2025年3月期決算では、上場印刷企業18社のうち15社が増収、10社が増益を達成した。印刷テクノロジーをベースに、新たな価値の創出に取り組んでいる。(数字で読み解く印刷産業2025その5)
上場企業2025年3月期は4期連続最高益、印刷企業は18社中10社が増益達成
上場企業の2025年3月期決算は、4期連続で最高益を更新しました。
日本経済新聞が東証プライム市場に上場する1072社を集計したもので、純利益は前期比10%増の52兆1352億円となり、全体の67%の企業の損益が改善しました。特に非製造業が20%増と好調で、製造業の落ち込み(2%減)を吸収しました。
2025年3月期決算の上場印刷企業18社(東証プライム市場上場は5社)では、15社が増収、10社が増益を達成しています。2026年3月期通期では、16社が増収、10社が増益を予想しています。
上場印刷企業35社の2024年度業績も堅調
JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色に「印刷」などとある企業を、上場印刷企業としています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で2024年6月期決算から2025年5月期決算までを2024年度としています。
上場印刷企業の社数は、親会社による完全子会社化による上場廃止がある一方、新規上場もあって、33~34社で推移してきました。そして、現在準備を進めている『印刷白書2025』では35社で分析する予定です。
上場印刷企業の2024年度業績を見ると、35社の売上高合計は4兆1784億円、イメージ・マジック(前期は8カ月の変則決算)を除く34社で前期比を見ると3.2%増で、増収23社、増益17社、黒字転換2社と堅調です。
社名に「印刷」とあるのは35社中7社
上場印刷企業35社のうち、社名に「印刷」とあるのは7社だけです。事業領域の拡大や持株会社体制への移行によって、社名から「印刷」が外されてきました。
上場印刷企業35社のうち連結決算は27社ですが、そのグループ企業には印刷産業とは全く関連のない事業もあって、連結業績から印刷事業の実態を見ることは難しい。そこで、『印刷白書』では、個別業績に印刷事業が含まれない持株会社7社とアサガミを除外し、非連結の8社を含む27社の個別業績の企業力比較なども行います。
『印刷白書2025』は10月下旬発行を予定しています。上場印刷企業35社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較します。
限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。
(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)