出版・レポート」カテゴリーアーカイブ

上場印刷企業18社の2026年3月期は9社が増益を達成

2026年3月期決算では、上場印刷企業18社のうち11社が増収、9社が増益を達成した。紙メディアで伝えるべき価値の再認識も進む中で、印刷テクノロジーをベースに新たな価値創出に取り組んでいる。(数字で読み解く印刷産業2026その5)

上場企業2026年3月期は5期連続最高益、印刷企業は18社中9社が増益達成

上場企業の2026年3月期決算は、5期連続で最高益を更新しました。
日本経済新聞が東証プライム市場に上場する1037社を集計したもので、純利益は前期比12.5%増の57兆7945億円となり、製造業は微減の一方、非製造業は22.5%増と好調でした。2027年3月期通期予想(957社)では、純利益は前期比5.2%増で6年連続で最高益を更新し、製造業は28.1%増になる一方、非製造業は10.4%減の見通しです。

上場印刷企業18社(東証プライム市場上場は5社)の2026年3月期決算では、11社が増収、9社が増益を達成しています。2027年3月期に関しては、「中東情勢による影響を現時点で合理的に算定することが困難であることから未定」としている1社を除く17社の予想が出ていて、14社が増収、7社が増益を予想しています。

上場印刷企業35社の2025年度業績も堅調か

JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色に「印刷」などとある企業を、上場印刷企業としています。上場印刷企業の社数は、親会社による完全子会社化による上場廃止がある一方、新規上場もあって、33~35社で推移してきました。

『印刷白書2025』では2024年12月25日上場のMIC(ミック)が加わり36社になりました。現在準備を進めている『印刷白書2026』では、トーインが他社による買収(公開買付け、株式等売渡請求による取得)により2026年3月27日付けで上場廃止となったことから、35社で分析する予定です。

各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で2025年6月期から2026年5月期決算までを2025年度としています。

決算短信が公表済みの33社で上場印刷企業の2025年度業績を見ると、売上高合計は4兆3102億円、ビーアンドピー(2025年10月期より連結財務諸表を作成しているため、前期数値の記載なし)を除く32社で前期比を見ると3.9%増で、増収18社、増益17社、黒字転換1社と堅調です。

社名に「印刷」とあるのは35社中7社              

上場印刷企業35社のうち、社名に「印刷」とあるのは7社だけです。事業領域の拡大や持株会社体制への移行によって、社名から「印刷」が外されてきました。

35社のうち連結決算は27社ですが、そのグループ企業には印刷産業とは全く関連のない事業もあって、連結業績から印刷事業の実態を見ることは難しい。そこで、『印刷白書』では、個別業績に印刷事業が含まれない持株会社7社とアサガミを除外し、単独決算の8社を含む27社の個別業績の企業力比較なども行います。

『印刷白書2026』は10月下旬発行を予定しています。上場印刷企業35社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較します。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

印刷物は15年連続の輸入超過、アジアがシェア7割

貿易統計で印刷物を見ると、2025年は輸出増・輸入減で差引額は縮小したものの、15年連続の輸入超過となった。輸出入ともに中国が1位で、輸出は約3割、輸入は約4割を占めている。(数字で読み解く印刷産業2026その4)

輸出入総額の約7割がアジア、1位は中国、2位はアメリカ

財務省「貿易統計」によれば、2025年の印刷物の輸出額は431億円(前年比4.2%増)、輸入額は513億円(同1.0%減)となりました。輸出量は9.0%減、輸入量は2.6%増と、数量の変動が逆方向なのは、円安が輸出額を押し上げ、価格低下が輸入額を押し下げたものと考えられます。

アジアが最大の取引先で、2025年の輸出額は282億87百万円(同1.2%減)、輸入額は352億89百万円(同4.1%増)で、輸出入ともに総額の約7割を占めています。西欧は輸出42億23百万円(同4.1%増)、輸入78億82百万円(同18.0%減)、北米は輸出79億85百万円(同34.9%増)、輸入75億37百万円(同0.7%減)となりました。

輸出先のトップ10は、中国、アメリカ、ベトナム、台湾、韓国、香港、ドイツ、タイ、メキシコ、オランダです。中国は不動の1位でシェアは31.8%を占め、前年14位のオランダが10位に入りました。

輸入先のトップ10は、中国、アメリカ、シンガポール、韓国、フランス、ドイツ、マレーシア、台湾、ベトナム、イタリアです。10年(2013~2022年)連続1位のシンガポールが3位に後退し、中国が3年連続の1位となり、輸入総額の39.1%を占めています。 下図は2005~2025年の印刷物の輸出入額とその差引額の推移です。2010年以前の6年間は輸出超過で、2011年以降の15年間は逆に輸入超過となっています。輸出額から輸入額を差し引いた差引額は2024年に大幅に減少し、2025年は82億円となり、14年ぶりに100億円を下回りました。

『印刷白書』では、印刷物の輸出入相手国上位10カ国の推移表や、アジア・西欧・北米などの地域別の構成比の推移なども、わかりやすいグラフで紹介しています。
限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

出版・広告・小売業界と印刷産業~2025年

紙の出版物と印刷メディア広告はマイナスが続くが、通販市場は26年連続増で、コンビニは過去最高を更新、スーパー・百貨店は横ばいとなった。(数字で読み解く印刷産業2026その3)

紙の出版市場は1兆円割れ、印刷メディア広告費は4年連続マイナス

印刷産業の得意先産業の市場動向を見てみると、2025年の紙の出版物(書籍・雑誌)は9647億円(前年比4.1%減)となり、1975年以来50年ぶりに1兆円を割り込みました。電子出版は伸び率は鈍化したものの5815億円(同2.7%増)で、紙と電子を合わせた出版市場規模は1兆5462億円(同1.6%減)となりました(全国出版協会・出版科学研究所推定)。

2025年の印刷メディア広告費は1兆1929億円(前年比6.0%減)で4年連続のマイナスとなりました(電通「2025年日本の広告費」)。内訳は、フリーペーパー1056億円(同19.1%減)が6年連続のマイナス、新聞3136億円(同8.2%減)とDM(ダイレクト・メール)2708億円(同5.4%減)が4年連続のマイナス、折込2354億円(同3.6%減)が3年連続のマイナスとなり、雑誌1135億円(同3.7%減)は2年連続の増加からマイナスに転じ、POPだけが1540億円(同3.8%増)で2年連続の増加となりました。

26年連続増の通販、横ばいのスーパー、コンビニは過去最高を更新

印刷産業全体の市場規模を見るには、「経済構造実態調査 製造業事業所調査」が利用されていて、2024年調査(2023年実績)が最新データです。2024年実績は2026年7月29日に公表予定です。

2023年の印刷産業出荷額は5兆934億円、コロナ禍を脱して3年連続の増加で、2年連続の5兆円台となりました。

2025年の小売業界については、大手小売業の販売概況を見てみましょう。

最も売上規模の大きいスーパーの全店売上高は12兆8675億円(前年比1.3%減)、2年連続で前年を下回りました(日本チェーンストア協会)。全体の7割を占める食料品は、節約志向による購買点数の減少を店頭価格の上昇が補いました。

コンビニの全店売上高は12兆583億円(前年比2.2%増)で、5年連続で前年を上回り、過去最高を更新しました(日本フランチャイズチェーン協会)。高付加価値商品や販促施策により平均客単価が伸び、過去最多の訪日外国人や大阪・関西万博の開催も寄与したと考えられます。

全国百貨店売上高は5兆6755億円(前年比1.7%減)で5年ぶりに減少しました(日本百貨店協会)。免税売上高が12.7%減の5667億円と大きく落ち込んだことによるものです。インバウンド(訪日購買客数)は621万人超で過去最高を更新したものの、高額消費の一巡で客単価が伸び悩んだからです。

印刷産業出荷額と百貨店売上高は規模が近く、印刷産業が2011年に6兆円を割り込んだのに対して、百貨店はインバウンド需要の拡大もあって2019年まで堅調でした。しかし、百貨店業界はコロナ禍の影響を強く受けた業界の一つで、2020年には前年比26.7%の大幅減で5兆円割れとなり、印刷産業出荷額を初めて下回りました。

また、2024年度(2024年4月~2025年3月)の通信販売(EC含む)市場の売上高は、前年度比7.3%増の14兆5500億円となり、金額ベースでは9900億円の増加となりました(日本通信販売協会)。伸び率は前年度を0.6ポイント上回り、直近10年の平均成長率は9.1%で、26年連続のプラスを達成しています。業界全体の動向としては、AI活用による業務効率化や、M&Aを通じた事業多角化の動きが目立っています。

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT研究・教育部 吉村マチ子)

関連情報
【4/21開催】AI時代の印刷メディア分析 2026
-広告・通販・印刷メディアの最新データをもとに-

2024年の印刷産業売上高は7兆6213億円(「2025年経済構造実態調査」一次集計)

「2025年経済構造実態調査(産業横断調査)」によれば、印刷産業は1万4117企業、売上高は7兆6213億円となった。(数字で読み解く印刷産業2026その2)

「2025年経済構造実態調査」の速報値公表

総務省・経済産業省は、「2025年経済構造実態調査(産業横断調査)」の一次集計結果(企業等に関する集計)を3月27日に公表しました。

2024年の売上高(全産業計)は1968兆2776億円で、産業大分類別に見ると、「卸売業、小売業」が542兆3153億円(全産業の27.6%)と最も多く、次いで「製造業」が475兆5531億円(同24.2%)、「金融業、保険業」が162兆7186億円(同8.3%)などとなっています。

産業大分類別売上高の内訳を産業中分類別にみると、「卸売業、小売業」では「機械器具卸売業」が99兆9085億円と最も多く、「製造業」では「輸送用機械器具製造業」が96兆6277億円、「金融業、保険業」では「保険業(保険媒介代理業、保険サービス業を含む)」が86兆8091億円と最も多くなっています。

「印刷・同関連業」を見ると、売上高は7兆6213億円(前年比8.9%増)、2025年6月1日現在の企業数は1万4117企業(同15.3%減)となっています。売上高の内訳を産業小分類別にみると、「印刷業」6兆9875億円(同9.8%増)、「製版業」4337億円(同2.1%減)、「製本業、印刷物加工業」1884億円(同4.6%増)、「印刷関連サービス業」118億円(同2.5%増)で、「製版業」のみが減少しています。

一次集計(産業横断調査)は法人企業を集計対象とした速報値で、確報値は2026年7月29日公表予定の二次集計(産業横断調査)になります。また、2022年調査から「経済構造実態調査」の一部として実施されている「製造業事業所調査」も同日に公表予定です。

『印刷白書2025』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。 また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

2020年基準の「延長産業連関表」で印刷産業の調達先と販売先の変化を見る

印刷物の生産にどれだけのモノ、サービスが投入されているか。印刷物はどの産業にどのくらい購入されているか。「延長産業連関表」で2020年と2021年の変化を見てみよう。(数字で読み解く印刷産業2026その1)

5年に1回公表の「産業連関表」と毎年公表の「延長産業連関表」

「産業連関表」は国内で1年間に行われたすべての産業の取引を一つの表にまとめたもので、各産業間のモノやサービスの取引状況を金額で把握できます。総務省をはじめとする10府省庁の共同事業により5年ごとに作成される加工統計で、精度に優れ各種資料のベンチマークとなっています。ただし、公表時期は対象年次から4年後となり、「2020年産業連関表(基本表)」(2024年6月公表)が最新のものです。

経済産業省は、この政府全体で作成する基本表の作成にも携わっていますが、それとは別に5年間隔の中間年を補間するために、毎年この基本表から各年の産業連関表を延長推計しています。

JAGAT『印刷白書2025』では、「2021年延長産業連関表」の公表が例年より遅れたことから、「2020年産業連関表(基本表)」と「平成23-27-令和2年接続産業連関表」を使って、印刷産業とその取引先産業やクライアント産業の動きを見ています。

例えば、「印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているか、行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります。

延長産業連関表で2020年から2021年の変化を見る

『印刷白書2025』の第2章関連資料「印刷産業(8)調達先と販売先」では、産業連関表の統合中分類「印刷・製版・製本」の行列を金額の大きい順に並び替えて、取引額の上位10産業を掲載しています。

「平成23-27-令和2年接続産業連関表」により、2011年から2020年にかけての変化を比較していますが、最新の「2021年延長産業連関表(2020年基準)」が2025年12月19日に公表されたので、以下では2020年と2021年の変化を見てみましょう。

「原材料等の調達先上位10産業」を実質値で見ると、材料費、商業(卸売マージン額など)、同業者間取引が上位を占めています。取引額は7産業で増加し、化学最終製品(印刷インキなど)は減少が大きいが、全産業では3.3%増となりました。

「販売先上位10産業」から印刷産業の得意先を見ると、映像・音声・文字情報制作(出版、新聞など)、金融・保険、研究、商業の4産業の構成比は10%を超えています。取引額は広告以外の9産業で増加し、全産業では5.9%増となりました。

『印刷白書』では、産業連関表を使って、印刷産業の取引の流れを細かく見ています。限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

【印刷業界】新入社員採用・教育調査一覧

JAGATは、印刷会社の新卒社員の採用・教育に関する調査を行っています。経営者、採用担当者、新入社員、それぞれの視点を交えながら、印刷会社の取り組み、新入社員の意識や価値観の変化をご覧ください。

 


計・レポート
 <企業の採用実態調査>
年度 調査内容
2022年  印刷会社の新卒・中途採用に関する実態調査2022<JAGATinfo2022年12月号>
2021年  印刷会社の新卒採用の取り組み実態調査レポート<JAGATinfo2021年11月号>
 印刷会社の新卒採用と新入社員教育実態調査2021統計資料<速報版>
2020年  印刷会社の新卒採用の取り組み実態調査レポート<JAGATinfo2020年10月号>
 印刷会社の新卒採用と新入社員教育実態調査2020統計資料<速報版>
 <新入社員意識調査>
年度 調査内容
2025年  若手人材の定着・活躍の鍵は「安定」と「成長」の両立
 新入社員意識調査2025の結果から<JAGATinfo2025年8月号>
2024年  “安定”と”挑戦“という印刷業の強みを生かした新卒採用を「新入社員意識調査2024」の
 結果から考える<JAGATinfo2024年8月号>
2023年  新入社員への調査結果から新卒採用の方向性を考える<JAGATinfo2023年12月号>
2022年  印刷会社の新入社員意識調査~変化し続ける新卒採用環境と世代の特徴を踏まえた対策を~
 <JAGATinfo2022年10月号>
2021年  印刷会社新入社員の意識調査2021レポート<JAGATinfo2021年9月号>
 新入社員意識調査2021統計資料<速報版>

 

 


ラム

【2024.11.27】新卒内定者の不安を取り除くコミュニケーション

【2024.08.30】新卒者の内定辞退の理由と防止策を探る
       ~フォローアップとしての通信教育のおすすめ

【2024.05.15】新入社員にフォローアップ教育の機会を

【2024.05.09】新入社員の離職を防ぐために何をするべきか

【2023.12.05】新入社員が求める働き方や制度

【2023.10.03】チームを成功へと導く「マネジメント力」

【2023.09.12】持続的な企業価値向上につながる社員教育

【2023.09.05】印刷業に仲間入りした246名の新入社員は就活でどの媒体を利用したのか

【2023.09.01】印刷会社の提案営業を習得する

【2023.07.25】社員に合った教育機会の活用~生産性向上支援訓練報告~

【2023.07.07】営業成果を高めるデータ活用と運用面の課題

【2023.06.06】DXと人材育成

【2023.05.30】DM作成に必要なスキル~企画提案力の向上~

続きを読む

「東京都産業連関表」で東京都経済の実態を把握する

「令和2年(2020年)東京都産業連関表」によれば、東京都の印刷産業生産額は6293億円、全国の印刷産業生産額に占める割合は15.4%。(数字で読み解く印刷産業2025その10)

全国産業連関表と東京都産業連関表

JAGAT『印刷白書2025』では、日本全国を対象とした全国産業連関表の最新版「令和2年(2020年)産業連関表」を使って、印刷産業の取引を見ています。

国内全体の経済構造を表す「全国産業連関表」に対して、都道府県や一部の市が作成している産業連関表は、その地域内の財・サービスの取引を明示し、地域経済の構造を可視化するものです。

「東京都産業連関表」は、こうした都道府県産業連関表の持つ特徴に加えて、東京都の経済の実態をより的確に表すため、①地域間表の作成、②本社部門の設定、③移動消費部門の設定が行われています。東京都の経済は、他道府県との相互依存、本社機能の集積、通勤・通学・観光など都外からの昼間流入という影響が大きいからです。

東京都の生産額は全国の約5分の1

「令和2年(2020年)東京都産業連関表」が11月27日に公表されました。都内の産業が1年間に行ったモノやサービスの取引を示した統計表で、5年ごとに作成されています。

東京都における2020年の財・サービスおよび本社の生産額は209兆8080億円で、全国の生産額(1097兆5247億円)に占める都の割合は19.1%を占めています。

東京都の印刷産業(印刷・製版・製本)生産額は6293億円で、全国の印刷産業生産額(4兆875億円)に占める都の割合は15.4%です。

なお、東京都産業連関表の全国の生産額(1097兆5247億円)は、全国産業連関表の生産額(1026兆1540億円)および東京都産業連関表(地域間表)の本社部門の生産額(71兆3707億円)の合計を指すものです。

東京都の生産額とその構成比を見ると、サービス(対事業所サービス、医療・福祉、教育・研究など)56兆4730億円(26.9%)、情報通信34兆1912億円(16.3%)、本社32兆4273億円(15.5%)、不動産21兆9094億円(10.4%)、商業21兆8531億円(10.4%)となり、これら5部門で都内生産額の79.5%を占めます。印刷産業(印刷・製版・製本)は6293億円(0.3%)です。

東京都に集積している産業は、産業別特化係数(=東京都の産業別構成比÷全国の産業別構成比)が高い産業で、1を超えればその産業のウェイトが全国水準を上回ることになります。特化係数が高い部門は、情報通信2.75、本社2.38、金融・保険1.60、不動産1.27、商業1.23となっています。逆に低い部門は、農林漁業0.02、鉱業0.02、製造業0.14、電気・ガス・水道0.37、建設0.64となっています。印刷産業(印刷・製版・製本)は0.81となりました。

東京都と他道府県との取引を見ると、東京都は本社、情報通信、サービス、商業などで他道府県へサービスを提供(移出)し、他道府県の経済を下支えしています。一方、東京都は製造業で他道府県から多くの製品を購入(移入)し、他道府県の産業の顧客や消費者となっています。

東京都の移出計73兆5539億円に対し、移入計は33兆1871億円と、差し引き40兆3668億円の移出超過となっています。この移出超過のうちの50.0%(20兆1805億円)は本社部門の移出超過です。印刷産業(印刷・製版・製本)の移出は2590億円、移入は9644億円で、7054億円の移入超過となっています。

『印刷白書2025』(2025年10月31日発刊)の第2章 印刷産業の動向「産業連関表」では、「令和2年(2020年)産業連関表」(2025年7月再推計)と「平成23-27-令和2年接続産業連関表」を使って、印刷産業と取引先やクライアント産業の動きを見ています。

また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

デジタル化で変化するニュースの読まれ方~2025年

SNSによる「無意識のニュース接触」によって、ニュースと消費者の関係は変化していくのか。(数字で読み解く印刷産業2025その9)

「ソーシャルメディアや動画ネットワーク」への加速度的なシフト

ロイタージャーナリズム研究所は、2012年以来、デジタル化がメディア環境やニュースの利用にもたらす影響を世界各地で調査しています。「ロイター・デジタルニュースリポート2025」では、2025年1月中旬から2月末に、日本を含む48の国と地域で実施された調査結果から、定点調査している「ニュースへの信頼」などのほか、AIの利用拡大がニュースの利用に与える影響など幅広いテーマを紹介しています。

エビデンスに基づく分析的なジャーナリズムが求められる世界情勢にもかかわらず、テレビ、新聞、ニュースサイトなどの「組織的ジャーナリズム」の影響力はむしろ低下しています。その一方で、ソーシャルメディアや動画プラットフォーム、(複数の情報源のニュースを集めて提供する)アグリゲーターへの依存度は増しています。

アメリカでは「ソーシャルメディアや動画ネットワーク」を主なニュース源とする割合(54%)が急増し、テレビ(50%)やニュースサイトまたはアプリ(48%)を初めて上回りました。
48の国と地域で「ソーシャルメディアや動画ネットワーク」を利用する割合は、18~24歳の44%、25~34歳の38%に上ります。
一方、日本では依然としてテレビ(2015年73%→2025年50%)が最も多くの人に利用されており、SNS経由のニュース接触は緩やかな上昇(2015年21%→2025年24%)にとどまります。ただし、SNSによる「無意識のニュース接触」によって、信頼や課金意欲につながらないという構造的問題もあります。

ニュースへの信頼度は安定しているか

毎年調査している「ニュースへの信頼」は、10年前と比べると明らかに低下していますが、全体平均はこの3年間、40%程度で安定しています。フィンランドが67%と最も高く、ギリシャとハンガリーが22%で最も低くなりました。

日本は2024年は15位、43%で平均をわずかに上回っていましたが、2025年は23位、39%となりました。「ソーシャルメディアの影響力の高まりと、伝統的メディアのスキャンダルによって、若年層を中心に信頼の低下がうかがえる」と分析されています。

オンラインニュースの何が本物で何が偽物かという不安は、回答者の半数以上(58%)で去年と同水準ですが、2022年と比べると4ポイント上昇しました。

また、ジャーナリズムにおけるAIの使用法では、十分な監督なしにAIで作成されたコンテンツについて不安という回答が大部分を占めました。これに対して、文字起こしや翻訳などのジャーナリストの仕事を補助する目的での使用は容認されています。

『印刷白書2025』(2025年10月末発刊)では、 「デジタル時代に進化する新聞~信頼を強みに新たな役割へ」において、新聞の存在意義やジャーナリズムについて考察しています。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

『印刷白書2025』発刊のご挨拶

2025年10月31日発刊の『印刷白書2025』について、会長網野勝彦よりご挨拶させていただきます。

***************************************************************

2025年を振り返り、そして2026年を見据える今、私たちは事業構造を根底から見直すことを迫る2つの「非連続的な変化」に直面しています。
1つ目は、「AIとデータによる生産性の革新」です。この1年間で、情報伝達手段のデジタルシフトは不可逆的に加速し、特に生成AIの劇的な進化は、クリエーティブ領域だけでなく、生産性やワークフローのあり方そのものを変えようとしています。人手不足が深刻化する中で、このAIという革新的なツールをいかに事業基盤に組み込み、人間の創造性や戦略立案能力を最大限に引き出すかが、競争優位を確立する絶対的な条件となります。
2つ目は、「グリーン・トランスフォーメーション(GX)の経営課題化」です。環境問題への対応は、企業の社会的責任を超え、事業継続そのものに直結する要素となりました。カーボンフットプリントの算定や環境配慮型素材の採用といったGXへの取り組みは、もはやコストではなく投資と捉え、顧客や社会への新しい付加価値として提供し、未来の成長エンジンへとする必要があります。

このような変革期だからこそ、私たちは印刷産業がもつ核となる力を再認識しなければなりません。私たちは、単なる「紙への印刷」を行う製造業という狭い定義にとどまらず、「多様な素材と技術を通じて、情報を最も効果的に、そして情緒豊かに人々の心に届ける情報価値創造業」であると自信をもって宣言すべきです。デジタル情報があふれる社会において、その情報に「信頼性」「手触り」「体験」という確かな付加価値を与え、「人」と「情報」を深くつなぐチカラは、一層その重要性を増しています。

今年の『印刷白書』は、「AIによる生産性の革新」と「GXの経営課題化」を強く意識しながら、印刷業界の喫緊の課題と未来への方向性を幅広く分析しています。皆様にとって本書が、力強い成長と経営の持続可能性の確立の指針となりますよう切に願います。

変化を恐れることなく大胆に挑戦する企業が、次の時代を牽引していくことは間違いありません。

JAGATは今後も、技術革新、AI時代に対応した人材育成、そして業界全体の連携強化を通じて、皆様の発展をしっかりとサポートしていく所存です。皆様の力強いご活躍を心よりお祈り申し上げるとともに、巻頭のご挨拶とさせていただきます。

2025年10月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 網野勝彦

書籍発刊のお知らせ

『印刷白書2025』2025年10月31日発刊

DTPエキスパート・マイスターBOOK

DTPエキスパート・マイスターBOOK 
発行日:2024年9月30日
編著:樋口泰行
   (グラフィックデザイナー DTPエキスパート問題作成委員)
監修:大里浩二
   (帝塚山大学教授 DTPエキスパート認証委員)
体裁:B5判  112ページ  オールカラー
定価:4,000円+税
ISBN:978-4-88983-177-1
企画・編集・発行:公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)

**JAGAT初のデザイン実技解説書発刊記念限定特典**
『デキる紙デザイナーは分版プレビュー』ステッカー配布中

印刷入稿前に必須の「分版プレビュー」啓蒙用ステッカーを当サイトよりの購入者限定で配布します。
『マイスターBOOK』でプロの紙デザイナーへの第一歩を踏み出しましょう


       ※特典は予告なく終了する場合があります。

内容紹介:
本書は、JAGAT主催DTPエキスパート・マイスター実技試験に準拠し、効果的な印刷物のデザインレイアウトを行うプロセスを豊富な実例とともに解説した参考書です。

デザインの着想法から実際のレイアウトの組み立て、文字や図版データの扱いに至るまでを各ステップに分けて端的に解説しています。マイスター実技試験課題に対する作例や、レイアウト考案のためのラフスケッチ例など、現役のグラフィックデザイナーによる多くの秘訣が盛り込まれています。

印刷物制作工程の川上から川下まで、多岐にわたる制作実務の全体像を把握することができるため、受験予定者に限らず、これから印刷物制作を学ぶグラフィックデザイナーやDTPオペレーターの方、また印刷物用データ制作を学びたいWebデザイナーの方等にも最適な一冊です。

目次

chapter 1 DTP エキスパート・マイスターの概要
DTPエキスパート・マイスター認証試験の目的
DTPエキスパート・マイスターが必要とされる領域
DTPエキスパート・マイスター実技課題の概要
実技試験のための準備
chapter 2 試験対策ー要件の整理と制作フロー
実技試験対策のためのフロー
実技課題の具体的な内容
課題内容の整理と要点の書き出し
chapter 3 デザイン調査とレイアウト設計
ターゲットに合ったジャンル・媒体を調査
デザイン表現やレイアウト例を調査
chapter 4 ラフレイアウトとフォント、カラー選定
レイアウトのためのラフスケッチ
紙面設計と段組みレイアウト
使用フォントの選定
使用スタイルの選定
配色計画
chapter 5 素材の整理と修正
テキスト原稿の整理
写真素材のレタッチと補正
写真素材のCMYK変換
QRコードの取り扱い
ロゴデータの素材確認
chapter 6 レイアウトデータの制作
レイアウトソフトウェア上でのフォーマット作成
要素の配置
縦組み時における注意
chapter 7 テキスト•画像の装飾の追加
フォントと見出しの扱い
キャプションの位置とグループ化
コラムなどの装飾
chapter 8 レイアウトデータの PDF 書き出しとセルフチェック
InDesign/Illustratorでの分版チェック
レイアウトデータの書き出し
PDFの確認と修正
chapter 9 制作コンセプトの記載
制作コンセプト書の役割
コンセプトの記述
レイアウト要素とスタイル・制作環境
最終チェックと制作コンセプト書への記入
索引
付録(実技試験要項のサンプル)