出版・広告・小売業界と印刷産業

掲載日:2025年5月14日

紙の出版物と印刷メディア広告はマイナスが続き、小売業では節約志向による買い控えの影響も見られる。印刷業の生産金額は5カ月連続のプラスとなった。(数字で読み解く印刷産業2025その3)

マイナスが続く紙の出版物と印刷メディア広告費

印刷産業の得意先産業の市場動向を見てみると、2024年の出版市場は、紙の出版(書籍・雑誌)が1兆56億円(前年比5.2%減)、電子出版が5660億円(同5.8%増)となりました(全国出版協会・出版科学研究所推定)。

2024年の印刷メディア広告費は、雑誌広告(前年比1.4%増)とPOP(同1.5%増)以外は減少し、1兆2690億円(同3.6%減)で3年連続のマイナスとなりました(電通「2024年日本の広告費」から新聞・雑誌・折込広告・DM・フリーペーパー・POPの広告費を合算)。

2024年の印刷業の生産金額合計は3582億円(前年比0.4%増)となりました(経済産業省生産動態統計、従事者100人以上の事業所、印刷工程のみの金額)。製品別に見ると、商業印刷1251億円(同0.4%増)と証券印刷62億円(同7.2%増)は2年連続のプラス、包装印刷947億円(同2.7%増)は4年連続のプラスで、建装材印刷164億円(同6.9%増)は3年ぶりにプラスに転じました。一方、出版印刷505億円(同2.6%減)は2008年から17年連続のマイナス、事務用印刷466億円(同2.7%減)とその他の印刷186億円(同2.0%減)はマイナスに転じました。

2024年のコンビニと百貨店免税売上高は過去最高を更新

2024年の小売業界については、大手小売業の販売概況を見てみましょう。

最も売上規模の大きいスーパーの全店売上高は13兆308億円(前年比3.9%減)、5年ぶりに前年を下回りました(日本チェーンストア協会)。全体の7割を占める食料品は、節約志向による購買点数の減少を店頭価格の上昇が補いました。衣料品の動きは鈍く、住関連品はまずまずの動きでした。

コンビニの全店売上高は11兆7953億円(前年比1.2%増)で、4年連続で前年を上回り、過去最高を更新しました(日本フランチャイズチェーン協会)。訪日外国人増、記録的な高気温、生活防衛意識に対応した品揃えや販促施策により来店客数は3年連続のプラスで、平均客単価はほぼ前年並みとなりました。

全国百貨店売上高は5兆7722億円(前年比6.5%増)で4年連続で増加し、コロナ前の水準まで回復しました(日本百貨店協会)。高付加価値品が伸び、5年ぶりに衣料品が食料品を上回りました。インバウンド(免税売上)は売上高、購買客数ともに過去最高を更新しました。

印刷業の生産金額は5カ月連続プラス

2025年の業況を見ると、紙の出版物の推定販売金額は、2025年1月が715億円(前年同月比2.3%減)、2月が891億円(同7.5%減)、3月が1199億円(同4.4%減)でした。

大手小売業の2025年3月の全店売上高は、スーパーが1兆1116億円(前年同月比9.0%減)で12カ月連続のマイナス、コンビニは気温上昇でアイスクリームなどの好調により9994億円(同3.0%増)で2カ月ぶりのプラスとなりました。百貨店はインバウンドが36カ月ぶりのマイナスで、4953億円(同3.1%減)で2カ月連続のマイナスとなりました。

また、日本通信販売協会では業界全体の売上高調査を年1回、調査査対象社を限定した売上高調査を毎月実施しています。業界全体の2023年度通信販売売上高は13兆5600億円(前年度比6.7%増)、直近10年の平均成長率は8.8%で、25年連続のプラスを達成しています。同協会会員企業127社の回答を集計した2025年3月の通信販売売上高は1364億円(前年同月比0.4%減)となりました。

印刷業の生産金額は、2025年1月が267億円(前年同月比0.8%増)、2月が293億円(同0.8%増)で5カ月連続増となりました。製品別に見ると、包装印刷が7.1%増で10カ月連続のプラス、証券印刷が2.4%増で6カ月、建装材印刷が8.8%増で3カ月、その他の印刷が1.5%増で2カ月、それぞれ連続でプラスとなっています。商業印刷は0.1%増、事務用印刷は3.8%増でプラスに転じました。出版印刷は6.3%減で2カ月連続のマイナスとなりました。

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)