印刷会社でもマーケティングを

掲載日:2016年3月16日

従来の印刷営業は、基本的には顧客に何かしらの案件があって、それに対して受注しようと営業活動を行う、つまり顧客に足しげく通って引き合いを待つという営業スタイルが主流といえた。これは今も通用する営業スタイルであるが、そのため少しでも顧客と良い関係を作り、自社の存在を訴えていくとともに、他社とは差別化できるものを提供していくための不断の努力が不可欠になる。とはいえ、このスタイルはメディアが多様化し印刷市場が縮小していく中では、まさにパイを奪い合う熾烈な競争が避けられない。

実は、この引き合いに頼る営業方法は、日本の法人営業では印刷業以外においても主流のスタイルで、引き合いにクイックレスポンスで応えていけば数字が付いてきて成長が可能だったという。ところが、リーマンショック後は引き合い依存の営業スタイルでは成長が難しくなった。そこでどうするのか。

page2016の基調講演「マーケティングオートメーションと 印刷ビジネスの未来」において、シンフォニーマーケティング 代表取締役の庭山一郎氏の講演では、そのために何をすべきかを具体的に解説した。

簡単にいうとアカウントベースドマーケティングでターゲット企業を攻め、攻めるためにはデマンドジェネレーションが必要で、そのためのデマンドセンターを作りなさいということである。デマンドジェネレーションとは見込み案件を供給する活動であり、それを担当する組織がデマンドセンターになる。そのデマンドジェネレーションを行うときにデマンドセンターで使うツールがマーケティングオートメーションになる。

庭山氏はデマンドセンターを作ることこそが、引き合い依存から脱却して新規顧客や市場の開拓につながり、成長を求めることができるという。JAGATinfo2016年3月号では、庭山氏の講演概要を紹介している。

翻って印刷営業に当てはめて考えてみると、提案やソリューションの提供がいわれるようになったなかで、漫然と次々に顧客を訪問するのではなくて、きちんとターゲット顧客を選定し、そこへ攻め込むネタが必要になるということである。横展開だ、深耕作業だ、従来顧客の別の部署を攻めろといっても、印刷物がどんどん発注されていた時代ならともかく、その部署のだれが、どのような困り事を持っているのかを知らないと営業担当者としても攻めようがないわけだ。闇雲に手当たり次第に攻め込むというやり方では的外れで、非効率な営業活動になりかねない。というわけで、印刷会社にもマーケティング活動が必要になるということだ。

印刷会社が自社でマーケティングを行い経験を積み、マーケティングをより深く理解することで、顧客のマーケティング活動に対しても貢献できる下地が作れるはずである。マーケティングオートメーションには、メール配信や登録フォーム、キャンペーン管理、リード管理、マーケティング分析、Web解析、リードの行動分析などの機能が実装されているわけで、B to BでなくB to Cのビジネスでも活用できる。顧客のマーケティング活動の中のどの部分で、どのような印刷物が効果を発揮するツールになるのかを提案できれば、新しい市場開拓につながるはずである。

このほか、JAGATinfo3月号では、page2016展示会の模様をバリューマシーンインターナショナルの宮本泰夫氏がレポートするほか、JAGAT客員研究員でメディアテクノス井上秋男氏も独自の視点レポートしている。
経営者インタビューは田中紙工代表取締役社長の田中真文氏に製本業界、製本業としての新たなチャレンジについて語っていただいた。

(JAGAT info編集担当 小野寺仁志)

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