加、その他の印刷が4.4%増で12カ月連続の増加、建装材印刷が3.1%増です。マイナスは、証券印刷11.4%減、事務用印刷4.5%減、出版印刷2.7%減、包装印刷2.3%減です。

『印刷白書2023』では 印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。
また、限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 吉村マチ子)

2022年の印刷産業売上高は7兆5639億円(「2023年経済構造実態調査」一次集計)

「2023年経済構造実態調査(産業横断調査)」によれば、印刷産業は1万6734企業、売上高は7兆5639億円となった。 (数字で読み解く印刷産業2024その1)

「経済構造実態調査」の速報値公表

総務省・経済産業省は、「2023年経済構造実態調査(産業横断調査)」の一次集計結果(企業等に関する集計)を3月27日に公表しました。

売上高を見ると、「製造業」は453兆8466億円(前年比9.4%増)、「印刷・同関連業」は7兆5639億円(同1.7%減)となっています。

企業数を見ると、「製造業」は24万1661企業(同0.5%減)、「印刷・同関連業」は1万6734企業(同0.8%減)となっています。

一次集計(産業横断調査)は法人企業を集計対象とした速報値で、確報値は2024年7月公表予定の二次集計(産業横断調査)で公表されます。

また、2022年調査から「経済構造実態調査」の一部として実施されている「製造業事業所調査」も2024年7月に公表予定です。

印刷産業の出荷額4.9兆円に対して、売上高は7.6兆円

「2022年経済構造実態調査 製造業事業所調査」(2023年7月31日公表)が現時点では最新のデータで、2021年の「印刷・同関連業」の製造品出荷額等(全事業所)は4兆8555億円です。

これに対して、「2023年経済構造実態調査(産業横断調査)」の一次集計(企業等に関する集計)では、「印刷・同関連業」の売上高は7兆5639億円となっています。

印刷産業の出荷額は4.9兆円なのに、売上高は7.6兆円、この差はどこからきているのでしょうか。

「製造業事業所調査」の出荷額は事業所単位の集計なので、主要製品が「印刷・同関連品」なら印刷産業の出荷額になります。一方、「産業横断調査」の売上高は企業単位の集計なので、主業が「印刷・同関連業」なら印刷産業の売上高になるのです。

また、出荷額は工場出荷金額(積み込み料、運賃、保険料、その他費用を除いた金額)なので、その分売上高より金額は小さくなります。

『印刷白書2023』図表2-3を一部加工

『印刷白書2023』では 印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。
また、限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 吉村マチ子)

イノベーティブな人材と異業種連携との関係

働く人の低賃金や人材の非流動性を解消し、事業の再構築や新事業の展開、DXの促進を図るため、国や自治体においても人材の育成・確保に関わるさまざまな支援事業が行われている。印刷業界でもイノベーティブな価値を生み出す創注人材が求められる中、人材育成のための異業種との連携や越境学習について考える。
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『印刷白書2023』創刊30年目にして初めてカラー化

業界初の白書として1994年に発刊以来、『印刷白書』は29年にわたり、印刷産業の動向把握に必要な公表データを網羅・掲載する唯一の存在である。10月31日に発刊した最新版の『印刷白書2023』は、30年目にして初めてデジタル印刷を活用し、カラー版となった。 続きを読む

デジタル化で変化するニュースの読まれ方

ニュースへの信頼の低下や、ニュースを意図的に避ける傾向は日本では見られないが、ニュースへの関心の低下が続き、シェア&コメントがされなくなっている。(数字で読み解く印刷産業2023その10)

ニュースへの入り口はアグリゲーター

ロイタージャーナリズム研究所「ロイター・デジタルニュースリポート2023」によると、オンラインのニュースに触れる方法として、ニュースのWebサイトやアプリを直接開く割合は、2018年の32%から2023年は22%に減少し、ソーシャルメディアを使う割合は、逆に23%から30%に増加しています。その他の方法としては、検索25%(2018年比1%増)、モバイルアラート9%(同3%増)、ニュースアグリゲーター(ニュースをまとめて確認できるように、各社の記事をまとめて表示するWebサイトやアプリ)8%(同2%増)、Eメール5%(同1%減)です。
この傾向は国による違いが大きく、調査対象の46カ国・地域のうち、フィンランド・ノルウェー・デンマークでは直接が50%を超えているのに対して、タイ・フィリピン・チリではソーシャルメディアが50%を超えています。一方、日本では検索+アグリゲーターの利用が65% 、直接は12% 、ソーシャルメディアは10%で、韓国・台湾も同じような傾向にあります。
国による違いとは別に、年齢層によっても大きな差があって、日本でも世界でも、若い世代はソーシャルメディアを通じてニュースを得る人が増えています。

アルゴリズムへの懐疑的な見方の強まり

2023年の報告書は、生活費の高騰や異常気象、ウクライナ侵攻などの危機が続く中で執筆されたことから、「こうした状況下では、正確で、安定した財源に支えられた、独立したジャーナリズムの存在は極めて重要だが、調査を行った国々の多くでは、信頼の低下やエンゲージメントの低下、不確実なビジネス環境などによって、厳しい課題に直面していることが浮き彫りになった」と分析しています。
また、「信頼性にばらつきがあったり、嫌がらせや誤情報のリスクがあったり、時として経営やデータ保護の問題があったりという、重大な懸念があるにもかかわらず、どこの国でも圧倒的にデジタルメディアが選ばれている」としています。
個々人の閲覧歴に基づいて取捨選択されたニュースを見ることについて、良い方法だと答えた割合は30%で、2016年から6ポイント減少しました。ただし、編集者やジャーナリストに選んでもらうのが良い(27%)よりも、アルゴリズムのほうがわずかながら多くなっています。
ニュースへの信頼は、調査全体で40%、コロナ禍で上昇した分が反転し前年に比べ2ポイント低下しました。フィンランド(69%)やポルトガル(58%)などの国で信頼度が高く、アメリカ(32%)、アルゼンチン(30%)、ハンガリー(25%)、ギリシャ(19%)など、政治の分断が進んでいる国は低くなりました。日本は42%と平均並みです。

ニュースへの関心が低下し、議論も低調

ニュースを意図的に避ける「ニュース回避」は、全体では36%、ギリシャ・ブルガリアが各57%で最も高く、逆に日本は11%で最も低くなっています。
一方で「ニュースへの関心」の低下は、各国で進んでいます。ニュースに全く触れない層も増え、日本は17%で世界で最も高くなっています。
インターネットによって民主的な議論が広がると期待されたにもかかわらず、オンライン上でニュースにコメントしたり、議論に参加したりする人は、近年、少なくなっています。積極的に参加する人は調査全体で22%、日本は6%と世界で最も低く、政治に対する議論の少なさも際立っています。

デジタルの時代において、ニュースはこれまでの届け方とは明らかに異なる形にシフトしており、受け手の選択肢も多様化していることは数字上からも見て取れます。
ニュースが不可欠な理由はなぜか、プロのジャーナリストによるその質の高い価値を今一度再認識することが必要になります。

10月末発刊の『印刷白書2023』では、新聞業界欄「メディアの使命を果たし続けるためのデジタルシフト」において、新聞の存在意義や、ネットの中でジャーナリズムはどう機能すべきかについても考察しています。
限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)