産業連関表で何が見えるか~印刷白書と産業連関表その2

掲載日:2015年9月15日

現在編集中の『印刷白書2015』では、6年ぶりに公表された新しい産業連関表によって印刷需要や様々な産業との関係をみている。

新しい産業連関表で何が変わったか

産業連関表は、国内で1年間に行われたすべての生産活動と取引を対象にして作成する加工統計で、産業間の取引活動の大きさを金額で評価して「商品×アクティビティ(または商品)」の行列(マトリックス)にしたものである。つまり、日本国内の生産活動(アクティビティ)のすべてを「購入→生産→販売」の連鎖として金額で捉えることで、需要を押し上げる要因や波及効果を見ることができる。

産業連関表の分類は作成年度によって異なり、最新の「平成23年(2011年)産業連関表(以下2011年表)」では、518行×397列を基本分類として、190の小分類、108の中分類、37の大分類にまとめられている。この分類は日本標準産業分類の第12回改定(2007年11月)に基づくものだが、既に第13回改定(2013年10月)がなされているので、次回の産業連関表は第13回改定に基づいて作成されることになる。
日本標準産業分類が改定されるたびに、産業連関表だけでなく、工業統計調査、労働力調査などの産業分類も改定される。長期時系列データを見る場合、産業分類が変わると過去データとの比較は困難になる。しかし、産業構造の変化に対応するために改定は避けられない。

「印刷・製版・製本」はどう分類されているか

印刷産業にとって産業分類の大きな変化は日本標準産業分類の第11回改定(2002年3月)で、中分類「出版・印刷・同関連産業」部門が「印刷・同関連業」に変更されて、新聞業と出版業は製造業の分野から情報通信業に移行した。出版物の印刷業務は「製造業」、発行・出版業務は「情報通信業」に位置づけられたわけで、産業の実態に即した変更といえる。

印刷白書では、産業連関表による印刷需要の分析を2010年版から行っているが、経済産業省の延長表の統合大分類に従ってきた。2010年時点では2000年基本表を延長した2008年簡易延長表が最新のもので、印刷産業は「出版・印刷」部門に統合分類されていた。そこで、基本分類表の国内生産額の比率を基に分割して「印刷・製版・製本」単独の数値を算出し、統合大分類(50部門)に追加した51部門表で分析を行った。

経済産業省では2011年基準の延長表を作成するために54部門と98部門に組み替えているが、印刷産業は54部門表では「31その他の製造工業品」に含まれるようになった。そこで、54部門表の「31」から「014印刷・製版・製本」を除外し、「014」を別掲した55部門表を作成した。

なお、今回最新の2011年表を組み替えた55部門表を作成し、さらに時系列比較のために2000年表と2005年表を、この55部門分類コードとの対応関係を勘案して簡易に組み替え、より整合性のある分析を行うために基礎資料とした。特に印刷産業と関係の深い産業の数字はできるだけ正確に把握するように努めた。数字をきちんと把握することで、2000年~2011年の産業全体の変化や印刷需要のダイナミズムを伝えられればと考えている。

『印刷白書2015』は10月上旬に発行予定である。現在の形になって6回目の刊行で、どこまで新機軸を出せるか、ご期待いただきたい。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)